トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

トランプ政策の英和対訳③エネルギー政策~シェールオイルとガスの活用、化石燃料産業の復活~

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(テキサス州、フォートワースの風景。出所はWIKIメディアコモンズのパブリックドメイン画像)

  トランプ大統領が「キーストーンXL」と米中西部の「ダコタ・アクセス・パイプライン」建設計画の推進のために大統領権限を用いることを決めました。

(※1月24日に政策転換の意向を明かし、3月24日に正式決定)

 この2件はオバマ前大統領が環境保護のために推進を止めていたのですが、トランプ政権への移行に伴い、再開されることになったのです。

 今回は、そのプランの概要を紹介し、ホワイトハウスに掲載されたエネルギー政策に関する文書を英和対訳してみます。

トランプ政権が建設計画を再開させた2件のパイプライン

 時事通信の記事(「トランプ米大統領、パイプライン建設推進=前政権の方針転換2017/1/25」)を見てみます。

 大統領が推進を指示したのは、カナダの原油を米テキサス州の製油施設に運ぶ「キーストーンXL」と米中西部の「ダコタ・アクセス・パイプライン」。トランプ氏は事業によって「多くの雇用が生まれる」と強調した。
 大統領はまた、商務長官に対し、米国で整備されるパイプラインへの国内産の鉄鋼製品使用を促進するよう命じた。優先度の高いインフラ事業などについて、規制の負担を軽減し、許認可を迅速化することも求めた。

 キーストーンXL計画では、米モンタナ州と接するカナダ西部のアルバータ州産のオイルサンドから取り出した原油を米テキサス州の製油施設に輸送します。

 トランスカナダ社によれば、この計画で1日で最大130万バレル(アメリカ国民が1日に消費する石油の約10分の1に相当するともいわれる)を輸送でき、70億ドルの総事業費で2万人の雇用が生まれるそうです。当初、2013年の稼働を目指したこの計画は、CO2排出削減や環境保護などのためにオバマ政権に差し止められ、2015年11月に最終的に否認されました。

 トランスカナダ社は2016年6月に北米自由貿易協定(NAFTA)に基づき、その却下が不当だと米国政府を提訴したのですが、トランプ政権への移行に伴って、再開のめどがついたわけです。

 また、ダコタ・アクセス・パイプラインは米ノースダコタ州のバクケン油田⇒サウスダコタ州、アイオワ州⇒イリノイ州の油田工場に至る1886km、総工費38億ドルの巨大地下石油パイプライン計画です。エネルギートランスファーパートナー社やダコタ・アクセスLLC社が担う計画でしたが、このプランも16年9月にオバマ政権に差し止められていました。

 どちらも巨大プロジェクトではあるので、トランプ政権で再開されれば、アメリカのエネルギー自給率の向上、経済活性化や地方税収の増加、雇用促進(※トランプ氏は28000人の雇用増を見込んでいる)などが期待できます。

 今後、トランプ政権でアメリカのエネルギー産業は活気づいていくことが予測されているので、今回は、その大元になる政策文書を見てみます。

(出所:An America First Energy Plan | whitehouse.gov

「アメリカ第一のエネルギー政策」とは?

An America First Energy Plan

アメリカ第一のエネルギー政策


Energy is an essential part of American life and a staple of the world economy.

エネルギーはアメリカの生活の不可欠な一部であり、世界経済の基礎である。

The Trump Administration is committed to energy policies that lower costs for hardworking Americans and maximize the use of American resources, freeing us from dependence on foreign oil.

トランプ政権は勤勉に働くアメリカ人のためにコストを下げ、アメリカの資源を最大限に生かし、アメリカを外国資源への依存から解放するエネルギー政策に全力で取り組むことを公約している。

For too long, we’ve been held back by burdensome regulations on our energy industry.

あまりにも長い間、我々は、エネルギー産業を厄介な規制で抑圧してきた。

President Trump is committed to eliminating harmful and unnecessary policies such as the Climate Action Plan and the Waters of the U.S. rule.

