読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

トランプ氏、日米首脳会談前に新幹線を評価。安倍首相に売込みのチャンス?

国際 トランプ政権2017 経済 全記事一覧 安倍政権(外交)

f:id:minamiblog:20161005072636j:plain

(大統領専用機。出所WIKIパブリックドメイン画像)

  日米首脳会談を前にして、トランプ氏が航空大手企業との会合の席でアメリカの交通インフラの整備を急ぐ方針を明らかにしました(米国時間8日/日本では9日)。

 「日本や中国にはいたるところに高速鉄道があるが、米国にはない」と述べ、「時代遅れ」になった航空インフラの整備や経営を助けるための規制緩和、そして、大規模な減税政策(2~3週間以内に発表)する以降を示したのです(産経ニュース「トランプ氏が新幹線を評価 米国でも交通インフラの整備急ぐ意向」2017/2/10)

 これは日米首脳会談を視野に入れた発言とも取れます。

 安倍首相が提案する日米経済協力のプランの中には、アメリカの交通インフラへの投資も含まれているからです。

 今回は、首脳会談前に飛び出した航空インフラと交通インフラについてのトランプ氏の発言などを見てみます。

トランプ氏は交通インフラの劣化を問題視

 トランプ氏は選挙期間中から、アメリカの航空インフラの劣化を問題視していました。2月8日の航空大手との会合を報じたロイター記事(2/8)では、その背景として、2016年の選挙時の同氏の発言を紹介していました。

「我々の空港は第三世界の空港のようだ(略)ドバイやカタールから来て、ラガルディア空港、ケネディ空港、ロサンゼルス空港、ニューアーク空港で降りて見たら分かる。中国から来ても、あなたは信じがたい光景を見る。これらの信じがたい空港があなたの国の空港なのだ。我々は第三世界の国になってしまった」

"Our airports are like from a third world country・・・You land at LaGuardia, you land at Kennedy, you land at LAX, you land at Newark, and you come in from Dubai and Qatar and you see these incredible — you come in from China, you see these incredible airports, and you land — we’ve become a third world country."

(”Trump, aviation executives to discuss infrastructure Thursday”Wed Feb 8, 2017 )

  選挙期間中なので、激しい口調ですが、従来の問題意識が2月8日の航空大手との会合で新政権の政策に反映されることになりました。

 ブルームバーグの記事(2/9)では、8日の会合でのトランプ氏の発言が報じられています。トランプ大統領は外国の航空企業が政府の補助を受け、米国企業が不利な立場に立たされていると見て、アメリカの航空企業を助ける意向を明らかにしています。

トランプはわが国の交通インフラには大幅な改革が必要だとも述べた。

Trump also said much of the nation’s transportation infrastructure needed significant improvements.

「我々が持っている航空のシステムは時代遅れだ。電車も時代遅れだ。空港も時代遅れだ。道路もひどい」「我々はその全てを変えるつもりだ」

“We have an obsolete plane system, we have obsolete trains, we have obsolete airports, we have bad roads,” he said. “And we’re going to change all that.”

彼は航空管制システムについても「時代遅れだ」と述べた。

He also called the air-traffic control system “outdated.”

ゲーリー・ケリー氏(サウスウェストエアライン社CEO)は、デルタ社を除く航空大手を支援することで、そのシステムを改善することを促した。

Southwest Airlines Co. Chief Executive Officer Gary Kelly urged the government to get out of the system, a position supported by most major airlines except Delta.

(※デルタ社が除かれているのは同社CEOがトランプ氏の米国中心の雇用創造策と補助の約束に反対し、今後5年間でグローバルに25000人の雇用する計画を明らかにしたためと思われる。記事前段では”Delta Chief Executive Officer Ed Bastian suggested a connection between opposition to alleged subsidies and Trump’s focus on job creation in the U.S”とあり、CEOが.“At Delta, we plan to hire 25,000 people over the next five years with the support of a level playing field globally,”とも発言している)

トランプ氏との対話はインフラ投資と規制の問題に焦点が当てられていた。ゲーリー・ケリー氏(サウスウェストエアライン社CEO)は「全般的に必要なのは税の負担を減らすことだ。特に航空の領域において」ともブルームバーグのテレビ番組で述べた。

The conversation with Trump was focused on infrastructure investment, regulation and “the overall need to reduce the tax burden, and especially for aviation,” Kelly told Bloomberg Television.

