トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

2017年、自動運転車はどうなる ホンダ、日産ルノー、アウディ等がCES2017で展示

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ラスベガス市。出所はWIKIパブリックドメイン画像

  昨日はトランプ氏がトヨタのメキシコ工場計画を批判したことが日本企業にショックを与えました。しかし、従来の自動車とは別に、2017年には自動運転車の開発計画も本格化していくはずです。今日はラスベガスで開催されたCES(※世界最大級のIT・家電等の見本市)での自動運転車の展示に関する報道を紹介してみます。

CESって何? 全世界の主要テクノロジー企業の展示会

 全米民生技術協会(CTA™)が開催する主要テクノロジー企業の展示会である「CES 2017」(CES® 2017)が1 月5~8日までアメリカのネバダ州、ラスベガスにて開催されています。この展示会には「約150カ国から 5 万人の業界プロフェッ ショナルが集まり」、CESの中のスタートアップ企業部門である「Eureka Park」には「33カ国から600 社以上」が集結するのです。

 これはCESの日本語サイトに出ているプレスリリース(12/15)の情報ですが、その中でCTA会長兼 CEOのゲイリー・シャピロ氏はこの会合の意義を以下のように訴えていました。

「まさに世界が CES に集結します。 地球上のすべての主要テクノロジー企業が、何らかの方法、形態、または形式で、この展示会に参加します。全世界の大企業/中小企業、政府、メディアなどのリーダーたちが、最新の製品とサービスの共有 や体験、次のビジネスパートナーとの面談、取引、あるいは世界を良い方向に変革するテクノロジーの 次の波についての情報収集などを目的に CES に集まります」

自動運転車が勝手にお金を稼ぐ? ホンダ「無人タクシー」構想

 ホンダはこのCESでソフトバンクと共同研究中のAI(人工知能)備えた自動運転の電気自動車NeuV(ニューヴィー)を公開しました。このAIは「感情エンジン」と呼ばれ、運転手の顔色・表情・声色等からストレスの有無・軽重を知り、安全運転を目指すように設計されたものです。

 注目すべき点は、空き時間に無人タクシーとしてお客を乗せ、電気代が高くなる時期に蓄電池に充電した電気を売るなどして無人自動運転車が勝手にお金を稼いでくるという使い方を想定していることです。

 つまり、無人自動運転が完全実用化すれば、オーナーが出勤して仕事をしている間に、その車が勝手にどこかでタクシーをして、何万円かを稼いでくれる時代が来る可能性があるわけです。

 このホンダのNeuV(ニューヴィー)の構想が日経テクノロジー(「自動運転とAIが進化したとき、これがホンダの提案」清水 直茂 2017/1/6)で紹介されていました。 

(NeuVが)朝、所有者を職場に自動運転で運ぶ。このとき所有者が緊張していると推定できれば、カフェに寄り道することを提案し、コーヒーを買う。コーヒーの種類などは自動で店に予約しておき、代金もクルマが自動で支払う。所有者はコーヒーを受け取るだけだ。職場に送った後は、午後7時に迎えに行く。その間はクルマを使わないため、カーシェアやライドシェアによるサービスでクルマを他人と共有する。NeuVは電気自動車(EV)なので、車両の共有相手がいなければ電力を売電することもできる――。

 本当に実用化に成功したら、自動車の概念そのものが変わる可能性があります。

 自動運転車が副業してくれるようになれば、自動車価格が上がっても、何年かしたら、ニューヴィーが自ら稼いだお金(累計額)で購入代金と同程度のお金を稼いでくれるかもしれないのです。そうなれば、この車は”金のなる木”でもあるので、自動運転車が不動産のような投資対象になる可能性が出てきます。

 ホンダの研究開発子会社「株式会社本田技術研究所」がアルファベット社(グーグルの親会社)の子会社ウェイモ(自動運転の研究開発を主業とする)と共同研究を行っているので、あと何年かしたら、「グーグルタクシー」と称したサービスが出てきても不思議ではなさそうです。

