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ゼロからやりなおす「政治と経済」

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ネタニヤフ訪米 イスラエル首相との会談でトランプ大統領は「二国家共存」にこだわらず

国際 トランプ政権2017 全記事一覧

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(エルサレムの風景。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  2月15日に訪米したイスラエルのネタニヤフ首相はトランプ米大統領と会談し、中東の今後について話し合いました。日本時間で言えば会談が行われたのは16日未明にあたります。

 トランプ大統領は、オバマ政権の対イスラエル外交から脱却し、以下の政策で大転換を計る方針を固めています。

  1. イスラエルとパレスチナの和平交渉の原則「二国家共存」にはこだわらない
  2. パレスチナ自治区でのイスラエルの入植活動
  3. アメリカ大使館のエルサレム移転
  4. イランへの圧力強化(オバマ政権の核合意を批判)

 今回は16日未明の会談を振り返り、トランプ政権の時代の中東がどうなるのかを考えてみます。

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そもそもネタニヤフ首相ってどんな人?

 まずはネタニヤフ氏のプロフィールを見てみます。

 本名は「ビンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin NETANYAHU)」(ベンヤミンとも表記される。愛称は「ビビ」)。

 出身地はテルアビブです。1949年10月21日(67歳)に生まれました。

 イスラエル国民には兵役があるので、ネタニヤフ氏の職歴は国防軍から始まります。

 国防軍コマンド部隊(1967-72)で務めたのち、ビジネスコンサルティングに携わりました。

 イスラエルでは軍で専門スキルを磨き、退役後にビジネスの世界にに転身する人が多いとも言われますが、ネタニヤフ氏もそうだったようです。

 その後、兄(ヨナタン)の名を冠した民間のテロ対策研究機関に1979年に所属(ヨナタンはテロに対抗した1976年のエンテベ空港奇襲作戦で戦死)。その後、外交関連で職歴を重ねます。

 在米イスラエル大使館次席(82~84年)⇒国連大使(84~88年)⇒外務副大臣(88~91年)

 そして、88年に議員になります(クネセット総選挙当選。その後も当選を重ねる)

 91年にはマドリッド中東和平会議でイスラエル代表上級団員となりました。

 93年(44歳)で若くしてリクード党首となります。

 首相(93~96年)⇒外相(02~03年)⇒財務相(03~05年)を歴任。

 ひとたび下野し、09年以降、首相を務めています。8年も続く長期政権です。

 学歴を見ると、米マサチュセッツ工科大を卒業。ヘブライ語、英語、フランス語に長じています。

 著書は「テロリズム―西側はいかにして勝利を手にするか」。書名にキャラが濃厚に出てしまっています・・・。

米イスラエル会談以前に何が起きていたのか?

 今回の会談に関しては、まず、その前に出されたトランプ政権高官の発言が物議をかもしました(NHKニュースWEB「トランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が会談へ」2月15日)

 アメリカ政府の高官は、14日、記者団に対し、イスラエルと将来的なパレスチナ国家が平和的に共存する「2国家共存」について、「和平をもたらさない『2国家共存』は目標ではなく、押しつけるつもりはない。和平こそが目標だ」と述べ、「2国家共存」に必ずしもこだわらない可能性を示唆しました。

 アメリカの歴代政権は、「2国家共存」を和平交渉の原則としており、仮にトランプ政権が、これを転換すれば、パレスチナ側が強く反発することが予想されます。

 さらに両首脳は、イランについて核開発をめぐる合意の見直しを含めた圧力の強化についても協議する見通しで、首脳会談は、トランプ政権の中東政策を占うものとして注目されています。

(略)
 アメリカ政府高官の発言を受けて、パレスチナ暫定自治政府の外交当局は声明を出し、「もし本当であれば、アメリカの政権にとって危険な政策の転換だ。パレスチナは、国際社会とともに2国家共存の考え方を守り、維持するために努力する」としてトランプ政権に警告しました。

 トランプ政権はパレスチナ自治区でのイスラエルの入植活動に反対したオバマ政権の路線を覆すだけでなく、歴代政権が踏襲してきた「二国家共存」の方針の問い直しも辞さない姿勢を示しています。

