トランプ政権と日本・アジア 2017

米国株や為替に影響する時事問題を中心に政治動向をウォッチ。今さら聞けない常識も再確認。

トランプ政権閣僚一覧 経歴、素顔、政策 ~どんな顔ぶれ?~ ※随時更新

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(ホワイトハウス イーストガーデン冬景色:出所はWIKI画像)

 トランプ政権の閣僚の顔触れが揃いました。

 公職未経験の経営者や軍人が多数閣僚入りしたことが注目されましたが、この人材の入替えがアメリカに新風をもたらすことを期待したいものです(本記事は12/13に公開した内容を、その後、更新しています)。

 閣僚に関しても賛否両論が百出ですが、川上高司氏(拓殖大大学院教授)による閣僚のグループ分けが分かりやすいので、最初に紹介しておきます(『トランプ後の世界秩序』P25~33)

  • インナーサークル(トランプ側近と身内):ペンス副大統領やバノン首席戦略官、クシュナー上級顧問等
  • 軍人・強硬派:マクマスター補佐官、マティス国防長官、ケリー国土安全保障長官、セッションズ司法長官等
  • 実業家:ムニューチン財務長官、ロス商務長官、コーン国家経済会議委員長等
  • 論功行賞と女性:カーソン住宅都市開発長官、ヘイリー国連大使、デボス教育長官等

  トランプ氏の意図が見える人事としては、通商強硬路線を取るライトハイザーUSTR長官やCO2規制の反対論者(プルイット環境保護局長官)、オバマケア反対論者(プライス厚生長官)等の閣僚入りが挙げられます。

  大使人事では、親イスラエル派のフリードマン氏(弁護士)やウィリアム・ハガティ氏(民間コンサル会社在籍時に3年間東京に在住の知日派)、テリー・ブランスタッド氏(元アイオワ州知事/習主席の「長年の友人」)等、駐在国寄りのスタンスをもった人材が指名されました(テリー氏は緩衝役とみられる)。

 そのほか、各省庁の幹部となる「政治任用」のポスト全体では、まだ8割以上が決まっておらず、現政権は手足を持たないまま走り出していることにも注意が必要です。

(※この記事は、随時、新情報に合わせて更新を続ける予定です)

副大統領:マイク・ペンス氏:(元インディアナ州知事)

 本名はマイケル・R・ペンス(Michael R. Pence)。マイクは略称です。

 ペンス氏はインディアナ州のコロンバス市に生まれました(1959年1月7日)。
 副大統領指名を受けるに際して「自分はまずキリスト教徒であり、次に保守主義者であり、共和党員である」と述べたように、ホワイトハウスHPに記載された経歴でも、冒頭に宗教的な価値観についての説明が出てきています。
 移民の子であるペンス氏の両親はインディアナの町でコンビニ経営に成功し、同氏はそこで勤勉さと信仰、家族の大切さを学びました。
 ペンス氏はハノーバー大で歴史を学び、1981年に卒業。大学時代に信仰心の意義をつかみ、インディアナ大学のロースクールで弁護士資格を取得しました。この頃に生涯の妻であるカレン夫人と出会っています。

 1988年と90年の下院選に立候補するも落選。その後、ペンス氏は地元のラジオ番組等でパーソナリティを務め、地道に実績と知名度を高めた後に2000年の選挙で初当選。インディアナ州選出の下院議員を6期連続で務めました(2001年~2013年)。連邦下院予算委員長等を歴任し、小さく、効率的な政府、浪費の削減、経済発展、教育の機会均等を擁護しました。

 そして、ペンス氏は2013年以降、インディアナ州知事に転じました。やはり、小さな政府と低税率を訴え、同州の歴史で最も大きな所得税と法人税の減税を実現。州の競争力を高め、新しい投資と高収入の雇用を創造したとホワイトハウスHPに記しています。

 そのほか、インディアナ州では、2015年3月に州内の個人や企業が宗教的な理由で同性愛者やトランスジェンダー等へのサービスを拒否できる法律(「宗教の自由回復法」Religious Freedom Restoration Act)が発効したことが注目され、賛否に関して双方の立場から議論されました(※ペンス氏の宗派はキリスト教福音派)。
 ペンス氏が副大統領に指名された際に、トランプとは違う「普通の人」であることを訴えたのは有権者を安心させるためでした。そこに共和党主流派からの信任の厚さを活かしてトランプ氏とのつなぎ役を務めるという狙いもあります。
 ペンス氏が地盤とするインディアナ州は中西部から北東部に到るラストベルト(さびついた工業地帯)にあたるので、同氏を副大統領に指名したのは、この地域の労働者票の取り込む意図が含まれていました。

 2016年の副大統領候補の討論会では長年のラジオ番組で磨かれた言論術の冴えが注目されました。
 民主党のケイン氏がトランプ氏の赤字を利用した税免除を批判した時には、ペンス氏がクリントン氏の私用メールの公務使用を批判。ケイン氏がイラン核合意を民主党政権の成果として強調すれば、ペンス氏が核開発を止められないと応酬。トランプ氏の税金問題に対しても「彼は税法を利用しただけだ」「あなたは控除を受けていないのか」等と切返しています。
 そのほか、ペンス氏とトランプ氏の主張には微妙な違いもあります。トランプ氏はプーチンをオバマよりも優れた指導者として賞賛したのですが、ペンス氏はプーチン氏を「狭量ないじめっ子」と呼んで批判。

 ペンス氏は、トランプ氏の過激な主張を緩和する役割を果たしているとも言えます。

 11月9日のトランプ氏当選後は、ペンス氏が政権移行チームを率い、1月20日に正式に副大統領に就任しました。

 ペンス氏は議会の取りまとめや内政に尽力していますが、2月中旬には訪欧、4月下旬には日本や韓国、インドネシア等を歴訪。外交面でも力を発揮しているようです。

大統領首席補佐官:ラインス・プリーバス氏(共和党全国委員長)

  ラインス・プリーバス氏(Reince Priebus:44歳、1972年生)はウィスコンシン大を卒業後、フロリダ州のマイアミ大学法科大学院で博士号を取得。弁護士として活動後、2004年にウィスコンシン州で上院議員選挙に立候補するも落選。同州での共和党の組織づくりに大きく貢献し、2007年に共和党ウィスコンシン州委員長に就任(当時35歳)。

 プリーバス氏はウィスコンシン州委員長の間に、上院選や知事選、連邦議会選で共和党に勝利をもたらしました。この勝利が評価され、2011年1月から共和党全国委員長(RNC:Republican Party Chairman)に就任します。

 3期連続でRNCを務め、オバマ政権下で、下院と上院の双方での共和党の優位を実現させました。組織運営のプロとしての評価は高く、16年の大統領選ではトランプ氏の女性問題が明るみに出て党内で離反が相次いだ際にも、結束を呼びかけ、勝利に大きく貢献しました(大統領選では有権者宅への訪問、電話がけ等の選挙活動の指揮を担当。これはトランプ氏の苦手な領域だといわれている。その功を買われてこのたびの指名となった)

 プリーバス氏はライアン下院議長等の共和党主流派とのパイプが太いため、トランプ氏は同氏に首席補佐官を任せ、選挙戦で生じた党内の亀裂の修復と議会との連携による政権運営の安定化を図ったとみられています。

 スティーブン・バノン氏との役割分担に関しては、ブルームバーグ記事(「トランプ米次期政権:首席補佐官にプリーバス共和党全国委員長」11/14)にて「トランプ政権ではバノン氏に戦略的決定の権限の大半を持たせ」、「プリーバス氏は大統領執務室などの日々の運営に専念する」と報じていました。そして、過去に大統領上級顧問を務めたアクセルロッド氏の「運営面での疑問は、権限が実際にどう分けられるかだ。首席補佐官は顧問には与えられない固有の権限を有する」という指摘を紹介しています。

