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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

日露経済協力 参加する企業はどこ? ロシア関連株は上昇中?

国際 経済 ビジネス ロシア 全記事一覧 安倍政権(外交)

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(サハリン島。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 プーチン大統領が訪日し、ロシア関連のトピックが盛り上がっています。

 時系列でみると、15日にプーチン大統領が山口県に到着し、夜に安倍首相との首脳会談が行われ、16日の夕方に日本とロシアの「共同経済活動」についての声名が出されました。  

 まずは、その声名の内容をフジサンケイビジネスアイの記事(「プーチン大統領来日 「共同経済活動」に関するプレス向け声明(全文)」2016.12.16)で見てみましょう。

日露首脳会談後の声明の内容

 1 安倍晋三日本国総理大臣及びV・V・プーチン・ロシア連邦大統領は、2016年12月15日-16日に長門市及び東京で行われた交渉において、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞諸島における日本とロシアによる共同経済活動に関する協議を開始することが、平和条約の締結に向けた重要な一歩になり得るということに関して、相互理解に達した。かかる協力は、両国間の関係の全般的な発展、信頼と協力の雰囲気の醸成、関係を質的に新たな水準に引き上げることに資するものである。
 2 安倍晋三日本国総理大臣及びV・V・プーチン・ロシア連邦大統領は、関係省庁に、漁業、海面養殖、観光、医療、環境その他の分野を含み得る、上記1に言及された共同経済活動の条件、形態及び分野の調整の諸問題について協議を開始するよう指示する。
 3 日露双方は、その協議において、経済的に意義のあるプロジェクトの形成に努める。調整された経済活動の分野に応じ、そのための国際的約束の締結を含むその実施のための然るべき法的基盤の諸問題が検討される。
 4 日露双方は、この声明及びこの声明に基づき達成される共同経済活動の調整に関するいかなる合意も、また共同経済活動の実施も、平和条約問題に関する日本国及びロシア連邦に立場を害するものではないことに立脚する。
 5 両首脳は、上記の諸島における共同経済活動に関する交渉を進めることに合意し、また、平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明した。

 今回、北方領土でロシア側が特別な制度(日本で言えば経済特区みたいなもの?)をつくり、「共同経済活動」を行うことになりました。

 各紙報道では「特別な制度」という言葉が躍っているわけですが、前掲の5つの合意の中では、特に「4」が重要です。

 共同経済活動には、トラブルが発生して裁判を行う際に、日本法で行うのか、ロシア法で行うのか、という主権に関わる問題が発生するので、そこに関するルール決めが必要になったわけです。

 そこで「日本とロシアの主権に関する両国の立場を害さないためにはどうしたらよいのか」という知恵をひねらなければならず、落ちとして、ロシア領の中に例外措置があてはまる地域をつくることになったわけです。

 これに関して、日露の双方からは以下のような発言が出てきます(読売「『互いの主権害さず』…4島経済活動、文書に」12月16日)。

ロシアのウシャコフ大統領補佐官は15日、「基本的にはロシアの法律に基づく」と語ったが、日本政府関係者は「ロシアの法律を無視した制度ではないが、日本の法律に合わせ適用除外などを作る」と説明する。

 これは、非常にややこしい議論になりそうです。

 紙版の読売夕刊(12/16:1面)では「想定される事態は多岐にわたり、検討を要する法令は膨大になる」という外務省幹部の声が紹介されていました。

 予想される問題はいろいろありますが、少し考えただけで頭が痛くなります。

 例えば、日露の企業が共同経済活動に参加した場合、税金はどのように課税され、どちらの政府に入るのでしょうか。法人税や所得税のかけ方は、ロシア法に基づくのか、日本法に基づくのか。ロシアは経済難なので「税収はこちらに入れてくれ」と要求してくるはずですが、それを呑むべきなのでしょうか。

 頭の体操として日露折半の議論はできますが、これは仕組みが複雑になるので経済活動促進という元来の趣旨とは合いません。煩雑な租税制度はビジネスの敵だからです。

 共同経済活動に関しては、ビジネスのトラブルをどこの国の法律で解決するのか、という問題があります。

 安倍首相は「ロシア法でもなく日本法でもない特別な制度で、これから専門家が協議を行っていく。国際的には例がないかもしれないが、両国でしっかり交渉する」(読売朝刊:12/17:2面)と述べていましたが、はたして、これは実現できるのでしょうか。