日産・ルノーはDeNA、マイクロソフトと連携

 日産は日本勢の中では初めて「完全自動運転」の走行実験を行う予定です。その計画にはDeNA社が関わり、日本の国家戦略特区で実施されます。

 日産は自動運転が進化しても人間のサポートが不可欠という立場を取り、人間のオペレータが人工知能による運転を遠隔サポートすることを考えています。

 以下、日産のCES展示に関する日経ITpro記事「日産の自動運転では人間のオペレーターがAIを遠隔サポート、ゴーンCEOの基調講演」2017/1/6、中田 敦)を紹介します。 

 日産の発表の目玉が「Seamless Autonomous Mobility(SAM)」だ。自動運転技術というと、AIが人間をサポートするイメージがある。しかしSAMでは逆に、日産のオペレーションセンターに勤務する人間が、不測の事態に直面して判断不能に陥った自動運転車のAIを手助けする。

 日産は2020年までに、高速道路だけでなく市街地でも利用できる自動運転技術を市場に投入する計画で、将来は無人運転も実現するとしている。しかしどれだけ自動運転のAIが進化しても、事故現場や工事現場など、AIが判断に迷う突発的な事態に遭遇する恐れがある。SAMはそのような場合に、人間のオペレーターがネットワーク経由でAIをサポートし、AIに対して代替のルートなどを教授する。

  このSAMには日産と提携したNASAの惑星探索ロボット等の遠隔操作技術が活かされる予定です。前掲記事では「SAMでは人間のオペレーターがAIに指示した問題解決策は、日産のクラウドに蓄積され、同じ地域を走るほかの自動運転車にも伝えられる。人間のオペレーターがそれぞれの自動運転車に対して指示を出す必要は無い」とも解説されていました。

 アメリカが総がかりで開発したNASAのシステムが活かされるというのは、すごい話ですが、17年からトランプ政権になるので、米国が開発した技術が何で日産・ルノーのために使われるんだ!?等のイチャモンをつけられないかどうかが気がかりです。

 そのほか、インターネットに接続するコネクテッドカーについては、車載端末にマイクロソフト社の「Cortana」(音声通話システム)が採用されます。これは声でカーナビの行先などを変える仕組みです(※なお、マイクロソフト社もCES2017で自動運転のデモンストレーションを行っている)。

フォード社も自動運転車のモデルを公開

 CES2017でのフォード社の試みに関してはニュースサイトの「レスポンス」が記事を公開(「フォード、次世代自動運転車の開発車両を初公開」1/7)しています。

 フォードモーターは、ステアリングホイール、アクセル、ブレーキなどの操作を完全に自動化する「レベル4」と呼ばれる完全自動運転車を、2021年までに実用化する計画を掲げている。現在、フォードブランドの主力中型セダン、『フュージョン』ベースの開発車両を使用し、米国の公道などにおいて、自動運転車の走行テストに取り組んでいる。CES17で初公開されるのが、次世代の自動運転車の開発車両。最新のフォード『フュージョン ハイブリッド』をベースにした開発車両となる。

 フォードは自動運転の開発に際して、アマゾンと連携しています。

 アマゾンの人工知能「アレクサ」を搭載したスピーカー型デバイス「エコー」に車載テレマティクスシステムの「シンク」をつなげ、部屋のなかで声一つで車の空調を変えたり、充電残量の確認などを可能にしようとしているのです。

ドイツ勢の動向は? アウディ、ZF、Bosch等 VWはアマゾンと連携

 同じく日経ITPROでのCES2017速報を見ると、ドイツ勢の動向も紹介されていました(「自動運転で大手半導体メーカーが火花、「NVIDIA陣営」に独Audi、独ZF、独Boschが参加」2017/1/6、中田 敦)

米NVIDIAのJen-Hsun Huang創業者兼CEO(最高経営責任者)は2017年1月4日(米国時間)、「CES 2017」の基調講演を行い(写真1)、同社の自動運転用AI(人工知能)プラットフォーム「NVIDIA DRIVE PX 2」を自動車メーカーの独Audi、自動車部品メーカー大手の独ZFと独Boschが採用すると発表した。AudiとNVIDIAは2020年までに「レベル4」の自動運転を実現するとした。

