トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

2017年、日経平均株価と為替はどうなる? 専門家の予測実績を検証してみた

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(NY証券取引所:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 1月4日には『週刊ポスト』と『週刊現代』の過去の株価予測がどの程度当たったかを検証したので、今度は、経済誌に掲載されている専門家の為替と株価予測の精度を検証してみます。

 今回は、チャレンジングな週刊誌予測とは違い、もう少し手堅いと思われている方々の予測が当たったのかどうかを見ていきます。

経済誌に掲載された2017年の日経平均株価予測の例

 まず、筆者の手元にある経済誌に並んだ2017年の日経平均株価の予測例を紹介してみます。

 以下、表記は「高値(月)安値(月)」です。 

  • 小川佳紀氏(岡三証券):21000円(4月)16500円(10月) ※1
  • 飯塚尚己(シティグループ証券):20250円(12月)18250円(9月) ※1
  • 石黒英之(岡三証券):21000円(12月)17000円(5月) ※1
  • 松浦寿雄(野村証券):22000円(2月)17000円(8月) ※1
  • 居林通(UBS証券 日本株):19000円(1~2月)15000円(12月) ※1
  • 壁谷洋和(大和証券):21000円(12月)17000円(5月)※2
  • 謝名憲一郎(明治安田生命保険):20000円18000円(8月)※2
  • 山田一郎(富国生命):21000円(3月)16000円(10月)※2
  • 広木隆(マネックス証券):23000円(12月)18500円(1月)※3
  • 松野利彦(SMBCフレンド証券):22000円(11~12月)18000円(6月)※3
  • 圷正嗣(SMBC日興証券):21500円(11月)18000円(6月)※3
  • 吉野貴晶(大和証券):21000円(11~12月)17000円(5月)※3
  • 宮島秀直(パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ):20750円(11~12月)19000円(5月)※3
  • 菊池正俊(みずほ証券):21000円(4月)17000円(9月)※3
  • 土正田雅之(楽天証券):20850円(5月)16500円(11月)※3
  • 大場敬史(岡三証券):20850円(5月)16000円(10月)※3

※1:週刊東洋経済(16/12/31~17/1/7新春合併号:P67)

※2:エコノミスト(16/12/27:P26)

※3:ダイヤモンド(16/12/31~17/1/7新春合併号)のP28図表は高値/安値のグラフ。P29の2017年末予想を見ると、広木氏が22500円、松野氏が22000円、松浦氏と圷氏と吉野氏が21000円、宮島氏が20750円、菊池氏が2万円、土信田氏と居林通氏が18000円、大場氏が17500円。

 

 全部で16人ですが、2017年日経平均株価の予測値が15000円~22500円ぐらいの幅に入っています。週刊ポストの株価40000円という予測に比べるとおとなしい数字が並んでいます。16年は15000円~19000円ぐらいだったせいか、上限が一割ぐらい上がると見ている方が多いようです。

 最高値はみな2万円以上の数字で、年末予想で2万円以下の方が3名います。

 上限値は20000円+α ぐらいを想定しているようです。

 2012年末の政権交代以来、日経平均株価で20000円を超えたのは2015年の一時期しかないので、上限の値がこのあたりに合わされているのかもしれません。

(※追記:2017年7月下旬時点で半年を振り返ると、日経平均株価は18335円〔4/14〕~20230円〔6/20〕ぐらいの幅で動いています。北朝鮮リスクやトランプ政権の先行きの不安等が重いのでしょうか・・・)

経済誌に掲載された2017年の為替予測の例

 なお、ドル円の為替予想は以下の予測値が並んでいます。

  • 尾河真樹(ソニーフィナンシャルホールディングス):117円(2~4月)105円(5月) 、年末110円 ※4
  • 唐鎌大輔(みずほ銀行):117円(2~4月)104円(12月末) ※4
  • 内田稔(三菱東京UFJ):118円(1月)98円(12月末) ※4
  • 田中泰輔(ドイツ証券):125円(12月末)105円(4月) ※5
  • 池田雄之輔(野村證券):122円(12月)110円(1月) 、年末120円 ※5
  • 高島修(シティグループ):120円(11月)105円(4月) 、年末118円 ※5
  • 深谷幸司(FPG証券):120円(11月)107円(5月) 、年末110円 ※5
  • 村田雅志’(ブラウン・ブラザーズ):120円(6月)110円(12月末) ※5
  • 佐々木融(JPモルガン):120円(1月)99円(12月末)  ※5
  • 亀岡裕次(大和証券)121円(1月)95円(10月) 、年末99円 ※5