 読売朝刊(12/18:朝刊9面)では、モスクワ大のドミトリー・ストレリツォフ氏のシビアな見方が紹介されていました。

「新たな法制度を考案するのは非現実的だ。ロシアが統治している現状を考慮すると、『主権』という言葉を使うかどうかは別にしてロシアの法制度で行うしかない。事務レベルで制度設計するというが、この点は日本側が譲らなければ進まない」

 今後の実現案をそれぞれの実務担当者に指示することになっていますが、ロシア官僚がプーチンほど親日的であるとは考えにくいので、この種の「俺たちの国なんだから、俺たちのルールでやるのは当然だ」という反応を返してくるのではないでしょうか。

 ロシアの多数派の意見は日本への領土返還には反対。そして、実務レベルの作業をするのは外務省。外務省は北方領土返還には反対。そこに実務レベルの指示を出すわけですから、プーチンの返答は「ロシアのルールでやりたい」ということを遠回しに言っているように見えます。

 筆者には、この「特別な制度」というのは、交渉で劣勢になった安倍首相が放った煙玉のような気がしてなりません。

それでも最重要案件は日露平和条約の締結

 各紙報道をパッと見ると「共同経済活動がメインなのかな~」と感じたのですが、ロイター記事(12/16)によれば、プーチン氏は記者会見で「最も重要なのは(日本との)平和条約締結だ。平和条約締結によって長期的な協力に向けた条件が整うためだ」とも述べています。

 安倍首相とプーチン氏の優先順位は平和条約のほうにあるわけですが、今回の議論の中身はそこに至る過程としての共同経済活動に力点が置かれています。

 筆者の推測ではありますが、15日のEU首脳会議ではEUが対露制裁を半年延長しており、バイデン副大統領がウクライナ大統領、首相と会見して制裁維持の方針を固めているので、安倍首相はまだ「抜け駆け」はできないと見て、オバマ政権下で打てる手を売ったのでしょう。日本が制裁解除して一気に平和条約交渉を加速させると、オバマ大統領が何を言い出すか分からないので、トランプ政権でロシア政策が変わるまでは冒険は控えようとしているのかもしれません。

 結局、北方領土交渉は二島返還さえおぼつかず、長期戦が見こまれています。

 経済共同活動を進める合意は成立しましたが、安倍首相が言う「特別な制度」の中身は不明瞭なので、これは「ロシアが領土を返さないまま日本からの経済協力をもらうことに成功しただけだ」という見方も出てきています。

 プーチン大統領は「1945年に、ソ連はサハリンを取り戻しただけでなく南クリール諸島(※引用者注:この中に北方領土が入る)も取り戻した」という戦勝国の立場を堅持。「最も重要なことは平和条約の締結だ」としながらも「平和条約締結についても協議したが、すぐに解決できるとの考え方は放棄しなければならない」と述べました(産経5面:12/17)。 

 17年以降は分かりませんが、とりあえず、今回の会談では二島返還はゼロ解答に近い結論になっています。

運命の女神はオバマでも安倍でもなく、プーチンを選んだ

 この経緯に関して、毎日新聞(12/18:朝刊1面)では、安倍首相はプーチン氏の意向を読み違えていたと見ています。その要旨は以下の通りです。

  • 15年までの日露首脳会談でプーチンはたびたび「ロシア人の島民を脅かすようなことはしないでもらいたい」と発言。安倍首相は、この発言を返還に応じる条件を示すものと考えた。
  • 16年9月の会談で経済協力等を提案した首相は帰国後「交渉を具体的に進める道筋が見えてくるような手応えを感じた」と自信を吐露。
  • その後、トランプ氏当選(11/9)で米露関係の改善の可能性が浮上。ロシアを脅かした原油安もOPECの減産合意で懸念後退。
  • 9月以降、高まった「2島返還」観測は11月下旬のペルーでの会談で雲散霧消。
  • 今回の会談でロシアは戦勝国の立場を堅持

