トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

【日米首脳会談】安倍首相との朝食会にCEOが参加した企業はどこ? 

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(ホワイトハウス。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  安倍首相とトランプ大統領のゴルフ会談が注目を集めています。

 1月には「TPP永久離脱」に始まり、トランプ氏から「日米の自動車貿易は不公正だ」「日本は円安誘導している」等、批判的な発言が飛び出したので、訪米時の会談の行方が不安視されていました。

 しかし、日米記者会見や共同声明でトランプ氏が同盟重視路線を打ち出し、ゴルフを共にする中で日米関係の親密さが世界にPRされることになりました。

 日米首脳がゴルフを共にしたのは岸信介首相とアイゼンハワー大統領の時以来。トランプ氏も嬉しそうな論調でツィッターに安倍首相と随行団をホワイトハウスの夕食会で歓待したことや、安倍首相とゴルフを楽しんだこと等を書き込んでいました。二人は日本時間での12日正午から27ホールもの長丁場をこなしたようです。

 昭恵夫人もメラニア夫人と日本文化を紹介する博物館や日本庭園を訪れ、共に好印象で訪米を終え、政治的にも実り多い会談となったので、日本側には安堵感が広がっています。

 前回は記者会見の中身に焦点をあてましたが、今回は、今までの記事でスルーしたトピックを見てみましょう。

安倍首相との朝食会に参加した大手米国企業はどこ?

 日米首脳会談に伴い、気になるのはアメリカの大手企業の動きです。

 外務省HPでは「全米商工会議所・米日経済協議会共催朝食会で挨拶する安倍総理大臣」(2/10)と題した記事が公開され、そこに出席した議員と企業CEOの名が列挙されていました。

 この朝食会で安倍総理は「今次訪米では,首脳同士の信頼関係をしっかり構築するとともに,揺るぎない日米同盟を内外にはっきりと示したい」と挨拶し、日米の経済協力を進める方針を示しています。

 出席した議員の名を見ると、超党派の顔ぶれになっています。

  • ナンシー・ペローシ 下院民主党院内総務(民主党・カリフォルニア)
  • ジョン・マケイン 上院議員(共和党・アリゾナ)
  • マリア・キャントウェル 上院議員(民主党・ワシントン)
  • メイジー・ヒロノ 上院議員(民主党・ハワイ)
  • デブ・フィッシャー 上院議員(共和党・ネブラスカ)
  • コリー・ガードナー 上院議員(共和党・コロラド)
  • ダン・サリバン 上院議員(共和党・アラスカ)
  • トッド・ヤング 上院議員(共和党・インディアナ)

 そのほか、トーマス・ドナヒュー(全米商工会議所会頭)、タミー・オバビー(全米商工会議所上級副会頭)、ジェイ・サップスフォード (米日経済協議会事務局長)、チャック・ロビンス(米日経済協議会会長/シスコシステムズCEO)の四氏を筆頭にして、以下の企業の経営者が安倍首相と朝食をともにしています。

  • ラスベガスサンズ(カジノリゾート)
  • ボーイングインターナショナル(航空・防衛)
  • ファイザー(医薬品)
  • フェデックス(物流)
  • シーザーズエンターテインメント(カジノホテルチェーン)
  • ジョンソンエンドジョンソン(ヘルスケア)
  • ダウ・ケミカル(化学)
  • ロッキード・マーティン(防衛)
  • セルジーン(医薬品)
  • MGMリゾーツ(リゾート)
  • モルガンスタンレー(金融)
  • ノース・イースト・マグレブ(高速鉄道)
  • プルデンシャル・ファイナンシャル(保険)
  • シェブロン(石油)

 この中には、日米同盟強化に伴う政策に直結する企業が目につきます。

 特に代表的なのは、F35戦闘攻撃機(空戦だけでなく、対地・対艦攻撃もこなすステルス型多用途機)の生産に関わるロッキード・マーティン(LMT)社です。

 F35の国際共同開発には多くの企業がかかわっていますが、LMTが最大の引受企業になっています。そのため、昨年の各国へのPRはLMT社が主催していました。F35の日本への輸出は同盟強化の具体策そのものなので、LMT社のCEO(マリリン・ヒューソン氏。女性のCEOです)が朝食会に参加しているわけです。