※4:『エコノミスト』(2016/12/27:P27)

※5:『ダイヤモンド』(2016/12/31-2017/1/7新春合併号:P30~31)では、田中氏、池田氏、高島氏、深谷氏が17年後半に円安予想。村田氏、佐々木氏、亀岡氏は17年後半に円高予想になっています。

 ドル円の高値予測を見ても15年と同じく120円台ぐらいが限界と見ている方が多いようです。

 トランプ氏の政策がドル高志向だとしても、あまり上がりすぎると輸出の減少などの問題が出てきます。よく考えてみると、アメリカが120円以上の円安ドル高を全面的に容認する可能性は低いのかもしれません。

(追記:実際、トランプ氏は1月31日に「日本や中国は何年も通貨安に誘導している」とも発言しました。その後の経緯を見ると、4月以降のドル円は108円~114円のボックス相場に入っているように見えます)

2016年初の日経平均株価予想の例

 前回の週刊誌の株価と為替予測に引き続き、いじわる問題を解いてみます。まずは各人の予測を見て、その後に実際の株価と為替が動いたのかどうかを追ってみましょう。

 筆者の手元にはたまたま1年前の『ダイヤモンド』(2015/12/26ー2016/1/2:P41)があるので、この雑誌に載った専門家の予測を検証してみようと思い立ちました。

  • 大川智宏(UBS証券):23500円(16年末)⇒高すぎ
  • 窪田真之(楽天証券):23000円(16年末)⇒高すぎ
  • 松浦寿雄(野村証券):>23000円(16年末)⇒高すぎ
  • 阪上亮太(SMBC日興証券):22000円(16年末)⇒高すぎ
  • 松野利彦(SMBCフレンド証券):22000円(16年末)⇒高すぎ
  • 宮島秀直(パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ):21000円(16年末)⇒やや高
  • 石黒英之(岡三証券):18500円(16年末)⇒実際の値に近い
  • 広木隆(マネックス証券):18000円(16年末)⇒やや安

 2016年の日経平均株価の終値は19114円なので、19000円台をスパッと当てた人はいませんでした。

 しかし、この8人の中では石黒英之氏(岡三証券)が600円差なので、かなり実値に近い予測値です。同氏は2017年に高値21000円(12月)安値17000円(5月) という予測を出していますが、当たるかどうかが気になります。

 8人中、近い値が出たのはわずか1名なので、やはり、予測を当てるのは難しいようです。

 8人のコメントを見ると、株価変動の要因に米大統領選やFRBの利上げ、原油価格の変動等が挙げられていますが、ずばり「トランプ当選」で株高になると書いた人も、英国のEU離脱について言及している人もいませんでした。この二つは想定外だったのでしょう。

 この中で松浦寿雄氏(野村証券)、松野利彦氏(SMBCフレンド証券)宮島秀直氏、広木隆氏は前節に2017年の予測値が出ています。松浦、松野の二氏は22000円、宮島氏は20750円、広木氏は23000円なので、広木氏が大きく強気予想に転じました。

2016年初のドル円の為替予想の例

 前掲の『ダイヤモンド』(2015/12/26ー2016/1/2:P43)を元にドル円の為替予想のほうも検証してみます。

  • 池田雄之輔(野村証券):135円(16年末)⇒高すぎ
  • 高島修(シティグループ証券):129円(16年末)⇒高すぎ
  • 田中泰輔(ドイツ証券):128円(16年末)⇒高すぎ
  • 村田雅志’(ブラウン・ブラザーズ・ハリマン):128円(16年末)⇒高すぎ
  • 植野大作(三菱UFJ):127.5円(16年末)⇒高杉
  • 深谷幸司(FPG証券):126円(16年末)⇒高すぎ
  • 唐鎌大輔(みずほ銀行):118円(16年末)⇒ほぼ当たり
  • 亀岡裕次(大和証券):114円(16年末)⇒やや低