 この方針は、イスラエル建国に際して住処を失ったパレスチナ人に自治区を与え、「二国家」を共存させることを目指します(03年にアメリカ、EU、ロシア、国連が05年までの行程表を提案し、イスラエルとパレスチナの双方が合意するとされた)。

 しかし、その計画はうまくいかず、パレスチナ自治区ではテロが続き、イスラエル側がヨルダン川西岸地区と東エルサレムで入植活動を進め(現在、約60万人規模で居住)、自国の影響力を拡大しています。和平交渉は事実上、停止していますが、アメリカの歴代政権はこの方針を維持し続けてきたのです。

 そして、オバマ政権はイスラエルの入植活動に反対していたので、イスラエルの不満が高まっていました。

 その政権末期から現在までを振り返ると、以下の出来事が起きています。

  • 2016年12月23日:サマンサ・パワー前米国連大使がイスラエルに入植活動停止を求める国連安保理決議案への投票を棄権。⇒米国は拒否権を用いず、決議案は採択
  • トランプ氏とネタニヤフ首相は批判。イスラエルは入植を拡大
  • ニッキー・ヘイリー国連大使は承認のための上院公聴会で国連がイスラエルへの姿勢を改めなければ、米国は国連分担金支払いをやめることを示唆
  • 2月10日、ヘイリー国連大使がパレスチナ自治政府のサラム・ファイヤド元首相を国連リビア特使に任命することに反対。

 そのほか、トランプ政権の動きを見ると、イスラエルの入植活動を支持するフリードマン氏を大使に指名したほか、米大使館のエルサレム移転や、オバマ大統領が進めたイラン核合意の見直しなどを目指しています。

 米大使館をテルアビブからエルサレムに移転すれば、イスラム過激派のほうは、アメリカがイスラム教の聖地に地歩を築いて戦いをしかけてきたと各国に呼びかけて対抗してきます。この場合、テロをけしかけて反撃してくる可能性が高まるでしょう。

 また、イラン核合意では、査察等で核開発を阻止しながらも、ウラン濃縮を一部容認し、イランへの経済制裁が解除されましたが、これは多国間の取り決めなので、トランプ政権単独では見直せません。そのため、英仏独露中等の関係各国との交渉が必要になります。そのため、他の政策よりも難易度が高いと言えるでしょう(トランプ政権に肯定的なメイ英首相でも、2月6日時のネタニヤフ首相との会談で、核合意支持を表明している)。

トランプ大統領は「二国家共存」にこだわらず

  16日未明の日経電子版では、記者会見でのトランプ大統領の発言が紹介されています。

「2国家でも1国家でも(イスラエルとパレスチナの)双方が望む方でいい。どちらでも受け入れ可能だ」

 ・・・

 2国家共存を「唯一の道」としてきた歴代米政権のイスラエル政策の転換を示唆した。

 パレスチナ自治政府が反発している在イスラエル米大使館のテルアビブからエルサレムへの移転案も前向きに検討する考えを示した。一方、イスラエルが進めるヨルダン川西岸などへの入植地の建設拡大については「少し自制してほしい」と述べた。

(「トランプ氏、「2国家共存」こだわらず イスラエル首相と会談」2017/2/16)

 入植地拡大に関してはややトーンダウンしていますが、基本的にはイスラエル寄りのスタンスです。

 建前上は、アメリカがイスラエルとパレスチナの双方を尊重することになっていますが、実質的にイスラエル支持なのは、ホワイトハウスHPにUPされたトランプ大統領の発言を見るとよく分かります。

 ここで、参考に、トランプ・ネタニヤフ記者会見の冒頭の発言を紹介してみましょう。

(以下、出所はJoint Press Conference w/ Prime Minister Netanyahu | whitehouse.gov

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記者会見でトランプ氏はイスラエル支持路線を表明

トランプ大統領

PRESIDENT TRUMP:

わが友、ベンヤミン・ネタニヤフ首相をホワイトハウスに招待できたのは光栄の至りだ。

Today, I have the honor of welcoming my friend, Prime Minister Benjamin Netanyahu, to the White House.

彼の訪問をもって、アメリカは親愛なる同盟国であるイスラエルとの不朽の絆を、再確認したい。

With his visit, the United States again reaffirms our unbreakable bond with our cherished ally, Israel.

我々二国間の協力関係は価値の共有によって築かれている。その価値とは「個人の自由と尊厳、平和を促進する」という大義のことだ。
The partnership between our two countries, built on our shared values, has advanced the cause of human freedom, dignity and peace.

