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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

【トランプ政権発足】安倍訪米は2月10日 英首相訪米は1月27日 TPP脱退後の米国はどうなる

国際 政治日程 全記事一覧 トランプ政権2017 ヨーロッパ

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(マルタ島にあるチャーチル像。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  トランプ新政権の発足後、日本では「日米同盟はどうなるのか」「TPPはどうなるのか」「日米の貿易はどうなるのか」という三点に関心が集まっているようです。

 そこで、まず新政権始動後の政治日程の変化を手掛かりに、英米関係と比較しつつ、今後の日米関係の行方を考えてみます。

 昨年の報道では、安倍首相が1月27日に訪米し、日米首脳会談を行うと見られていましたが、トランプ新政権発足後、米国側からの返答は途切れていました。

 その後、安倍首相は2月中の訪米をめざし、外務省がアプローチを続けたところ、2月10日訪米という日程が浮上。10日に日米首脳会談を行い、11日には共にゴルフをしながら語り合うことになりました。

 一方、イギリスのメイ首相の訪米は大幅に前倒しになり、1月末に米英首脳会談が行われることになりました。トランプ政権発足後、ホワイトハウスではチャーチルの銅像がもう一度、執務室に置かれることになりましたが、どうやら英米の「特別な関係」が復活しそうな雲行きなのです。

 この両者を手掛かりに、今後の日本のあり方を考えてみましょう。

安倍首相訪米・首脳会談は2月10日になった

 日刊ゲンダイは安倍首相が早期に訪米すれば、「成果」を欲する就任直後のトランプ政権から難題をつきつけられると見て、その危険性を指摘しています。

 まず、1月15日に「飛んで火に入る安倍訪米  1・27会談ならトランプの餌食に」と題し、春名幹男氏(早大客員教授)の見解を紹介しています。

相手のことを分からず臨んだら、必ず手痛い失敗をする。1993年の宮沢―クリントン会談が典型例です。会談直後、クリントンが『円は安すぎる』と発言し、日本はパニックになった。相手を見極めずに会談すると予期せぬことが起きる。しかも、相手はあのトランプです。1対1になった時、高い要求を突きつけてくるに違いない。最悪、兵器の巨額購入を要求してくる恐れがあります

「円は安すぎる」。確かに、この記事が出た後、17日にWSJインタビューでの「ドルは高すぎる」というトランプ氏の発言が世を騒がせています。

 日米首脳会談の席で、トランプ氏が突然に「円は安すぎる」と言ってきたら、日本はどうするのか。その具体策は国民には知らされていません。

 兵器の巨額購入要求というのも、ありそうな話です。

 就任演説でアメリカファーストを宣言したトランプ氏は「我々は二つの単純な原則に従う。『アメリカのものを買え。アメリカ人を雇え』」と述べています。

(原文は”We will follow two simple rules: Buy American and Hire American.”)

 ノコノコ訪米すると、「同盟国ならもっと買うのは当たり前だ」と言われかねないのが現状です。日本の防衛のためにアメリカ製の装備は必要ですが、高い値段を吊り上げられると日本の国益が損われます。日本の防衛予算は限られているので、輸入兵器の値段が大幅に上がると、日本の防衛系企業からの装備調達を減らさざるをえなくなるからです。

 その後、日刊ゲンダイは21日に「トランプから返答なし 安倍首相訪米『1・27会談』絶望的」という記事を公開し、安倍政権の動きを論評をしています。

 官邸事情通がこう言う。

「20日時点で、先方から返事がないのです。トランプ氏と当選直後に外国首脳として最初に会った安倍首相は、正式就任後もG7首脳の中で一番最初に会えるよう外務省に指示していた。しかし、安倍首相が希望する27日まで1週間を切ってしまいました」

 トランプ政権のスパイサー報道官は、就任式前日の19日の記者会見で「来週は外国の首脳がホワイトハウスを訪れる予定はない」と話している。官邸詰めの記者たちも同行取材の話が具体化しないため、「27日はもう無理」という認識だという。

・・・

 安倍首相が1月中に訪米したがったのは、20日に召集された国会日程との兼ね合いもある。ただでさえ国会開会中は外遊しにくいうえ、野党との調整も必要。補正予算や来年度予算案の審議を考えると、27日を逃せば、3月以降にズレ込んでしまいかねないのだ。

・・・

「2期目に入ったばかりのオバマ前大統領と安倍首相が会談したのが、2月22日でした。その時よりも早くトランプ氏に会いたいようです」(前出の官邸事情通)

