トランプ政権と日本・アジア 2017

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DeNAまとめサイト全滅。「MERY」も無断転用で記事を大量削除

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(出所はWIKI画像)

  ブロガーやネットライターにとっては見過ごせない事件がディー・エヌ・エー(DeNA)のまとめサイトで起きています。

 大規模な無断転用によって11月29日にWELQ(医療・健康まとめサイト)を皮切りにして他の8サイトが休止したのですが、2日に生き残っていたファッション系の「MERY」でも記事の大量削除が始まり、ほぼ全滅に近い状態になっています。

 問題が起きたディー・エヌ・エー(DeNA)のまとめサイトは以下の通りです。

  • WELQ(ウェルク):医療
  • iemo(イエモ):インテリア
  • FindTravel(ファインドトラベル):旅行関連
  • cuta(キュータ):出産・子育て
  • UpIn(アップイン):マネー
  • CAFY(カフィ):料理
  • JOOY(ジョーイ):メンズファッション等
  • GOIN(ゴーイン):自動車
  • PUUL(プウル):マンガ・アニメ
  • MERY(メリー):女性向けファッション等

 ブロガーやネットライターにとって「他山の石」とすべき案件なので、今日は、この問題を取り上げてみます。

問題の深刻さに気づかず、炎上が大規模化

 医療系サイトなのに、記事の内容に医療の専門知識を持つ者のチェックが入っていなかった。また、効果が疑わしい医療記事が多数、掲載されていた等、クオリティを問われたWELQ。まずはここが炎上し、「ほかのサイトは大丈夫か?」という話になり、他の部門に火の手が移りました。

 そして、ディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーション(まとめ)系の全サイトが燃え尽きてしまったのです。

 同社の守安功社長は、この件について、以下のように述べています。

「WELQも含めたキュレーションメディアの記事制作のプロセスに問題があるというご指摘もございました。さらに、当社に対する責任所在の考え方についてのご指摘も頂戴しました。これらのご批判を真摯に受け止め、改めて弊社の運用の実態がどういうものであったかを調査しました。その結果、共通する運営体制・方針の9つのメディア(※前掲のため列挙略)に関して、マニュアルやライターの方々への指示などにおいて、他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない点がございました。この点について、私自身、モラルに反していないという考えを持つことができませんでした」

 これは「炎上 」がもたらした大惨事ですが、このコメントの中で特に重要なのは、組織的に不正な手法を用いてしまったことと、社長自身がそれが問題だと認識していなかったことです。

 1ブロガーや1サイト運営者ぐらいなら、「ああ、そういう人もいるよね」というぐらいで終わることもありますが、野球球団まで持っている上場企業が著作権法の基礎を無視した運営を組織立ってやっていたので、社会的な批判を浴びることになりました。

「大手なんだからしっかりしろよ」と睨まれただけで終わらず、集中砲火を浴びてしまったわけです。

 炎上が始まったのが「医療サイト」からだったのも重要な点です。

 医療情報は命や健康にダメージが出かねない案件を扱うので、その内容には厳格な質の管理が求められます。ここで適当な情報を流していたので、社会的に糾弾されることになりました。

 この経緯に関しては、ITMEDIAの記事(11/30)が詳しく説明しています(東京都、WELQ問題でDeNAを“呼び出し” 「同様な他サイトへの対応も検討」。)

 28日朝、東京都議会議員の音喜多駿(おときた・しゅん)氏が、都福祉保健局の健康安全部にWELQの問題点を報告しており、医薬品の無許可販売の監視などを担当する薬事監視担当課が28日、「事情を聞きたい」と、DeNAの担当者に対して来庁を依頼していた。DeNAの担当者が多忙のため面会は実現していないが、「余裕ができたら連絡してほしい」と伝えており、今後、面会して協議したいとしている。

 同課の河野安昭担当課長は、「医学的根拠がない情報が流れているかもしれないと、音喜多議員から報告を受けた。WELQは医薬品販売サイトではないため、従来は監視対象ではなかったが、情報サイトであっても、『特定の商品がこういう病気に効く』と記載すると法的には医薬品に当たる。WELQの記事は薬機法の観点からも問題があると判断した」と話す。