  この分担がうまくいくのかどうかが、今後、政権運営の成否にも影響を与えるでしょう。

首席戦略官兼上級顧問:スティーブン・バノン氏(元保守系メディア元最高責任者)

 保守系のニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」会長を務めたスティーブン・バノン氏(Stephen Bannon:62歳、1953年)は、選挙戦で見放された白人中間層の怒りを吸い上げるために、「メキシコ国境に壁をつくる」「イスラム教徒の入国を拒否せよ」等の過激な主張を選挙戦略に取り込んだ人物です。

 米マスコミからは「白人至上主義者」「反ユダヤ主義者」等と批判されていますが、2016年の大統領選で選対本部長を務めた功績を買われ、首席戦略官兼上級顧問に指名されました。

 しかし、トランプ氏のメディア戦略を司った手腕が評価され、側近として大統領府入りしました。

 近年、大統領はメディア戦に力を入れざるを得ず、オバマ大統領も自分の言動や政策判断が世論調査の支持率増減にどの程度影響を与えるかを、毎日、一生懸命に見ていたとも言われています。結局、選挙に勝った後でも情報発信の問題と付き合わざるをえないのが現状だからです。

 バノン氏の経歴は以下の通りです。

 バージニア州出身で、実家の両親は民主党を支持する労働者でした。

 バージニア工科大学⇒ジョージタウン大学(修士課程:安全保障論)⇒ハーバード・ビジネス・スクール(経営学修士)と学歴を積み、米海軍では太平洋艦隊の水上戦将校やペンタゴン海軍作戦部長・特別補佐官を務めました。

 退役後はゴールドマン・サックスで勤務しているので、職業経験の中で安保と金融に関して見識を磨いています。いろいろと悪く言われますが、一定の支持を獲得するメディアを作るためには、やはり、学問と仕事の両面の蓄積が必要だったのでしょう。

 トランプ政権発足後、28日の大統領令で国家安全保障会議(NSC)に入りし、イスラム圏七か国からの入国制限に関しても、バノン氏は強い影響力を発揮したことが日経朝刊(2017/2/1:3面)でも報じられていました。

 当初、「難民やイスラム圏の市民の入国制限は当初、永住権(グリーンカード)保持者は入国可能にするはずだった」はずだったのですが、「バノン氏はミラー大統領補佐官と組み、関係者とほとんど協議せず大統領令をまとめた」といわれています。司法省の事前審査を拒み、違憲と疑われる大統領令が出され、「結局、永住権保持者の入国は原則認められることになったが、空港では混乱が広がった」わけです。

 バノン氏は各国首脳との電話協議の場に同席しているとも言われ、トランプ政権を動かす黒幕(ダースベーダ―と呼ばれた)と見られていました。

 しかし、マイケル・フリン氏にかわり、マクマスター氏が大統領補佐官となって以降、軍高官出身者の閣僚が強い影響力を持ち始めたのか、4月5日にNSCからバノン氏は外されました。バノン氏に替わり、NSCではダンフォード統合参謀本部議長とコーツ国家情報長官が常任委員に入っています。

 なお、同氏は対中強硬派としても知られていますが、4月以降はやや対中宥和的なクシュナー氏の影響力が強まり、対中外交は硬軟併用といった様相を呈し始めています。

大統領上級顧問:ジャレッド・クシュナー(実業家、トランプ氏娘婿)

 クシュナー氏(1981年生、36歳)はニュージャージー州で敬虔なユダヤ教徒の不動産実業家の長男として生まれ、2003年にハーバード大を卒業、07年にニューヨーク大学ビジネス・スクール・ロー・スクールにてMBAと法務博士号を取得しています。

 同氏は、04年に脱税や違法献金等で実刑判決を受けた父親から事業を継承。06年に弱冠25歳で若き日のトランプ氏と同じく巨額の買収を手掛けました。週刊誌「ニューヨーク・オブザーバー」(1000万ドル)や41階建てのマンハッタン5番街の高層ビル(41億ドル)等を購入し、09年にトランプ氏の娘イヴァンカと結婚しています。

 ユダヤ教徒であり、ユダヤ人コミュニティーとのつながりを持つクシュナー氏の影響はトランプ氏のイスラエル寄りの中東政策にも反映されていると見るべきでしょう。

 クシュナー氏は15年にもワン・タイムズスクエアの株式の過半数(50.1%)を買収するなど、やり手のビジネスマンとして活躍し、トランプ氏の大統領選では人事、戦略、演説、資金集め等に関わり、勝利に大きく貢献しました。

 上級顧問は閣僚ポストではないので上院の承認は要らないのですが、アメリカでは大統領の親族を政府機関で雇用することを禁じる反縁故法があるため、これに抵触しないかどうかが議会で問われる可能性もあります(クシュナー氏が無報酬なのは「雇用」ではないという理屈を通すためとみられる)。

 その後、クシュナー氏は政権移行チームに入り、政権発足後はラインス・プリーバス氏らとともに大統領を補佐しています。

 2月頃の報道では、外交の窓口を務めるクシュナー氏に各国から電話が殺到していることや大統領令の署名の場に同席していることなどが紹介されていました。

 クシュナー氏は事業で大成功を収め、イヴァンカさんと結婚したわけですが、義父のトランプ氏は「不動産よりも政治の方が好きなのではないか」と述べ、今後のクシュナー氏の活躍に大いに期待しています。

国家安全保障担当大統領補佐官:ハーバード・マクマスター氏(元陸軍中将)

(※前任者のマイケル・フリン氏〔元陸軍中将、元国防情報局長〕は13日に辞任。トランプ政権発足前にロシア当局者と対露制裁について協議した疑惑が原因。正式就任前のフリン氏は昨年の段階では「民間人」なので、ロシアと外交協議を行うと民間人の外交への関与を禁じる法律に抵触してしまう)

 国家安全保障担当大統領補佐官はNSC(アメリカ合衆国国家安全保障会議)を司り、大統領に安全保障問題について献策することを任務としています。有名どころで言えばキッシンジャー氏やコンドリーザ・ライス氏などが務めていた要職(閣僚級ポスト)で、大統領の指南役になることが多いようです。

 トランプ氏は指名に際して、マクマスター中将の30年にわたる献身と「とほうもない経験」を評価し、「中将は、アメリカ本国と海外での国益を守るために知識と先見力をもって私に助言可能だ」とも述べていました。

(出所:Remarks by President Trump Announcing the Designation of Lieutenant General H.R. McMaster to National Security Advisor | whitehouse.gov 2017/2/20)

 トランプ氏はマクマスター氏に国家安全保障チーム編成の権限を与えたとも報じられていますが、今後の焦点は、こうした軍歴豊富な閣僚陣と、選挙戦以来、トランプ氏に影響力を持つスティーブン・バノン氏との綱引きになりそうです。バノン氏は首席戦略官ですが、トランプ氏から異例の厚遇を得て、NSC入りを果たしているからです。

 ロイター通信では、バノン氏がイスラム過激派への強硬策を主導していますが、マクマスター氏の戦略は「過激派と地元の大多数の住民を分離する」ことに依拠する慎重策だと紹介しています。マクマスター氏がイラク戦争の頃、「アラブ系米国人を募って地元民に扮する役割を演じさせた」り、「壁に掛けられた絵を見てその世帯がスンニ派かシーア派かを区別する方法を部隊に伝えるなど、実にきめ細かい準備作業を行った」ことを紹介しているのです。「トランプ氏の新補佐官、安全保障上の意見に食い違い」2017/2/22)。

