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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

2017年の日経平均はどうなる 週刊誌の株価・為替予測って大丈夫?

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(東京証券取引所本館ファサード。出所はWIKIパブリックドメイン画像。筆者トリミング)

 年始めに2017年の株価予測記事が各誌で掲載されています。

 筆者は「日経平均は史上最高値『4万円』へ」(『週刊ポスト』2017/1/1~1/7)等の勇ましい記事を見て、「果たして、そんなことが起こり得るのだろうか?」という疑問を感じ、今回の企画を思いつきました。

 『週刊ポスト』の前掲記事では、その論拠として、1)トランプ政策によるドル高円安、2)人民元切上げによる中国マネー日本還流、3)ライバル失速〔サムスン凋落、EU離脱ドミノでドイツ凋落〕、4)原油高でオイルマネーが日本に向かう等が挙げられています。

 その後、同誌の1/13~20号を見ても、「『日経平均4万円』への爆騰カレンダー」なるものが掲載されています。FRBが利上げし、ヨーロッパの選挙で皆、極右陣営が敗北し、米中融和会談が実現して株価上昇・・・という楽観シナリオが描かれています。

 筆者はもはやついていけなかったのですが、そもそも、過去の予測を検証したら、『週刊ポスト』の予測的中率はどのぐらいになるのでしょうか。

 筆者はたまに週刊誌を見る時に、見出しで飛び交う過激な株価と為替の予測が、実際にどの程度当たったのか(または外れたのか)が気になるのです。

 経済誌の『週刊ダイヤモンド』(12/31-1/7:P29)を見ると、さすがに立場のあるアナリストで4万円と言える人はいないようでした。

 10人の予測者のうち、上限が22500円、下限が17500円。2万円以上の数字を出しているのが7名です。

(※なお、この記事のはてぶコメントでも「4万円という予想値は高すぎる」との評が出ていますが、筆者も同意見です)。

 週刊誌の予測を真(ま)に受けて株や為替をやる人はそんなに多くはないと思うのですが、部数が多いので、本当は予測が当たったかどうかの検証が必要なのかもしれません。

 予測記事を出した側は検証してくれないので、今回は『週刊ポスト』と『週刊現代』の2016年予測記事をサンプルにして、その後、株価がどう動いたかを見ていきます。

『週刊ポスト』の2016年2月~3月の予測と実際の株価の動き

 昨年の『週刊ポスト』の日経平均株価予測が当ったかどうかを、筆者の手元にある過去記事とその後の株価推移で確認してみます。

  1. 「そして株のプロたちが『日経平均2万3000円』と言い始めた」(2016/2/12:P34~)
  2. 「そして日経平均2万5000円も見えてきた」(2016/2/19:P32~)
  3. 「投資のプロが注目する日経平均2万5000円への『3つのシグナル』 株価『3月反転攻勢』の機は熟し過ぎるほど熟した』」(2016/3/11:P38~)

 前掲記事(1)によれば、どうも23000円という数字の出元は、「三菱UFJ国際投信による『半年後、株価2万3000円になる』という衝撃的なレポート」のようです。この23000円予測と同じ論調なのは第一生命経済研究所のレポート(2016/1/20、年内に23000円予測)や野村証券投資情報部の小高貴久氏(※年末に23000円予測)だと書かれています。

 どうも、日本企業は実力に比して異常に割安になっているというのが論拠らしいのですが、ロイターのサイトで見ると、半年後の8月~9月頃の株価は16000円台で上下を繰り返していました。大統領選でトランプVSヒラリー真っ盛りの不透明感の中で、株価がガンガン上がるわけがないので、今から考えてみると、よくそんな予測が出てきたものだと思います。証券会社の方々はヒラリー圧勝というシナリオに沿って株価が上がり続けると見ていたのかもしれませんが・・・。

 前掲記事2の上方修正の論拠はマイナス金利導入です。前掲記事3の論拠はソフトバンクを初めとした大手企業の自社株買い、原油価格上昇、日銀の3月緩和が挙げられていますが、25000円にまで急上昇する論拠としては説得力不足のような気がします。

