トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

2017年はどうなる?政治日程に見る波乱の一年 ~トランプ政権発足、EU離脱、米中緊張、総選挙等~

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(富士山からの御来光。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  新年あけましておめでとうございます。

 昨年に引き続き、当ブログの記事を読みに来ていただき、ありがとうございます。

 本年も期待に応えるべく、出来る限り記事を更新してまいります。

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 さて、今日のお題は「2017年はどうなる?」という元日テーマです。

 手元にある経済誌や筆者12/11記事などを見ながら、今年の行方を考えてみます。

 色々な見方はありますが、政治日程から以下の目次の順に重要なポイントを整理してみます。

(※本記事は元旦の投稿後、加筆修正されています)

トランプ新大統領VS議会の攻防戦

 1月の最大のイベントはトランプ新政権発足です。

 1月11日にトランプ氏が初記者会見。そして20日にトランプ氏が大統領就任。初日にアメリカのTPP脱退が宣告され、NAFTAが再交渉されることになりました。

 昨年の段階では1月27日に安倍首相が訪米すると言われていましたが、結局、訪米日程は2月10日に変更。その先ぶれとして、2月3日にマティス国防長官と首相が会談。4日には稲田防衛相と会談が行われました。

 トランプ大統領と1月27日に初会談を行うのはイギリスのメイ首相となりました。

 1月27日のメイ首相訪米ではアメリカとイギリスの「特別な関係」が再確認され、二国間の貿易協定を結ぶための議論が始まり、イギリスが米国とNATOとの緩衝役を務めるという方向性も見えてきました。

 安倍首相の訪米は上首尾の結果に終わり、日米同盟の強化、尖閣防衛のために日米安保五条の適用、米軍再編のために普天間基地の辺野古移設、日米経済対話の新設、二国間での通商・貿易の議論の開始などが決まりました。

 2月15日にはイスラエル首相が訪米し、長年の同盟関係が確認されました。

 そのほか、対露制裁は解除されるのか。中国製品に45%の高関税を本当にかけるのか。台湾はどう動くのか(台湾総統は1月に中米訪問し、途中でヒューストンやサンフランシスコに立ち寄り、米議員等と会談した)等、気になるポイントは目白押しです。

 「一つの中国」に関しては、ティラーソン氏の働きかけもあって、トランプ氏は歴代政権と同じ路線に戻り、4月6~7日に訪米した習近平主席と会談しました。

 その後、北朝鮮問題を巡って、トランプ氏は強硬路線を取りつつ、中国に協力を求めています。 

人事バトル ~閣僚承認だけでなく政治任用のスタッフ確保が必要~

 とはいえ、華々しく外交に入る前に、トランプ氏は新政権の閣僚を議会に認めさせなければなりません。

 アンチトランプのマスコミは閣僚と大使の承認で議会とのバトルが発生すると見ていましたが、数名を除き、トランプ氏が指名した人材が承認されました。

 人事面で問題が生じたのは労働長官で、パスダー氏(ファストフード大手経営者)は不祥事により指名を辞退。後任はアコスタ法科大学院長(フロリダ大)となりました。

 そのほか、マイケル・フリン国家安全保障補佐官が16年内のロシアとのやり取りが民間人の外交を禁じる規定に抵触してしまい、辞任しています。後任にはマクマスター陸軍中将が指名され、軍事のプロとして4月のシリア攻撃等で影響力を発揮しています。

 4月には米中貿易交渉が始まり、約一か月遅れで貿易実務を担うライトハイザーUSTR代表が承認されました。

 ちなみにマティス国防長官が優秀な実務家であることはニューズウィーク誌も認めているのか、他記事でも同氏への批判は特に出ていません。上院公聴会でも同氏に関する人事案は20日に速攻で承認されました。

 民主党の対抗姿勢が厳しいので、トランプ氏も議会対策を計ったのか、1月に国家情報長官にロシアに厳しいダン・コーツ氏(前上院議員)を指名したり、大統領選中のロシアのサイバー攻撃の存在を認めるなど、ロシアに対してやや硬めな方向に舵を切っています。これは難易度が高い人事を成功させるための議会対策だったのでしょう。