 トランプ氏当選のあたりが曲がり角だったようです。

 この経緯を見ると、ヒラリー当選にシフトを敷いていた安倍首相は、ロシア戦略の変更を余儀なくされた、というのが真相なのかもしれません。

 前掲の毎日記事によれば、9月時点では「首相は領土問題で進展があると本気で思っていた」(自民党幹部)そうです。

 確かに、この頃のロシアはヒラリー当選でシフトを敷いていたとも言われているので、EUやアメリカのさらなる硬化を予測し、対日関係の緩和に重きを置いていた可能性があります(法政大学の下斗米信夫教授はロシア要人が集うバルダイ会議ではヒラリー当選に備えていたとも述べている。朝日朝刊、12/3:17面)。

 ところが、トランプ氏が当選し、12月にはロシア向けの大型ビジネスを成立させたティラーソン氏が国務長官になり。17年以降の見取り図は180度変わってしまいました。ロシアから見れば地獄図から天国図に変わったので、オバマ氏とヒラリー氏はロシアのサイバー攻撃のせいで選挙に負けたんだ!と悔しがっているわけです。

 勝負運はプーチンのほうに傾いており、その差はアメリカ大統領選へのアプローチの違いから生じているように見えます。元KGBのプーチンのほうが情報力(情報工作力も含む)で一枚上手だったと思うのです。

日露防衛協力は可能だが、二島返還のために日米安保を犠牲にできず

 12月18日の産経記事を見ると、外交・防衛を巡る日露関係のややこしさが分かります。1面では「首相が日露防衛協力 急ぐ理由」と書きながら、3面では「北方領土返還 壁は日米安保」というように、反対方向の記事が同日の紙面に並んでいるのです。

 内容を見ると、1面記事では、日本には中露双方を敵に回せるほどの余力はなく、16日の会談で合意した「外交・防衛閣僚級協議(2プラス2)の再開」が中国とロシアの緊密化にくさびを打つための一手になるという趣旨の話が書かれています。

 しかし、3面記事では、露政府が北方領土を返還しても日米安全保障条約の対象外にするよう求めてきたと書かれています。日本がこれに応じた場合、日米安保条約が適用されない範囲が出てくるので、「米政府が尖閣諸島を日米安保条約5条の対象外とする口実を与えかねない」と懸念されているわけです。

 北方領土返還のためとはいえ、日米同盟見直しを主張するトランプ氏にそんな口実を与えるわけにはいかないので、今回のロシア側の要望を飲むのは難しいでしょう。

 これに関しては優先順位をつけざるをえません。

 日米安全保障条約を機軸にしながら、中国への牽制球を投げるという趣旨で日露防衛協力を進めていくしかなさそうです。

※北方領土返還の上での課題例(産経3面:12/18)

・歯舞、色丹返還後に米軍や自衛隊の通信施設ができると国後と択捉(原潜通行上の要衝)が丸見えになるのでロシア側は抵抗する(小泉悠・未来工学研究所研究員の指摘)

・「沖縄方式」で露軍駐留のまま北方領土を返還すると、日本の施政権下で同盟国・米国にとっての脅威になる原潜の活動を容認する矛盾を抱え込んでしまう

経済協力規模3000億円、日露双方のビザ発給緩和

 そのほかには、60件以上の事業で経済協力を行い、その総額が3000億円規模になることや、ロシア人の訪日時のビザ発給の要件が緩和されることも決まっています。

 経済協力の案件については、先端医療を用いたリハビリセンターや液化天然ガス(LNG)開発等が対象だと報道されています。ブルームバーグ記事では「エネルギー分野などの経済協力を含め、政府・当局間で12件、民間68件の文書がまとめられたと日本外務省は発表した」と報じられていました(「日ロ首脳:北方領土の共同経済活動交渉で合意-特別な制度で」12月16日)。

  朝日夕刊(12/16:1面)では有力な事業として「石炭積み出しの極東港湾整備、ウラジオストクなどを最新公共交通や上下水道システムでモデル都市化する事業など」だとしていました。同記事によれば、八項目の経済協力の中身は以下の通り。

