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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

北朝鮮が弾道ミサイル発射。安倍首相とトランプ大統領はどう対応する?

国際 朝鮮半島 全記事一覧

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 (出所:防衛省HP「2016年の北朝鮮によるミサイル発射について」)

  北朝鮮が日米首脳会談に合わせて弾道ミサイルを日本海に向けて発射しました。

 防衛省によれば、北朝鮮東岸から新型の弾道ミサイルが高度約500kmを飛び、北東にある日本の排他的経済水域(EEZ)の外側の日本海上に落下しました(韓国軍は高度550km、飛行距離は500kmと見ている)。

 これに対して、安倍首相とトランプ大統領は日本時間で12日の昼に記者会見し、北朝鮮を批判しました。
 産経ニュース(2/12)によれば、トランプ大統領は「米国は、偉大な同盟国である日本と100パーセントともにある」と発言。安倍首相も「北朝鮮のミサイル発射は断じて容認できない。北朝鮮は国連決議を完全に順守すべきだ」と述べ、日米同盟を強化していくと訴えました(トランプ大統領「常に同盟国の日本を100%支持」 日米首脳が共同記者会見 安倍首相は「日米同盟の緊密化で完全に一致」)。

 今回は、この北朝鮮問題について考えてみます。

※追記:トランプ大統領は23日にロイター通信のインタビューに応じ、北朝鮮のミサイル開発を批判。

「非常に危険であり、何年も前に対処されるべきだった」「非常に受け入れ難い。そして日本にとっては、とても不当な状況だ」。日韓のミサイル防衛システムに関しては「それ以上の話をしている。今後何が起きるか分かるだろう」「ミサイル防衛は対処し得る多くの問題の一つだ」と述べました(ロイター「トランプ米大統領、インタビューでの主な発言」2017/2/24)。

 2月12日の弾道ミサイル発射の詳細

 まず、防衛省の発表を見てみます。第一報では詳細な情報がないので、第二報を見てみます。

防衛省・自衛隊:北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報)」(2/12)によればミサイルの発射時間は12日の「7時55分頃」で北朝鮮は「西岸の亀城(クソン)付近から、1発の弾道ミサイルを東方向に発射」したようです。この文書では「発射された弾道ミサイルは、約500㎞飛翔し、北朝鮮東岸から東に約350㎞の日本海上に落下したものと推定されます」と発表し、防衛大臣が「引き続き、情報収集・警戒監視に万全を期せ」との指示を出し、「関係幹部会議を開催するなど」警戒態勢を敷いたことが強調されています。

 NHKニュースWEBの記事では菅官房長官や岸田外相が国連安保理決議違反だと批判したことを報じ、政府関係者が中距離弾道ミサイルの「ノドンだと推測していることを紹介していました。

 政府関係者によりますと、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられ、「ロフテッド軌道」と呼ばれる、通常より高度を高く取り、わざと飛距離を出さないようにした可能性があるということで、防衛省などで詳しい分析を急いでいるということです。ロフテッド軌道は、通常より高度を高く取り、意図的に飛距離を出さないように発射するためのものです。

(「北朝鮮から弾道ミサイル発射 官房長官 “厳重に抗議”」2/12)

 ただ、同記事によれば、稲田防衛相はミサイルの軌道に関しては「いま、専門家が分析しているが、去年6月に発射された弾道ミサイルのような1000キロメートルを超えるような特異な高度ではなかった」と述べています。

 発射翌日の読売新聞(夕刊1面:2017/2/13)は、北朝鮮の朝鮮中央通信は新型の地対地中距離弾道ミサイル「北極星2型」の試験発射を行ったと発表し、これは「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を地上配備型ミサイルに改良したものだ」と説明したことを報じました。韓国軍は固体燃料を用いたミサイルだとみていることも紹介しています。

 弾道ミサイルには液体燃料を用いる場合と固体燃料を用いる場合の二通りがありますが、液体燃料推進方式のミサイルは発射までに時間がかかるのに対して、固体燃料推進方式のミサイルは短期間で発射が可能です。簡潔に言えば、固体燃料を用いるミサイルは、液体をコトコトと充填する必要がないので、短時間で撃てるわけです。

 今までの北朝鮮の弾道ミサイルは、みな液体燃料推進方式だったので、今回の実験の成功は、同国のミサイル戦力がもう一段強化される兆しだと言えます。固体燃料推進方式のミサイルが増え、それが移動式発射台から撃てるようになれば、米国軍や韓国軍が北朝鮮がミサイル発射前に先制攻撃でそれを抑止することが難しくなるからです。

 その意味で、今回のミサイル発射実験には、看過できない危険性があるのです。

核実験とミサイル実験を繰り返す北朝鮮

 過去を振り返れば、2016年の9月9日には9時半(日本時間)ごろ、北朝鮮北東部の豊渓里(ブンゲリ)付近でマグニチュード5.3の人工地震波が検知され、北朝鮮が行った核実験により、大騒ぎになりました。