 2016年12月30日のドル円の終値は117円ぐらいですから、惜しくも1円だけずれていたのが唐鎌大輔氏でした。この唐鎌氏は2017年に関して104~115円という予想を出しています。このうち、高島修氏、田中泰輔氏、村田雅志氏、深谷幸司氏、亀岡裕次氏の5名は前節で2017年の予想値を掲載しています。

 8名の昨年のコメントを見ると、やはり、トランプ当選や英EU離脱が為替変動要因になることは書かれていませんでした。この二つの出来事は想定外だったことが伺えます。

2015年初の日経平均株価と為替予想の例

 次は2015年初の予測を見てみます。『エコノミスト』(2015/1/20:P20~21)に記載された15年12月の株価と為替予想をもとに考えてみましょう(12月以外で為替の高値予測を出している人の場合は「〇月為替」と表記しています)。

  • 門司総一郎(大和住銀投信):25000円/125円(10月為替)⇒株価高すぎ
  • 石黒英之(岡三証券):23000円/135円⇒株価高すぎ。円安すぎ 
  • 広木隆(マネックス証券):22000円/130円⇒株価高すぎ。円安すぎ
  • 渡辺英茂(三井住友):21000円/125円(8月為替)⇒株価やや高 
  • 藤戸則弘(三菱UBJ):20800円/130円⇒株価やや高。円安すぎ 
  • 山田勉(カブドットコム証券):20000円/135円⇒円安すぎ 
  • 黒瀬浩一(りそな銀行):20000円/130円⇒株やや高、円安すぎ 
  • 菊池正俊(みずほ証券):20000円/120円(平均)⇒株やや高。年間平均高 
  • 鈴木和仁(しんきんアセット):19500円/127円⇒円安すぎ 
  • 岡田允彦(住友生命保険):19000円/125円、円安すぎ 

 2015年12月の為替は1ドル113円~117円ぐらいで動いており、12月30日の日経平均株価の終値は19033円なので、鈴木氏、岡田氏の二人の予測が実際に近い値です。岡田氏の株価予測はほぼぴったりです。

 そのほか、『エコノミスト』(2014/12/30-2015/1/6合併号:P30~31)を見ると、2015年末の為替に関して佐々木融氏(JPモルガン・チェース)が120円と予測しています。これは実際の値にやや近いですが、前掲の例の中では、為替に関してはぴったり当たった予測は出てきていません。

 全体的に見ると、専門家でも予測的中率はそんなに高くはないようです。

やはり、エコノミスト予測も的中率は高くない?

 色々な株価、為替予測を見てきましたが、やはり、的中率はさほど高くないようです。

 それが本当に高い確率で予測できるのなら、とっくの昔にこの人たちは巨富を得ているはずなので、これは当たり前の結論です。

 株や為替で本当に大儲けしていたらハワイかどこかで楽しく暮らしているに違いありません。やはり、そういう人は予測の場には出てこないのでしょう。

 こうした予測では、株価でも為替でも似たような数字の範囲に予測者が集まりがちですが、この背景には、大勢から外れたことを言って見放されたくないという心理が働いているように思えます。

 これは情報分析や未来予測に関わる仕事ではよくある話です。アメリカではCIAを始めとしたインテリジェンスの専門家が情報部門部門のコミュニティーをつくっていますが、その世界では「常識的」な範囲に収まるように報告書が作成されがちだとも言われています。インテリジェンスコミニティ―では予測者の横並び志向がダメなレポートの発生源になることも少なくないのです。

 ダイヤモンド誌の例では、結局、株価、為替で実際の値に近かったのは多数派ではない方々でした。過去の予測の結末を見ると、未来予測では「みんなが言うこと」は必ずしも当てにならないことが分かります。

 トランプ当選を予測できたのは、ごく限られた一部の人たちでしかなかったことを思い出し、多数派の意見を盲信しないように、賢明に機転を働かせていきたいものです。