 防衛系ではボーイングも顔を出しているので、他の装備品や民間航空機の面でも、今後、日米間で新しい動きが出てくるのかもしれません。

 そのほか、気になるのはノース・イースト・マグレブ会長兼CEOです。ここはトランプ氏が評価し、安倍首相が売り込みたい日本の高速鉄道の建設に関わる企業だからです(ノースイースト・マグレブは、米国北東部にリニア高速鉄道建設を目指す企業として2013年に設立されました)。

 日米同盟強化の課題にはエネルギー関連の日米協力も含まれているので、シェブロン社も入っているのでしょう。

 全体的には金融系企業と医療系企業が多いことが気になります。

 カジノやリゾート系大手が並んでいるのは、日本のカジノ解禁に合わせて進出を検討していることを示唆しているようにも思えます。

今後、対日交渉の実務を担う米閣僚は誰?

 安倍首相とトランプ大統領の会談では、具体的な実務に関しては、麻生副総理とペンス副大統領のそれぞれをトップとして経済問題の議論を行う「日米経済対話」の新設が決まりました。

 この経済対話では、1)財政や金融等のマクロ経済政策の連携、2)インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙等の領域での協力、3)二国間貿易に関する枠組みが議論される見込みです。

 これを持ちかけた日本側は、外交・安全保障分野の議論と経済・通商分野の議論を分離させることを狙っており、アメリカ側にはTPPに替わる二国間の貿易協定をつくりたいという思惑があります。

 安倍政権とトランプ政権では、自動車や自由貿易、為替についての立場の相違がありますが、今回は対話の枠組みが必要であることで一致し、トランプ政権が上院での閣僚承認を終え、本格発足して以降の次回の対話で、個別具体的な対話が本格化していく運びとなったわけです。

麻生副総理兼財務大臣とペンス米国副大統領との会談」(2月11日)によれば、麻生副総理はペンス氏に「日本企業の投資誘致をはじめ,これまで日米関係の強化に取り組んできたことに謝意」を表明し、日米経済協力の促進を訴えています。

 ペンス副大統領は「日本は最も緊密な同盟国であり,経済,安全保障,文化等の諸側面で結びつきを深めていきたい」「貿易・投資面での高い水準のルールを支持しており,双方が成長していくための環境条件を整えていくことが重要である」等と述べていました。

 2月12日付の産経ニュース(「麻生-ペンス」ナンバー2対話、トランプ大統領に決断促したのは安倍晋三首相だった)では、この対話は10日当日に決まったとも報じられています。

 トランプ米大統領に経済と安全保障を「取引」させないために、対話の枠組みを「オファー」したのは日本側だった。しかし、具体的に誰をトップに据えるかで調整は難航した。

 米側では当初、経済と日本事情に精通するウィルバー・ロス商務長官や、米国家通商会議のピーター・ナバロ委員長の名前が浮上していたとされる。財務、外務両省幹部がワシントンに乗り込み協議を続けたが、米側は政権発足から日も浅く、閣僚たちも全員が議会の承認を得たわけではなかった。

(略)

 安倍首相「こちらは麻生副総理にお願いしたいと思っているのですが」

 麻生氏のカウンターパートとなるのはペンス副大統領だ。トランプ氏はすぐに応じた。

 トランプ氏「では、あなたにお願いしたい」

 ペンス氏「そういう仕事をするのは大変光栄だ…」

 ただ、ペンス氏はこう付け加えた。「光栄だが、わたしはその方面であまり経験がないから…」

(ワシントン佐々木美恵)

 あまり「その方面で経験がない」担当者が出てきたことで、日本側が得をしたのかもしれませんが、 ロス氏が商務長官として上院で承認された後は、違った展開が出てくる可能性もあります。

 トランプ政権では、誰が最大の影響力を発揮するのかが分かりにくいので、日本側は、今後、対日交渉を担うのが、ペンス氏になるのか、ナバロ氏になるのか、ロス氏になるのかをしっかりとウォッチングする必要があります。