トランプ大統領は我が国の気候変動計画や水質規制のように有害で不必要な政策を除くことを公約している。

Lifting these restrictions will greatly help American workers, increasing wages by more than $30 billion over the next 7 years.

これらの規制を廃止することはアメリカの労働者を大いに助け、次の7年間に300億ドルの給料を増やすだろう。

Sound energy policy begins with the recognition that we have vast untapped domestic energy reserves right here in America.

健全なエネルギー政策は、アメリカには広範な未開発の国内資源が保たれているという認識のもとに進められる。

The Trump Administration will embrace the shale oil and gas revolution to bring jobs and prosperity to millions of Americans.

トランプ政権はシェールオイルとシェールガス開発を推し進め、何百万ものアメリカ人に富と雇用をもたらす。

We must take advantage of the estimated $50 trillion in untapped shale, oil, and natural gas reserves, especially those on federal lands that the American people own.

我々は50兆ドルと見込まれる未開発のシェールオイルとシェールガスを、特に連邦本土に住むアメリカ人のために使わなければならない。

We will use the revenues from energy production to rebuild our roads, schools, bridges and public infrastructure.

我々はエネルギー生産からもたらされる利益を我々の道路、学校、橋、公共インフラを再建するために用いる。

Less expensive energy will be a big boost to American agriculture, as well.

安上りの資源はアメリカ農業を大いに活性化するだろう。

The Trump Administration is also committed to clean coal technology, and to reviving America’s coal industry, which has been hurting for too long.

トランプ政権は石炭技術をクリーンにすることと、あまりにも長い間、害されてきたアメリカの石炭産業を再建することを公約している。

In addition to being good for our economy, boosting domestic energy production is in America’s national security interest.

国内のエネルギー生産を活性化することはアメリカ経済に有益であるだけでなく、アメリカの国家安全保障のためにもなるだろう。

President Trump is committed to achieving energy independence from the OPEC cartel and any nations hostile to our interests.

トランプ政権は我々の国益にとって有害なオペックカルテルや他の国々からの独立を達成する。

At the same time, we will work with our Gulf allies to develop a positive energy relationship as part of our anti-terrorism strategy.

同時に、反テロ戦略の一部となる建設的な湾岸諸国との同盟を促進する。

Lastly, our need for energy must go hand-in-hand with responsible stewardship of the environment.

最後に、エネルギーに対する我々のニーズは環境に対する管理責任を伴わなければならない。

Protecting clean air and clean water, conserving our natural habitats, and preserving our natural reserves and resources will remain a high priority. 

クリーンな空気と水を守り、自然生物の生息地と天然資源を保全することは高い優先順位に位置する。

President Trump will refocus the EPA on its essential mission of protecting our air and water.

トランプ大統領は我々の空気と水を守る主任務にかかわるEPAに再び焦点を合わせる。

A brighter future depends on energy policies that stimulate our economy, ensure our security, and protect our health.

我々の明るい未来は、経済を活性化し、安全と健康を確保するエネルギー政策にかかっている。

Under the Trump Administration’s energy policies, that future can become a reality.

トランプ政権のエネルギー政策に基づいて、こうした未来は現実化するだろう。

トランプ政権のエネルギー政策にかかわるメンバーは誰?

 この計画にはカナダ外交や許認可権限をめぐって国務省がかかわっています。

 そのため、最近、上院で承認されたレックス・ティラーソン国務長官が関与することになります。エクソン・モービル会長兼CEOという微妙な経歴がその仕事に影響を与えないかどうかが気になるところです。

 また、オバマ政権が強化した環境規制をなくすための布陣には、内務長官指名のライアン・ジンキ(元共和党下院議員、55歳、1961年生)、環境保護局長官指名のスコット・プルイット氏(元オクラホマ州司法長官、48歳、1968年生)、エネルギー長官指名のリック・ペリー氏(元テキサス州知事、本名はジェームズ・リチャード・ペリー、66歳、1950年生)がかかわっています。

