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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

マティス国防長官訪欧 NATOを支持し、各国に防衛負担増を要望 

国際 トランプ政権2017 ヨーロッパ 全記事一覧

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(NATOサミット、2004年。出所:WIKIパブリックドメイン画像)

 トランプ政権が発足してから初めてのNATO(北大西洋条約機構)国防相会議が2月15日にベルギーの首都ブリュッセルで開催され、そこでマティス国防長官が演説を行いました。

 トランプ政権ができた後、イギリスは接近を図りましたが、やや疎遠な感があるEU諸国との距離を縮めるために、マティス氏が訪欧しているのです。

 トランプ大統領は「NATOは時代遅れだ」とまで述べたので、かつてNATOとアメリカ軍を欧州で指揮していたマティス氏が古巣(「第二の故郷」と述べている)に帰り、両者のよりを戻そうとしています。 

 各国に信頼されるマティス氏は、国防長官なのに、就任直後は国務長官のように外交マターに関わっています。

 もうそろそろ、メディアも「狂犬」と呼ぶのをやめ、新しいニックネームを考えたほうがよいころなのかもしれません。

 今回は、マティス氏の訪欧を追ってみます。

NATO国防相会議でマティスは何を語った?

 マティス氏はNATO国防相会議で、NATOへの支持と各国への防衛費負担増の要望を語ったのですが、この二つの情報の組み合わせ方で、ニュースの印象はずいぶんと変わってしまいます。

 ウォールストリートジャーナルの日本語版(「米国防長官、NATO支持を明言」2/16)は、マティス国防長官がNATOを支持し、危機への適応能力を高める必要性を強調したことに焦点を当てています。

「われわれは過去にもそうであったように、今一度、状況の変化に対応できることを証明すると確信している。再び断固とした行動をとると確信するあらゆる理由がある」と言明した。

 一方、TBSのニュースアイでは「マティス米国防長官、NATO加盟国に軍事費負担増迫る」(2/16)と題して「負担増」を強調しました。

(マティス氏は)今年中に加盟各国が軍事費用の負担を増やさなければ、アメリカはNATOへの関与を減らすと迫りました。

「世界最高の防衛を受ける全ての国が、自由に見合う費用を担うのは公正な要求です」

(略)

(マティス氏は)アメリカがNATOへの関与を減らすのを見たくなければ、加盟各国が軍事費用の負担を増やすべきだと迫りました。

 記事のほとんどを防衛費関連の記述に費やした後、最後にマティス氏が「NATOは、環大西洋の安全保障の礎である」と述べたことを紹介したので、こちらはあまり印象に残りません。

 オバマ政権の頃から、NATOとアメリカの間で争点になっているのは、防衛費の負担問題です。

 オバマ前大統領はできる限り防衛費を減らして国内の福祉に回したかったので、NATO諸国に防衛費をもっと負担してくれと要望を出していました(各国にGDP比2%程度を要望)。

 トランプ氏にも「他国防衛に予算を回しすぎている。もっと自国強化のためお金を使いたい」という考えがあるので、NATOに関しては、意外と主張が似ているのです。

 毎日新聞のネットニュースでは、前掲の発言を踏まえ、NATOの現状が以下のように報じられています(「マティス米国防長官 国防相会議でNATOに負担増要求」2017年2月16日 東京朝刊)。

 NATOによると、米国を除く欧州諸国とカナダの計27カ国の2016年の防衛費支出の総額は、前年比で3・8%伸びて約100億ドル(約1兆1340億円)増加した。公正な費用負担は米欧間の「接着剤」(NATO外交筋)だ。ロシアとの対立やテロ対策など国際情勢の変化を受け、NATOは24年までに全加盟国で防衛費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げる目標を掲げている。

 この記事はロシアが巡航ミサイル「SSC8」を実戦配備したというNYTの報道を転載していますが、このミサイルの射程距離は500~5500kmなので、米ソ間で締結した中距離核戦力全廃条約に抵触する可能性があります。

 弾道ミサイルの射程距離とその分類には各国で完全なコンセンサスがあるわけではありませんが、5500kmで長距離と中距離のラインが引かれています(5500km以上を長距離、3000~5500kmが中距離、1000~3000kmが準中距離、1000Km以内が短距離と区分けされることが多い)。射程だけで見たら、SSC8は中距離に入ってしまうからです。

 ロシアは軍拡を続け、原潜を含む核抑止力を再建してきているので、マティス氏は同国の軍拡とウクライナへの領土拡張の意志を警戒し、前掲のように、危機への対応能力を強化すべきだと述べたわけです。

