トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

おんな城主・井伊直虎 あらすじ、登場人物、俳優、史実を総点検。見所はどこ?

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武田軍が遠江国で家康軍を破った三方ヶ原の戦い(1572年。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 1月8日から大河ドラマ「おんな城主 直虎」が始まります。毎週の放映時間は、NHK総合20時~20時45分、NHKBSプレミアムで18時~18時45分です

 男の名前で戦国時代に井伊家を継いだ「女城主」の物語を柴咲コウさんが熱演するようですが、果たして、どんな物語になるのでしょうか(このドラマの脚本は「世界の中心で愛を叫ぶ」を手掛けた森下佳子氏、制作統括は岡本幸江氏)。

 どうやら第1回~第4回は直虎の子供時代が描かれるため、子役俳優(新井美羽さん)がかなり長く登場する模様・・・。柴崎さんのPR画像が売りになっているのに、第4回まで子供時代(柴崎さん不在気味?)というのはいかがなものか。

 そう思いながらも、女城主という存在の興味深さに惹かれ、今回は井伊直虎の人物像を探ってみました。

井伊直虎の遠江国ってどこ?何県?

 戦国マニアではない筆者は、井伊家の領地がどこか分からなかったのですが、井伊家ゆかりの地である遠江(とおとうみ)は今の静岡県西部にあたります。 

 駿河(静岡県中部~北東部)の今川義元、甲斐(山梨県北西部)の武田信玄、三河(愛知県東部)の徳川家康という三大勢力に挟まれた小国を井伊家が治めていたわけです。そして、相次ぐ戦で当主が殺される中で生き残った姫が「直虎」として家を継ぎ、国を守るというのが、このたびの大河ドラマの基本設定になります。

 そこに幼少時に将来を誓った許嫁の亀之状(こちらは幼名)=井伊直親(三浦晴馬)との恋愛物語を入れて、ドラマ性を上げる演出をこらしているのです。

 戦国無双や戦国BASARA等にも直虎は出てくるらしいので、この女城主の大河ドラマは、戦国ゲームにはまっている歴女をターゲットにしているのかもしれません。

 ちなみに、井伊と言えば幕末に安政の大獄を起した井伊直弼が有名ですが、この人は井伊家の末代の子孫にあたります。

井伊直虎ってどんな人?城主になるまで

 井伊直虎の話に入る前に、一度、物語の概略を見てみます。

 NHKの直虎サイトその他を見ると、だいたい、以下のようなあらすじになります。

 井伊直虎の幼名は「おとわ」です。おとわはわけあって寺に入らざるをえず、そこで「次郎法師」と名乗り、その後、「井伊直虎」として家を継ぐことになります。

 一つの名前で人生を終える現代人に比べると、昔の人は苗字+名前が何度も変わるので、非常に覚えにくいのですが、この「改名」という儀式には、人生の節目で気分を一新させる効果があります。人生には心機一転、過去と断絶すべき時期があるので、筆者は歴史小説等を読むたびに、元服という制度を復活させたらよいのではないかと思うのです。

 話が脱線しましたが、まず、「おとわ」が成長するまでの物語では、父である井伊直盛が今川義元とともに桶狭間の戦いで死ぬまでの歴史が描かれます。

 井伊家の当主・直盛には男の子が生れなかったので、娘のおとわを幼いころに分家の男子である亀之丞と婚約させました。直盛は男子が生まれなかったためにお家断絶を恐れ、叔父である直満の子(亀之丞)を養子とし、おとわと結婚させようとしたわけです。

 しかし、この頃の井伊家は大国の今川家の支配下にあり、亀之丞の父(井伊直満)は今川義元に謀反の疑いをかけられ、自害をよぎなくされます(これは反直盛・直満の小野和泉守の讒言が原因)。そのため、亀之丞は9歳で信濃国(新潟県)に逃げざるをえなくなりました。