 今後、活躍が期待される同氏の経歴を見てみます。

 マクマスター氏(ペンシルヴァニア州出身。1962年7月24日生:54歳)は1984年にウェストポイントの陸軍士官学校を卒業。91年の湾岸戦争では機甲騎兵中隊(戦車+装甲車の部隊編成)を指揮し、イラク軍の戦車隊を撃破(銀星章を受章)。イラク戦争では北部で治安維持を強化し、テロ活動の鎮圧に努めました。その作戦は07年にイラク統治策に採用されています。中東の活動で非常に大きな功績をあげた軍人です。

 その後、イラク派遣軍長官の特別補佐官、アフガン派遣軍では合同調整機動部隊司令官を歴任。本国で米軍高等機動作戦センター司令長官(2012年~)、陸軍能力統合センター長(2014年~)を務めました。

 マクマスター氏はトランプ氏とは違い、ロシアを危険視しているので、今後、見解の相違が表面化する可能性もあります(対露強硬派の共和党のマケイン上院議員は同氏の就任に賛同)。

 4月にトランプ政権はシリアへのトマホークミサイル攻撃を決断しましたが、その背景には、中東の専門家であるマクマスター氏とマティス氏の意図が働いていたとも見られています。

 4月末以降の北朝鮮危機でも盛んに発言したマクマスター氏の言動には、今後も注意が必要です。 

国家安全保障担当大統領次席補佐官:キャスリーン・マクファーランド氏(保守系評論家)

 キャスリーン・トロイア・マクファーランド氏(1951年7月22日生:65歳)はFOXテレビの評論家です。

 ニクソン政権、フォード政権、レーガン政権の三代にわたって安全保障を担当するスタッフとして勤務しました。1970年代にはキッシンジャー元国務長官の側近を務め、レーガン政権下では国防次官補代理を務めています。

 ジョージ・ワシントン大やオックスフォード大、マサチューセッツ工科大にて安全保障問題を研究し、退官後は在野の言論人として活躍しました。オバマ大統領がISIS(「イスラム国」)のテロをイスラム過激派がもたらした西洋文明への戦争と認めないことを批判しています。

 選挙期間中からトランプ氏を支持しており、同氏の当選後、安全保障チーム入りすることになりました。

大統領補佐官兼国家経済会議議長:ゲーリー・コーン氏(元ゴールドマンサックス社長兼COO)

 米国家経済会議(NEC)は経済政策の司令塔です。

 経済政策の策定や調整全般に関わるため、ここにゴールドマンサックスの次期会長兼CEOと目されたコーン氏(56歳)が入ったことには大きな意味があります。大統領選で訴えたアンチウォール街の主張はどこへやらで、経済面ではウォール街出身者が大きな影響力を持つと見られています。

 ゴールドマンサックス社HP記事を見ると、コーン氏はまずコモディティ業務の責任者(1996~1999年)となり、99年以降に債券・為替・コモディティ部門の業務を統括。2002年には債券・為替・コモディティ部門共同COO(同年3月~9月)に就任、9月以降は同部門共同責任者、03年からは株式部門の共同責任者、04年からはグローバル・セキュリティーズ・サービス部門の共同責任者となっています。

 業務を一つずつ広げ、2006年6月から社長兼COOとなりました。

 他の肩書を見ると、全米証券業者・金融市場団体の国債発行諮問委員会委員を務めるだけでなく、非営利団体においても教育分野などで幅広く理事等の要職を務めています。トランプ氏とのつながりではクシュナー氏と懇意であることが注目されていました。

 トランプ氏が金融規制を見直す大統領令に署名した後、コーン氏はWSJ紙のインタビューに応え、この改革で毎年数千億ドルにわたる銀行の規制コストが軽減され、消費者のために銀行が効率的・効果的な価格設定を行えるようになると述べました。金融安定監視評議会や大手金融機関への監視のあり方を変える可能性についても示唆しています(WSJ日本語版「トランプ氏、ドッド・フランク法撤回の大統領令に署名へ」2017/2/3)。

 コーン氏は優れた調整力や実務能力を発揮し、ドッド・フランク法の改革や税制改革の法案を進めています。

 そして、トランプ大統領が通商政策で当初の強硬路線を緩めたのは、コーン氏をはじめとする一派が、対中強硬派(バノン氏やナヴァロ氏など)との争いに勝ちを収めつつあるためだとも言われています。 

大統領補佐官・通商産業政策部長:ピーター・ナバロ氏(元カリフォルニア大教授)

 ナバロ氏は経済学者・公共政策学者です。この人の名前は、ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro、67歳:1949年7月15日生)と表記されることもあります。

 カリフォルニア大学アーヴァイン校の教授で、CNBC経済番組でレギュラー出演者として出演したり、ビジネスウィーク誌やNYT、WSJ等に寄稿たりと幅広く活躍しています。

 選挙期間中からトランプ氏の経済政策の顧問をしており、12月21日に政権以降チームが通商政策の具体化を計って「国家通商会議(NTC)」を新設することを発表した際に、その責任者に指名されました。

 NTCは国家安全保障会議(NSC)と連携し、経済と安全保障の双方から国家戦略をつくる機関となると見られていましたが、政権発足から4か月が経ち、最近はクシュナー氏の影響力拡大に伴い、対中外交が硬軟併用の路線に変わっています。

 トランプ氏は4月末の大統領令で通商や産業政策を助言する「通商製造政策局」を設け、そのトップにNTC委員長のナバロ氏を置きましたが、通商交渉は担当しないことになりました。これは商務省との調整役等にとどまり、ナヴァロ氏の権限は縮小するとみられています。

 ナヴァロ氏の過去の言論活動を見ると、2000年代から中国の軍拡に警鐘を鳴らし、12冊の著書を刊行しています。

 最近注目されたのは『米中もし戦わば』(赤根洋子訳)ですが、この人は「力による平和」を論じ、「抑止力なくして平和はない」というリアリズム的な世界観を元に外交政策を考えています。

 前掲書の題名の通り、この人は対中強硬派です(そのほか『Death By China』を執筆し、自ら監督・脚本を務めている)。ナバロ氏をNTCの責任者としたことはトランプ政権の対中路線を示す人事として注目されています(詳細は筆者12/23記事を参照)。

米通商代表部(USTR)代表:ロバート・ライトハイザー氏(元USTR次席代表)

 ライトハイザー氏(1958年生:69歳)は1980年代にUSTR次席代表を務め、対日鉄鋼協議に際して日本側に輸出の自主規制を認めさせたタフ・ネゴシエイターです。その後、米鉄鋼業界等に関わる弁護士に転じました。長年、中国が不公正な貿易やWTO違反を行っていると批判しています。

 ブルームバーグ記事(「米通商代表にライトハイザー氏起用、対中強硬派の元次席代表」1/3)ではトランプ氏が「ライトハイザー氏は米経済の最も重要なセクターの幾つかを保護する合意を取りまとめた幅広い経験を有している。多くの米国民から富を奪い取った誤った通商政策の転換に素晴らしい貢献をしてくれるだろう」と評したことを報じていました。この記事によれば、中国グローバル化研究センター(CCG)副主任の何偉文氏は「レーガン政権2期目に政権の通商チームは二国間交渉で日本に強い圧力をかけた。ライトハイザー氏が選ばれるのなら、対中強硬姿勢が見込まれ得る」と述べたそうです。

