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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

石原元知事を百条委員会に招致。小池氏とのバトルも本格化。都民ファーストの会は候補者続々決定

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(ゆりかもめ豊洲駅。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  豊洲市場問題を巡り、都議会の各会派が百条委員会の設置を容認し、今週には石原元知事と浜鍋元副知事が招致されることが見込まれています。

 百条委員会は地方自治法100条を根拠として地方議会が議決で設立する特別委員会で、都や県などの自治体の事務に関する調査を行います(参考人を招いたヒアリングや記録の提出等を求めるだけでなく、証人の虚偽発言等を罰することができる)。

 15日には野党(民進党や共産党)が議会運営委員会の理事会で設置を提案。これを受けて20日には都議会の各会派が協議。22日に都議会本会議で百条委員会の設置が議決されました(※2/22加筆)。

 今後、石原氏と浜鍋氏は単なる参考人としてではなく、証人(※こちらは虚偽証言が罪に問われる)として呼ばれる可能性もあります。

 石原氏は先週、記者団を前にして招致の前に自身で説明すると述べたので、今後の石原氏の弁明と百条委員会での発言が注目されるでしょう。

 そして、百条委員会の動向と同時に、注目されているのが、都民ファーストの会の候補者擁立です。

 今回は、この二つの動きがどうなるのかを考えてみます。

小池知事は石原氏とのバトルに突入?

 小池知事は1月20日の記者会見で「東京都は石原元都知事に対して約578億円を請求せよ」という住民訴訟への対応のあり方を変えると述べています。

 これは、2011年3月に東京都と東京瓦斯株式会社及び東京ガス豊洲開発株式会社との間で行われた売買契約をめぐって住民が提起した訴訟です。

 これに関して、都知事は住民訴訟への対応を見直す必要があると述べました。以下、都知事HP(「小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成29年1月20日)|東京都」)。

  1. 石原慎太郎元都知事の豊洲用地の売買契約についての責任が問われている
  2. 豊洲市場については、用地を選定する件、それから土地購入の契約する、その経過が不透明であり、かつ不適正ではないかとの疑惑も多く指摘されている
  3. その事実関係、それをもたらした責任を曖昧にすることなく、明らかにするということは、都政を改革して、緊張感を持って適正な上を行う上で不可欠だ

  そして、訴訟代理人を交代し、訴訟対応特別チームを編成することや2月9日の口頭弁論の4月初旬への延期(新しい準備書面の作成のため)を表明。

その後、事実関係を解明して証拠の収集、石原慎太郎元都知事の法律的な損害賠償責任があるや、なしや、その範囲は一体どうなのかという判断、これらについて新しい準備書面の作成を進めます。そして、その進捗状況に応じまして、裁判に提出をしていきたい

 これは事実上の宣戦布告にも見えます。

 奇しくも石原氏のサイトの名前は「宣戦布告」なのですが、現在、同氏HPではまだ「応戦」はなされていません。

昨年の小池質問と石原応答を振り返る

 昨年10月に毎日新聞の電子版では、豊洲問題に関して「小池知事の質問・全文/石原氏の回答・全文」(2016年10月25日)の両者が掲載されていました。

 小池氏はいくつかの質問を行い、それに対して石原氏は不明瞭な答弁を行っていました。

 当時、晴海、有明北、石川島播磨跡地があるなかで、なぜ豊洲に移転先にしたのかと問われた際には「既定路線だった。この頃、移転先が豊洲だとは聞いていない」と述べています。

 そして、土壌汚染対策費用に関する都と東京ガスの負担区分に関しては「浜渦特別秘書が交渉した」。

 豊洲市場の事業採算性に関しては「担当者に任せていた」。

 土壌汚染対策に関しては「専門的知見がないので分からない。担当者が専門家に聞いたり協議したりして判断すべきものだ」。

 要するに、担当者や専門家に任せていたというのが、当時の石原氏の返答です。

 石原氏は、記憶がないのできちんと資料を調べてくれという、気のない返答だったので、小池氏は憤り、詳細な調査を開始。その後、盛り土がなかったことに関して責任者(中央卸売市場長や管理部長経験者等)が名指しされました。