 年末まで引き延ばしても16年12月の最高値は19593円(12/21)あたりがピークです。最後は19114円なので前掲の予測1~3は16年内で見れば当たっていません。予想外のトランプ相場出現で全体的には株価が上昇したため、上昇傾向という見立ては大嘘にならずにすみましたが、想定外の要因に助けられた形になっています。

 『週刊ポスト』の経済記事の中には大手紙では書けないような提言(「消費税を5%に戻せばいい(2016/4/8)」等)も出てくるので、筆者もたまに参考にしていますが、株価予測はいま一つです。

 2015年以前の記事を見ても、「SMBC日系証券が強気予想!『日経平均は3万円を超える』これだけの根拠」(2015/9/4)等、残念な予測に終わった記事が目につきます

 水ものの株価予測記事で耳目を引くよりは、大手紙では書けない経済の話に焦点を当てたほうが読者の支持を得られるような気がしてなりません。

 『週刊ポスト』の過去記事を眺めているうちに、筆者はたまたま「『週刊現代』も日経新聞も証券アナリストも  株価予測記事はなぜこんなに外れるのか」(2015/3/6:P166~169)という記事を見つけてしまいました。

 それなら、もう『週刊ポスト』も株価予測はやめて、他誌の失敗ぶりをあげつらったほうがよほどよいと思うのですが・・・。

『週刊現代』の2016年の予測と実際の株価・為替の動き

 続けて、『週刊現代』の日経平均株価と為替の予測が当ったかどうかを、筆者の手元にある過去記事とその後の推移で確認してみます。

 一つの例として、2015年11月14日の「日本でいちばん早い2016年『景気と経済』大予測」(P40~52)を見てみましょう(以下、予測の三点を紹介)。

  • 株価は8月に一気に1万5000円を割る
  • 円は1ドル100円台にーー円安は終わる
  • 消費税10%は結局、導入できない 

 金融緩和やGPIF等の公的資金による株買いが夏までに弾切れするから株価15000円割れになる可能性がある、FRBが利上げしても世界景気悪化に伴い円安になる、等という話が掲載されています。

 『週刊現代』は『週刊ポスト』とは逆に「恐怖の予言」風の記事が多いのですが、トランプ当選以前までで見ると、こちらのほうが実際の値動きに近かったようです。

 8月に日経平均15000円台にはなりませんでしたが、イギリスのEU離脱後に14864円(6/24)にまで下がり、15107円(7/8)に底打ちするまでは15000円台の低空飛行が続いていました(8月は16000円台に回復している)。

 ドル円の為替に関しては7月~10月まで100円台の低空飛行。安倍政権は消費税10%の先延ばし路線なので、残りの二つの予測はおおむね当たっています。

 ただ、トランプ当選後の円安株高は全くの想定外の事態なので、11月以降には全然違った世界が展開してしまいました。

 『週刊現代』の予測は、途中までは大筋で当たったと言えるのかもしれません(株価15000円の時期が予測と1か月ずれ、株価下落がイギリスのEU離脱という全然、想定外の事態が起きていますが・・・)。

 ここまで読むと、「では、週刊現代の予測は信頼できるのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、他の時期を見ると、必ずしも当たっていません。特に、同誌が日銀内部資料(もしくは極秘レポート)を入手した場合の予測はいま一つです。

  • 「激震!株価1万4000円割れへ 最悪の事態を想定せよ!日銀内部資料を入手」(2016/2/6 ※記事内で1ドル=93円の超円高になると書かれている)
  • 「日本経済『12月ショック』に備えよ 日銀の『極秘レポート』入手 株価1万3000円割れ、1ドル80円の衝撃」(2016/11/19)

 どちらも現実の株価と為替では実現しませんでした。これは、日銀も適当な資料で金融政策を舵取っている、ということなのでしょうか。

 そして、15年以前の予測はけっこう寒い結果になっています。

  1. 「2014年、『日経平均3万円』までは見えた!」(2013/12/21)
  2. 「株をやる人もやらない人も 株価2万円に備えよ」(2014/12/20)
  3. 「2015年『1ドル=160円』を覚悟せよ」(2014/12/27)