 ライトハイザー氏は14日の上院公聴会で農産物の市場開放に際しては、日本が第一の標的だとも述べていました。同氏は日本の農産品市場の閉鎖性を批判し、米国の通商拡大に関して、3月の公聴会では、日本の農産品市場が「最優先の標的だ」と表明しています。TPP離脱後、トランプ政権はTPP以上に有利な協定の妥結を目指すわけです。

 その後、同氏は5月11日に上院で承認されました。ライトハイザー氏は豊富な貿易交渉の実務経験を持っているので、同氏が正式就任すれば、各国との通商条約の見直すという、トランプ氏の政策が本格化するはずです。

国務長官:レックス・ティラーソン氏(元エクソン・モービル会長兼CEO)

 レックス・ティラーソン氏(Rex Tillerson:64歳、1952年生)は、2006年~2016年まで世界の200か国以上で石油・ガス事業を展開するエクソン・モービル社の会長兼CEOを務めていました。

 『石油の帝国』(スティーブ・コール著、板野和彦訳)によれば、その経歴は以下の通りです。

 ティラーソン氏は北テキサスのウィスタ・フォール出身。復員兵のために建てられた労働者階級の家で育ち、父がボーイスカウトの地区代表補佐になった影響を受け、若いころはボーイスカウトに尽力。最高位のイーグル・スカウトとなりました。テキサス大で土木工学を学んだ後、同氏は1975年にエクソンに入社。採掘・探鉱などを担う上流部門に関わり、各国首脳と契約交渉を行います。CEO就任後はボーイスカウトの表彰システムに似た制度をエクソンモービルに導入しました。ティラーソン氏は1990年代にサハリンの天然ガス開発に関わり、北極海大陸棚のカラ海で露ロスネフチとの合弁で海底油田開発に合意。大統領令ではなく、恒久的な法による承認を求め、一時はプーチン氏の不興を買いましたが、結局は理にかなった主張だと評価され、プーチン氏から2013年に友好勲章をもらいました。

 ウクライナ問題を巡るロシア制裁で事業は中止されたため、同氏はCEO時代に制裁を批判していたのです。 

 この人は親露派なので、14年のクリミア併合を巡ってオバマ政権が対露制裁を発動した時には反対しましたが、上院公聴会以降、従来の親露路線を弱めています。

 ただ。ティラーソン氏もトランプ氏と同じくビジネスからは手を引かざるをえないでしょう。そうしないと、外交担当者が自企業優遇の判断をすることが懸念され、共和党、民主党の双方からの攻撃材料に利用されるからです。トランプ陣営はヒラリー氏が外交担当者なのに私腹を肥やしたと批判してきたので、そうしないと筋が通りません。

 この人は2013年にプーチン氏から「ロシア友好勲章」をもらっているので、外交・安保に影響力を持つマケイン上院議員からは「プーチン氏と個人的に関係が近いことは懸念」すべきだと批判されています(日経電子版「トランプ氏、米外交刷新 国務長官に親ロ派ティラーソン氏」2016/12/14)。 

「外交経験がない」とよく批判されていますが、筆者には、石油メジャーで巨大プロジェクトをまとめた手腕は外交官に劣るものではない、というトランプ氏の意見が間違っているとは思えません。石油ビジネスは経済にとどまらず、国際政治や地政学、金融など、総合力が求められる業種ですし、ブルームバーグのJoe Carroll氏によれば、ティラーソン氏はエクソン社の「情報活動チームから定期ブリーフィングを受けてきた」とも言われています。

「エクソンの戦略立案部門が収集した経済情勢やトレンドの確かなデータ、学術誌や政府声明などオープンソース情報、海外外交関係者との情報交換、在外勤務のエクソン幹部からの機密リポートなど」に触れ、外交官並みの情勢分析を行っていたわけです(「ティラーソン氏の外交感覚、エクソンの情報活動部門が育む-関係者」16/12/16) 。

  エクソンぐらいの規模であれば、中小国並みの情報力があってもおかしくありません。同氏を素人と批判する人もいますが、ティラーソン氏の指名をトランプ氏に薦めたのはロバート・ゲイツ元国防長官です。同氏には元国防長官の目に適うだけの人材だったわけです。

 ティラーソン国務長官は3月に訪日し、北朝鮮問題における米国の忍耐の時代が終わったことを指摘しました。そして、トランプ氏と同じく、尖閣諸島を日米同盟の対象と見なすことを確認しています。

 同氏は安倍首相訪米前にトランプ氏に「一つの中国」に関して米国の従来路線に戻すことを進言。そして、4月の米中首脳会談を実現させるために尽力しました。

国防長官:ジェームズ・マティス氏(元中央軍司令官)

 ジェームズ・マティス氏(James.Mattis:66歳、1950年生)は海兵隊軍人からアメリカ軍の最高の要職にまで昇り詰めた人物です。 

 マティス氏の経歴を見ると、1950年にワシントン州に生まれた後、セントラル・ワシントン大学を卒業。22歳の頃に海兵隊少尉となります。

 軍歴はライフル歩兵小隊の指揮に始まり、小隊指揮官から中隊指揮官に昇進。

 1991年にはイラク湾岸戦争で歩兵大隊を指揮し、9.11以降の2001年のアフガン戦争では旅団を、2003年のイラク戦争では海兵隊師団を指揮しました。ファルージャ総攻撃で活躍し、戦後に中将となります。07~09年にはアメリカ統合戦力軍とNATO改革連合軍の司令官を兼務しました。

 その後、2010年以降、オバマ政権時代の中央軍司令官人事が混乱し、マティス氏もその渦中に入り、中央軍司令官に就任するのです。

 2010年6月にマクリスタル氏がローリングストーン紙でオバマ政権批判を繰り広げたことで辞任。後任は対反乱作戦(COIN)を主導したディビッド・ペトレイアス氏(国務長官候補で名前が上がった人)で、この人は7月にアフガン駐留軍を率いることになりました(治安維持で成果を上げた後、CIA長官に就任)。

 そして、2010年7月にマティス氏が中央軍司令官に就任したのですが、2013年にオバマ政権がイラン核合意に向けて動き出した時、強硬に反対して解任されてしまいます(政権交代に伴い、民主党政権の思惑に翻弄され、苦戦を続けた大将にスポットライトが当たったともいえる)

 国家安全保障法によれば、退役してから七年以上経たないと元軍人は国防総省の要職には就けないので、13年退役のマティス氏はこの法律に抵触しましたが、上院は超党派で特別法を可決し、1月に国防長官に就任しました。マティス氏は「狂犬」(マッドドッグ)と呼ばれていますが、トランプ氏に対してテロリストへの水責め拷問に反対するなど、実際は、良識的な判断力を持った軍人なので、信望が厚いわけです(綽名の由来は、女性にヴェールを着ることを強制し、それを拒んだ者を殴りつけたイスラム教徒を殺すのが楽しいと発言した際のマスコミ報道)。

「狂犬」「戦う修道士」(独身でひたすら軍のために働いていた)等、印象的なあだ名が目につきますが、米軍の中心を担った実績を持ち、尊敬を集めている人物なので、これだけで同氏にレッテル張りをするのは賢明ではありません。上院公聴会の発言等は非常に知性的・理性的ですし、反トランプ政権路線のニューズウィーク(日本語版2016.12.13 /トーマス・リックス氏)でもマティス氏の起用に関してはわりと肯定的です。

(マティスは)「孤立主義には反対し、『アメリカは今後も世界に関わっていくべき』で『歩み寄り』は民主主義政府の根幹をなすもの』とも考えている」(彼は)「財政面でも保守派的で、そういう人物が国防総省のトップにいるのは悪くない」