 両者の主張はすれ違っていますが、今後、石原氏が何を述べるのかが注目されています。

 石原氏は『週刊新潮』(2017/2/23号)にて、小池氏に反論しているので、その一部を紹介してみます。

「築地市場の豊洲への移転は、私が知事に就任した1999年4月の時点で既定路線となっていました。先代の青島(幸男)君からの『引き継ぎ事項』があって、そのなかに豊洲移転に関する項目も含まれていた」「都庁の各担当部局には当時の資料が残されているでしょうから、ぜひ確認してもらいたい」

「福永正通副知事(当時)が、豊洲の土地を所有する東京ガスとの取得交渉に当たったわけです。彼は温和な性格でね。ただ、なかなか議論が前に進まなかったようで、リリーフとして濱渦(武生特別秘書、後に副知事)に一任することにした」

「移転関連費を盛り込んだ予算案を巡っては都議会も紛糾して、63対62という僅差で可決された」

(ネット版の出所:石原慎太郎氏が豊洲移転問題に反撃「とにかく豊洲ありきだった」 - ライブドアニュース 2/26)

  当時、既定路線だったことや議会でも予算が承認されたことなどを主張しています。土壌汚染の内容も都内では議論されており、現在の技術で解決可能と見なされたと主張しています。

「都民ファーストの会」の候補者擁立

 小池氏は豊洲移転に関する事実関係の究明に力を入れていますが、同時並行で、都民ファーストの会では、候補者の擁立が進められています。

 小池都知事は5日の千代田区長選での勝利ではずみをつけ、7月の都議選での過半数(64人以上)の候補者擁立を目指しています。地域政党の「都民ファーストの会」は2月以降、立て続けに候補者を発表しました。

 1月24日には第一次公認として、音喜多駿都議(北区)、上田令子都議(江戸川区)、両角穣都議(八王子市)、本橋弘隆豊島区議(豊島区)の四名を擁立。

 2月6日には追加候補4人(元民進党都議2人、都知事選で小池氏を応援した元自民党都議2人)を発表。

 2月14日の3次公認では政治塾「希望の塾」の塾生四名(現職区議もしくは市議)を擁立。この中には台東区の保坂真宏区議(自民元参院議員である保坂三蔵氏の長男)が含まれています。

 そして、17日には自民党の都議2人(山内晃氏、木村基成氏)が離党の意を示し、「都民ファーストの会」へ合流しました。

 5日の区長選勝利以降、小池都知事の側に吹く追い風に対して、自民党内には明確な対策がありません。日経電子版では、自民党の困惑ぶりが紹介されていました。

 昨年12月、小池氏との連携に向け党所属都議3人が都議会の党会派を離脱した自民党。区長選の結果により「同会に駆け込む都議が続出するのでは」(都連関係者)と警戒する。「小池旋風」への対抗策は描けない中、二階俊博幹事長は6日、都議選への影響を「ないとは言えない」と語った。『小池新党』2次公認に4氏 都議選で」(2017/2/6)

 その後、25日には内田茂都議が地元区議や支援者を前にして次期都議選への不出馬を表明。脳梗塞手術後の健康面等の不安や77歳で出馬すれば任期中に80歳を超えることが自民都連の内規に反することを明かしました。小池氏に関しては「安易な妥協はしない」と述べ、政界引退を否定し、政治活動継続の意向を示しています(日経電子版「内田氏、最後まで小池知事に厳しい姿勢 引退表明」2017/2/25)。

都議会勢力図の現状(2/20時点)

 新聞報道では省略されがちですが、2月20日における都議会(定数127名、現員126名、女性議員25名)の会派は以下の構成になっています。

  • 東京都議会自由民主党:57人
  • 都議会公明党:22人
  • 東京改革議員団:18人
  • 日本共産党東京都議会議員団:17人
  • 都民ファーストの会 東京都議団:5人(17日に2名増)
  • 都議会生活者ネットワーク:3人
  • 新風自民党:1人(17日に2名減)
  • 無所属(深呼吸のできる東京):1人
  • 無所属(東京みんなの改革):1人
  • 無所属(日本維新の会 東京都議会):1人
  • 現員 126(うち女性25)人
  • 定数 127人

「深呼吸のできる東京」という謎の呼称が気になりますが(こんな会派があったのか・・・)、都議選を前にして既成政党では動揺が広がっており、都民ファーストの会への”亡命者”が続出する可能性が高まっています。