トランプ氏は大規模な支援を約束した。

Trump promised broad-based help on those fronts.

(航空大手経営者に対して)「あなたがたは、皆と同じように規制されている」「我々は2~3週間の間に、税制に関する発表を行うが、それは驚異的な内容になる。我々の航空インフラを発展させるのだ」

“You people are regulated probably as much as anybody,” he told the executives. “We’re going to be announcing something I would say over the two or three weeks that will be phenomenal in terms of tax and developing our aviation infrastructure.”

”Trump Pledges Airlines Help in Feud Over Foreign Rivals’ Aid”  by Mary Schlangenstein and Toluse Olorunnipa 2017/2/9

  イスラム系の7カ国からの入国禁止措置は空港や航空系企業にはマイナスに働くので、トランプ氏は、インフラ投資を強調することで挽回を計ったのかもしれません。

 航空はアメリカが高い競争力を持つ分野なので、このあたりにテコ入れを図り、雇用を促進したいと考えているのでしょう。

安倍首相は米高速鉄道計画への協力を提案?

 トランプ氏は、米国の交通インフラの劣化を問題視していますが、これに対して、安倍政権はアメリカの高速鉄道計画の投資で協力できると見ているようです。

 可能性のある計画を四つほど紹介してみます。

ダラスーヒューストン間の高速鉄道

 Qテレニュース(「安倍首相が提案 米・高速鉄道計画への投資」2017/2/9)では、以下のように報じています。

 アメリカ・テキサス州で計画が進められている高速鉄道プロジェクト。首脳会談で安倍首相が協力を表明するひとつとみられている。

 プロジェクトを進める地元企業に展示されていたのは、日本の新幹線の模型。早ければ来年にも着工し、ダラスとヒューストンの間約390キロを1時間半で結ぶ計画。

 高速鉄道の事業主体、トラビス・ケリー氏「高速鉄道プロジェクトは多くの雇用を生み、トランプ政権の主張と合致する」

 企業は、この計画で新たに4万人以上の雇用が生まれると試算。地元ダラス市も日米首脳会談での後押しに期待を寄せている。

 ダラス市、ウィルソン副市長「安倍首相がトランプ大統領に売り込み、高速鉄道が必要だと納得させてほしい」

  この記事は、1.3兆円以上の建設費はまだ1割ぐらいしか集まっていないことも指摘しています。

 それ以外の日本の取組みを見ると、オバマ政権の頃から、以下の3点が進められていました。

  • ワシントン DC~ボルティモア間の超電導リニア計画
  • カリフォルニア高速鉄道計画
  • テキサス高速鉄道計画

 これに関しては「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」(平成28年3月)の中で説明されています。

ワシントン DC~ボルティモア間の超電導リニア計画

「将来における米国北東回廊(ワシントン DC~ニューヨーク)の高速鉄道計画の先行事業として、安倍総理からオバマ大統領(※当時)に対し直接提案している」

「2015 年6月のホーガン・メリーランド州知事、同年 11 月のフォックス運輸長官による超電導リニアの試乗を始め、ハイレベルの米国関係者に対し強力な働きかけを行ってきている。本計画については、同年 11 月にメリーランド州による MDP(Maglev Deployment Program)補助金申請(最大約 2,800 万ドル)が米国運輸省に認可され、我が国も 2016 年度概算決定に所要の調査費を計上した」

カリフォルニア高速鉄道計画

「オバマ政権発足時に策定された全米高速鉄道構想に基づき、カリフォルニア州政府が主体となってサンフランシスコ~アナハイム間など延長約 840キロメートルにわたる高速鉄道網を整備する」

「2015 年1月から一部区間で工事に着手している。我が国としても、2015 年4月の総理訪米の際にカリフォルニア州知事にトップセールスを行うとともに、その際、サンフランシスコにおいて高速鉄道フォーラムを開催するなど、近年中に見込まれる車両・信号設備等の入札を見据え、ドイツ勢、中国勢などが競合相手となっている中、我が国の新幹線技術の導入に向けた働きかけを強化している」