 そのほか、各省庁の幹部となる「政治任用」のポスト全体では、まだ8割以上が決まっておらず、現政権は手足を持たないまま走り出していることにも注意が必要です。 

予算バトル ~トランプ氏の財政政策は有効か?~

  そして、もう一つの焦点になるのが予算です。1月3日にアメリカ議会が始まり、2月28日にはトランプ氏が議会演説を行いました。

 日本では財務省が予算をつくりますが、アメリカでは議会が予算をつくっています。

 トランプ氏は選挙期間中に法人税、所得税等の大規模減税や官民パートナーシップへの税制控除等を通したインフラ投資政策等を掲げていました。

 28日の議会演説では、トランプ大統領は1兆ドルのインフラ投資を訴えましたが、それが実現するかどうかは議会での立法措置にかかっています。

 『エコノミスト(1/3~1/10合併号)』を見ると、トランプ氏の財政政策がサマーズ元財務長官らが唱えた米国の長期停滞論から抜け出すきっかけになるかどうかについての賛否両論が掲載されています。

 ポール・シェアード氏(S&P社)は前例にとらわれないトランプ氏の大胆な政策実行に期待しています(P28~29)。

「リーマンショック以降、金融政策に過度に依存しすぎたことへの反省が語られる機会が増えた。金融政策だけでなく財政政策も組み合わせたポリシーミックスのリバランス(再均衡)が必要という気運が高まっている。

 浜田宏一氏もシムズ理論を取り上げ、財政政策も併用しようという論調になってきましたが、日米はこうした方向に向かうのかもしれません。

 シェアード氏は伝統的に金融はFRB、財政は政府(+議会)という枠組を疑問視し、両者が連携を深めたほうが全体観をもって合理的な政策が打てるとも述べています。

 確かに、分かれていることのデメリットはありますが、この分離は延々と中央銀行が国債を消化して財政膨張が続くのを防ぐ仕組みなので、トランプ政権がこれを崩そうとすると、それなりに激しい抵抗が出てくるはずです。

 反対派のスティーブン・ローチ氏(エール大、P30~31)は、法人減税は効かない。GDPの伸びが低い本当の原因は家計消費の減少だと主張しています。要するに、これは魔法の杖はない、という意見です。

「08年の第一四半期(1~3月)以来、消費は年率平均1.6%しか成長していない」「それ以前の12年間の平均より2ポイントも低い」

 家計が借金しすぎで財布を閉めているというわけです。そこで記事内の具体策を見ると、労働者の生産性を上げるための投資だ、と書かれていました(オバマ政権の頃もこんな議論はありましたが、この種の政策がパッとしないから、トランプ氏が出てきたんじゃなかったっけ・・・)。

 トランプはダメだ!と言うのは自由ですが、それに替わる具体策をしっかり書いてほしいものです。

 トランプ氏が財政政策を頑張ればドル高が強まるはずですが、その場合、米国の輸出が減る可能性が高いので、この両者を合わせて、全体のGDPが増えるのかどうかが問題になります。

 日経朝刊(2017/1/6:25面)ではグレン・ハバード氏(コロンビア大教授)が、ほぼ「完全雇用が実現している現在、超緩和政策を続ける根拠は乏しい」として、トランプ氏の減税政策(法人税等)や規制改革(エネルギー、インフラ等)で生産性向上によりGDP3%成長を実現できるかもしれないと述べていました。

 大統領選の間はトランプ経済政策のバッシングが流行っていましたが、最近は肯定的な論調の記事も増えてきています。

 5月には予算教書にて、政府のインフラ投資が2000億ドル、民間にインセンティブを与えて8000億ドルの投資を担ってもらうという、トランプ政権の構想が明かされています。

外交政策の大転換

 選挙前のトランプ氏は対露外交の転換を訴えていましたが、1月の正式就任後は軍出身の閣僚の意向を汲んだのか、4月のシリア攻撃など、ロシアにとっても厳しい措置を打ち出しました。

 最優先事項はIS打倒。核を巡るイランとの合意は破棄。イスラエルは強力な支持をゲット。

 中国には高関税と為替操作国指定の脅しをかけ、貿易不均衡の是正を要求し、4月の米中首脳会談後には100日間で対米貿易赤字削減の方針を固めることになりました(米側発表)。その後、北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、トランプ政権は空母カールビンソンを東アジアに派遣。米国と北朝鮮の緊張関係が高まっています。

