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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

安倍・ドゥテルテ会談 5年間で投資1兆円合意 豪、インドネシア、ベトナム訪問はどうなる?

国際 東南アジア(ASEAN諸国) 全記事一覧 安倍政権(外交)

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(フィリピンのフリゲート艦。ドゥテルテ氏の発言は勇ましいが、同国には先立つ軍事力が足りない・・・。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  1月13日にはフィリピンで安倍首相がドゥテルテ大統領との会談を行い、官民で5年間かけて1兆円の支援を行うことを決めました。

 安倍首相は12~13日にフィリピン、13日~15日にオーストラリア、15~16日にインドネシア、16日~17日にベトナムを訪問する予定です。

 14日にはターンブル豪首相とシドニーで会談。

 15日にはインドネシアのジョコ大統領と会談。

 16日にはベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長、グエン・スアン・フック首相らの指導部との会談が開催されます。

 安倍首相はオーストラリアと南シナ海周辺に位置する重要な3カ国を歴訪するので、今日は、最近、報道されたこの四カ国の出来事を追ってみたいと思います。

安倍首相とドゥテルテ大統領が会談

 ASEAN(東南アジア諸国連合)は今年で設立50年となり、フィリピンが議長国を務めます。本年は南シナ海問題を巡って中国とトランプ新政権とが火花を散らしそうですが、先々の問題を睨んで、安倍首相がドゥテルテ比大統領と12日に行った会談の内容が報じられています(産経ニュース「安倍晋三首相がドゥテルテ大統領と会談 南シナ海『法の支配や紛争の平和的解決を』官民で5年間に1兆円投資」(2017.1.12)。

 南シナ海問題は首相が言及し、「法の支配や紛争の平和的解決を主張したい」と強調。これに対しドゥテルテ氏は「あらゆる分野で日本を支持する」と応じた。

 会談では、両国の戦略的パートナーシップの深化を図ることで一致。また、テロ対策の一環としてフィリピン沿岸警備隊への小型高速艇提供を盛り込んだ交換公文の署名式を行った。

 首相は、ドゥテルテ氏が取り組む違法薬物の取り締まりを支援するため、更生施設や更生プログラムの整備、人材育成で協力することを確認した。

 また、一連の支援策のため、政府開発援助(ODA)や民間投資を含め今後5年間で1兆円の投資を行うと表明。具体化するための「経済協力インフラ合同委員会」の創設でも合意した。

 ドゥテルテ氏はオバマ政権に向けて、米軍は出ていけと言っていましたが、トランプ政権に変わったら、どう動くのでしょうか。

 人権、人権と学校の教師のようにお説教を垂れるオバマ大統領と「そんなことを言っていたら麻薬対策なんてできない」というドゥテルテ大統領の相性が非常に悪かったわけですが、暴言キャラ同士でお互いの理解が進み、米比関係が改善に向かうのか、それとも暴言の応酬になってしまうのかが、今後の見所になります。

 産経記事(2017/1/14:2面)によれば、安倍首相は祖父の岸首相が国民と国益を考えて日米安保条約を改定した例を紹介し、反米暴言の危険性を暗示しましたが、ドゥテルテ氏のスタンスはあまり変化がなかったようです。

「ドゥテルテ氏は会談後、『暴言はやめる』と宣言した。だが、米国批判はその後も絶えず、一方で中国重視の発言が相次いだ。南シナ海問題では中国と対立するが、経済協力を念頭に接近も図るしたたかさだ」

 日本人から見るとドゥテルテ氏は分かりにくい指導者ですし、国連やオバマ大統領からも悪評サクサクですが、その支持率は昨年12月時点で77%という驚異的な支持率を誇っていました。

「何でそんなに支持率が高いんだ?」という疑問から、筆者はフィリピンに多数の友人を持つ知人に聞いたところ、今までの大統領は外ヅラはよいが自国経済と治安対策が不十分だったが、ドゥテルテ氏は経済と治安の両面から国民の生活改善にしっかり取り組んでいるからだとの返答をもらいました。