 残されたおとわは他の縁談を断り、出家するのですが、その時、井伊家の菩提寺の住職は彼女に「次郎法師」という男の名前をつけています。

 この「法師」という名前がミソで、平家物語を歌った「琵琶法師」等のような人たちは正式な出家者ではありません。実際には出家僧の修行をしているのですが、「法師」と名付けることで、住職は彼女が城に帰れる伏線を用意しました。次郎法師は半僧半俗のような状態なのです(当時、井伊家の惣領が寺に入る際には「備中法師」と名乗っていたことにちなんだ命名らしい)。

 そして、そこから10年が経った頃に激動の時期がやってきました。

 今川義元に井伊直満に関する讒言を行った小野和泉守が病死。このチャンスを見て亀之丞が遠江国に帰ってきたのですが、おとわは次郎法師となってお寺にいるので、結婚ができません。井伊家を継がねばならない亀之丞は井伊直親(なおちか:三浦春馬役)と名乗って別の娘と結婚し、次郎法師は悲嘆にくれることになります。

 このあたりは悲恋ドラマで女性の心をつかもうとしているのでしょう。

井伊直虎が国を治めてみたら・・・

 直虎が「おんな城主」になるのは1565年のことでした。

 しかし、戦国時代なので、家臣のほうからは「女城主なんてありえんだろ」という反応が返ってきます。

 「ガラスの天井」をはるかに上回る強度を誇る「鋼鉄の壁」で天井がガードされ、女性の統治者は推古天皇や斉明天皇、持統天皇、尼将軍・政子など、例外的にしか認められない時代の話だからです(例外にしては意外と多い?)。

 物語では、直虎が家臣に城主の資質を認めさせるまでの過程や、戦乱からの復興政策が出てきます。どうやら直虎が一生懸命、農民とともに働く場面があるようです(領地は戦争で焼け野原になっているので、復興が大変だったとのこと)。

 そして、ひ弱な虎松をスパルタ教育風にいかに鍛えるか、という問題も浮上してきます。当時は寺が教育をしていたので、虎松はそこで他の子供と一緒に学ぶことになりました。この物語は既婚者の歴女対策と思われます。

(※虎松は大きく成長し、直政と名を変えて家康の最強部隊「井伊の赤備え」を率いることになる。井伊直政は上野国箕輪城(群馬県高崎市)に徳川家家臣としては最も多い12万石を与えられ、徳川四天王、徳川三傑の一人として讃えられた)

 その後、本格的な大バトルが始まります。北から迫る甲斐の武田信玄軍、西から迫る三河の徳川家康軍の狭間で生き延びるサバイバル物語が待っているわけです。

 NHKのサイトでは、制作意図について、これは現代的に言えば「中小企業を急に継ぐことになってしまった若き女社長がいかに会社経営に取り組むか」「大国に囲まれた小国がどう生き残りを図るのか」という問題だと記しています。

井伊直虎役は柴咲コウ:注目の配役一覧

 言わずと知れた柴咲コウさんは1981年生まれなので、いつの間にか30代半ばのベテラン女優になっています。20代の若手女優で女城主は厳しそうですし、40代だとオバサンっぽくなってしまうので、30代半ばぐらいがぴったりはまる年頃に見えます。

 最近のドラマでは「信長協奏曲」に出たほか、脚本の森下佳子さんが手がけた「世界の中心で、愛を叫ぶ」でも出演しているので、両者の組み合わせを考えたのでしょう。

 役柄と俳優を以下、並べてみます。

  • 井伊直虎(次郎法師):柴咲コウ(※子供時代は新井美羽)
  • 井伊直盛(直虎の父):杉本哲太
  • 千賀(直虎の母):財前直見
  • 井伊直平(直虎の曽祖父):前田吟
  • 井伊直親(亀之丞):三浦春馬(※子供時代は藤本哉汰)
  • 虎松(直親の子):菅田将暉
  • 小野政次(筆頭家老):高橋一生
  • しの(直親の妻):貫地谷しほり
  • 南渓和尚(直虎の大叔父:井伊家の軍師):小林薫
  • 傑山(兄弟子だが、直虎の護衛役):市原隼人
  • 今川義元:春風亭昇太
  • 今川氏真(義元の子):尾上松也
  • 寿桂尼(義元の母。政治に関わり「女戦国大名」とも呼ばれる):浅岡ルリ子
  • 徳川家康(後に虎松を家臣に受入れる。幼名は竹千代):阿部サダヲ
  • 築山殿(家康の妻・直虎の友だち):菜々緒
  • ナレーション:中村梅雀