 トランプ政権がなぜ日本に返事をしないのか。

 アメリカ側はその理由を公にしませんが、安倍首相が推すTPPを嫌がっているのではないか、と推測することは可能です。

 安倍政権はわざわざトランプ政権発足の直前の1月20日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認を閣議決定しました。公式にはトランプ政権発足をお祝いしていますが、何もTPP承認の日程をここに合わせる必要があったとは思えません。

 就任早々、20日(米国時間)にTPP離脱を決めたトランプ氏と閣僚にすれば、20日の安倍政権の動きはあてつけの一種に見えたのではないでしょうか。

 トランプ新政権の考えは、TPPは米国に不利なので、TPPの代わりに2国間交渉を行うというものです。日米で言えばFTA(自由貿易協定)を結ぶことが視野に入ってきます。

 ウィルバー・ロス氏(商務長官指名)は18日のアメリカの上院(※商業科学運輸委員会)公聴会で「私は反貿易主義者ではない。貿易を支持している。しかし、私が支持するのは良識ある貿易だ。アメリカの労働者や製造業拠点に不利な貿易は支持できない」と述べています。

(英語では”I am not anti-trade. I am pro-trade. But I am pro-sensible trade. Not pro-trade that is to the disadvantage of the American workers and manufacturing community.”と述べている)

 ロス氏は公聴会でアメリカ自動車産業に不利だとも述べていたので、要するに、これは、オバマ政権が決めた条件ではなく、トランプ新政権が決めた条件で取引したいということなのでしょう。

 時事ドットコムの記事によれば「自民党の高村正彦副総裁も記者団に『TPPは米国経済によりよい結果をもたらすとしっかり説明していく必要がある』と語った」(「同盟強化と自由貿易追求=安倍首相、来月訪米へ最終調整」)そうですが、地平線の彼方に消えたTPPの夢を追うことにどれだけの実益があるのかは疑問が残ります。

 安倍首相は訪米したがっていますが、トランプ政権から答えが返ってこないのは、しごく当然の話です。英国のメイ首相の訪米は「EU脱退⇒二国間貿易で米英貿易協定締結」という政治判断で1月末にまで早まりましたので、もはや、日米首脳会談が後ろに送られた理由は、もはや、誰の目にも明らかなのではないでしょうか。

追記:1月28日にトランプ大統領と安倍首相が電話会談

 28日にはトランプ大統領と安倍首相の間で電話会談が行われ、安倍首相とトランプ大統領の首脳会談が2月10日に開催されることになりました。2月1~4日の日程でマティス国防長官が日韓両国を訪問。稲田防衛大臣との会談は2月3日になると見られています。

 マティス氏の訪韓、訪日はアジア太平洋地域の同盟を重視する姿勢の表れであり、稲田防衛相との会談では北朝鮮問題や南シナ海問題への対策が話し合われるとも見られています。この二つが地ならしになって、本格的な日米首脳会談が2月10日にアメリカで開催されるわけです。

 28位の電話会談に関して外務省は以下の二記事を公開しています。

日米首脳電話会談の要旨

 28日深夜に公開された外務省HPの記事(「日米首脳電話会談」)によれば、両社の42分間の会談の概要は以下のとおりです。

  • 安倍総理は「就任直後から精力的に行動され,トランプ時代の幕開けを強烈に印象付けたと思う」はトランプ大統領の就任と政権発足を祝った。
  • 安倍総理が「トランプ大統領のリーダーシップによって,米国がより一層偉大な国になることを期待しており,日本は,信頼できる同盟国として役割を果たしていきたい」と述べ、両首脳は日米同盟の重要性を確認し、日米経済関係の重要性についても意見が一致した。
  • 2月10日の安倍総理の訪米と日米首脳会談の開催が決定

安倍総理からのトランプ大統領あての祝辞の中身とは?

 外務省HPでは「安倍晋三内閣総理大臣によるドナルド・トランプ米国大統領宛祝辞」と題した記事が1月21日に公開されています。

 外交儀礼部分を除くと、日米同盟の重要性を訴えるのが中心の内容です。

 21世紀において,アジア太平洋は,世界の経済成長の源であり,同時に,その安全保障環境は一層厳しさを増しています。自由,民主主義,人権,法の支配といった普遍的価値で結ばれた日米同盟の果たす役割はますます重要になっています。日米同盟は,我が国の外交・安全保障政策の基軸であり,貴大統領との信頼関係の上に,揺るぎない同盟の絆を一層強化していきたいと思います。

