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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

マティス国防長官訪韓、潘基文氏大統領選不出馬、どうなる韓国・・・

国際 朝鮮半島 トランプ政権2017 全記事一覧

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(大統領府の遠景:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  マティス国防長官が2月2日から3日までの日程で訪韓し、韓国の韓民求(ハンミング)国防相と会談します。そして、朴大統領を代行する黄教安(ファンギョアン)首相への表敬訪問も行われる予定です。

(マティス国防大臣の情報は当ブログでも12/13記事で整理しています)。

 会談のテーマは北朝鮮問題への協議や韓米同盟のあり方等だとみられていますが、現在の韓国は大統領が弾劾裁判の真っ最中であり、政府が機能不全に陥っています。

 そして、潘基文氏が大統領選に不出馬を電撃表明・・・。

 今回は、最近の米韓関係を時系列で追ってみます。

韓国副総理の訪米をシカトしたトランプ政権

 まず、トランプ政権発足前の1月前半に韓国の柳一鎬(ユ・イルホ)経済副総理が訪米したのですが、その時、同政権は柳副総理を無視してしまいました。

 この件がZAKZAKニュース(2017/1/24)で報じられています。

 柳一鎬(ユ・イルホ)経済副総理が先々週、トランプ次期政権(当時)と接触するためニューヨークを訪れたが、トランプ氏側は上院などの聴聞会を理由に、面会を断ったという。

 中央日報は19日(日本語版)で、「世界10位経済大国、同盟国の副首相がこういう『無接待』を受けても『自分で罰を受ける』式に尻尾を丸めて帰ってこなくてはならなかったのか、残念さが残る」「どうせなら最初から行くべきではなかった」と酷評した。

 これだけではない。「親北派」の暴漢に襲撃され、顔に約80針も縫う大けがを負いながらも、親韓派で通したマーク・リッパート前駐韓米国大使の後任が決まっていないという。

 東亜日報は7日(同)、「(トランプ氏は)新しい駐韓米国大使の指名を就任後に先送りした」「韓国国内の政治状況を考慮したためだ」「すでに新任大使を指名した中国と日本に比べて韓国に対する関心が小さいことを示す事例という指摘もある」との懸念を伝えた。

(「トランプ政権が韓国軽視 訪米の副総理“無視”、駐韓大使指名先送り… メディア懸念「中国と日本に比べ関心小さい事を示す事例」

 要するに、機能不全国とみなされてしまったのですが、トランプ大統領は正式就任後に黄首相に電話をかけています。 

 以下、大統領府のプレスリリースを英和対訳で紹介してみます。

(出所:Readout of the President's Call with Acting President HWANG KYO-AHN OF THE REPUBLIC OF KOREA | whitehouse.gov

韓国首相(大統領代行)とトランプ大統領との電話会談

READOUT OF THE PRESIDENT’S CALL WITH ACTING PRESIDENT HWANG KYO-AHN OF THE REPUBLIC OF KOREA (January 29, 2017)

韓国の黄教安大統領代行との電話会談(2017/1/29)

President Trump and Acting President Hwang Kyo-Ahn of the Republic of Korea (ROK) spoke by telephone today.

トランプ大統領と黄教安大統領代行は今日、電話会談を行った。

Acting President Hwang congratulated the President on his inauguration.

大統領代行はトランプ大統領の就任に祝意を示した。

The two discussed the importance of the U.S.-ROK alliance.

二人は米韓同盟の重要性について議論した。

President Trump reiterated our ironclad commitment to defend the ROK, including through the provision of extended deterrence, using the full range of military capabilities. The two leaders agreed to take steps to strengthen joint defense capabilities to defend against the North Korean threat.

トランプ大統領は、全範囲の軍事的能力を通して韓国防衛の確約を繰り返し伝えた。

(※our ironclad commitment:亀甲張りの固い約束)

They also discussed Secretary of Defense Mattis's upcoming visit to the ROK, noting that it reflects the close friendship between our two countries and demonstrates the importance of the U.S.-ROK alliance.

彼らは二か国の親密な友情と米韓同盟の重要性を繰り返し、来るべきマティス国防長官の訪韓についても議論した。

They pledged to advance mutual security and prosperity.

彼らは相互防衛と繁栄の中での前進を誓約した。

Finally, President Trump wished Acting President Hwang and the South Korean people a prosperous and happy lunar new year.