 NVIDIAの車載コンピュータDRIVE PX 2は16年までにスウェーデンのVolvo Cars、米Tesla Motors、中国Baiduniに採用されることが決まっていました。これにZFとBosch(ともに自動車部品メーカー)が加わります。

(※NVIDIAは自社の「BB8」のほか、アウディ社と共同開発したAudiQ7の自動運転をCES2017で公開)

 そして、インテル社が開発した自動運転プラットフォームを「Intel Go」に関しても、同記事は「独BMW GroupとイスラエルMobileyeの3社で自動運転車の公道テストを2017年後半に開始」されると報じています。

 自動運転のプラットフォームをどこがつくるのかは大事な問題ですが、ここで大手半導体メーカーが自動車(部品含む)メーカーを主導しようと試みているわけです。

 そのほか、フォルクスワーゲン(VW)社がアマゾンの音声認識プラットフォーム「アレクサ」を活用することも発表されています。

(日経テクノロジー「音声認識は自動車のUIの要、VWがAmazonとタッグ  クルマのパーソナライズ化も加速」根津 禎 2017/1/06)

(フォルクスワーゲン社は)次世代UIの運転席として、3次元ディスプレーとヘッドアップディスプレー(HUD)、視線追跡機能を搭載したものを出展。例えば、運転者の視線に応じて、車載ディスプレーに表示する映像を切り替えることを想定する。プレスカンファレンスでは、音声認識を将来のUIの要と位置付け、米Amazon.com社と提携し、同社の音声認識プラットフォーム「Alexa」を活用していくことを明らかにした。

 アマゾンが自動車開発にも参画する時代となりました。人工知能を開発するIT大手と自動車メーカーとの協力関係も進んできているので、この合従連携が次の経済社会をどう変えていくのかを、しっかりと注視していきたいものです。

完全自動運転になったらどうなる? FCA社の構想 

 日経テクノロジーのCES2017速報(「完全自動運転車への更新機能、FCAが提案」清水直茂 2017/1/4)ではフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のコンセプトカーが紹介されています。

(※FCA社は、アルファベット社(グーグルの親会社)が自動運転開発のために設立したウェイモ社と協力関係にあり、ミニバン型自動運転車等の開発を進めている)

「コンセプト車は、米自動車技術会(SAE)が決めた自動運転の水準で、レベル3相当の自動運転機能を実現する。運転者が車両を監視することが前提で、高速道路などで運転を車両に任せられる」

「周囲を認識するセンサーや、アルゴリズムを演算処理するプロセッサーなどの主なハードウエアは、完全自動運転車を想定した高性能品を用意した。カメラは短距離と長距離の2種類あり、車両の前と横、後ろに、ミリ波レーダーは車両の前後などに搭載する。赤外線レーザースキャナー(LIDAR)を用意し、車両の前方を認識する。さらに超音波センサーを車両の前と後ろのバンパーに備えた」

「カメラは車内にもある。運転者が監視していることを認識するために、車内カメラなどを使う。なお、同カメラは音声認識と組み合わせて運転者の確認にも使っている。事前に登録した人であれば、音声で解錠したり施錠したりできる」

  ユーザーが望めばレベル4の完全自動運転にまで移行できるようにデータをダウンロードする仕組みも用意しています。ウィンドウズの7から10へのシステム変更みたいですが、自動運転車はシステムが命なので、この種の移行システムは幅広く各社で採用されていくものと思われます。

 未来社会の動向が垣間見える自動運転車の開発競争ですが、筆者としては、ホンダのニューヴィー構想がいちばん気になります。

 筆者は、自動運転車が勝手に副業してお金を稼いでくれるなら、左団扇でオーナーは暮らせるようになるのではないかと思っているのですが、恐らく、その場合は、安全確保のために車の保有者に厳しいメンテナンスが要求されたり、事故時の高い保険代などを払う必要が出てくるのでしょう。

 未来のネット社会では、グーグルアドセンスならぬグーグルタクシーの審査突破ができたかどうかが、盛んに書き立てられているのかもしれないのです。