 DeNA社は役所から呼び出しを受けるレベルにまで来ても、即座に対応していません。ここには、同社に危機意識がなかったことがうかがえます。

 社長の言葉どおり、モラルに反していることが認識できていなかったわけです。

 記者会見に出席した創業者の南場氏は、夫の闘病を看護した際にネット情報を調べていたが、WELQが医療情報を扱っていたことに気づかなかったとも述べています。

 報道されてから知って愕然としたそうですが、ここで南場氏が気づいていれば、何か対策を講じることはできたのかもしれません。

 今となっては、まさに「後の祭り」としか言いようがないのが現状ですが・・・。

 「知って犯す罪」と「知らずに犯す罪」のどちらが重くなるかを考えてみると、知っている場合には「ヤバい。このあたりでやめとこ」という話になりますが、知らない場合は、どこがヤバいかも分からないため、ブレーキがかかりません。

 危険地帯に入ってもアクセルモードのまま営業拡大が続き、最後は大ダメージを受けて、全滅してしまいました。

 DeNAぐらいの規模でしたら、さすがに「知らなかったんだ。許してください」と言っても世の中は許してくれないでしょう。

DeNAはトップに編集系の見識を持つ人がいない?

 この企業の中心になる三人の経歴を見ると、「編集に関する見識がないのではないか?」という疑問が出てきます。

 南場智子氏の著書(『不格好経営』)の略歴によれば、同氏は津田沼大を卒業後、1986年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、90年にハーバード大でMBA取得しています。96年にマッキンゼーで役員となり、99年には同社を退社してDeNAを始めました。代表取締役としてDeNAを2005年にマザーズ上場に導きました(DeNAは07年には東証第一部に指定替え)。その後、11年に病気療養中の夫の看病のために代表取締役兼SEOを退任し、代表権のない取締役となっています。

 守安功氏は98年に日本オラクルに入社。99年11月にSEとしてディー・エヌ・エーに入社。その後、モバオクやポケットアフィリエイト、モバゲータウンの立ち上げなどを行い、06年に取締役になっています(13年4月から代表取締役社長兼CEO)。

 川崎修平氏も02年にSEとしてディー・エヌ・エーに入社。04年大学院単位を取得し、SEとして働いた後、07年6月に取締役に就任しています。

 この三名の経歴を見る限り、「編集」という二文字は出てきません。

 ドコモの「iモード」の場合でしたら、リクルートの編集者だった松永真理氏とエンジニアが一緒に開発をしていましたが、DeNAには、松永氏の役割を担う人材がいないように見えるのです。キュレーションサイトを収益の柱にしようとしていたのですが、そのわりには編集系を担う人材がいなかったので、とんでもない手落ちが生じてしまいました。(WithNewsの記事によれば売上は以下の通り)

「WELQは月間2000万UUあり、10メディアでは月間約1億6千万UUあります。キュレーションメディア全体の売り上げは、2016年度第2四半期で約15億円あり、その半分超を「MERY」が占めています。

理系優位の企業の落とし穴か? ほかのまとめサイトも本当は怪しい

 これは、理系が強いネット企業では、今後も起こりうる事案なのかもしれません。

 よくよく考えて見れば、キュレーションサイトの記事は、他サイトやブログの記事をちょこちょこ紹介してつなぎ合わせ、全体として用語解説や事件、人物等のトピックを解説しているので、厳格な基準で言えば、オリジナルの創作者を守る著作権法の趣旨には合いにくいのです。

 著作権法の枠組みの中では、オリジナルの主張を述べる「本文」があり、それを補強する材料として「引用」を入れる文章を想定しています。オリジナル部分がほとんどないキュレーション記事は「引用」の羅列なので、盗作と見なされる危険性があります。

(以下、著作権なるほど質問箱の著作権法の解説)

