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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

マイナンバー対応スマホ販売の裏事情 ~システム障害続きでカード申請もままならず~

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(猫にはマイナンバーがない・・・。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 ドコモで「マイナンバーカード対応スマホ」なる謎の商品が販売され、その詳細がITproの記事で紹介されていました。

 筆者は「何だそれ・・・。なくしたらどうするんだ」と思ったのですが、iPhoneも2019年からマイナンバー対応になるらしいので、このトピックは意外と将来に影響がありそうです。そのため、今回はこの記事を紹介し、最近のマイナンバー事情について考えてみます。

マイナンバーカードを読み取れる「AQUOS EVER SH-02J」

 該当商品はNTTドコモが11月4日に発売を開始した「AQUOS EVER SH-02J」です。これは、マイナンバーカード読み取り対応のスマホとして銘打たれています(そう遠くない将来にKDDIも類似商品を販売する予定)。

www.nttdocomo.co.jp

 

 ITproに転載された日経コンピュータの記事を見てみましょう(「NTTドコモからマイナンバーカード対応Androidスマホが登場 2019年にはiPhoneもマイナンバーカード対応へ」大豆生田 崇志 2016/12/19)

(「AQUOS EVER SH-02J」は)「AndroidスマホのNFC(近距離無線通信)で、マイナンバーカードの内蔵ICチップに搭載した公的個人認証(JPKI)の電子証明書を読み取れる」「JPKIはマイナンバーそのものは使わない。利用者がカードを持っている事実とパスワードの入力によって本人と確認できる」

「企業はインターネットで個人向けサービスを提供する際に、利用者がカード内蔵ICチップに搭載したJPKIを使って本人確認できれば、なりすましやデータの改ざんを防いで安全に手続きできる」「将来は、AndroidのスマホやiPhoneそのものを、2枚目のマイナンバーカードとして各種サービスで利用できるようになりそうだ」

「マイナンバーカードの普及を目指している総務省は、2019年中をめどにスマホのSIMカードなどに、JPKIのうち氏名や住所などは扱わない利用者証明用の電子証明書を搭載できるよう検討している」

「総務省の公表資料によると、AndroidではSIMカードに利用者証明用の電子証明書を格納する」「実現すれば、クレジットカード番号を電子証明書に結び付けてスマホをクレジットカード代わりに決済で利用したり、コンサートなどのイベント会場への入場時にスマホをかざすだけで本人確認ができたりするようになる」

  横文字の専門用語が多いのですが、要するに、マイナンバーカードの存在を認識する機能とパスワードを用いて本人確認し、スマホを通して各種サービスの本人確認をクリアできるようにすると言っています。

 物をよく紛失する筆者には抵抗感がありますが、この背景には、スマホにリンクさせることで、人気のないマイナンバーカードの普及を進めたいという総務省の思惑があります。

 記事を見る限り、結局、パスワードを通して個人認証が行われますが、ここには一つ、抜けている点もあります。

 世の中には意外と、いい加減なパスワードを設定している人が多いので、そういう人がこのスマホを紛失した場合、マイナンバーカードをなくした場合と同じような不正利用の危機にさらされてしまいます。

 当然、まじめにパスワードをつけない人にも問題はありますが、一定の割合でそういう人がいるので、紛失に伴う不正利用の問題が浮上するかもしれません。

 筆者はマイナンバーの紙はずっと物置に収納しており、そもそもマイナンバーカードを申請していないのですが、スマホが全部、その種の機種で埋め尽くされたら、結局、嫌でも使わざるを得なくなりそうです。

トラブル続きで発行希望者が少ないマイナンバーカード

 総務省は携帯販売に介入したがるので、そのうち「携帯はマイナンバー対応とすべきだ」といった通達が出ないとも限りません。何しろ、問題続きでマイナンバーカードの普及が進まない苛立ちを抱えているからです。