 要するに、国民の生活が第一になっているから支持率が高く、今までの欧米帰りの上から目線のインテリ大統領とは違った庶民性も高人気要因になっているそうです。

 こうして見ると、前大統領のアキノ氏は中国の横暴にも屈しない立派な大統領でしたが、やり残した課題は国内にたくさんあると言えそうです。

 ニュースをパラパラと見ていくと、10人のうち4人が貧困から抜け出せないことや、避妊具が手に入らない600万人の女性に向けてドゥテルテ氏が避妊具を無料配布することを決めたことなど、フィリピンの深刻な問題も報じられています。

 外交路線には不透明感が漂っているため、これ以上、親中を取るのは危ないという警告も含めて、安倍首相が訪比したと見ることもできそうです。

経済成長鈍化の兆しを見せるオーストラリア 

 オーストラリアは2009年以来、着実な経済成長を続けてきました。実質GDP成長率で見ると、以下のパフォーマンスが刻まれています(出所は外務省HP)。

  • 09-10年度:2.0%
  • 10-11年度:2.3%
  • 11-12年度:3.7%
  • 12-13年度:2.5%
  • 13-14年度:2.5%
  • 14-15年度:2.3%
  • 15-16年度:2.9%

 右肩上がりの成長が続いているので、うらやましい話ではありますが、ターンブル政権に変わって以降、経済の実績は思わしくないようです。

 JBPESSがフィナンシャルタイムズ紙(2016/12/20)から転載した記事(「オーストラリア経済、25年の不況知らずも終わり? 成長鈍化で財政赤字拡大、トリプルA格付けを失う懸念」2016.12.22)では、成長鈍化のなかで格付け維持を図る首相の困惑ぶりが報じられています。

 19日に発表された年度半ばの財政アップデートは、賃金と企業収益の鈍い伸びが経済に重くのしかかり、2019/20年度までの累計赤字が5月の前回政府予想より104億豪ドル(75億米ドル)拡大すると予想した。

 国内総生産(GDP)成長は今年2%になると予想し、従来予想の2.5%から引き下げられた。政府の報告書は、財政収支が2019/20年度に100億豪ドル、GDPの0.5%相当の赤字になると予想している。それでもオーストラリア政府は、2020/21年度までに財政均衡を図る目標へのコミットメントを繰り返した。

 オーストラリアのスコット・モリソン財務相は、自由党と国民党の与党保守連合が7月の選挙以降、220億豪ドルの予算節減を実行したと指摘し、オーストラリアの債務を格下げしないよう格付け機関に訴えた。

 経済成長と税収見通しが下方修正され、資金調達に支障が出ないよう、豪政府はS&P等の格付け機関にAAAの維持を呼びかけました。

 7月の下院選では連立与党と野党の議席数はわずか1議席差なので、経済政策が思わしくなければ、次の選挙でまた政権交代が起きる可能性も出てきます。

 近隣諸国との関係を見ても、東チモール共和国との海底石油ガス協定が破棄されたり、インドネシア軍との協力が停止したりと、微妙ないざこざが起きているようです。

 ターンブル首相はもともと中国寄りですが、南シナ海問題の本格化に伴い、米軍の「航行の自由」作戦に肯定的な態度を見せています。

 首脳会談では経済が主たる話題になりそうですが、安倍首相は、南シナ海問題を踏まえてオーストラリアがより日米寄りに舵を切ってくれるようにとアプローチを行うのではないでしょうか。

ジョコウィ氏、人気の要因は何? 貧困対策?高成長?