 そのほか、日本のメディアではやや省略されていますが、IS打倒のための連携もかなり力を入れて訴えています(※これは後述)。

国防総省が伝えたマティス発言①:新しい戦略的現実への対応

 ここで、国防総省の英文記事を紹介してみます。

 現時点では、NATO諸国の防衛予算GDP比2%負担の話が他人事のように報じられていますが、そのうち、日本に対してもGDP比2%の防衛費を支出してくれと言われるようになるのではないでしょうか。

 その意味で、今回のマティス発言は非常に重要です。

ーーーー

【マティス:NATOは新しい戦略的現実への対応の中で進化する】

 Mattis: NATO is Evolving in Response to New Strategic Reality

 シェリル・ペレリン 国防総省ニュース

 By Cheryl Pellerin DoD News

(出所:Mattis: NATO is Evolving in Response to New Strategic Reality > U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE > Article

 ・・・

(※マティスの発言)

「我々は、同盟が直面している危機の拡大について議論した。そして、民主主義への脅威に対して団結し、これらの脅威の成長に対処すべく、強固な同盟を築くことを私は決意した」。マティスのメッセージは簡潔だ。「我らが国家のコミュニティは、NATO周辺と辺境における不安定の弧の脅威の下にある」。

“We thoroughly discussed the increased threats facing our alliance and, unified by the threats to our democracies, I found strong alliance resolve to address these growing threats,” Mattis said, adding that his message to fellow ministers was simple: “Our community of nations is under threat on multiple fronts as the arc of insecurity builds on NATO's periphery and beyond.”

防衛長官は防衛負担を共有すべきだと述べた。NATO加盟国はGDP比で2%の防衛費を貢献しなければならない。

The secretary said the burden-sharing message he delivered -- that more NATO members must contribute 2 percent of their gross domestic product to the alliance -- was expected and well received.

マティスは、サイバー領域の新しい脅威やロシアの攻撃的な行為の中でNATOの安全保障は変わると述べた。それらは国際法に違反し、国際法を揺るがせているからだ。

Among NATO’s security challenges, Mattis said, are new threats such as those in the cyber domain, and Russia’s aggressive actions, which are destabilizing and have violated international law.

彼は、ロシアが「この地球上のすべての成熟した国家と同じように、国際法に則ってふるまうべきだ」と述べた。

Russia must “live by international law just like we expect all mature nations on this planet to do,” he said.

アメリカとロシアは「軍事的に協力できるレベルの状況にはない」が、「我々の政治指導者はロシアに対して、立場を共有できる点を模索している。そして、NATOとの協力関係を戻したいと考えている」

The United States and Russia “are not in a position right now to collaborate on a military level,” Mattis added, “but our political leaders will engage and try to find common ground or a way forward where Russia, living up to its commitments, will return to a partnership of sorts here with NATO.”

ロシアがその初めになる必要がある。ロシアとNATOとの協定を成立させたい。

Russia will have to prove itself first, he said, and live up to commitments made in the Russia-NATO agreement.

NATOとロシアの関係は、安全保障と相互協力のため、1997年のNATO・ロシア基本文書を締結し、それを2002年ののNATO-ロシアサミット(ローマで開催)、2010年のリスボンでの会合で確認することで形づくられた。

According to NATO, the relationship between Russia and the alliance is governed by the Founding Act on Mutual Relations, Cooperation and Security, agreed by to NATO allies and Russia in 1997 and reaffirmed at NATO-Russia summits in Rome in 2002 and in Lisbon in 2010.

その文書では、NATOは集団安全保障と、侵略の脅威に対抗するためのインフラを補強し、訓練するための他の任務を担うとされている。

The act says that NATO will carry out its collective defense and other missions and may reinforce infrastructure against a threat of aggression and for exercises.

その協定では、ロシアはヨーロッパに向けた通常兵器の配備を抑制することになっている。

Russia, the agreement says, will exercise similar restraint in its conventional force deployments in Europe.

マティスは、中東や北アフリカでのテロ根絶を含む他の挑戦についても言及した。これは、彼が「我々とヨーロッパへの直接的・即自的な脅威」と呼んでいるものだ。

Mattis said other challenges include terrorism emanating from the Middle East and North Africa and that he called “a direct and immediate threat to Europe and to us all.”

国防長官は、そうした脅威への対処し、NATOは防衛と抑止力を強化している。そして、中東からトルコに至る、より直接的なテロリストの脅威に対処していると述べた。

In response to such threats, the secretary said, NATO is reinforcing deterrence and defense and adapting to more directly address terrorist threats along its southern flank from the Mediterranean to Turkey.