 マイナンバーカードを巡るトラブル例を産経記事(16/12/14:1面)で見てみます(表記は多少、語尾などを変えています)。

  • 15年10月:東京都葛飾区の約5千世帯の通知カードがプログラムミスで作成不能
  • 15年12月:自治体で通知カード未配達の訴え相次ぐ
  • 16年1月:中継サーバーで6回障害発生
  • 16年3月31日:27年度カード申請1019万枚、公布227万枚
  • 16年4月8日:指定都市市長会が総務省に障害対応要請
  • 16年4月27日:地方公共団体情報システム機構、障害原因を特定
  • 16年6月22日:西尾機構理事長が報酬の一部返納表明
  • 16年12月2日:総務省、カード公布遅れ解消を宣言
  • 16年12月13日:富士通など5社が改修費負担で機構と合意

 12月12日時点のマイナンバーカードの公布件数は961万枚。カードの普及率は7.5%です。非常に低調な数字なのは「地方公共団体情報システム機構のシステム障害」が起きたためです。「データ処理を行う中継サーバー障害が約2か月にわたり1日1回のペースで発生した。本来不要な再起動が50回以上も繰り返された」ことが原因の一つに挙げられています(産経3面:12/18)。

 筆者もマイナンバーカードについて発行までにかかる時間をたずね、「3ヶ月以上かかる」という答えに驚きました。あまりの遅さに「それなら要らん」と答えた記憶があります(地域によってかかる時間は違うかもしれません)。異様に仕事の能率が悪かったのに、総務省はこのシステム機構をしっかりと監督してきませんでした。

 12月21日にも、産経ニュースが横浜で管理ミスが起きたことを報じていました(「横浜市、誤操作で1200人交付障害 内規違反、パスワード更新も怠る」12/21)

「横浜市が内規に違反して、安全にマイナンバーカードを交付するのに不可欠なサーバーのパスワード変更を怠ったまま業務を続けていることが20日、分かった」「さらにカード交付と連携するサーバーのファイルにアクセスできないように自ら誤った設定を施したため、市民約1200人に交付できないシステム障害が発生していたことも判明」

  マイナンバーカード管理のいい加減さに国民は愛想を尽かしているので、カードの普及はいま一つ。17年以降も管理の改善に期待が持てないニュースが続いています。

利用者は「マイナンバー対応」機能には興味がないのでは?

 前掲記事ではマイナンバーカードの普及が広まらない理由としてシステム障害を重視しています。

 しかし、そもそもの要因は「人気がない」ということです。紛失リスクがあるので、誰もカードにして持ちたいとは思わないのではないでしょうか(筆者も結局、マイナンバーの紙は物置の中に安置しています)。

 こうした抵抗を破ってこのカードを普及させたいのが総務省です。

 経緯は完全には分からないのですが、マイナンバー対応のシャープ製(シェア1割)のスマホが出現しました。製品ページを見ると、1310万画素で写真が取れ、撮影した動画から簡単にキャプチャーできる、人工知能が情報を声で知らせてくれる、3日以上電気がもつ。おふろにも入れる防水機能つきだ、などのセールスポイントが列挙されています。

 しかし、メーカーはマイナンバー対応であることは何も宣伝していません。「そんなの、ユーザーには興味ない」と見て製品ページを設計しているわけです。

スペック情報の抜粋をしてみます。

  • ディスプレイ解像度(ピクセル数 横×縦): HD(720×1280)
  • CPU: Qualcomm MSM8937 1.4GHz(クアッドコア) +1.1GHz(クアッドコア) オクタコア
  • OS:AndroidTM 6.0
  • 内蔵メモリ: ROM 16GB/RAM 2GB
  • UIM: nanoUIM
  • SIMロック解除: 対応
  • LTE 受信時 :150Mbps
  • 送信時:50Mbps

 こちらにもマイナンバー対応とは書いていません。要するに、消費者目線で見た時、そこはセールスポイントにはならないのでしょう。

 マイナンバーを広げたいのは「お役所の都合」というわけです。

 新型だけはあって、このスマホの性能はよさそうですが、筆者はマイナンバー対応の携帯の必要性があまり感じられませんでした。これ以上、総務省の思惑で携帯行政に余計な介入をしないでほしいと願うばかりです。