 台湾へのアプローチは未知数ですが、台湾も国際社会の復権を狙っているので、中台関係も大きく動く可能性があります。

 TPP離脱、NAFTAは再交渉。EUにはGDP比2%の防衛費負担増を要求。

 メキシコからの移民を制限。さらに国境沿いに壁の建設を開始。

 激しいアクションが目白押しなので、「日本が槍玉にあげられたらたまらん」という気持ちになります。だからこそ安倍首相は2月に訪米したのでしょう。

 トランプの動き方は、外部に敵をつくって支持層をまとめるのが基本なので、今後もIS、中国、メキシコ等への攻撃が続く可能性が高いと言えます。

 通商面では同盟国である日本やEUも時折、批判されていますが、大事なのは、日本が「敵」にされないようにすることです。

 選挙が終わり、トランプはヒラリーにかわる敵を欲しています。トランプ初記者会見では、中国が名ざし批判されました。上院でのティラーソン氏の発言も含めると、中国とIS、北朝鮮、イランが、敵視されているように見えます。

EU離脱論をめぐって炎上するヨーロッパ

 こちらも昨年以来のバトルが継続中です。

ややこしいイギリスのEU離脱手続き

 1月15日にはイギリスのメイ首相のEU単一市場離脱発言で大騒ぎが起きました。

 英紙サンデー・タイムズは15日、メイ英首相が移民流入抑制などのためにEU単一市場から撤退する計画を示すと伝えた。メイ首相は移民制限やEU以外の国との自由貿易協定を可能にするため、EUの関税同盟からの脱退を準備する方針という。
 この報道を受け、ポンドは主要通貨全てに対して大幅下落。対ドルでは早朝に一時1ポンド=1.1986ドルと昨年10月7日のフラッシュクラッシュ以来となる1.2ドル台割れの水準に急落した。

(ブルームバーグ「円全面高、英強硬離脱懸念でドルは114円台割れ-ポンド急落」1/16)

 先が思いやられますが、昨年11月3日に、リスボン条約50条に基づくEU離脱通告を行う権限を持つのは担当閣僚(EU離脱相)と議会のどちらなのかを問う訴訟があり、ロンドンの高等法院(日本の高等裁判所に相当)は議会採決が必要だとする判決を出したのです。

 これにイギリス政府は上訴し、1月24日には最高裁にて議会の承認が必要だという判決が出されました。

 この判決を受け、英政府は議会の採決を諮ることになりました。

 最高裁が「議会採決」には地方議会の採決も必要だと判断した場合、上下両院の議決後に各地方でEU離脱の是非の判断が分かれ、政治的な大混乱が生じる危険性があるとの見方もありましたが(『エコノミスト2017/1/3-10合併号、P80、菅野泰夫氏)、現時点では上下院の採決が行われるものと見られています。

 英政府は3月29日にはEUへの離脱を通告しています。

 そして、メイ首相は国内の世論をEU離脱で固めるために6月8日に総選挙を行うことを決めました。

 EU離脱後はアメリカを始めとして、各国との連携を模索していくのでしょう。

選挙、また選挙のヨーロッパ

 昨年のイタリア、オーストリアは前哨戦で、17年に大きな選挙が続きます。

 そして、毎回、「EU離脱 or EU維持?」という話題が浮上しそうです(以下、VS〇〇党というのは、反EU勢力の表記)

  • 3月:オランダ議会選挙(VS「自由党」)
  • 4月~5月:フランス大統領選(VS「国民戦線」)
  • 6月:フランス国民議会選(VS「国民戦線」)
  • 9月:ドイツ連邦議会選挙(VS「ドイツのための選択肢」)

 RPGにたとえれば、小ボスを倒したあとに中ボス、大ボスに移行していくような展開です。オランダ議会選挙は極右政党は議席を増やしたものの、おおむね与党陣営が勝利を収めています。

 特に炎上が激しくなりそうなのはフランスでしたが、マリーヌ・ルペン氏に対して、若き俊英のマクロン氏が見事に勝利を収めました。しかし、議会選で国民戦線が議席を伸ばす可能性は残っています。その意味では、将来的にフランスがEU離脱となり、EUが瓦解する可能性は消えていません。

 ただ、今のユーロ経済圏で儲けているドイツがEUから離脱する可能性は低いでしょう。

外にはひたすら強気な中国。おうちの中は大丈夫?