「マティスは兵士に非常に人気がある。彼の起用は、トランプ政権下では働きたくないという国防総省のキャリア組を慰留する効果も期待できる」

  この記事では、マティス氏は陸軍砲兵大隊指揮官が尋問中にイラク人抑留者の耳元で発砲したのを批判するなど、現実の行動に関しては熟慮を求めるタイプだとも書かれていました。発言が過激でも現実の判断は冷静でした。アフガンとイラクの治安維持作戦をつくる上では、この人とペトレイアス氏の二人が大きく貢献しています(マティス氏は軍事戦略の著書を執筆する理論家でもある)。

 そのため、現在はトランプ大統領も一目置く軍のプロとして調整役が期待されています。

 筆者は、元自衛官の方が「元海兵隊の将軍が政権要職に入るのは日本にとってプラスではないか」と言っているのを聞いたこともあります。海兵隊は日本との接点が多いので、欧州との接点が多い陸軍出身者よりも望ましいという見方もあるわけです(日系人のハリス氏が太平洋軍司令官をしているのも、日本の国防上は重要な意味がある)。

 マティス氏は1月に上院の承認を得、2月上旬に訪日し、トランプ氏の代理として日米同盟維持・強化の路線を確認しました。その後、韓国やヨーロッパを訪問し、米韓同盟やNATOの支持を確認しました。トランプ氏の信任が厚いので、今後、マティス氏は同政権の外交・安保政策に影響力を発揮していくことになりそうです。

国土安全保障長官:ジョン・ケリー氏(元米南方軍前司令官・元海兵隊大将)

 マティス氏、ケリー氏はいずれも海兵隊出身です。

 ジョン・F・ケリー氏(John Francis Kelly、66歳、1950年生)もイラクで戦闘任務にあたり、最後の役職としては中南米~西インド諸島の防衛を担当する米南方軍司令官を務めていました。

 ケリー氏はメキシコ国境の警備の脆弱さが安全保障上の脅威だと考えており、トランプ氏と同じく、不法移民阻止の強硬派です。

 しかし、彼は過去の国家への貢献を評価され、上院でいち早く人事を承認されました。国土安全保障省のHPには「彼とその家族は人生を通じて国に奉仕したーー彼以上にこの国に奉仕した人物を知らない」という歓迎の言葉が明記されています(執筆は同省スタッフと思われる。以下、本節の情報の出所:Secretary of Homeland Security | Homeland Security

 同省の説明によれば、国土安全保障省長官はアメリカで三番目に大きく、運輸保安、関税、国境防衛、税関、アメリカ市民権と移民受入れに関わる業務、緊急事態管理、沿岸警備、大統領警護を含む22の部局を持ち、229000人のスタッフを擁しています。

 同省長官はトランプ氏が掲げる国境警備やテロ対策、メキシコ国境の壁建設、麻薬売人の入国規制、イスラム教徒の入国(禁止?)関連の仕事に携わります。

 ケリー氏の経歴は以下の通りです。

 マサチュセッツ州のボストンに生まれ、1970年に海兵隊に入隊。1972年には軍曹となりました。ノースカロライナ州のキャンプ・レジュで第二海兵師団の歩兵を務めています。

 その後、1976年にマサチュセッツ大を卒業し、海兵隊の士官になりました。

 海上任務や偵察大隊の指揮、軍の教育任務、議会への連絡、ヨーロッパでの連合軍最高司令官の補佐業務などを幅広くこなし、2001年に本国に帰ります。

 2002年には准将に昇格し、第一海兵師団で師団長を補佐しました。イラクでの戦闘任務にも従事しています。

 2004年から2007年までは海兵隊本部に帰り、キャンプ・ペンドルトンを拠点として第一海兵遠征軍を指揮しました。

 2008年ではイラクのアル・アンバール州で多国籍軍を指揮。その後、本国に配属され、中将として2009年3月以降、複数の本国の海兵師団を指揮。

 その後、2012年10月から2016年1月までの間、アメリカの南方軍を指揮し、FBIやDEA(麻薬取締局)と連携して麻薬の流入、テロの脅威をもたらす人々の流入、南方から米国への犯罪組織の侵入を阻止する任務に携わります。

中央情報局(CIA)長官:マイク・ポンペオ氏(元共和党下院議員)

 ポンペオ氏もリベラル系のメディアから酷評されています(トランプ人事はこの種の人物ばかりです)。

 しかし、筆者はハンフィントンポストの批判記事を見た時、その意図に反して、この人の主張の背景が分かったような気がしました。

 ハフポス記事(「次期CIA長官、マイク・ポンペオ氏の人物像とは?拷問の実行を擁護したことも」Christina Wilkie、11月28日)では、ポンペオ氏がCIAによる「強化尋問」(拷問のこと)擁護で2014年頃に名が知れ渡ったとし、同氏の二つの発言を取り上げています。

「強化尋問によって我々が得た情報は貴重なものだ。オサマ・ビンラディン容疑者確保の直接的な要因になったからだ」「(ビンラディンが殺害された)あの晩のシチュエーションルームの写真を、オバマ大統領が公開したのは素晴らしいことだ。しかし、彼は実際に作戦を実行した兵士たちに背を向け、擁護しなかった」

  これはボンベオ氏を非人道的だと批判する記事です。

 しかし、同氏が言っているのは、戦争の現実そのものです。ボンベオ氏は、オバマ大統領はビンラディン殺害で米国で喝采を浴びながら、そのための汚れ仕事をした現場兵士に対して、何ら報いもしなかったと批判しています。

 結局、拷問で手にした情報でビンラディンを殺したなら、オバマ氏も一蓮托生なのに、自分だけ喝采を浴びるのはおかしいと主張しているわけです。

 ハフポス紙は、そのほかにもアメリカ国家安全保障局(NSA)が行った違法な情報収集(スノーデン氏に暴露された話です)をボンベオ氏が擁護したことを批判(ポンペオ氏の側は戦時だから仕方ない、という論理を立てていました)。トランプ政権では、シビアな現実主義者が評価される傾向があるようです。

 同氏は陸軍士官学校を卒業後、陸軍下級士官として冷戦時代にベルリンの壁を警備していました。

 退役後には航空機部品を扱う企業をつくり、経営者となります。

 そして、2010年にティーパーティー運動者等の支持を受け、カンザス州で下院議員に当選しました。

 下院議員としてイラン核合意の反対を主導。ヒラリークリントンが無策だったリビア東部のベンガジで起きたアメリカ領事館襲撃事件に関する特別委員会の一員を務めています。

 トランプ氏の人事では、過去のイラン合意を否定し、反イスラム路線の人物が並んでいるので、イスラム国の殲滅という未来図が固まっているようにも見えます。 

国家情報長官:ダン・コーツ氏(前上院議員)

 ダン・コーツ氏(1943年生、73歳)は20年以上のキャリアを持つベテラン議員です。ダン氏はミシガン州出身で、1971年にインディアナ大学のロースクールを卒業して弁護士となり、共和党の下院議員(1981~89年)、上院議員 (1989~99年/2011~17、インディアナ州選出)を歴任しました。上院では情報特別委員会や経済関連の委員会で仕事をしており、ブッシュ前政権の時代には駐ドイツ大使も務めています。

 16の情報機関を統括する国家情報長官の指名に関して、トランプ氏は『ダンは、米国の情報機関を率いるのに必要な深い専門知識と健全な判断力を明確に示してきた』『国家情報長官として承認されれば、彼(コーツ氏)は米国の全情報機関から尊敬され得るリーダーシップを発揮し、米国に危害を加えようと試みる者たちを絶えず警戒する私の政権で陣頭指揮を執ってくれるだろう』と述べました(AFP通信「トランプ氏、米国家情報長官にダン・コーツ前上院議員を指名」2017/1/8)。