 いろいろな名前が並んでいますが、なぜかNHKのサイトには織田信長の名前が見当たりません。桶狭間の戦いという重要イベントの当事者のはずなのですが・・・。

 キャストを見て「なんで僧侶が軍師なんだ?」という疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんが、当時の戦国時代では、僧侶兼軍師という人物がかなりいました。例えば、今川家の名軍師である太原雪斎(京都五山の建仁寺出身)、毛利家の参謀・安国寺恵瓊(安芸=広島の安国寺出身)、真田丸に出てきた北条家の板部岡江雪斎などです。こうした僧侶が出てきたのは、当時のお寺が、現代でいう大学の機能を兼ねていたからです。戦国時代には、お経読みで鍛えた漢文能力を駆使して、政治・経済に関わる中国文献や古典を読み込み、政治に関わった僧侶が数多く出てきています。

おんな城主・直虎のあらすじ

 第一話「井伊谷の少女」

 井伊家の娘おとわ(後の井伊直虎)が直盛(父)と千賀(母)と過ごした少女時代が描かれ、幼馴染の亀之丞との縁談や、亀之丞の父(井伊直満)が今川義元に謀反を疑われて殺される話が描かれます。そして、義元が亀之丞の首まで要求してきた時、井伊直盛は亀之丞を信州に逃がすことにしました。

 第二話「崖っぷちの姫」

 その後の井伊家の危機。井伊直満が謀反の疑いで殺され、直満の敵にあたる小野政直が今川家の見張り役になって井伊家の政治を動かそうとします。さらに政直は息子(鶴丸)とおとわを結婚させ、井伊家を継がせようと試みました。この時、おとわは亀ノ丞との約束を守るために「出家」という奇策を思いつくのです。

 第三話「おとわ危機一髪」

 おとわが政直に背いたことを憤る今川義元の怒りを鎮めるための井伊家の工作が主たる内容。南渓和尚が今川館や今川家の軍師である太原雪斎を訪問。おとわは今川家の政治を背後から動かす寿桂尼と面会し、出家を認めさせました。その後、おとわは「次郎法師」として仏門で修行を重ねます。

 第四話「女子にこそあれ次郎法師」

 小野政直が井伊家での影響力を強める中で直盛が父の所領の一部を取り戻す話と、若き日の直虎の修行の日々が描かれます。

 第五話「亀之丞帰る」

 次郎法師が出家してから9年後に小野政直が病死し、亀之丞が井伊谷に帰ってくる際の物語です。このころ、武田家と北条家、今川家が三国同盟を結ぶ時代にかつての恋人との再会がなされるわけです。

 第六話「初恋の別れ道」

 亀之丞が元服して井伊直親と名を改めます。しかし、次郎法師が還俗し、直虎と結ばれるまでには壁がありました。ここでは、若き日の直虎の悲恋が描かれています。

 第七話「検地がやってきた」

 井伊直親の帰参と家督相続が認められるかどうか。この一大事に際して、交換条件は、今川家の手の者による大規模な検地でした。 井伊家の隠し里への検地を進める今川家とのやりとりに苦心しながらも、彼らは何とかその試練を耐え忍びます。 

 第八話「赤ん坊はまだか」

 直親の妻しのは子供がいない。その悩みを知った次郎法師は子を産むための妙薬の入手に苦心。ちょうどこの頃に、今川義元が尾張の織田家攻めを画策。井伊直親は直盛に参陣を申し出るが、どうなるのでしょう。