 出来るだけ早く,再び貴大統領にお目にかかり,地域や世界の様々な課題について幅広く意見交換を行い,日米同盟の重要性を世界に向けて発信したいと思います。

トランプ氏「今まで言ってきたことは全部やりたい」発言の意図

 産経記事(2017/1/29:1面)や朝日新聞の記事(安倍首相「トランプ時代の幕開け、強烈に…」 電話会談 1/29)では、トランプ氏が「今まで言ってきたことは全部やりたい。スタートが大事だと思っている」と述べたことが注目されています。

 これはトランプ氏が従来、選挙期間中から発言してきた通りの対日政策を実施したいという意味ではないかとみられているのです。

 首相は日本企業の米国経済への貢献などについて理解を求めたのですが、トランプ氏の言う通り「今まで言ってきたことを全部」やれば、選挙期間中の対日批判までが実行されてしまうのではないか?と危惧する見方も出ています。 

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トランプ政権は軍事外交と通商政策がワンセット

 そして、1月27日には米英首脳会談前にトランプ氏はフィラデルフィアで演説し、今後は二国間で貿易交渉を行い、協定を結ぶ際には通貨安誘導を制限する為替条項を盛り込む意向を明らかにしました。

 この考え方が、今後、日米で貿易交渉を行う際に反映される可能性が高いと見られています。

 もともと、サブプライムショック後のアメリカのほうが先にバーナンキFRB議長の下で大規模な金融緩和を始めたことでドル安円高が進行し、2012年頃まで日本経済は不景気下に沈没していたのですが、米国側は自国のことを差し置いて他国の「為替操作」を批判してきます。

 トランプだけでなく、オバマ政権の末期も日本の円安誘導には批判的でした。

 今さら米国がTPPに戻ることは考えにくいのですが、米国側には軍事力で日本を防衛しているという強みがあるので、長い目で見れば日米の二国間交渉が開始される可能性が高いでしょう。

 要するに、TPPは長い交渉の末、成立前にトランプ政権のちゃぶ台返しをくらってしまったので、ややこしい農産品関税の問題などについて、もう一度、議論をやり直さなければいけなくなりそうなのです。

 トランプ政権が、防衛問題をカタにとって通商上の要求をつきつけてくるのではないか、と日本側は警戒をつのらせていますが、トランプ政権の外交政策の基本文書”America First Foreign Policy(アメリカ第一の外交政策)”では軍事・外交と通商政策が一体化しています。

 そこでは、まず、IS殲滅を謳った後、海軍と空軍の再建によって米軍の優位を疑いないものとすると宣言し、自国の国益を重視した外交を行うと宣言しています。

 軍の再建に関しては、レーガンの「強いアメリカ」を想起させる強硬姿勢です(筆者記事1/30で英和対訳)。

  • 「我々は他国がわが軍の能力を上回ることを容認できない」
  • 「最高水準の軍事即応性(※非常時に即応する能力)を追求する」
  • 「トランプ政権は防衛予算の歳出削減措置を終わらせ、わが軍の再建計画の概要を示す新予算を議会に提出する」

 そして、軍の問題を論じた後には、"Trade Deals Working For All Americans(全てのアメリカ人のための貿易交渉)”という通商政策の文書(筆者記事1/23で英和対訳)がそっくりそのまま転記されているのです。

 こちらではTPP脱退やNAFTA再交渉をうたい、「公正かつ厳正な貿易協定のために戦うことで、我々は雇用をアメリカの沿岸に戻し、給料を増やし、製造業を維持することができる」と主張しています。

 トランプ政権の外交政策の文書には、軍事政策と通商政策をセットでとらえるというトランプ氏の考え方が反映されているわけです。

 日本は今後、この政策にどう対応するかを考えなければいけないでしょう。

貿易協定早期締結を目指すイギリス メイ首相1月27日訪米

 これはトランプ政権発足で起きた分かりやすい動きの一つです。

 TPP発効を目指す安倍首相の訪米が後回しにされ、EUを離脱して世界主要国との二国間貿易締結を目指したイギリス首相が急ぎ訪米することになりました。

 産経ニュース記事(「英首相、月内訪米か 首脳会談前倒しと報道」2017.1.22)を見てみます。

 メイ首相が月内に訪米し、トランプ大統領と首脳会談を行う見通しだと複数の英メディアが21日伝えた。26日だとの見方もある。欧州連合(EU)離脱交渉を控えるメイ氏は会談で、米国との貿易協定の早期締結に見通しを付け、離脱交渉で優位に立ちたい考え。

 メイ氏の訪米は2月になるとされていたが、英スカイニューズ・テレビはトランプ氏側の提案で前倒しされたと報道。実現すればトランプ氏が大統領就任後に最初に会う外国首脳の一人となる。