  1. 健康長寿:極東地域に日本型病院
  2. 都市づくり:ウラジオストクなどをモデル都市に
  3. 中小企業交流:セミナーなどでビジネスマッチング
  4. エネルギー:極東ワニノ港に石炭搬出ターミナル
  5. 産業多角化:企業診断で経営指導
  6. 極東産業振興:ハバロフスクの空港整備
  7. 先端技術:原発廃炉に向けた共同事業
  8. 人的交流:ビジネスマンに向けビザ緩和

 ビザ緩和に関しては外務省HPに以下のような方針が出ていました(外務省「ロシア国民に対するビザ発給要件の緩和」平成28年12月16日)。以下、要旨。

  • ロシア国民(一般旅券所持者)に対する短期滞在ビザの発給要件緩和措置を決定し,平成29年1月1日以降の申請分から運用を開始。
  • 従来発給している商用の方や文化人・知識人に対する短期滞在数次ビザの発給対象者の範囲を拡大,最長の有効期間を現行の3年から5年に延長
  • 一次ビザのみであった観光等を目的とする短期滞在ビザについて,新たに数次ビザ(有効期間:3年,滞在期間:最長30日)を導入
  • 自己支弁による渡航の場合,短期滞在ビザの身元保証書等の提出書類を省略

 昨日には、北方領土への元島民の自由訪問ができるようになるとも報じられていましたが、これからは商売や観光のためにロシア人も気やすくなります。中国人の爆買の次はロシア人の爆買が始まるのでしょうか。

 フィギュアのエフゲニア・メドベージェワ選手がアニオタぶりを発揮していましたが、ロシアには日本アニメが好きな人も結構いるらしいので、来年、秋葉原に行ったら、ロシア人が以前より多くなっていたりするのかもしれません。

どこの企業がロシア企業と協力するのか??

 日露経済協力に関して、以下の会社が関わることが日経朝刊(12/17:2面)や毎日朝刊(12/17:6面)に報じられています。特に目を引くのが、以下の4つです。

  1. 国際協力銀行とロシア直接投資基金との共同基金設立(1000億円規模)
  2. 北極圏のLNG開発。国際協力銀行が1000億ユーロを融資。ノバテク社に協力するのは、三菱商事、三井物産、丸紅。
  3. サハリン沖資源開発でロスネフチに丸紅、国際石油開発帝石、JOGMECが協力。サハリン開発事業でガスプロムに三井物産が協力。
  4. みずほ銀行や三井住友銀行などがガスプロムに8億ユーロを融資。

 前掲二記事の内容をもとに、それ以外を一覧化すると、以下の内容になります。

  • 三井物産:食料大手ルスアグロや製薬大手アールファームと資本提携、協業
  • 東芝メディカルシステムズ:ロシア国内で医療機器製造
  • 理化学研究所:エイドス社と携帯型感染症診断システム開発
  • 日建設計:ロシア住宅統一開発研究財団と都市整備
  • 飯田グル―プホールディングス:極東開発公社に協力。製材工場建設⇒住宅供給
  • JETRO:ロシア中小企業発展公社と協力
  • 日揮:サハリンで小型LMGプラント/極東で野菜の温室栽培
  • 北斗病院:日揮と協力しながらウラジオストックで先端リハビリ施設をつくる
  • 双日:ハバロフスク空港の新ターミナル建設。ロシア極東で発電施設整備。
  • 丸紅:極東で石炭輸出の港を整備
  • 富士通、PFU:人工知能で文書を多言語処理
  • 日本郵便:ロシア郵便と郵便事業等で協力
  • 電通:ガスプロムメディアHDと戦略的協力

シベリア鉄道の北海道延伸には軍事リスクも

 二つの記事の見出しを見ると、日経は「経済協力、裾野広がる」で積極的な書き方。毎日は「大事業見送り、迫力不足」とネガティブな評価です。毎日記事では「シベリア鉄道の北海道延伸や日露のパイプライン直通など、ロシア側提案の大型プロジェクトは今回合意に至らなかった」と書かれていました。シベリア鉄道に関しては「つなげる路線がない」(経済団体幹部)だけでなく、「有事の際は鉄道トンネルを使って軍事侵攻されかねない(元官庁幹部)というコメントが掲載されています。