 同年1月6日に核実験が行われた場所の近くから震源ゼロの地震波が来たので(地震は地表から10~20kmほど下で起きることが多い)核実験が行われたことが分かったわけです。

 日本は抗議と制裁強化を行い、米国や韓国等と協調して対処する方針を固めたのですが、この時点ですでに北朝鮮の核実験は五回目です。過去の経緯を見ると、北朝鮮は2003年1月に NPT脱退を宣言し、06年10月に第一回目の地下核実験を行いました(同年7月に長距離弾道ミサイルを発射)。

 そして、09年5月に二回目の核実験(5月に長距離弾道ミサイル発射)。
 13年2月に三回目の核実験を行っています(12年12月に長距離弾道ミサイル発射実験に成功)。

 ミサイル発射実験のほうは、もはや覚えきれないほど繰り返されています。

2016年のミサイル発射実験

 2016年の2月7日には北朝鮮は「人工衛星」と称する弾道ミサイルを東倉里から発射しました。この時、防衛省・自衛隊は弾道ミサイル等に対する破壊措置(自衛隊法第82条の3)を発令。スタンダード・ミサイル(SM-3)を搭載した護衛艦や、ペトリオット・ミサイル(PAC-3)を配備した高射部隊、航空警戒管制部隊などを展開させています。
 これを皮切りに、その後、北朝鮮は2016年に以下のミサイル実験を繰り返しています。

 もはや数が多すぎて覚えられないのですが、日本を狙うミサイルは、射程距離が1300kmのノドンミサイルです。この射程距離は、だいたい、日本全土がすっぽり入るぐらいの長さに相当し、過去に報道された数で言えば、北朝鮮は200発~350発ほど保有していると見られています(主に短距離弾道ミサイルのスカッドは韓国向け。射程を遠めにとれば九州や中国地方等も狙うことは可能)。

  • 3月10日:西岸・南浦から短距離弾道ミサイル一発を東北東に発射(飛翔距離:500㎞、日本海上に落下)。
  • 3月18日:西岸・粛川から「ノドン」を発射(飛翔距離:800㎞)
  • 4月15日:準中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射し、空中爆発。
  • 4月23日:潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射(飛翔距離は約30km)。
  • 4月28日:ムスダンを二発発射。いずれも失敗。
  • 5月31日:ムスダン発射。移動式発射台の上で爆発。
  • 6月22日:ムスダン発射。一発は400kmの飛行。もう一発は空中で爆発
  • 7月19日:北朝鮮西岸の黄州(ファンジュ)付近から3発の弾道ミサイルを北東に発射(飛翔距離:1発目が400km、2発目は500km 日本海上に落下。もう一発は確認できていない)
  • 8月3日:北朝鮮西岸の殷栗(ウンニュル)付近からノドンを二発発射(飛翔距離:約1000km飛翔 日本海上の排他的経済水域内に落下。もう一発は発射後に爆発)
  • 8月24日:北朝鮮東岸の新浦(シンポ)付近から潜水艦発射弾道ミサイル(一発)を東北東に発射。(飛翔距離:500km 日本海上に落下)。
  • 9月5日:北朝鮮西岸黄州(ファンジュ)付近から3発の弾道ミサイルを東北東に発射(飛翔距離:1000km飛翔 日本海上の排他的経済水域内に落下。スカッドまたはノドンと見られる)
  • 10月15日/10月20日:ムスダンの実験を行うが成功せず。 

 このミサイルは液体燃料を用いるので、すぐに撃てないと言われてきたのですが、近年では液体燃料を充填したままにするなどして即時発射が可能になるように改良を進めているとも言われています。発射台は移動式なので、探知が難しい山間部などに設置されると、発射前に全て破壊するのは米軍でも難しいようです。

 いずれにせよ、北朝鮮の核ミサイル開発は進展しているので、日本と韓国、米軍は「今そこにある危機」への対策を考えざるをえなくなったと言えます。

実験の失敗を恐れない金正雲政権は要注意

 金正日政権の頃は実験の失敗が権威の低下につながることを恐れたのか、慎重に準備を重ねて実験をしていましたが、若い金正雲政権になってからは、失敗を恐れず、何度も実験を繰り返すことで「成功」させるというスタイルに変わってきています。

 12年12月の長距離弾道ミサイルが成功するまでにも失敗はありましたし、本年の潜水艦からの弾道ミサイル発射の成功も、前回の失敗に懲りずに実験を繰り返すことで獲得した成果です。

 失敗を恐れない金正雲政権の下で、核実験が繰り返されれば、核ミサイル開発が最終段階に到る日もさほど遠くないのではないかと危惧されています。

 核ミサイルに核兵器を搭載する場合は、弾頭の小型化が必要ですが、これに関しては前回の核実験でかなり精度が上がったと言われており、あとは、大気圏外に出た弾頭を大気圏内に再突入させる技術をどうクリアするかが残っているのですが、この「壁」が突破されるのも、時間の問題なのかもしれません。