 その後、1月27日にメイ首相が訪米し、米英の首脳会談を行うことが報じられました。

 トランプ氏は2国間の貿易交渉には前向きなようです。ここには米国建国以来、歴史の中で培われた英米の「特別な関係」を再確認したいという意図も働いています。

 その象徴の一つとして、トランプ氏はホワイトハウスへの引っ越しでチャーチル像を大統領執務室に戻しています(オバマ氏はキング牧師像を執務室に入れ、チャーチル像を出してしまった)。

 産経記事は英メディアの孫引きですが、BBCの記事を見ると、メイ首相が27日(金)に訪米することを報じ、英政府が「特別な関係」を重視してトランプ新政権に送った祝辞を紹介しています(Theresa May to meet Donald Trump on Friday - White House)。

 メイ英首相はワシントンDCでトランプ大統領と金曜日(27日)に会うことになるだろう。ホワイトハウス関係者はそう述べた。

Prime Minister Theresa May will meet US President Donald Trump in Washington DC on Friday, the White House has said.

(中略)

テリーザ・メイはトランプ政権発足後、執務開始への祝辞を送っている。

Theresa May congratulates Trump on taking office In a statement issued after the inauguration, Mrs May said:

「今までの対話を経て、私(メイ)は、我々の関与は英米の特別な関係を促進し、大西洋両岸の繁栄と人びとの安全のために共に働くためにあることを認識している」

"From our conversations to date, I know we are both committed to advancing the special relationship between our two countries and working together for the prosperity and security of people on both sides of the Atlantic.

「ワシントンで我々がこれらのテーマのために議論することを楽しみにしている」

"I look forward to discussing these issues and more when we meet in Washington."

  安倍首相の思惑通りに1月の日米首脳会談を行うことは難しくなりましたが、結果的にはそのほうがよかったのかもしれません。

 先方の出方を知らぬままに会談一番乗りをするよりは、他の同盟国との首脳会談でトランプ政権がどう動くかを見てから訪米したほうが、とんでもないババを引くことを回避しやすくなるからです。

 安倍首相が急ぎ27日に訪米してTPPの重要性を訴え、就任直後に怪気炎をあげるトランプ氏に撃沈されるよりは、しっかりと準備して2月10日に日米首脳会談をこなしたが、よい結果になる可能性は高まるのではないでしょうか。

トランプ政権が「二国間の貿易協定」に前向きなのはなぜ?

 メイ首相訪米が早まったのは、英米の「特別な関係」のほか、トランプ政権には多国間の貿易協定よりも二国間の貿易協定をよしとする傾向があるためのようです。

 どうしてそうなるのでしょうか。

 その理由は、二国間の貿易交渉よりも多国間の貿易交渉のほうが、アメリカの要求を交渉に携わる国が回避しやすくなるからです。

 農業を巡る交渉実務を担当した山下一仁氏(キャノングローバル戦略研究所研究主幹)は『TPPおばけ騒動と黒幕』(P77)にて、以下のように述べています。

「日米の協議では、米国の力に押されることはあっても、TPPのような多国間の協議では、他の国と連携できる。たくさんのイシューがあるときには、イシューごとに交渉参加国の利害関係が変わるので、連携を組みかえることもできる。関税にこだわる以上日本が農業で孤立するのは、当然だが、それ以外の分野で孤立することは想定できない」

 山下氏は自分が行った交渉の実例として、遺伝子組み換え食品の表示規制において、日本がオーストラリア、ニュージーランドと連携してアメリカの厳しい表示義務付け要求を諦めさせたことも紹介しています(前掲書P76)。

 日本の農業関税は国際的に不人気なので、他国に協力をつのりにくいのですが、他の案件では協力が見込めるケースが多いようです。

 これは話が難しくなりそうなので、単純化した例で考えてみます。

 ドラえもんに例えれば、ジャイアンとのび太が一対一で取引する場合と、ジャイアンと「のび太+出木杉+しずか」の一対三で取引する場合とでどちらが有利かというのは、誰でも分かります。取引の場にスネ夫が出てきたらジャイアンが有利になるかもしれませんが、案件によっては、スネ夫がジャイアンに反対することもあります。スネ夫が出てきても、「ジャイアンVSのび太」よりは有利なのです。

 トランプ率いるアメリカ=ジャイアン、安倍首相率いる日本=のび太という構図であってほしくはありませんが、日本から見れば多国間交渉のTPPのほうが有利になります。

 そして、アメリカから見たら大国の要求をつきつけやすい二国間交渉の貿易協定のほうが有利なのは間違いありません。

英米の「特別な関係」は持続 これはアングロサクソン連合?