 第九話「桶狭間に死す」

 その後、歴史が示す通り、今川義元に従って織田攻めに参加した直盛は敗戦の中で討ち取られてしまいます。次郎法師は負傷兵たちの救済に力を尽くします。ちょうど、この時、松平元康(※後の徳川家康)が空き巣になった岡崎城に入城。今川家から独立しました。

 第十話「走れ竜宮小僧」

 小野政次(家老)と井伊家の奥山朝利との刃傷沙汰が勃発。その後、次郎法師は政次を寺にかくまいます。その経緯とは。この頃、しのと直親の間に虎松が誕生。政次は直満に所領を返上することを申し出、松平元康も今川家に反旗を翻しました。

 第十一話「さらば愛しき人よ」

 しかし、元康の妻・瀬名は今川家で人質になっています。次郎法師は瀬名を救うために今川家と対決しました。直親はこの頃、今川家と手を切り、元康と手を組む決意を固めることになりました。

 第十二話「おんな城主直虎」

 井伊直親らは今川家からの呼び出しに応え、駿府に向かいます。しかし、道中に掛川城近辺で今川勢に包囲されてしまいました。この時、今川家は虎松の命も差出せと要求してきた。危機の中で、次郎法師には人生最大の決断の時が迫っていたのです。

 第十三話「領主はつらいよ」

 井伊直虎は虎松が元服するまで後見人として国を司ることを宣言。しかし、家臣の抵抗は収まりません。虎松の母しのまでが反発し、瀬戸村の百姓たちから「徳政令」による借金棒引き要求が噴出する中で、直虎はどうするのでしょうか。

 第十四話「徳政令の行方」

 直虎は結局、徳政令を実施しませんでした。怒り心頭の農民たちは今川家に徳政令を出してくれと訴えます。今川家と井伊直虎の意向が合わず、今川家につく家臣も出てくる中、おんな城主の信念が試されます。

 第十五話「おんな城主対おんな大名」

 徳政令を拒んだ直虎に今川家の実力者・寿桂尼が激怒。直虎に対して駿府に説明せよと命令を出しました。以前、今川家への道中で直親が殺された記憶が井伊家の面々の脳裏に甦ります。果たして、直虎は今川家の本拠地・駿府に向かうのか・・・。

  第十六話「綿毛の案」

 直虎は駿府から帰還し、家臣と共に井伊家の所領でいかに産業を盛り立てるかに悩みました。そこで新産業のプランとして木綿作りが浮上する。綿の実を栽培しようとしたものの、領内は人手不足。何か妙案はないものかと直虎は大いに苦心。その答えとは・・・。

 第十七話「消された種子島」

 直虎は部下が実演して見せた火縄銃(種子島)の威力に驚き、鍛冶が盛んな井平の村で生産しようと試みた。そのころ、次代を担うはずの虎松が寺で手習いを始めていたが、家臣の息子が虎松に手加減しながら五目並べをしていることをたまたま知ってしまう。直虎は激怒し、それを改めさせた。しかし、そんなことをしている間に、「種子島」が盗まれたという大事件が発生。盗んだのは、いったい、誰なのか。

 第十八話「あるいは裏切りという名の鶴」

 「種子島」を盗んだのは筆頭家老の小野政次だった。政次は種子島製造は今川家の謀反のためだという疑いを直虎にかけ、虎松の後見人を降りることを要求した。そして、直虎と政次が駿府の今川館に向かう間に、臣下の一人が種子島製造は今川家に勝ってもらうためだと説明。前後関係が分からぬまま、直虎はなぜか救われることになった。

 第十九話「罪と罰」

 近隣の領主(近藤康用)が井伊直虎に山の木々を井伊家の臣下に盗まれたと言ってきた。現場を見ると、近藤領内のみならず井伊領内の木々も盗まれていた。山を調べている間に両者は犯人を捕まえたが、その処分を巡って、両者の意見は分かれ、衝突するのであった・・・。