 最後に、日米共同声明の要旨を確認しておきましょう。

共同声明の主内容:同盟維持と二国間の経済対話の開始

 日米共同声明の中身は、安倍首相とトランプ大統領の記者会見で出てきた内容とほぼ同じです。要するに、トランプ氏が同盟重視の路線に舵を切り、日米の経済協力を進めることと、二国間の経済対話を始めることがまとまったのです。

 以下、要旨を見てみます。

 揺らぐことのない日米同盟はアジア太平洋地域における平和,繁栄及び自由の礎である。核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない。アジア太平洋地域において厳しさを増す安全保障環境の中で,米国は地域におけるプレゼンスを強化し,日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす。日米両国は,2015年の「日米防衛協力のための指針」で示されたように,引き続き防衛協力を実施し,拡大する。

 ここでは、オバマ政権の頃に変わった日米同盟の仕組みがトランプ政権下でも継続されることを確認しています。大統領選での過激路線が、同盟を維持できる範囲にまで封印されたわけです。

 そして、具体的には米軍再編に関して、普天間飛行場の移設先が辺野古しかないことが強調され、尖閣防衛が明記されました。

両首脳は,日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は,同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。

  東シナ海や南シナ海での中国の海洋進出に対しても、「航行の自由」を守ることがうたわれています。

日米両国は,東シナ海の平和と安定を確保するための協力を深める。両首脳は,航行及び上空飛行並びにその他の適法な海洋の利用の自由を含む国際法に基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調した。日米両国は,威嚇,強制又は力によって海洋に関する権利を主張しようとするいかなる試みにも反対する。日米両国はまた,関係国に対し,拠点の軍事化を含め,南シナ海における緊張を高め得る行動を避け,国際法に従って行動することを求める。

 北朝鮮に核ミサイル開発の放棄を要求し、拉致問題の早期解決も明記しましたが、力点が特におかれているのは対中国のメッセージです。

 トランプ政権は日米首脳会談前に「一つの中国」を認め、習主席との電話会談を行いましたが、日米同盟強化の路線を打ち出したことは、最大の貿易赤字国である中国との交渉を有利に進めるための牽制でもあったはずです(トランプ政権から見れば、習主席との対話は日本への牽制、日米首脳会談は中国への牽制に相当する)。

 防衛面での技術協力、宇宙・サイバー領域での協力、対テロ活動での協力、日米安全保障協議委員会(SCC:「2+2」)の開催等も声明に挙げられています。

 経済面を見ると、総論的な内容が多いので、具体論の展開は次回以降の経済対話次第になりそうです。

総理及び大統領は,国内及び世界の経済需要を強化するために相互補完的な財政,金融及び構造政策という3本の矢のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認した。

 特に重要なのは日米の二国間の枠組みの議論を行うと明記されたことです。

米国が環太平洋パートナーシップ(TPP)から離脱した点に留意し,両首脳は,これらの共有された目的を達成するための最善の方法を探求することを誓約した。これには,日米間で二国間の枠組みに関して議論を行うこと,また,日本が既存のイニシアティブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含む。

 訪米前に安倍首相はトランプ大統領にTPPの意義を説得するとも述べましたが、実際のところ、それは不可能な話なので、公になった発言を見る限り、そこはさほど強調点にはなっていません。

 共同声明に盛り込まれた「二国間の枠組み」は、米側から見れば、二国間交渉のキックオフと取れるフレーズです。

 今回、トランプ氏は「米国人は日本車が好き」「メイド・イン・USA(米国産)の日本車がベストで、そうなるよう期待したい」と可能な範囲でリップサービスをしていましたが、日本側の随行団の一員は、会談後に米政府高官に「次からは、こんなに甘くないからな」とも言われたことが報じられています(読売朝刊3面:2017/2/12)。

 こうしてみると、トランプ政権側は日本から二国間交渉開始の言質を取り、安倍政権側は米国から尖閣防衛の確約を取り付けたと言えるのかもしれません。