最後に、トランプ大統領は大統領代行と韓国の人民の繁栄とよき年の始まりを祈念した。

次期大統領選の行方は不透明に 潘氏大統領選不出馬

 弾劾裁判の真っ最中の朴大統領は春頃に辞任する可能性が高いので、韓国では、トランプ大統領に応対する次期大統領が誰になるかが大問題になっています。

 しかし、政界の混迷を理由に、元国連事務総長の潘基文氏は大統領選への不出馬を宣言しました。

 以下、産経ニュースの記事(2017.2.1)です。

【ソウル=名村隆寛】韓国の次期大統領選の有力候補だった潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長が、電撃的に大統領選への不出馬を宣言した。潘氏は昨年12月、国連事務総長の退任直前、大統領選への出馬の意欲を示した。1月12日に帰国した際も、「分裂した国を一つにするのに身をささげる」と事実上、出馬表明をした。誰の目にも「やる気満々」(ソウルの外交筋)に映ったが、帰国後3週間足らずでの不出馬表明で語ったのは、韓国に対する強い失望感だった。

 「旧態依然の政界の偏狭で利己的な態度」「人格殺害に近い陰謀とさまざまな嘘のニュースで政治交代の名分がなくなった」「個人と家族、10年間務めた国連の名誉を傷つけた」。言葉と表情には韓国の現実への嫌気が露骨に表れていた。

(「大統領選不出馬の潘基文氏、韓国の現実に強い嫌気 最大野党の文在寅氏さらに有利に」) 

 潘氏の不出馬で有利になるのは「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)氏です。

 ほかには安哲秀(アン・チョルス)氏(野党「国民の党」前共同代表)、李在明(イ・ジェミョン)氏(京畿道城南市長)が有力視されていますが、支持率で見ると、やはり、文氏が優勢であるようです。

 聯合ニュースの日本語版(1/23)では「韓国の世論調査会社リアルメーターが23日に発表した次期大統領選有力候補の支持率調査で、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が前週より3.0ポイント上昇の29.1%となり、1位を守った」と報じています。

 この調査では2位の潘氏の支持率は19.8%しかありませんでした。

 潘氏は不出馬宣言であれこれ韓国政治に文句を言っていますが、結局、支持率の伸びが見込めないと判断したことが本当の理由なのでしょう。

親米的な有力候補不在の韓国大統領選 訪韓するマティス氏の反応は?

 今のままだと文在寅氏が次期大統領になる可能性が高いのですが、この人は2000年代前半に反米親北外交を展開したノムヒョン大統領の秘書官でした。

 わかりやすく言えば、ノムヒョン氏は金正日氏と握手し、不十分な韓国の戦力を顧みず、「自主防衛」を行うと米国に主張し、ブッシュ政権から毛嫌いされたのです。

 韓米同盟では、平時は韓国軍が主体ですが、有事の戦争となれば米軍が米韓両軍に対して戦時作戦指揮権を発動することになっています。ノムヒョン氏は、この戦時作戦指揮権を韓国に返還することを考えました。米軍は他国の軍の下にはつかないので、有事に韓国軍が主導権を握る場合は、米軍は遠方からの支援だけを行い、基本的には韓国軍に戦ってもらうことになります。最終的には、韓国軍の長老が「今の韓国の実力でこれを行うのは危険だ」と乱心気味の大統領をいさめ、この戦時作戦権の返還は、李明博政権、朴政権でもひたすら先延ばしを続けることになりました。

 文在寅氏はノムヒョン氏の腹心の部下だったので、この人が大統領になれば、同じようなことが繰り返され、米韓関係が悪化する可能性が高いわけです。

トランプ政権で米韓同盟はどうなる?