防衛戦に追い込まれる既成政党

 小池氏の躍進ぶりを見て、すでに昨年12月の時点で公明党は自民党との都議会における連立を解消しました。

 炎上中の自民都連から手を引き、小池氏支持を表明することで「守り」に入っています。

 そして、民進党のほうにも勢いがありません。

 2月14日には、都議会の民進党2会派が「東京改革議員団」に統一され、小池知事の東京大改革への支持を表明しましたが、小池氏には足元を見られています。小池氏は都民からの支持率がふるわない「民進党」全体と連携せずに、候補者ごとに政策や資質、人望などを判断し、個人ベースで協力するか否かを決める方針だからです。

 19日に読売新聞が発表した世論調査によれば、民進党支持者でも小池氏支持が大勢を占めていることが判明しています。(都民ファーストの会に「期待」66%…読売調査

 読売新聞社の全国世論調査で、東京都の小池百合子知事が事実上率いる地域政党「都民ファーストの会」に「期待する」は66%で、「期待しない」の26%を大きく上回った。「期待する」は、民進支持層で8割、自民支持層で66%、無党派層で63%を占め、都内の有権者では69%に上った。

 小池氏は5日の区長選で内田茂都議に勝利し、百条委員会に石原氏を招致し、次の矛先を移そうとしています。

 マスコミ世論が石原氏バッシングに傾けば、小池氏にはまたもや追い風になる可能性が高いので、前述の豊洲問題の事実関係の究明の取組みは、7月の都議選勝利に向けた作戦だと見ることも可能です。

 これに関して、ネット版のNEWSポストセブン記事(2015/2/15)では、政治評論家の有馬晴海氏の分析が紹介されていました。

「千代田区長選の出口調査では小池都政への支持が8割以上に達し、自民党支持層でも6~7割が小池系候補に流れた。この勢いが都議選まで続く」「都民ファーストの会は都議選で各選挙区1議席を獲得するにとどまらず、定数8の大田や世田谷、定数6の杉並、練馬、足立などに複数の候補を擁立し、圧勝する可能性がある」(「都議選 小池新党から70人擁立なら民進党は壊滅的危機に」)

 そして、都民ファーストの会が70人候補者を擁立した場合の未来図を描いています。

「無党派票の大部分は都民ファーストの会に流れる。支持基盤が固い公明党は一定の議席を維持するでしょうが、そのあおりを一番受けるのが選挙基盤の弱い民進党です。現在、民進党都議や候補が小池陣営に鞍替えする動きが出始め、さらに加速する流れもある。民進党は選挙前に壊滅的危機を迎える可能性があります」(同上)

  既成政党は、都議選で議席減を防ぐための戦いを強いられる可能性が高まっています。

 都議選は次期衆院選の前哨戦でもあるので、ここで大敗すれば民進党の士気が大きく下がってしまいます。

 現在、蓮舫代表は根回しなしに「2030年原発ゼロ」を次の選挙の主要政策として掲げようとして、支持団体の「連合」と対立し、党内でも「蓮舫おろし」が言い立てられるなど、微妙な状況が続いています。

 7月の都議選で負ければ、蓮舫代表が窮地に追い込まれるのは必至です。

 本年7月に小池知事の都議会制圧が実現?

 豊洲移転騒動を延々と長引かせると経済的な実害が発生するので、筆者はこれを政治劇に用いた都知事の手法には一定の疑問を持っています。

 しかし、PR戦術としてみると、小池氏は見事な「成果」を収めているようです。マスコミはネタを欲するので、従来の都政の怪しい部分を際立たせる「豊洲の盛り土」は、世の耳目を引く絶好の材料だったとも言えます。

 オリンピックの会場変更の議論は、結局、元サヤに戻ったので、どちらかといえば組織委側の勝利でしたが、小池氏は予算を削減してローコスト化を実現したと主張できるため、負けたわけでもありません。

 全体的に見れば、マスコミの後押しを受けた小池氏は、2月に内田都議に勝ち、有利に戦いを展開しています。

 小池氏は、都知事選から17年の都議選までを一つの政治キャンペーン期間と捉えているように見えます。次は石原氏に狙いをつけ、都議選前にマスコミ報道を盛り上げることを狙っているのでしょう。

 東京都では知事だけでなく、都議会が大きな力を持っているので、小池氏はこちらを掌握しない限り、現実の政策実現は難しいと見ているのかもしれません。

 今後、小池氏のPR戦略が進展していくはずですが、同時に地に足がついた政策実現がなされているのかどうかを注視しなければなりません。