 前掲記事は、コーツ氏がロシアのクリミア併合時に米国が行った制裁を主導し、ロシアからブラックリストに載せられ、同氏が光栄だと述べたことも紹介しています。

  ダン氏の対露外交の方針はティラーソン国務長官の志向と矛盾しますが、これは共和党の対露強硬派を配慮した人事とも見られています。

司法長官:ジェフ・セッションズ氏(元共和党上院議員)

 2月8日に上院で承認されたセッションズ司法長官の本名は「ジェファーソン・ビューレガード・セッションズ3世」(Jefferson Beauregard Sessions III:69歳、1946年生。ジェフ・セッションズは通称)。トランプ氏とほぼ同年代で、アラバマ州選出の上院議員でした。

 アラバマ州出身のセッションズ氏はハンティントン大学に進学。アラバマ大学で学位を取って弁護士になりました。

 共和党員のセッションズ氏は陸軍に入隊し1973年~77年まで予備役を務めています。

 その後、1975年~77年まではアラバマ州南部の連邦地区検事補佐、81年~93年までは同州の検事。94年に同州の司法長官となり、97年に上院議員に当選。2008年まで三選を続けました。

 ブッシュ政権時代には、イラク戦争やブッシュ減税に賛成。不法移民の合法化を目指す法案否決運動を主導。

 セッションズ氏にもハンフィントンポストは批判記事を書いていますが、この人は相当、過激です。そこでは(「ジェフ・セッションズ氏とは何者か? トランプ氏が司法長官に起用、「KKKに共感する」との発言も」Jack Sommers、11月22日)、八つほど懸念事項が並んでいます。

  1. 黒人公民権運動家を訴追し、人種差別だと批判を受けた。
  2. 「KKKに共感する」と発言、冗談だったと釈明
  3. アメリカ在住者の不法な市民権取得に反対
  4. セッションズ氏の強硬な主張をまとめた冊子「入国ハンドブック」は、外国人嫌悪の烙印を押された
  5. 合法移民の削減も提唱
  6. トランプ氏が公約に掲げた「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国禁止」を賞賛
  7. 「メキシコとの国境に巨大な壁を作る」という公約も支持
  8. トランプ氏の女性侮辱発言を擁護

 これだけを並べると危険人物に見えてきますが、この人の影響でトランプ氏が選挙中に日本叩きをやめたとも見られています。

 ニューヨーク在住のジャーナリストである肥田美佐子氏はフォーブス電子版記事(トランプ外交ブレーンが語る日米関係、「日本たたき」をやめた真相 2016/9/30)で、その経緯を書いています。

 トランプが日本叩きをやめたのは日本の外交当局がセッションズ上院議員らに接触して同盟国日本を標的にするのはおかしいと訴えたためだと書かれた日経記事(9月1日付)を見て、その真偽を本人に聞いたところ、コンタクトしてきた日本人外交官の発言を教えてくれたそうです。

「『He(彼)』は、日米が良好な同盟国であると強調していた」

「彼が言うには、米国が、中国との間で抱えている不和や困難と同じものをあたかも日本との間でも抱えているかのようにトランプが話すのは正しくない、と。日米関係は、米国と中国との関係よりはるかに良好だ、とね。彼(日本人外交官)の主張は正しい」 

 メキシコにとって、セッションズ氏の閣僚入りは恐ろしい話ですが、日米同盟には肯定的なので、日本にとっては悪い話ではなさそうです。

財務長官:スティーブン・ムニューチン氏(元ゴールドマンサックス幹部)

 トランプ氏は選挙中に財務責任者として資金調達を担ったムニューチン氏(Steven Mnuchin:54歳、1962年生。ムニューシン氏とも表記される)を財務長官に指名しました。

 トランプ氏は選挙中に大手銀行やヘッジファンド批判を行い、税金の抜け穴をふさぐことを公約していましたが、なぜか、元ゴールドマンサックス幹部のムニーチュン氏が財務長官になります。これはウォール街のパワーは健在だということなのでしょう。

 ムニューチン氏はゴールドマンサックスの共同経営者を17年間務めただけでなく、映画会社も設立しています。

 ニューヨーク出身のムニューチンは銀行家の父ロバートの息子として生まれ、イェール大を卒業し、父と同じくゴールドマン・サックスに就職しました。17年間で推計4000万ドルの純資産を稼いだとも言われています。

 ゴールドマンサックス退社後はヘッジファンドを設立。映画事業ではラットパック=デューン・エンターテインメント社を設立。ここはアバターやX-MEN等を作ったところです。ムニューチン氏は金融系にもメディア系にも強い人材のようです。

 この人が政権入りしたということは、アンチウォール街的な政策は、トーンダウンしていくことを意味しているのかもしれません。

 なお、90年代のクリントン政権ではロバート・ルービン会長、2000年代のブッシュ政権ではポールソン氏が閣僚入りしましたが、ゴールドマンサックスが歴代政権に元CEO等を送り込んでいる理由に関して、田村秀男氏(産経新聞特別記者)は、米国は最大の債務国であり、世界中から資金を集めるウォール街と政治の中心であるワシントンが運命共同体だからだとも指摘しています(川上高司ほか『トランプ後の世界秩序』P77)

商務長官:ウィルバー・ロス氏(元「WLロス&カンパニー」会長)

 ウィルバー・ロス氏(Wilbur Ross:59歳、1937年11月28日生)は、59年にイェール大を卒業し、61年にハーバード大でMBAを取得。64年から66年までは研究員としてウッド・ストラウザーズ・ウィンスロップ社等で勤務。長く務めたのはフォールクナー・ドーキンス・サリバン証券で、64年~76年まで経営を担っています。

 76年には米投資会社NMロスチャイド&サンズに入社し、2000年まで専務取締役を勤めました。その後、2000年に投資ファンド会社の「WLロス&カンパニー」を設立し、2016年まで経営を続けました。

 ロス氏は繊維や電気、鉄鋼、石炭、鉄鋼等、多様な業種で会社を再建して財をなしたので、「再建王」とも呼ばれています(※産経記事〔12/11:1面〕によれば推定保有資産は25億ドル)。

 有名なのは2000年に破綻した鉄鋼会社LTVを2002年に買収し、その後に買収した競合企業を合わせてインターナショナル・スチール・グループを設立した再編事業です。

 日本では1999年に幸福銀行(現関西アーバン銀行)の買収に関わったこともあって、知日派だとも言われています。ロス氏は過去にはTPPに賛成していましたが、現在はアメリカの自動車産業等に不利だとして、トランプ氏のTPP脱退に同調しています。

 大統領選の頃、カリフォルニア大のピーター・ナバロ教授とウィルバー・ロス氏は減税による税収減対策として、連名で「向こう10年でトランプ氏の経済計画が見込む歳入増加分約2兆4000億ドル(242兆1000億円)のうち、貿易政策の強硬化だけで4分の3ほどを創出できる」とも主張していました(WSJ日本語版「トランプ陣営顧問、貿易政策で大幅歳入増見込む」2016/9/26)。

 上院公聴会では、23か国で実際に企業経営を行ってきた経験を踏まえ、「私は反貿易主義者ではない。貿易を支持している。しかし、私が支持するのは良識ある貿易だ。アメリカの労働者や製造業拠点に不利な貿易は支持できない」と述べました。そして、ダボス会議での中国側の主張に対しては「中国は、世界の大国の中で最も保護主義的な国だ。彼らの商業に対する関税障壁と非関税障壁は非常に高い。彼らは自分たちが主張している自由貿易を実践できていない。我々はその現実をそのレトリックに近づけていきたい」と反論しています