 1は悲劇的な大外れ(2万円到達せず)、2はやや勇み足(株価20000円超えをしたのは15年5月15日~8月19日頃なので、外れたわけではないが、全体トレンドとしては2万円以下が長い)、3も大外れ(MAXで1ドル120円台)でした。

 それ以外にも『週刊現代』には「日本経済は完全に自立した さあ、株価4万円に一直線!」(2014/1/18)という記事があります。これはアナリストの武者陵司氏が「今後、日経平均株価が89年の史上最高値3万8915円を更新しても、まったく不思議ではありません」と述べたのが元のようです(前掲誌P45)。武者氏の発言には「何年まで」という期限がついていないのですが、14年~16年という範囲で見れば大外れでしょう。

 『週刊現代』は予測の結果が思わしくなかったせいか、2015年1月31日号(P40)では「『株価2万円』『暴落8000円』どっちも本当だ 気をつけろ」という記事を掲載しています。「乱高下するぞ」と言っておけば、上がり一方だけの予測を出して外れるリスクを回避できるので、書き方を工夫したのでしょう。

 ただ、それでも2015年の株価は2万円台~17000円台の間で動いているので、暴落8000円は外れてしまっています。

 こうして見ると、『週刊現代』は過去の教訓に学んで15年11月の翌年予測は手堅く収めたのかもしれません。同誌の過去記事を見ていると、予測を当てることの難しさを思い知らされます。

 今回の調査では、予測外れ記事を長めに紹介するかたちになりましたが、『週刊現代』は2016年11月19日号(発売日は11月7日)でトランプ当選の可能性を取り上げるなど、嗅覚の鋭さを発揮したこともあるので、今後の善戦を期待したいものです。

(同誌11/26号では前週記事「えっえっトランプ?アメリカ大統領選大ドンデン返し」で当選を予知したことになっているが、記事の内容は可能性を示唆するという書き方のようです)。

2016年の株価と為替に大番狂わせを生んだのは「政治ファクター」

 何気なく過去記事を見ている間にわかったのですが、2016年の大変動を引き起こした「イギリスのEU離脱」と「トランプ当選」という二大政治要因は両誌の株価と為替予測には盛り込まれていなかったようです。

 『週刊ポスト』の勇ましい株価上昇予測には英EU離脱や大統領選中の未来への不透明感が織り込まれず、『週刊現代』の予測もトランプ当選によって全部、ひっくり返されることになりました。

 政治の大変動は経済の専門家に聞いても先が読めないことが多いので、このあたりを読むためには違った種類の見識が必要なのでしょう。

 前掲の週刊誌記事の取材元は経済面の専門家が多いので、そのインタビューを集めても、前掲の政治リスクを長い目で見た予測に織り込むことは難しいわけです。

 つまり、2016年の株価と為替予測の教訓に学ぶのならば、2017年の予測を立てる上では、政治面の大変動が起きる可能性を見落としてはいけない、と言えそうです。

 2017年の政治の変動要因を並べてみますと、筆者には以下のリストが思い当ります。

  • トランプ政権による対露制裁の緩和、
  • トランプ政権出現に伴う米中経済対立
  • 「一つの中国」見直しに伴って台湾復権。台湾近海で中台の武力衝突。
  • 南シナ海で米中両軍が衝突。
  • 東シナ海では中国漁船が尖閣諸島に上陸。トランプ氏が「日本の問題」と発言。
  • トランプ政権発足に伴う日米関係の再定義
  • 新韓国大統領(野党系)出現に伴う米韓同盟の危機
  • IS殲滅後、イスラム過激派の反撃で世界的テロの連鎖が生じる
  • トランプ政権のイスラエル擁護、イラン制裁発動
  • サウジアラビアVSイランの戦いが本格化
  • フランスでルペン政権成立。EU崩壊が本格化。ユーロ失墜。

 この中でどれが実現するかは分かりませんが、アメリカの未来学者のハーマン・カーンが「考えられないことを考える」べきだと主張したように、政治変動リスクに関しては、「まさか、それはないだろ?」という話まで視野に入れることが大事なのではないでしょうか。