これらは民主主義の礎石である。

These are the building blocks of democracy.

イスラエルは圧制に対する世界の抵抗の象徴だーー大量虐殺から生きのびた人々がつくったイスラエルを、私は世界に二つとない大事な国だと考えている。

The state of Israel is a symbol to the world of resilience in the face of oppression — I can think of no other state that’s gone through what they’ve gone [through] — and of survival in the face of genocide.

私はユダヤ人が耐え忍んだ経験を忘れることはないだろう。

We will never forget what the Jewish people have endured.

あなたがたは敵意に対して忍耐し、暴力に直面しながらも開かれた民主主義を維持し、全ての賭けに勝利した。それは(我々を)鼓舞するものだ。

Your perseverance in the face of hostility, your open democracy in the face of violence, and your success in the face of all odds is truly inspirational.

イスラエルは核保有に対するイランの野心を含む、数多くの安全保障における挑戦に直面している。私はこれに関して、すでに数多く議論を重ねた。

The security challenges faced by Israel are enormous, including the threat of Iran’s nuclear ambitions, which I’ve talked a lot about.

イラン核合意は近年における最悪の取引の一つだ。

One of the worst deals I’ve ever seen is the Iran deal.

わが政権はすでにイランに新しい制裁を課している。私はイランのさらなる核開発を阻止するつもりだ。

My administration has already imposed new sanctions on Iran, and I will do more to prevent Iran from ever developing — I mean ever — a nuclear weapon.

我々はイスラエルを常に高い水準で軍事的に支援している。イスラエルが彼ら自身の国を数多くの脅威から守ることができるように。

Our security assistance to Israel is currently at an all-time high, ensuring that Israel has the ability to defend itself from threats, of which there are unfortunately many.

この二国間の関係は継続し、発展してゆく。

Both of our countries will continue and grow.

我々はテロリズムや人間の生命の価値を否定する者たちとの戦いで、長い間、協力を続けている。

We have a long history of cooperation in the fight against terrorism and the fight against those who do not value human life.

アメリカとイスラエルは人間の生命の価値を尊ぶ二つの国家なのだ。

America and Israel are two nations that cherish the value of all human life.

これが、我々が不公正で一方的なイスラエルに対する国連の措置に反対し、ボイコットする理由だ。私の見解では、国際会議でイスラエルはとてもとても不公正に扱われている。

This is one more reason why we reject unfair and one-sided actions against Israel at the United Nations, which has treated Israel in my opinion very, very unfairly, or other international forums, as well as boycotts that target Israel.

わが政権はイスラエルと我々の同盟国とともに地域の安全保障を堅固にすることを約束している。

Our administration is committed to working with Israel and our common allies in the region towards greater security and stability.

それはイスラエルとパレスチナ人との間の和平に向けた取り組みを含む。

That includes working toward a peace agreement between Israel and the Palestinians.

アメリカ合衆国は平和を促進し、そのための協定を実現する。

The United States will encourage a peace, and really a great peace deal.

我々はそのために熱心に取り組む。

We’ll be working on it very, very diligently.

我々がそれを望むことは非常に大事だ。

Very important to me also, something we want to do.

しかし、彼ら自身が妥結のために直接的な交渉を行わなければならない。

But it is the parties themselves who must directly negotiate such an agreement.

我々は彼らとともにある。

We’ll be beside them.

我々は彼らとともに働く。

We’ll be working with them.

実りある交渉のために双方が妥協する必要があるのだ。

As with any successful negotiation, both sides will have to make compromises.

これからパレスチナ側はどうすればよいのか?

 記者会見でのトランプ大統領の発言から見ると、同氏はイスラエル寄りのスタンスなので、これからパレスチナ側にとっては厳しい日々が続くことになりそうです。

 なかなか各国に理解は得るのは厳しい状況が続いていますが、イラン核合意に対しても、トランプ政権は、順次、関係各国に見直しを求めていくはずです。

 日本にとってやや遠い世界の話ですが、パレスチナ問題は中東情勢を動かす重要な要因になっています。これが動くと玉突きのように他の問題に影響が出てくるため、トランプ政権の中東政策は国際政治を動かす重要なファクターだとも言えます。

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