 シベリア鉄道の我が国への延伸に関しては、鉄道が物流輸送だけでなくロシア陸軍の輸送のためにも使われるため、平和ボケした対応はできないわけです。

「えっ、何それ」と思った方もいるかもしれませんが、軍事史を見ると、ビスマルク時代にモルトケ将軍が兵士を鉄道で高速輸送して、プロイセン軍がオーストリア軍を撃破して以来、鉄道の軍事利用が進展しました。鉄道というのは民間の輸送インフラであると同時に、軍事施設でもあります。ロシアのように陸軍の規模が大きい大陸国家の場合は、鉄道が重要な軍事インフラになるのです。

安倍首相が出る所に孫正義氏も出る?

 トランプ氏と安倍首相が会談した後、ソフトバンクの孫正義社長もトランプタワーを訪問しましたが、今回も同じような動きを見せています。

(日経電子版「孫氏『投資、さっそく検討』プーチン氏と立ち話」2016/12/16)

 孫正義社長は都内で開かれた「日露ビジネス対話」に出席したロシアのプーチン大統領と立ち話をした。プーチン氏は孫氏の肩に手を回し、笑顔で会話を交わした。孫氏は記者団に対しプーチン氏とは「新しい人工知能(AI)や最先端の技術を開発していくという話をした」と述べた。

 孫氏は今年6月にもサンクトペテルブルクでプーチン氏と、他の経済人らとともに会談している。この際はロシアの水力発電所でつくる電気を日本に送る大陸間横断送電網の構想を提唱した。ロシア国営送電大手ロシア・グリッドとの間で同構想の実現に向けて協議を続けている。

  朝日新聞記事によれば、政府関係者は嫌がっていたようですが、良くも悪くも孫氏は政治的には機敏に動きます。

 菅直人氏が首相だった頃、孫正義社長は再生可能エネルギーの盛り上げのために菅氏と会食し、政商と批判されたこともありましたが、今回はどうなるのでしょうか。

(筆者には、わざわざロシアの水力発電の電気を日本に入れる必要があるとは思えないのですが・・・。)

 ただ、ソフトバンクが大きくなったのは、孫氏が果敢にビジネスチャンスをめざとく追求してきたためでもあります。政府から嫌がられても、同氏は単に生残りのために合理的な行動を取っているだけなのかもしれません。

  ソフトバンクの株価も、12月に入ってから上昇傾向ではあります。

★6680円(11/16)⇒6880円(12/2)⇒7792円(12/8)⇒7765円(12/30)⇒8350円(1/16)⇒8686円(2/2)

(※グーグル〔「ソフトバンク 株価」の検索画面で出てくる株価チャートの数字 

日露企業の資源開発も進む?

 具体的な日露企業の協力案件に関しては、けっこう、大きなプランが動いています。日経電子版によれば、サハリン南西部海域の開発や北極圏でのLNG事業での日露企業の協力が決まっているようです。

★1:「丸紅、サハリン沖で資源開発 ロシア側と共同で」2016/12/16

 丸紅、国際石油開発帝石、ロシアの国営石油会社ロスネフチ、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)はサハリン南西部の海域で資源開発に乗り出す。地質調査や探鉱を進め、2020年代後半以降の本格生産開始を目指す。三井物産や三菱商事が手がけるサハリン北東部の「サハリン2」と並ぶ大型の液化天然ガス(LNG)事業に育つ可能性がある。

★2:「三井物産など、LNG事業で覚書 ロシア大手と 」2016/12/16

 三井物産、三菱商事、丸紅はロシアガス大手のノバテクと北極圏の新たな液化天然ガス(LNG)事業「アークティックLNG2」で連携する。三井物産と三菱商事はサハリン沖で手がける「サハリン2」事業について、ロシアの国営エネルギー会社ガスプロムと新たな覚書を交わす見通しだ。

 大きなプロジェクトが動きますが、これを見ると、サハリン2で起きた出来事を思い出します。

 サハリン2は、もともと、ロイヤルダッチシェルが55%、三菱商事が20%、三井物産が25%で共同出資した「サハリン・エナジー社」が石油と天然ガスを開発していたのですが、完成に近づいた時、ロシア政府は2006年の夏頃に、環境問題が見つかったので、これが解決するまでは開発中止すべきだと言ってきます。