 スコット・プルイット氏はオバマ政権が進めた火力発電所のCO2排出規制に反発し、無効訴訟を起した人物です。

 リック・ペリー氏はエネルギー産業が盛んなテキサス州で知事をしており、ライアン・ジンキ氏も石油が取れるモンタナ州から下院議員として選出されました。

 こうしたエネルギー産業の活性化に熱心なメンバーが閣僚入りしているわけです。 

 今後、議論が百出しそうなCO2排出に関しては、これが気候温暖化の原因なのかどうかが科学的に最終的な結論が出ておらず、多数派であるCO2を主因とする説と少数派のCO2主因への懐疑説が分かれています。

 しかし、トランプ政権は懐疑説なので、今後、化石燃料業寄りの政策が展開していきます。

追記:米国沖合での資源開発が加速される? 新大統領令を発令

 その後、トランプ氏は4月28日に「アメリカ第一のオフショアエネルギー戦略の実施」に関する大統領令を出しました(出所:Presidential Executive Order Implementing an America-First Offshore Energy Strategy | whitehouse.gov)。

 ここでいうオフショアは「沖合」という意味合いなので、海洋油田開発等の規制を緩めるための措置です。

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 外縁大陸棚法(Outer Continental Shelf Lands Act)を含む憲法と米国法が大統領である私に与えた権限によって、エネルギーの革新、探鉱、生産における世界的な指導力を維持すべく、以下の事柄を命じる。

1節:所見

 米国はまず、米国の家計や企業のエネルギー需要を考え、何十年にわたるエネルギー安全保障と経済の活力を確保する計画を実行し続けなければならない。

 連邦政府の管理下にある土地・水域から生み出されるエネルギーや鉱物は、活力ある経済と国家安全保障にとって重要なものだ。

 連邦政府の土地・水域でのエネルギー生産の増加は国の安全を強め、輸入エネルギーへの依存を減らす。

 米国のエネルギー供給増加がもたらすエネルギー価格の低下は米国の家族に利益をもたらす。それは米製造業と雇用の成長をも活性化させる。国防総省は米国最大のエネルギー消費者の1つでもあるので、国内のエネルギー生産は国軍の即応能力を改善するものだ。

2節:方針

 エネルギーに関する指導的な国家としての地位を維持し、米国民の利益のためのエネルギー安全保障と回復力を促進するため、米国は外縁大陸棚を含んだエネルギー探査と生産を促す。そうした活動が安全かつ環境に配慮されていることを保証する。

(※あまりにも長く、見づらいので、今回は英文省略)

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 このあたりは、トランプ政権が発足時に掲げたエネルギー政策と似たようなことが書かれています。

 次節(3節~11節)以降に、もろもろの規制を緩和するための条項が並んでいます。全部書くと細かい話になりすぎるので、以下は概略で並べてみます。

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  • 国防長官と協議し、提案されている石油・天然ガスのリース販売計画の見直し(地域はメキシコ湾、チュクチ海、ビューフォート海、クック・インレット、大西洋中部、南大西洋等)
  • 商務長官は、特に明示されない限り、米国海洋保護区法(National Marine Sanctuaries Act 16 U.S.C.)の下、国家海洋保護区の指定・拡大を控える
  • 内務長官は海洋エネルギー管理局(BOEM:Bureau of Ocean Energy Management)長官に財務保証規制の政策が適正か検討し、必要があれば見直しを行う。外縁大陸棚での環境規制等を検証する。
  • BOEMは空気品質の管理等の規制を見直す。
  • 商務長官は大気管理に関する基準の見直しを行う。
  • 内務長官は北極大陸棚における探査掘削に関する規制を見直す。

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 これは、要するに、オバマ政権が大好きだった環境規制などを緩和する措置です。国防総省、商務省、内務省などが管轄する規制が緩和されます。