「同盟はこれらの戦略的な現実と政治的な現実に直面している」とも述べた。

“The alliance faces not only these strategic realities but also political realities,” Mattis said.

(※以下、マティスの発言)

「私は、防衛負担の共有に感謝し、ここを出発できるものと信じている。そのために、平和と繁栄のための抑止力を維持しなければならないからだ」

“I depart here confident that we have an appreciation of the burden sharing that we must all sustain for deterrence, peace and prosperity.

「私は、我々が直面する脅威の拡大に対処する防衛の関与を推し進めるための会合日程を含んだ本年の計画が採用されると考えている」

I am optimistic the alliance will adopt a plan this year, including milestone dates, to make steady progress toward meeting defense commitments in light of the increased threats that we all agree that we face,” he added.

エストニア、ギリシャ、ポーランド、イギリスは国を守るためのGDP比2%の支出を行っている。

Nations that already have met the two percent defense spending commitment are Estonia, Greece, Poland and the United Kingdom.

「これらの国々は、真の犠牲を払ったよい見本だ。全ての同盟国は世界の中で最良の防衛を享受していることを認識している。私はウェールズとワルシャワでのサミットで、全加盟国がこのレベルの貢献に向けて着実に前進すると考えている」

“These countries are leading by example, making real sacrifices,” Mattis said. “All allies recognize that they are benefiting from the best defense in the world so I'm optimistic that all nations are on a steady path to reach the level of commitments made at the Wales and Warsaw summits.”

「環大西洋の絆は、とても強い共通の価値の上に築かれている」

The transatlantic bond built on common values remains very strong, the secretary added.

「私は、ブリュッセル(NATO本部のこと)が、同盟における目的の追求を急ぎ、栄誉ある相互の貢献のためにともに立つ深い決意を固めているのを見た。私は、我々の自由を守るために必要な能力と資産を維持できると確信している」

“I see here in Brussels a quickened purpose in this alliance and a profound determination to stand together and honor our commitments to each other, Mattis said. “I have confidence that we will sustain the legacy we've inherited and do what is necessary to defend our freedom.” 

マティス発言②:対IS作戦の遂行

 もう一つ、力点が置かれているのはIS打倒作戦です。

 こちらの記事も紹介してみます。

(出所:U.S., NATO to Accelerate' Counter-ISIS Fight, Mattis Says > U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE > Article

 ーーーー

マティスは「アメリカとNATOは反ISIS闘争を加速する」と述べた。

U.S., NATO to Accelerate' Counter-ISIS Fight, Mattis Says

By Lisa Ferdinando DoD News, 2017/2/16

 

アメリカとNATOはIS(”イラクとシリアのイスラム国”)打倒を目指して激しく活動している仲間だと、マティス国防長官はブリュッセルで述べた。

The United States and its NATO partners intend to intensify efforts to defeat the Islamic State of Iraq and Syria, Defense Secretary Jim Mattis said today in Brussels.

NATO本部における反ISISの閣僚会合で、マティスは28か国の国々を反ISIS闘争の連合と呼んだ。

At the opening of a counter-ISIS ministerial meeting at NATO headquarters, Mattis said the nations in the 28-member bloc are "united in this fight to defeat ISIS."

彼は相方となる各国の防衛担当の大臣に、この会合の目的を述べた。

それは現在の反ISIS闘争を高め、テロリストへの国際的な圧力を組織化することだ。

He thanked his defense counterparts for attending the session, saying the goal of the meeting is to "orchestrate the international pressure on our terrorist enemy and enhance the current counter-[ISIS] fight."

The defense chief called for a sustained effort.

「これはすぐに終わるようなものではない。しかし、我々は戦いを加速してゆく。それが私がここにいる理由の一つだ。これを同盟国(あなたがた)のためにつくろうとしているのだ」とマティスは述べた。

"This is not something that will be over with quickly, but we certainly intend to accelerate this fight, one of the reasons we're here today is to lay this out to you," Mattis said.

NATO総長のストリングベルグはISISとテロへの圧力を高めるために、同盟国のメンバーにさらなる努力を呼びかけた。

NATO Secretary General Jens Stoltenberg commended the efforts of the alliance members, saying ISIS and terrorism are among the most pressing challenges NATO faces.

各国の献身と防衛強化をふまえ、「この連合は目的達成のために戦うべく、揺るがぬ献身に支えられている」とも述べた。

"This coalition has an unwavering commitment to see this fight to its conclusion," he said, noting that is reinforced through the contributions by each of the nations.

「ISIS打倒は、現世代における挑戦であり、世界的な規模での対応が必要だ」とも付け加えた。

Defeating ISIS “is a global generational challenge that requires a global generational response," Stoltenberg added.