 現在は北朝鮮の核開発が進展しているので、昔ほど親北反米外交はしにくくなっていますが、文氏の基本的な傾向は変わっていません。

 そして、米国では選挙期間中に孤立主義的な外交を掲げたトランプ大統領が新政権を発足させています。

 韓国の野党系候補は親米的ではないので、今のままでは、韓米同盟の危機がやってくるのではないかと、韓国に詳しい日本の保守系言論人(西岡力氏など)は憂慮しています。

「4人のうち、保守を代表して、韓国の自由民主主義を守らなければいけないという人物が誰もいない」

「文氏が一番危険だ。在韓米軍への『THAAD(高高度防衛ミサイル)』配備に反対しており、おそらく韓米同盟が5年のうちになくなるのではないかといわれている。そうすると、朝鮮半島全体が北朝鮮あるいは中国共産党の影響下に入り、最悪の状況になる恐れがある」

(産経ニュース「誰がなってもヤバ過ぎる、ポスト朴大統領 「従北」「親中」「反日」…日本にとって危険な候補者たち」2016.12.5) 

 トランプ氏は選挙中に、在韓米軍の駐留経費の負担増要求。米軍撤退の示唆。金正恩氏との対話。米韓自由貿易協定(FTA)の見直し等を主張していました。

 韓国は「まさかトランプ大統領はないだろう」と楽観していたのですが、同氏当選の衝撃を受け、11月10日に朴大統領はトランプ氏と電話会談。そこで韓米同盟維持が確認され、韓国はいったん安堵しました。

 しかし、次期大統領の時代に、韓国側が反米路線になってしまった場合は、話が変わってくるでしょう。

 こうした、ややこしい時期にマティス国防長官が訪韓します。

 ニュースでは「北朝鮮問題等を協議する」と概要を報じていますが、その背景は極めて複雑なので、マティス国防大臣が米韓同盟と指導力不在の韓国に何を述べるのかが、非常に注目されているわけです。

追記:国防総省がマティス訪韓に関する記事を公開

 国防総省が「国防長官がソウルで韓国のリーダーと会談」(”Defense Secretary Meets with Korean Leaders in Seoul”2/2)と題した記事を公開しています。

 以下、対訳で紹介します。

ーーーー

(ワシントン:2017/2/2)

国防長官のジム・マティスはソウルで大統領代行の黄教安(ファン・ギョアン)首相と国家防衛を補佐する金寛鎮氏(国家安全保障室長)と会談し、米韓同盟の堅実さを確認した。国防総省の報道官のゲーリー・ロスは、以下、会合の概要を述べた。

WASHINGTON, Feb. 2, 2017 — Defense Secretary Jim Mattis met with South Korean acting President and Prime Minister Hwang Kyo-ahn and National Security Advisor Kim Kwan-jin today in Seoul to reaffirm the strength of the U.S.-South Korean alliance, Defense Department spokesperson Navy Cmdr. Gary Ross said in a readout of the meetings.

会談の間、国防長官はトランプ大統領がアジア太平洋地域を重視していることを強調した。そして、米韓同盟の強化にも言及した。

During the meetings, the secretary emphasized the priority that President Donald J. Trump places on the Asia-Pacific region, and on strengthening the U.S.-South Korean alliance, Ross said.

マティスもまた韓国防衛の約束は堅固なものだと強調。アメリカの拡大抑止(※引用者注:核戦力も含めた脅威の抑止を意味する)は不易であることを約束。

Mattis also underscored that the United States remains steadfast in its commitment to defend South Korea and that the U.S. extended deterrence commitment remains ironclad, he said.

韓国の高官は北朝鮮んの核兵器とミサイル開発の進展という脅威に対して、密接に協力することが重要だと表明した。(以上、ロス報道官の発言)

The South Korean officials impressed upon the defense secretary the importance of close cooperation in the face of a growing North Korea nuclear and ballistic missile threat, Ross said.

国防長官は、同盟に基づいて、脅威に対して引き続き防衛措置を取り続け、弾道ミサイル迎撃に用いるTHHADミサイルシステムを朝鮮半島に配備すると述べた。

The secretary responded that the alliance would continue to take defensive measures in response to this developing threat, such as the stationing of the Terminal High Altitude Area Defense anti-ballistic missile system on the Korean Peninsula, the commander said.

マティス氏は強固な同盟を引き継ぎ、彼の任期の間にそれをより強固にすることを約束した。

Mattis relayed that he had inherited an already strong alliance, and committed to spending his tenure making it stronger than ever, Ross said.

ーーーー

 マティス氏を通して、トランプ政権が従来通り米韓同盟を尊重することが伝えられ、THHADミサイルの配備も進められることが公表されています。

 トランプ氏の選挙期間中の発言に同盟国は戦々恐々としていましたが、通商問題とは違い、軍事同盟は現状維持の方針になりそうです。