 第二十話「第三の女」

 亡き直親の娘と称する少女がやってくる。何と、元許婚(直親)に隠し子がいたとは・・・。

 直虎は衝撃を受けたが、真偽を調べるためにもその少女(高瀬)を預かることにした。果たして、この子は井伊家の一員なのか、はたまた、どこかから送られたスパイなのだろうか。

 そんなことを調べている間に、武田家や織田家の新たな動きが浮上してくるのであった。

 第二十一話「ぬしの名は」

 井伊家は新産業の産品である綿布を浜名湖沿いの港町で売ろうとするが、そこで直虎は銭入れを盗まれた。だが、犯人を追う直虎は逆に捕らわてしまう。その後、井伊谷には盗賊団から身代金要求が届く。

 直虎は井伊家の家臣に救出され、その後、おんな城主は違った場で盗賊団のかしらと思わぬ再開を果たすのであった。その時、直虎は何を申し出るのだろうか。

 第二十二話「虎と龍」

 直虎は井伊家の商いとして材木を売ろうと試みた。その際に盗賊団の力を活かすことにしたのだが、果たして、うまくいくのか。

 第二十三話「盗賊は二度、仏を盗む」

 直虎のもとに、臣下の菩提寺からご本尊の仏像が盗まれたという知らせが届く。その犯人は誰なのか。直虎の見立てと臣下の見立てが異なり、難しい問題が浮上した。南渓和尚は代わりの本尊を寄進して直虎一門の内紛を止めようと試みたのだが・・・。

 第二十四話「さよならだけが、人生か?」

 今川家は同盟を破った武田家に塩を売るのをやめた。今川家は井伊直虎に新野家の三女(桜)を今川家の重臣である庵原家へ嫁がせることを命じる。一方、岡崎では後の家康が信長と面会していた。

 第二十五話「材木を抱いて飛べ」

 井伊家の材木を買おうとする商人が見つかったが、今川家は武田家への「塩止め」を進め、武田家に通じた商人を取り締っており、井伊家の取引先にあたる「成川屋」が徳川家に材木を流通させたことが問題視されてしまった。

  ・・・

 桶狭間の戦いの後、井伊直親も今川家に暗殺されるという悲劇が続きます。戦死者が相次ぎ、井伊家には直親の2歳の子供(虎松)しか残っていません。

 そこで、井伊家の菩提寺の南渓和尚(小林薫)は次郎法師に「男子」の役割を与えて元の家に戻す(還俗=出家をやめること)という奇策を講じました(この和尚、どれだけ政治力があるんじゃ・・・影響力強すぎだろ)。

 際立つ策士ぶりを発揮した南渓和尚の機知に助けられ、次郎法師は「直虎」と名前を変え、亡き許嫁の子である虎松の後見人として国を治めることになります。

 亡き父、亡き許嫁の願いを背負い、勇ましく戦国時代に挑むわけです。

 ・・・

 第一話は直虎の子供時代から始まるのですが、筆者の印象では、第九話の桶狭間の戦いで総崩れになる所から始めたほうが面白くなるような気がしてなりません。3月になってやっと本格的な物語が始動するのでは遅いでしょう。最近の視聴者は飽きやすいのに、昔ながらの作り方になっているような気がします。

 例えば、田中芳樹氏の『アルスラーン戦記』(2015年、16年に再びアニメ化された)は冒頭に主人公の父である不敗の王が騎馬軍団を率いて大敗する話から始まるのですが、最初に大イベントを設定しておくと、物語が世の耳目を引きやすいからです。

 NHKサイトの情報では、この物語は治国(内政)の話や人間関係の相関などにかなりの力点が置かれているように見えます。

 しかし、大河ドラマと他のドラマの違いは、大がかりな戦闘シーンがつくれるところにあるので、その強みを最大限に生かさないのはもったいないことです(戦国無双その他にハマった歴女たちを引き付けたいなら、戦闘シーンが非常に大事だとも言えます)。

歴史上の井伊直虎の人物像はどんなもん?