テキサス高速鉄道計画

(この計画は)「将来的に大きな交通需要が見込まれるテキサス州ダラス~ヒューストン間約 385 キロメートルの区間に、米国民間企業が我が国新幹線技術による高速鉄道を整備するものであり、その実現を後押しするため、2015 年 11 月に海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が事業への参画を決定し、米国民間企業に対して 4,000 万ドルの出資を行ったところである。2022 年の開業目標へ向け、更に事業推進を支援していく」

 ・・・

 よくよく考えて見れば、日本は中国の高速鉄道計画に協力したのに、同盟国のアメリカとの高速鉄道計画の協力のほうは、さほど進展していません。

 このあたりは、まだ進める余地が残っているので、日米首脳会談ではうってつけの話題となるのではないでしょうか。

日本は航空インフラで海外展開できるのか?

 日本の新幹線技術は海外展開のテーマでよく話題にのぼりますが、航空インフラのほうは、どの程度の可能性があるのでしょうか。

 これに関して、国土交通省航空局は「航空分野におけるインフラ海外展開について」(平成26年2月3日)という資料を公開していました。

 そこでは「我が国には、製品・サービスを高品質で確実に提供し、運用する高度な技術・ノウハウがある」が、「他国と比較すると、総合的な受注体制、価格競争、機動的な資金需要への対応等で、遅れをとっている」とも述べられ、強みと弱みが以下のように比較されています。

【日本の航空インフラの強み】

  •  空港建設を高品質で提供し、納期を遵守する施工管理
  •  高度な空港運用・維持管理ノウハウの蓄積、利用者利便や快適性を追求したターミナル運営
  •  効率的な空域・空港運用を支える航空管制システムの提供

【日本の航空インフラの弱み】

  • 相手国の需要に的確に対応できる、空港の計画・建設・運営や管制機能を含む総合的な受注、サービス提供の体制
  • 価格面での競争への対応、資金需要に機動的に対応する多様な金融手法の提供、発注者の立場で基本計画、入札仕様書等を作成する実務的な対応

 ・・・

 前掲の「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」を見ると、航空インフラの海外展開はアジア諸国に力点が置かれていました。アジア開発銀行の円借款等も含めて航空インフラの建設を進める構想です。

 日本の交通インフラの中では、やはり、新幹線に代表される高速鉄道の部門が高い競争力を持っているので、日米間のインフラ市場で協力を進める際には高速鉄道の分野のほうが優先されそうです。

 トランプ氏はアメリカの空港の航空管制システムがまずいと言っているので、前掲資料の日本の強みにあげられた「効率的な空域・空港運用を支える航空管制システムの提供」が、アメリカの需要に合うかどうかも気になる所です。

追記:安倍首相は訪米時に記者会見で新幹線の有効性をアピール

 記者会見の席で、安倍首相は以下のように新幹線をPRしています(英文の出所はホワイトハウスHP)。

 以下、英和対訳します。

トランプ大統領の指導力により、私は、高速鉄道を含めた大規模なインフラ投資がなされると確信しています。

With President Trump taking on the leadership, I'm sure there will be -- major-scale infrastructure investment will be made, including the fast-speed train.

日本の新幹線に乗った経験のある方がいれば、その速度や快適さ、安全性が分かると思います。

Those of you who have rode on the Japanese Shinkansen, I'm sure you would appreciate the speed, the comfort and safety with the latest maglev technology.

リニア鉄道技術をもってすれば、トランプタワーが立つニューヨークからワシントンDCまで1時間で移動できます。

From Washington, D.C. to New York, where Trump Tower exists, only one hour would it take if you ride the maglev train from Washington, D.C. to New York.

我が国は最高度の技術をもってトランプ政権の成長戦略に貢献できるのです。

Japan, with our high level of technical capability, we will be able to contribute to President Trump's growth strategy.

  トランプ氏が日本の新幹線導入を受入れれば、日米経済協力に弾みがつきそうです。 

 【スポンサーリンク】