 ロス氏とトランプ氏との付き合いは、同氏のカジノ事業「トランプ・タージマハル」の失敗の再建業務がきっかけでした(フォーブス「トランプを借金地獄から救った男、ウィルバー・ロス次期商務長官の人生」2016/12/10)。 

「数ヶ月ほどで経営は行き詰まり、トランプは巨額の支払いに追われることになった。その時、破産アドバイザーチームの債権者代表を務めていたのがロスだった。ロスはカジノを強制破産させ、トランプを債務から救い出そうと動いた。ロスはその頃、トランプが乗ったリムジンめがけ、群衆が押し寄せる様子を目撃し、トランプの人気ぶりに驚いたという」

「トランプはタージマハルの持ち株の50%を手放し、それと引き換えに支払い条件の緩和を受け、カジノの経営は継続する。トランプはその後も同種の取引を続けた結果、借金地獄から抜け出し、長者リスト『フォーブス400』に返り咲いた」

 トランプ氏も「再建王」のお世話になりましたが、ロス氏の側もトランプ氏の人気を見て「ただ者ではない。有望株だ」と目をつけています。

 借金の海に沈んでいた経営者が、その後、大統領にまで出世したわけですから、同氏には先見の明がありました。この時にトランプ氏が大統領になるとまで予見できたのかどうかを誰かに聞いてみてほしいものです。

国連大使ニッキー・ヘイリー氏(元サウスカロライナ州知事)

 ニッキー・ヘイリー氏(Nikki Haley:44歳、1972年生)はインド系アメリカ人で、共和党州下院議員(04年当選)を経て2010年からサウスカロライナ州知事(全米最年少)を務めています。14年に再選されています。

 サウスカロライナ州出身で父母はインドのパンジャーブ州出身のシク教徒です。ただ、ニッキー氏はキリスト教のメソジストに改宗しています(メソジストはサッチャー氏も入っていた新教の一派)。

 両親がサウスカロライナ州に移住後に誕生し、アメリカ市民権を生まれながらに取得。クレムゾン大学を卒業し、96年に結婚した夫の名に改名しました。

 ニッキー氏はサウスカロライナ初の女性知事、全米50州の最年少知事で、マイノリティ出身の知事とも見られています。選挙中にトランプ氏を支持していませんが、この人事には女性層やマイノリティー配慮の色彩が濃いとも見られています。後述のイレイン氏が任命されて以来、台湾寄りの外交発言が目立っていますが、ニッキー氏が国連大使入りする背景には、インドへの配慮もあるのかもしれません。

運輸長官:イレイン・チャオ氏(元労働長官)

 チャオ氏はトランプの重要政策であるインフラ整備を担います。

 趙小蘭氏は英語では「イレーン・ラン・チャオ」(Elaine Lan Chao:53歳、1953年生)と呼ばれています。ニッキー氏がマイノリティ系知事として注目されるのと並んで、チャオ氏はブッシュ政権の頃、2001年にアジア系アメリカ人の女性で初の閣僚入り(労働長官)を果たした人物です。

 台北市で上海出身の商船船長(趙錫成氏)の家庭で生まれました。チャオ氏は1975年にマウントホーリオーク大学で学び、父の船会社で勤務後、79年にハーバード大でMBAを取得。シティバンクニューヨーク支店勤務、ホワイトハウス実習生、バンク・オブ・アメリカ副社長等の経歴を経て、86年に連邦政府入りし、運輸系で職歴を重ねています。

 そのほか、募金仲介団体のユナイテッド・ウェイでCEOを務めたり、ヘリテージ財団で特別研究員となったり、ウェルズ・ファーゴ等の企業取締役会に参加したりと幅広く活躍しました。

 89年、ブッシュ父政権で運輸副長官となりました。これが01年の労働長官就任にもつながっていそうです。

 父は江沢民氏と大学時代と同級生で、夫はケンタッキー州選出の共和党上院議員(ミッチ・マコーネル氏)。マコーネル氏は共和党主流派の有力議員。チャオ氏は中国にも米国にも人脈があり、夫を通じて共和党主流派にもつながりを持っています。

 なお、台北駐日経済文化代表処のHPでは、チャオ氏が父親の趙錫成氏と一緒に表敬訪問した時に蔡総統が嬉しそうに移っている写真つき記事が出ています。

(「蔡総統、イレーン・チャオ元米労働長官一行の表敬訪問受ける」2016/10/14)

(13日に)蔡総統は、チャオ女史の父親で「米国福茂航運(Foremost Group)」の董事長(会長)を務める趙錫成氏は、夫人と6人の娘という女性7人と一緒に暮らしており大変幸せだろうと話した。チャオ女史が、父は昔から女性を尊重しており、蔡英文総統が中華民国で初の女性総統になったことを大変誇らしく感じていると述べたのに対し、蔡総統は心からの敬意と感謝の意を表した。

 蔡総統は、政府は常に海外の企業による台湾向け投資を奨励している他、経済貿易分野における他国との協力並びに交流の拡大にも力を入れていると説明。特に、台湾と東南アジアの国々とは経済的な相互補完性が大きいため、政府はこのところこれらの国々との協力を積極的に推進しており、台湾で中小企業が発展してきた豊かな経験を共有することで、互恵の関係を共に築けるよう希望していると述べた。

  トランプ氏は電話会談で蔡総統をプレジデントと呼び、一国の代表並みに扱っただけでなく、「一つの中国」見直しを示唆する発言を出しました。チャオ氏の閣僚入りには「台湾を重視する」という新政権のメッセージが含まれていると見るべきなのではないでしょうか。 

内務長官:ライアン・ジンキ(元共和党下院議員)

 ライアン・ジンキ氏(Ryan Zinke:55歳、1961年生)はモンタナ州出身。オレゴン大学を卒業。

 強そうな外観ですが、アメリカ海軍では1986年から2008年まで特殊部隊シールズ等で働いていました(中佐で退官)。カリフォルニアのナショナル・ユニバーシティでMBAを取得するなど、軍事以外にも見識の幅を広げています。

 2008年にモンタナ州上院議員として当選。共和党上院議員として2011年まで在籍。

 2014年には下院議員として当選。2016年に再選されています。

 エネルギー自立のために石油・天然ガス開発の積極策などを提唱していました。エネルギー規制緩和には肯定的で、CO2が気候変動の原因だとする見方を疑っています。

環境保護局長官:スコット・プルイット氏(元オクラホマ州司法長官)

 スコット・プルイット氏(1968年生、48歳)はオバマ政権が企てた火力発電所のCO2排出規制に反発し、無効訴訟を起した人物です。石油と天然ガスの産地であるオクラホマ州から起きた訴訟は全米の過半数の州が参加したため、オバマ氏は在任中に規制を導入できなくなりました。この人は強硬な環境規制の反対論者です。

 トランプ氏はこの指名について「EPAはあまりにも長い間、制御の利かない反エネルギー政策に税金を注ぎ込み、何百万という職が失われ、またわが国の優れた農業、その他の多くの事業や産業を、至る所でむしばんできた」(プルイット氏は)「この流れを逆転させ、わが国の空気と水をきれいで安全に保つというEPAの最重要使命を取り戻してくれるはずだ」と述べています(AFP通信「環境長官に温暖化懐疑派、トランプ氏人事に怒りの声」2016/12/9) 。

 ブルイット氏はトランプ氏と同じく、地球温暖化の原因がCO2排出だとする説には懐疑的です。この人事は地球温暖化対策を進めたオバマ政権とは真逆路線になるので、エネルギー政策に重大な影響を及ぼすでしょう。

エネルギー長官:リック・ペリー氏(元テキサス州知事)