 井伊直虎の生年は不明であり、1582年(天正10年)に死んだと言われています。史料は不足気味なので、実像には謎がたくさん残っているようです。

 次郎法師とも女地頭とも呼ばれていました。地頭というのは鎌倉幕府の役職名でしたが、この頃は領主に近い意味合いで使われています。

 NHKの大河ドラマのあらすじの通り、直虎は生涯未婚で幼い子供を立て、事実上の当主を務めていた人物です。女の次郎法師しか後継者がいなかったのが当時の実情だったとも言われています。

 どうして直虎が尼の姿で政治をしているのかと言うと、そうすることに現実的なメリットがあったからなのかもしれません。

 太閤秀吉が検地を行う前の戦国時代では、領民の住所や土地の情報が不正確なので、正確な領民の情報を得るためには門徒の住処を把握している寺社の情報が重要でした。直虎が「次郎法師」であったことは、この寺社勢力の協力を得て国を治める上で、非常に役に立ったはずです。

 また、当時は一向一揆の時代でもあったので、自国内の宗教勢力と協力関係をつくっておくことは、一向宗の浸透・革命から体制を守るために非常に大事なことでした。

 政治的な事実関係を見ると、直虎の主君にあたるのは今川氏真です。

 この人は第一話の舞台である井伊谷に徳政令(借金帳消し)を出しています。この時、直虎は徳政令を2年ほど止めていたのですが、その理由は、これによって銭主方(債権者)を敵に回したり、鎌倉幕府末期のように経済秩序が崩壊するのを恐れたためだと思われます。債権放棄される農民側は代表者を通じて今川勢と組んでいたので、これは非常にややこしい問題だったはずです。

 その後、今川家は遠江国内で小野道好を謀反させ、井伊谷城を占拠させます。ここで虎松は家康領内の三河蓬莱寺に逃れ、直虎はしばし難を避けた後、家康側の軍勢とともに自国を取り戻す戦いを展開していきます。

 その後、小野道好を遠江国から追払い、家康の尽力で直虎は所領を回復。家康の軍勢と共に今川家と戦い、1569年(永禄12年)に掛川城(今川家本拠地)を攻略しました。

 直虎は織田・徳川連合軍に参画して武田の騎馬軍団とも戦ったりしています。この軍勢が武田勢を破った後、「井伊の赤備え」の中に徳川方についた武田騎馬軍団の残存兵が入るようになりました。

 この赤備えを井伊直政(幼名は虎松)が率いて、最後は徳川四天王の一翼を固める名家になるわけです。

 大河ドラマは大筋で歴史の流れをなぞっていますが、史実上、怪しいと言われているのは直虎と直親との許嫁関係(年齢差がはなはだしいため)です。

 そのほか、直虎=次郎法師に関しても、「それは事実ではない」という意見が出たり、直虎=男性説が出たりしています。

 しかし、あくまでも物語なので、大河ドラマでは読者の心に響くものがあれば、それでよいのでしょう。

疑問:井伊直虎に1年50話もの物語が必要なのか?

 筆者の感覚としては、「1年50話は長すぎる」というのが正直な感想です。

 名作を生むためには、本来、冗長なストーリーは削除すべきなのですが、50話もあると、逆に要らない物語が追加されかねないからです。

 スピルバーグの『ジョーズ』がヒットした背景には、原作の冗長なストーリー(一種のメロドラマ)を全削除して、バトルだけに絞る工夫があったのですが、1年50話だと、この真逆になる可能性が高いのです(昔の予算豊富な頃の年50話アニメなどでも、「それは要らんだろ」と思うような冗長な物語が多数、追加されていることがよくあります)

 忙しいのに情報が多すぎる現代人は、精選されたエッセンスを見たがっているのに、大河ドラマは昔ながらの50話構成にこだわりすぎているように思えます。

 もっと絞り込んで、エッセンスで勝負する形にしないと、忙しい現代社会では大河ドラマの視聴率が減少傾向になるのは止められないのではないでしょうか。