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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

これからなくなる職業ベスト10とその理由 ~ネット、人口知能、アウトソーシングに勝てますか?~

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(無人機プレデターを操作する米空軍兵。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  ネットで調べものをしていたら、12月18日のフォーブス電子版の人気ナンバーワン記事が目に留まりました。今日はこの記事を手がかりにして、人工知能が発達した時代のサバイバルについて考えてみます。

俺の仕事は10年後に残っているのか?

 フォーブスのジャーナリストであるKarsten Strauss氏は「最も存続が危ぶまれる10の職種 米ではプログラマーの採用も減少」(2016/12/18  木内涼子編)という記事を書いています。

 詳細は元サイトで見ていただきたいのですが、筆者が気になったのは失職危機の職種リストです。

 2024年までに採用数が最も大幅に減少すると見込まれる主な職種は、減少幅の大きい順に以下のとおりとなっている(数字は予想される雇用機会の減少率、かっこ内の金額は現在の年収の中央値)。

1位 郵便配達員:-28%(5万6,790ドル、約671万3,500円)
2位 タイピスト:-18%(3万7,610ドル)
3位 検針員(電気・水道など):-15%、3万7,610ドル)
4位 ディスクジョッキー:-11%(3万80ドル)
5位 宝石商:-11%(3万7,060ドル)
6位 保険契約引き受け業務:-11%(6万5,040ドル)
7位 仕立屋/テーラー:-9%(2万5,830ドル)
8位 記者・アナウンサーなど(放送):-9%(3万7,720ドル)
9位 新聞記者:-8%(3万6,360ドル)
10位 コンピュータープログラマー:-8%(7万9,530ドル)

 「げっ」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、これは日本でも起こりうると考え、紹介させていただきました。

 これから人工知能が発達し、テクノロジーもどんどん進化するので、21世紀に自分の仕事が残っているのかどうかは、誰もが考えなければいけない問題になってきました。

なぜその職種はなくなるの? 危うい理由いろいろ

 フォーブス記事でも1~10位の職種についてコメントが出ていましたが、筆者も足りない頭脳で考えてみます。

1位:郵便配達員

 メール、ネット、SNSの普及、ペーパーレス社会の進展。これからはドローンや自動運転車、ロボットも普及してくるので、生き残るのは大変です。

 クロネコヤマトに対抗して「遠い過疎地にも郵便局が必要なんだ」と反論していた時代がありましたが、もう、ドローンでラジコンのように運べる時代になってきました。

 そうした便利な世の中になっているのですが、最近では、まるで時代に逆行するかのように、コンビニで郵便物の重さを計れなくなっています。行政指導によって郵便局に行かないと重さを計れないようにして、ゆうパックを使わせたがっているのです。

 民営化した郵便局が保護行政に依存しているのは残念ですが、逆に言えば、そのレベルの経営しかできないからこそ、存続の危機が来るのかもしれません。

 日本郵政の株価は1年前に1972円(2015/12/4)で最高値を刻み、1188円(2016/7/8)で底打ち。本稿執筆時点で1560円(2016/12/16)。加筆後も1496円(2017/3/16)⇒1397円(3/31)。いま一つの株価です。

2位:タイピスト

 説明不要と思われたのか、フォーブス記事でも解説がありません。音声がそのまま活字化される技術が日進月歩となり、機械や人工知能で代替できる分野が広がってきているので、存続危機なのは自明でしょう。

3位:電気や水道の検針員

 スマートメーターが導入され、自動検針が進めば、自然に淘汰されてしまいます。

 昔はプリンターのトナーがなくなるたびにいちいちユーザーが電話し、社員が応対していましたが、今はプリンターの中のソフトがトナー切れを探知して本社に連絡してくれるので、人の手が要らなくなりました。同じような省力化が進めば、必要になるのは定期点検やトラブル発生の時に応対する人員ぐらいしかなさそうです。

4位:ディスクジョッキー

 フォーブス記事では自動化プレイリストでいけると書いていましたが、最近はアマゾン等の嗜好追跡能力がどんどん進化してきています。アマゾンプライムで自分の好みの音楽を選択している間に、けっこう、いい音楽を勝手に選んでくれるわけです。

 これは個人ベースの話ですが、グループ単位でも、参加者各人の嗜好データがあれば、今後は人工知能がよい選曲をしてくれるようになるのではないでしょうか。

5位:宝石商、7位:仕立屋/テーラー

 元記事はオンラインショッピングと大規模小売店での買い物普及、生産の海外移転(アウトソーシング)を要因としていました。

 ただ、本当の高額商品/サービスは現物で見ないと購入できない部分が残るので、この二種に関しては高付加価値化で生き残りを図ることが有力な選択肢になりそうです。

 まさか1億円のダイヤをオンラインショップで買う人はいないでしょうし、衣服に関しても、オーダーメイドサービスは残るでしょう。

6位:保険契約引き受け業務

 元記事は解説を略しています。保険契約もネット契約が増えてきているので、対面販売の仕事をしている人はスキルアップするしかなさそうです。

8位:記者・アナウンサーなど(放送)/9位:新聞記者

 これについてもフォーブス記事は何も書いていません。これは自分の仕事にかぶるからかもしれません。

 新聞もニュースも供給が過剰気味ですし、似たようなものがネットにはあふれています。ネットメディアの普及が新聞の部数減をもたらし、動画は見てもテレビは見ない人が増えてきました。