 裁判で判決が出て、8割方進んでいたサハリン2プロジェクトはストップ。その間に、ロシア国営企業のガスプロム社をプロジェクトにねじ込んできたわけです。

 そして、最終的には、なぜかガスプロムが50%と1株を取り、シェルが27.5%マイナス1株、三井物産が12.5%、三菱商事が10%という形で事業が進められることになります。政治的に横槍を挟んで、他国が手掛けた案件をロシアのものにする、という手法が使われたわけです。ロシアは資源で食っているので、プーチン政権は資源に関しては容赦ないアクションを繰り返しています。

 日露の協力関係は進めるべきだとは思うのですが、ロシアというのは非常にややこしい国なので、サハリン2の事例は、今後、ロシアとのビジネスを進める上で、何度も見直さなければいけない重要な先行事例のような気がしてなりません。

16年9月比で株価上昇傾向の三菱商事、三井物産

 性悪説で国際政治を見る筆者は、よくもまあ、こんな事件が起きた後に、三井物産と三菱商事はサハリンプロジェクトを続けるな~と思ったのですが、三菱商事の株価はプーチン訪日が固まった9月初旬から見ると上昇傾向にあります(12月下旬にやや下落)。

【三菱商事】

2163円(9/1)⇒2485円(11/15)⇒2577円(12/16)⇒2490円(12/30)⇒2560円(1/16)⇒2627円(2/2)

 これはグーグル検索画面で出てくる「日本経済新聞 - Yahoo ファイナンス - ロイター」の数字です。多少、上がり下がりはありますが、全体的にはずいぶんと上がってきました。

 9月に比べると、前掲ニュースで出てきた三井物産も12月に株価が伸びました(下旬にやや下落)。

【三井物産】

1372円(9/1)⇒1498円(11/21)⇒1691円(12/16)⇒1607円(12/30)⇒1627円(1/16)⇒1655円(2/2)

 16日以降、下がりましたが、どちらも全体的には高めの株価になっています。

 ただ、ロシア資源開発は色々な難題が出てくるので、今後の未来図は一筋縄ではいかないのではないかと思います。

ほかのロシア関連銘柄の株価はどうなった?

 今回の日露経済協力に関わる企業の株価の動きをもう少し見てみましょう。

 9月1日比で見ると、2割~3割ぐらいの幅で上がっている企業も多いのですが、ロシア関連銘柄には期待が上がりすぎ、首脳会談後に下がったものもあります。

 丸紅のように、2017年以降も株価が高値で止まっている企業もありますが、本年以降、期待値買いの反動が出ている企業も多いようです。

【丸紅】

517円(9/1)⇒556円(11/2)⇒604円(11/21)⇒683円(12/13)⇒662円(12/30)⇒676円(1/16)⇒681円(2/2)

【日揮】

1600円(9/1)⇒1903円(10/28)⇒1683円(11/9)⇒2206円(12/16)⇒2124円(12/30)⇒2081円(1/16)⇒1907円(2/2)

【国際石油開発帝石】

875円(9/1) ⇒1045円(10/17)⇒899円(11/9)⇒1257円(12/12)⇒1171円(12/30)⇒1131円(1/16)⇒1083円(2/2)

【双日】

252円 (9/1) ⇒275円(10/17)⇒250円(11/9)⇒302円(12/8)⇒284円 (12/30)⇒292円(1/16)⇒292円(2/2)

【リンコーポレーション】

140円 (9/1)⇒308円(11/18)⇒ 236円(11/26) ⇒309円(12/6) ⇒232円 (12/30)⇒227円(1/16)(1/16)⇒206円(2/2)

【東海運】

265円 (9/1)⇒392円(10/24)⇒345円(10/31) ⇒556円(11/18)⇒458円(12/30)⇒441円(1/16)⇒455円(2/2)

【兵機海運】

164円(10/18)⇒195円(11/18)⇒164円(11/29) ⇒231円(12/6) ⇒161円(12/30)⇒163円(1/16)⇒163円(2/2)

 やはり、基礎力相応の株価に落ち着くので、期待値買いだけではまずいのでしょう。