 中国では3月に全人代(全国人民代表大会)が開催されます。政府活動報告が明らかになり、さらには、来年の経済成長目標が発表されます。

 そして、香港行政長官選挙があります。2017年は香港返還20周年です。

 香港市民が選べるのは1200人の投票人(選挙管理委員会メンバー)で、この1200人の投票で行政長官が選ばれます(間接選挙)。そして、出馬に際して北京よりの選挙管理委員会のメンバーが出やすい制度設計がされていると言われています。

 香港の選挙が香港人の納得できるものになるのかどうか。場合によってはまた雨傘革命みたいなものが起きる可能性もあります。

 そして、中国経済に関しては、2016年は改革をうたいながらも、結局、投資依存経済という元のサヤにもどってしまいました。

 この経緯が週刊東洋経済(12/31-1/7合併号:P56~57。津上俊也氏執筆)に書かれていました。

  • 15年12月:経済工作会議が供給力強化のために過剰設備、過剰債務削減をうたう
  • 15年暮れから景気対策のために公共投資増、地方政府支援(信用供与)が並行
  • 16年半ばに国務院が公共投資計画(5年で2.8兆元の鉄道投資等)ぶち上げ
  • 習主席もこれに賛同「国有企業は大きく、強く、優秀であれ」と発言(7月)

 結局、投資依存経済は進行中です。津上氏は「痛みの先送り」と評しています。

 これが現状ですが、17年秋には中国共産党第19回党代表大会があり、新執行部を構成する「政治局常務委員」が七人選ばれるので、習第二期政権の基盤は強化されるでしょう。江沢民人脈の旧幹部が引退し、そこに習氏寄りの人物が入るからです。

 内部では政治・経済ともに矛盾が山積みなのですが、外ではトランプ氏が「一つの中国」を揺さぶってくる可能性が高いので、ひたすら強気演出を計るものと思われます。

 特に重要な政治日程は、5月予定のプーチン大統領の訪中、6月9~10日の上海協力機構首脳会議(カザフスタンで開催)、6月16~18日のアジアインフラ投資銀行(AIIB)年次総会などです。

 トランプ大統領の年内訪中も決まりました。米新政権発足に伴い、中露関係と米中関係がどうなるかが見物です。

日本の政治日程は、予算成立⇒都議選⇒秋の解散総選挙?

 ざっと見ると、1月のアジア、オーストラリア等の外遊。2月の安倍首相訪米。その後、4月頃まで予算成立のための国会審議が続きます(4月には訪露するとも言われている)。7月には都議選があります。

 元旦のニュースで、小池百合子氏が「希望の塾」から30人~40人の候補者を都議選に出すことと新党設立の意向を発表していました。

 2月5日には小池氏が推す現職の石川雅己区長が内田茂都議が推す与謝野氏に大差で勝利。小池氏は7月の都議選に向けて弾みをつけました。すでに十数人の候補者が擁立されてもいます。

 五輪組織委員長の森氏や安倍首相と会談をしたりしながらも、首都決戦の火ぶたが切られています。

 昨年秋には12月のプーチン訪日後の1月解散が有力視されていましたが、11月にトランプ氏が当選し、アメリカで対露制裁が緩和される可能性が高まりました。プーチン氏から見れば、トランプ氏就任後の制裁緩和を期待すればよくなり、制裁包囲網突破のために訪日に力を入れる必要性が下がったわけです。

 そのため、12月のプーチン訪日は渋い反応となり、17年の1月解散は先送りとなりました。

 トランプ当選に伴い、世の中の流れが大きく変わり、「早期解散なし、解散があるとしたら秋ごろ」という観測が強まっています。

 解散以外の政治日程では、天皇陛下の生前退位法案がどうなるかも、非常に気になる所です。

 いろいろな情報を見ると、2017年も波乱の一年になるという予感が湧いてきます。