 本年のアメリカ大統領選では支持率調査が役に立たず、マスコミの信頼にヒビが入りましたが、結局、生き残りには独自の調査力を上げ、記事のクオリティを高めるしかないでしょう。情報をどこかからもらって垂れ流しているだけでは、他社との差別化ができません。

 最近の週刊誌を見ると、文春は独自の取材力でスクープを連発していますが、他誌はややグラビア依存になってしまい、評価に明暗が分かれてきています。

 なお、決算短信などではすでに人工知能が導入され、記事を書き始めています。客観情報をまとめる作業は人工知能でもかなり代替できるようです。

10位:コンピュータープログラマー

 元記事は「人件費が安い他の国にベースプログラムの作成をアウトソースする企業が増えている」と書いています。

 プログラム言語は万国共通なのでPCとネット環境さえあればどこでも作業ができます。単純作業で人件費が高い日本人やアメリカ人にわざわざ仕事を発注する理由はなく、電子情報には輸送料金がかかりません。仕事はあっても途上国の労働者との値下がり競争という厳しい未来図が予測されます。

書籍紹介『これからのお金持ちの教科書』

 前掲の理由を考えている間に、筆者は夏ごろに購入した『これからのお金持ちの教科書』 (加谷珪一著)という書籍を思い出しました。

 この本では「ネットによる『中抜き』は、これから本格化する」(P20)ことや人工知能が変えるビジネスの例などをあげています。

 その中の例を見ると、結構、前掲の10のリストとかぶるので、いくつか紹介してみましょう。

  • ネットで物を発送したい人と運びたい人をつなげるサービスができたら、その分だけ郵便局や宅配事業者の仕事が減る(P21~22)
  • UBERで自家用車がタクシー化すると、タクシー業者の仕事が駆逐されるため、業界から反対運動が起きている(P18~19、23)
  • 人工知能の解析能力が上がり、利用者が好む音楽を事業者が流し続けることが可能になった。もはやCD販売は要らず、1曲ずつ購入しなくても一定料金で聞き放題というサービスのほうが利用者の満足度が高くなる(P76)
  • メーカーが製品アイデアを公募。優れたプランを選択し、それを3Dプリンターを用いる製造代行会社に発注するようになる(P90~91)

 ネットや人工知能の進化、アウトソーシングの広がり等で仕事が奪われたり、消滅する業種が出てくることを予測しています。

「人工知能で仕事が駆逐されるのは単純作業のレベルじゃないの?」とタカをくくる見方もありますが、そうとは限りません。

 定式化した文章に情報をはめる書類作成業務(書士の業務等)は人工知能で代替可能になる可能性がありますし、前掲の自動運転車が台頭すれば、タクシー運転手やトラックドライバーにも失業の危機がやってきます。 

 本年には米軍で無人爆撃機X47-Bが空母での離着艦まで済ませたのですが、パイロットの仕事を守るために開発停止になっています。これは政治力で仕事を守った実例ですが、この種の保護が一般化されると、経済活動の効率が上がらなくなります。保護をせずに新技術を導入した国の競争力に勝てなくなるので、あまり、この種の措置を期待するわけにはいかないでしょう。

2017年、人工知能が作曲したアルバムが販売される?

 前掲の選曲のレベルにとどまらず、最近では人工知能が作曲した音楽でもそれなりに聴衆を満足させ始めています。ITmediaの記事(「AI作曲の“ビートルズ風”新曲、Sony CSLが公開(けっこうそれなり)」2016/9/23、佐藤由紀子氏)では、人工知能による作曲の例が紹介されていました。

 そのページに添付された「ビートルズ風」の音楽の出来はそれなりに良好です(ビートルズとは、やはり違うような気がしますが・・・)

 この記事では以下の三点が報じられています。

  • ソニーコンピュータサイエンス研究所のResearch Laboratoryは9月19日、人工知能を用いてビートルズ風のポップソング「Daddy's Car」を作曲。
  • AI作曲のアルバムが2017年にリリースされる。
  • 作曲家が「Flow Machines」というAIソフトを操作して最終的に曲に仕上げた。歌詞は人間の作成。

 11月には、X-JAPANのYOSHIKIさんも、これからはアーティストが人工知能と競争しなければいけなくなると警鐘を鳴らしています。その時期は「あと10年」とも述べているので、かなり切迫した危機感を持っているようです。