 米国と各国との同盟関係の存在は知られていますが、その内実は意外と理解されていません。

 筆者は、トランプ新政権発足に伴って外交戦略が変わる時、それに伴って米国と各国の同盟関係の緊密度の差が、今後、知られていくのではないかと考えています。

 米国と各国との同盟に関する比較研究は、重要度に比して少ないのですが、松村昌廣氏(桃山学院大教授)は『軍事情報戦略と日米同盟』という著書で、アメリカと七か国の同盟を比べていました。

 この中では「米国ー英国」の同盟関係が最も緊密で、それは基地施設、ミサイル供給、ミサイル発射場、兵器生産、兵器の共同研究・開発、軍事情報にわたる多数の協定で構成されています。

 この次に位置するのが「米国ーカナダ」「米国ーオーストラリア」というアングロサクソン諸国との同盟です。

 松村氏は、このアングロサクソン諸国との緊密な関係が米国の同盟のインナーサークルを形成し、フランスやドイツ、日本などはその外側に置かれていると指摘しています(イスラエルはアングロサクソンではないが特別扱いされている)。

※イスラエルはアングロサクソン国ではないが、持ち前のロビー活動も含めて米国との緊密な関係を維持。トランプ政権はイスラエル寄りなので、同国は今、オバマに冷や飯を食わされた8年間が終わったとバンザイしている。

 フランスはかつてドイツと共に戦った仲間なので、安全保障上の連携はしますが、独自外交が強い国です。そして、ドイツはかつての旧敵国ながらソ連の脅威のために仲間になった国という位置付けになります。

 日本の現在の立ち位置は米英加豪の四カ国の外側にいるので、トランプ政権発足後、付き合い方を間違えて、同盟圏外に追い出されないようにしなければなりません。

 TPPの米国参加を盛んに言い立てても実益は見込めず、日米関係を悪化させる負の効果が生じかねないので、今後、日本は新しい対米外交の戦略を考えなければいけない状況に置かれています。訪米が遅れた間に、これがちゃんと作れるかどうかで、2017年以降の日本の明暗が左右されることになりそうです。

 TPPに関しては、加盟国間でルールを変更し、米国抜きでのアジア・太平洋の多国間貿易協定として存続させるぐらいしか、残された道筋はなさそうに見えます。

 日本にとっては面倒な話ではありますが、TPPに替わり、トランプ政権下で日米経済関係を円滑にするための「二国間の貿易協定」をどうつくるかを考え始めたほうがよいのではないでしょうか。

追記:26日のメイ首相演説と米英首脳会談の要旨

 1月27日のAFP通信の記事で訪米中のメイ首相がフィラデルフィアの共和党会合で行った演説の要旨が報じられています(「訪米中の英首相、安全保障でトランプ氏の主張に理解を示す」)

 トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)に懸念を示したことについてメイ首相は部分的に同意する見方を示した一方で、トランプ氏がロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に接近していることに対しては、米政府は「関与すべきだが注意すべき」とくぎを刺した。

 メイ首相はまた、トランプ氏が世界の安全保障における米国の防衛費負担に不満を示していることに同調し、「われわれを強固にしている同盟関係を、(同盟国が)自らが担う部分の増大とその遂行を怠ることによって弱体化させるべきではない」と述べた。

 一方、NATOや国連(UN)などの国際機関の在り方を見直す必要があることには理解を示しつつも、テロや気候変動などの世界的な脅威に対する協力を推進するうえでそれらは必要不可欠だと述べた。

  トランプ政権とNATOの関係が微妙になっているタイミングで訪米し、イギリスがその間を取り持つバランサーとなることをPRしようとしているようにも見えます。

 トランプ大統領はフィラデルフィアの演説で二国間協定に為替操作を制限する条項を盛り込みたいと述べました。

 その後、27日の米英首脳会談の要旨として以下の内容が各紙で報じられています。

  • 米英の「特別な関係」を深化する
  • 今後、米英二国間通商協定の早期締結に向けた協議を行う
  • IS(イスラム国)の殲滅のために英米の軍事協力強化で合意
  • NATO(北大西洋条約機構)の重要性を確認
  • トランプ大統領が年内に英国を公式訪問
  • 対露関係改善に前向きなトランプ氏(制裁解除は時期尚早とも発言)、メイ氏は対露制裁の継続を主張

 今後の米英関係の行方と、今回、トランプ氏が打ち出した外交方針が各国との交渉にどんな影響を与えるのかが注目されています。

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