 ジョコ・ウィドド大統領も就任してから2年が経過しています。昨年10月20日で就任2年目を経過しましたが、こちらもフィリピンと同じく高支持率を誇っています(毎日新聞「インドネシア 国民に高い人気 就任2年ジョコ大統領」2016年10月19日、平野光芳) 

 民間の研究所が8月に実施した世論調査によると、ジョコ政権について66・5%が「満足している」と回答した。政権が推進する貧困層向けの医療保障や教育・福祉政策に評価が高く、支持拡大につながっている模様だ。インドネシア学術研究院のシャムスディン・ハリス教授は「ジョコ氏の人気をしのぐ政治家はおらず、3年後の再選の可能性が高まっている」と見る。

 今後課題となるのが、政権が最重要政策に位置づけるインフラ整備だ。3500万キロワット分の発電所整備や、ジャカルタ−バンドン間(約140キロ)の高速鉄道建設、高速道路・港湾整備を目指すが、土地収用の遅れや資金不足から計画通りに進まないケースが多い。整備をスムーズに進め経済成長につなげていけるか、手腕が問われている。

 一方、ジョコ氏には、「開発独裁」のスハルト政権の崩壊(1998年)以降に政治キャリアを積んできた「民主化の申し子」として、人権や権利の擁護を期待する声が高かったが、現状では評価する声は少ない。過去の人権侵害事件でも真相究明に及び腰だ。関与が疑われる軍に配慮しているとの批判もある。公約だった先住民族の権利保護も取り組みが遅れており、先住民連合のアブドン・ナババン事務局長は「今後、ジョコ氏支持を見直す可能性もある」と不満を隠さない。

  三分の二がジョコ氏に肯定的だと報じられていますが、この記事を見ていると、いま一つ、何がよいのかが分からなくなります。

 しかし、統計を見る限りでは、結局、経済が高成長を続けているから高支持率なのではないかと思うのです(以下、出所は外務省HPの実質GDPデータ)。

  • 2010年:6.4%
  • 2011年:6.2%
  • 2012年:6.0%
  • 2013年:5.8%
  • 2014年:5.6%
  • 2015年:4.8%

 過去の動きを見ると、2015年3月にジョコ大統領は訪日して安倍首相と会談(23日)し、その後、26日に訪中して習主席と会談しているので、訪日+訪中という東南アジア首脳のよくある動き方をしていました(スーチー氏もドゥテルテ氏も昨年、訪中+訪日を行っている。順序は逆ですが)。

 その後、16年1月に中国が受注した高速鉄道がジャワ島で起工しています。中国製新幹線を導入し、建設・運営がこれから上手くいくのかどうかが注目されているわけです。

 外交面では海洋国家を標榜し、中国にも一定の警戒を示しているので、日本とも協力関係を築くことは可能でしょう。

天皇陛下も2月にベトナム訪問

 11日のニュースでは、安倍首相だけでなく、天皇皇后両陛下も2月28日にベトナムを訪問することが報じられています(NHKニュースWEB「両陛下 来月28日にベトナム訪問へ タイに立ち寄り弔意も」1/11)。

 3月1日にクアン国家主席との会見に臨み、ホーチミン廟にも訪問されるようです。ベトナムには6日間の日程が予定され、3月5日にタイでプミポン前国王逝去への弔意を示される予定です。

 日本神道の最高位に立つ天皇陛下が社会主義国の建国の父(ホーチミン氏)の墓参りをするという話には、何か異例な雰囲気が感じられますが、これは首相だけでなく、天皇まで含めてベトナムとは関係を強めたいという政府の思惑が働いているのでしょうか。

 米比関係は微妙ですが、フィリピンには一応、米国との同盟関係がありますが、南シナ海問題のもう一つの重大な当事国であるベトナムには米国との同盟がなく、むしろ「昔の戦争相手」という複雑な事情を抱えています。

 だとしたら、もっと日米と関係を深めたほうがよいのではないか、という話が浮上してきたのかもしれません。

 外務省の基礎データを見ると、15年度のGDPは2000億ドルほどで、経済成長率は6.7%なので、今後の伸び代が期待されている面もあるのでしょう。

 ベトナムに関しては、中国側も熱心に取り込み策を行っているので、日本としても、首相と天皇の訪問を組んで、対策を講じたのではないかと思います。