「基本的に音楽というのは計算なんですね。五線譜に音符がありまして、その組み合わせで音楽ができているわけですよ。じゃあ過去の素晴らしいヒット曲をすべて入れました、データとして。そうしたら必ずヒットする曲というのは出てくる」「たぶん人工知能の作曲家と僕ら作曲家が競い合う日というのは、もう目の前に来ていると思います」

(出所:ハンフィントンポスト「人工知能と僕ら作曲家は競うことになる」X JAPANのYOSHIKIが語る音楽の未来 2016/11/15)

  前掲記事によれば、YOSHIKIさんは、音楽には「体感」の要素があるので、人工知能にはできない生ライブなどに力を入れていくと述べていました(人工知能ではYOSHIKIが発信するライブの迫力そのものは再現できない)。

 これは、他の業種でも参考にすべきなのかもしれません。

 どの業種でも、技術と社会の変化によって思わぬ伏兵と競争するケースが生じうるので、未来社会に生残るためには、「人間にしかできないこと」で勝負する術を確保しなければなりません。

追記①:富国生命保険がAI導入で人員削減を開始

 2016年の末にはAI「ワトソン」(日本IBMが作成)を導入して保険給付金査定の部署の人員を三割減らす取り組みが報じられていました(毎日新聞「富国生命 AI導入、34人削減へ 保険査定を代替」2016/12/30東京朝刊)。

「医師の診断書などから、病歴や入院期間、手術名といった入院給付金支払いなどに必要な情報を、AIが自動的に読み取る。給付金額の算出のほか、契約内容に照らし合わせて支払い対象となる特約を見つけ出すことも可能で、支払い漏れの予防も期待できる」「AIの査定対象になりそうな支払い請求は、2015年度に約13万2000件あった」

 これはどこでも起きそうな話です。やはり、目の前にある仕事だけに安住せず、人工知能で代替できない付加価値を創造する必要があります。

追記②:高度技術者の日米独給料比較

 今までは新技術で職が失われたり、減給になったりする例を見てきたわけですが、それとは別に、人工知能やIT系の高度技術者の給料に着目した調査もあります。

 『週刊ダイヤモンド(2017/4/8:P52)』では、自動運転技術者(上級レベル)、IoT技術者(部長クラス)、データサイエンティスト、AI技術者の四職種の日米独の年収の比較を行っていました(以下、日本/米国/ドイツの年収を表記)。

  • 自動運転技術者(上級レベル):900万円/2775万円/1440万円
  • IoT技術者(部長クラス):1500万円/2775万円/1440万円
  • データサイエンティスト:1500万円/2775万円/1440万円
  • AI技術者:1200万円/2775万円/1440万円

 米国とドイツのデータはヘイズ社の調査によるものですが、この四職種は同類とみなされ、同じ金額になっています。要は日本の給料が低いため、この職種で日本企業に勤務している方が、これから米国企業に鞍替えする可能性が高いと指摘しているわけです。

追記③:イーロンマスク氏が人工知能による職の消滅を警告

 2017年の2月13日にはテスラ社(電気自動車メーカー)とスペースX社(宇宙系ベンチャー)のCEOを務めるイーロン・マスク氏がドバイの「ワールド・ガバメント・サミット」で「今後自動化で仕事が失われていく」「これからは、人間がロボットに勝る仕事はますます少なくなる」「これは、私がそうなってほしいと思う希望ではなく、おそらく現実になることだ」と警鐘を鳴らしました。

(ハンフィントンポスト「人工知能に人間の職は奪われる」テスラのイーロン・マスク氏、ベーシックインカムが必須と語る The Huffington Post Canada | 執筆者: Daniel 2017/2/14)

 人工知能の導入で生産コストが下がり、利益幅が上がるので、ベーシックインカムを導入できるようになるという見通しを述べています。

 そして、人間の脳を人工知能につなげるなど、SF的な世界が現実化する可能性を示唆しました。

 何だかまるでアニメのようですが、脳とコンピュータをつなげるという話は、ガンダムOO(ダブルオー)で出てきました(ヴェーダという巨大コンピュータと脳をつないで戦うパイロットたちの姿が描かれている)。筆者は、この種の技術が悪用されないかと恐れています。

 マスク氏は人工知能の時代には「生きがい」が大事だと述べていましたが、それだけでは足りません。人工知能をどう用いるか、という倫理が大事になるはずです。

 機械文明が進化すればするほど倫理観の高い人を尊重する社会にならなければ、人工知能を使いこなせず、様々な悪が発生しかねないからです。

 また、機械と人工知能によるサービスだけでは顧客の心が満たされないケースも多いので、人間によるサービスがゼロになることもないでしょう。

 人間の強みを最大限に伸ばして、生き延びなければいけない時代が近づいてきています。