 リックは略称。本名はジェームズ・リチャード・ペリー(66歳、1950年生)

 西テキサス出身。1968年にテキサスA&M大学(※AはAgriculture、MはMechanicaを意味する)に進学。卒業後は空軍に入隊。1972~77年まで、アメリカやヨーロッパ、中東でC-130輸送機のパイロットを務めた(大尉で退官)。

 政治キャリアは民主党州下院議員から始まる(1984年当選)。1988年の大統領選ではアル・ゴアを支持。1989年に共和党に所属を変更。1990年に州農政監察官に当選。同州下院議員となり、1998年の中間選挙でテキサス州副知事に当選。その後、2000年にジョージ・W・ブッシュが大統領となり州知事辞任をしたため、テキサス州知事となる。2002年以降、連続当選を続けた。2015年には大統領選に挑戦するが途中で辞退。

 エネルギー産業が盛んなテキサス州出身のためか、エネルギー規制には否定的で地球温暖化の原因をCO2とする説にも懐疑的。

 ペリー氏はかつてエネルギー省廃止を訴えたこともあるため、現在、ペリー氏がエネルギー省長官指名を受けること自体が異例だとも言える。 

保健福祉長官:トム・プライス氏(元共和党下院議員)

 トムは愛称。本名は「トーマス・エドマンズ・プライス」(Thomas Edmunds Price:62歳、1954年生)です。

 プライスはミシガン州に生まれ、ミシガン大学を卒業して医師になりました。20年ほど整形外科医を務めています。2004年にはジョージア州で下院議員として当選。共和党調査委員会、下院共和党政策委員会委員長などを歴任し、現在は下院予算委員会委員長をしています。

 医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止法案を立案したプライス氏は、トランプ氏にその実現を期待され、今回の指名を受けました。

住宅都市開発長官:ベン・カーソン氏(元神経外科医)

 ベンは愛称。本名は「ベンジャミン・ソロモン・カーソン・シニア(Benjamin  Solomon Carson, Sr.:65歳、1951年生)。

 この人も医師です。ベン氏はミシガン州のデトロイト出身、幼少時に両親が離婚し、陸軍士官学校卒業後、イェール大学を卒業。この時は心理学専攻。ベン氏もミシガン大学で医師の資格を得ました。

「ジョン・ホプキンス小児センター」で小児神経外科部長となります。

 シャム双生児分離手術に成功するなど、医師としてトップレベルの評価を得、2013年に引退。その後、2015年に共和党の大統領選候補者に名乗りを上げて撤退しました。

 途中からトランプ氏を支持し、今回の任命に至ったのですが、どうして住宅都市開発長官なのか、理由は筆者にもよく分かりません。これは選挙の功労人事でしょう。

中小企業庁長官:リンダ・マクマホン氏(プロレス団体WWE創設者)

 リンダ・マクマホン(68歳、1948年生)は全米最大のプロレス団体WWEの元CEO。実際にWWEのテレビ放送に出演者していた。
 1980年代からWWFの運営に関わり、90年代末から番組に登場(プロレスラーではなく、当然、一出演者として)。

 09年にCEOを辞職し、2010年11月にはコネチカット州の上院選に出馬。共和党候補として指名されたが、民主党候補のリチャード・ブルーメンタル州司法長官に敗北。

 2012年上院選でも共和党候補者になるが民主党候補のクリス・マーフィー下院議員に敗れています。このたびの大統領選挙では番組で接点のあったドナルド・トランプを支持。トランプ氏とは近い関係にあるとも言われています。

労働長官:アレクサンダー・アコスタ氏(元フロリダ国際大学法科大学院長)

 昨年に労働長官に指名されたアンドリュー・パズダー氏(CKEレストランツ・ホールディングスCEO)は不法移民を働かせていた問題が発覚し、店舗従業員から不祥事(低賃金で働く従業員への賃金引上げ拒否が原因)で訴えられ、スキャンダルにより上院での承認の見通しが立たなくなりました。

 トランプ氏は、労働省から「監督される」側にいたファストフードチェーン経営者を労働長官に据えることで行政を変えようと試みたのですが、パズダー氏は指名を辞退。その後、フロリダ国際大学法科大学院長のアレキサンダー・アコスタ氏を指名しました。 

 ホワイトハウスHPの記事によれば、アコスタ氏の経歴は以下の通りです。

「彼は三代にわたって大統領から指名され、上院の承認を得てきた。その地位の中には全米労働委員会委員も含まれている(※これはブッシュ政権時代)。アコスタ氏はヒスパニックで初めて司法次官補となり、フロリダの南部で合衆国地方検事として働いた。13年以来、アコスタ氏は、フロリダのヒスパニックコミュニティで最も大きな地方銀行であるUSセンチュリーバンクの議長を務めてもいる」 

 トランプ氏は、同氏を「米国人の機会均等を熱心に訴えた」人物として推し、同氏の長官就任は「米国労働者を支援するために労働省を率いる自信を与えてくれる」とも述べていました。

「米国経済、製造業、労働力を再活性させるわが政権の目標を達成するためのキーパーソン(原文はキーパーツだが、人間なので、キーパーソンと意訳)になる」と高く評価し、期待を寄せているようです。

(出所:President Donald J. Trump Nominates R. Alexander Acosta to be Secretary of Labor | whitehouse.gov 2/16)

 トランプ氏のコメントはかなり力が入っています。もともと白人労働者票を得て当選したので、労働長官人事は同政権にとって非常に重要な位置づけにあります。ヒスパニック系の取り込みも図っていることも見落とせない重要なポイントです。

教育長官:ベッツィ・デボス氏(慈善活動家)

 ベッツィ・デボス氏(58歳、1958年生)は夫婦で投資会社を経営しています。義父は米直販大手のアムウェイの共同創業者です。

 産経記事(12/11:1面)によれば推定保有資産は51億ドル!。共和党での役職は中西部ミシガン州委員長。同党への大口献金を行う富豪です。

 16年の大統領選ではジェブ・ブッシュ元氏(フロリダ州知事)等を支援しましたが、党内融和の一環として閣僚入りしています。デボス氏は学校選択の自由を推進する団体の代表を務めており、チャータースクール(民間運営校)普及を訴え続けてきました。

 しかし、教育や行政の経験はないので、上院での指名は難航しました(現在は承認済)。

 トランプ氏はデボス氏に対して、学校選択の自由を現実化し、教育行政における官僚主義の打破を期待しています。

農務長官:ソニー・パーデュー氏(前ジョージア州知事)

 パーデュー氏(70歳:1946年生)にジョージア州ペリー出身(出身校もジョージア大)。2003年から11年までジョージア州知事を務めています。大統領選ではトランプ氏に農業政策をアドバイスしていました。

 ブルームバーグ記事(「トランプ氏が米農務長官にソニー・パーデュー氏指名へ-関係者 (1)」1/19)では「トランプ氏の大統領選勝利は、景気回復を望む農村部の有権者から強い支持を得たことが一因」だとも報じています。

「トランプ氏が公約通り中国などとの通商関係の刷新を進めれば、商品の流れに混乱が生じる恐れがある。こうした変化は世界の商品価格にも影響し得る。さらに、米国の移民法が一段と厳格に運用された場合、農業事業者は労働力不足に陥る恐れもある。不法滞在の労働者は米国の農業労働力で大きな割合を占める」(前掲記事)

 3月14日には、ライトハイザーUSTR代表が上院の公聴会で農業分野の市場拡大に関して「日本が第一の標的になる」とも述べていますが、パーデュー氏の就任が固まれば、農政についてもっと多くの話題が報じられることになりそうです。