法律の要件ですが[1]引用する資料等は既に公表されているものであること、[2]「公正な慣行」に合致すること、[3]報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること、[4]引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること、[5]カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること、[6]引用を行う必然性があること、[7]出所の明示が必要なこと(複製以外はその慣行があるとき)(第48条)の要件を満たすことが必要です(第32条第1項)。

 厳格な基準では、文字数がいくら、引用数がいくら、という比率があります。雑誌記事では、本文の文字数よりも引用の文字数が大幅に上回っていることを理由に訴えられることもあるぐらいなので、厳密な目で見ると、キュレーション記事には、アウトになりそうなものがたくさんあります。

 独自論点を出さずに文字数を増やしてSEO上の優位を狙い、人の努力の上にあぐらをかく構図になっているので、今後、この種のサイトに対しては社会の目が厳しくなるのではないでしょうか。

 例えば、グーグル社も近年、独自コンテンツのないサイトに対して厳しくなってきました。このDeNA社の事件は、グーグル検索の基準やアドセンス審査の厳格化等にも影響を与えうる出来事だと言えます。

利益率低下の打開策が裏目に出たDeNA 逆転は可能なのか?

 DeNAのHPの公開情報を見ると、かなり厳しい結果になっています(業績ハイライト | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】)。

(※断り書きがない場合、単位百万円)

  • 13/3:売上収益202467/税引前利益79215 
  • 14/3:売上収益181313/税引前利益54920 
  • 15/3:売上収益142419/税引前利益28443 
  • 16/3:売上収益143709/税引前利益20853
  • 17/3:売上収益143806/税引前利益23178

 比率で見ると、17年3月にパフォーマンスが盛り返しているようです。ただ、それをどこまで信じ切れるか、という問題は残っています。

  • 13/3:1株当たり当期利益333.34円/売上収益営業利益率38%
  • 14/3:1株当たり当期利益242.56円/売上収益営業利益率29.3% 
  • 15/3:1株当たり当期利益115.35円/売上収益営業利益率17.4%
  • 16/3:1株当たり当期利益78.76円/売上収益営業利益率 13.8%
  • 17/3:1株当たり当期利益212.49円/売上収益営業利益率 16.1%

 株価は12月に大きく下落し、その後、一進一退が続いています。

★3820円(9/20)⇒3640円(11/24)⇒3065円(12/6)⇒2554円(12/30)⇒2672円(1/13)⇒2651円(1/20)⇒2430円(2/17)⇒2530円(3/16)⇒2361円(3/29)⇒2697円(5/15)⇒2498円(5/26)⇒2392(6/8)⇒2467(6/14)

 2017年1月には自動運転車の開発での日産とDeNAが協力する等、明るいニュースもありましたが、今後、南場氏が代表取締役に復帰しても信用回復の道のりはまだまだ遠いでしょう。

 『週刊現代』(2013/12/17:P56~57)では、ガラケー時代にはユーザーがDeNAのサイトで情報を登録してゲームを遊んでくれたのに、スマホ時代になるとユーザーが直接グーグルやアップルからゲームをダウンロードしてしまうため、DeNAやグリー等は落ち目になったという識者見解(新清士氏:ゲーム業界に詳しいジャーナリスト)も紹介されていましたが、次の収益源化を狙った「まとめサイト」が炎上し、裏目に出てしまいまったわけです。

 今後、DeNA社は経営を立て直すことができるのでしょうか。

 ドラッカーは経営者に求められる資質として、何が正しいかを追求する「真摯さ」をあげました。

「いかなる一般教養を有し、マネジメントについていかなる専門教育を受けていようとも、経営管理者にとって決定的に重要なものは、教育やスキルではない。それは真摯さである」(『ドラッカー名著集3 現代の経営 下巻』P262)

 DeNA創業者の南場智子氏もその著書『不格好経営』(P258)で「ユーザー、仲間、パートナー、そして社会に誠実な会社か。respectとappreciationに満ちた会社か」が大事なのだと書いています。

 3月17日には第三者委員会調査報告書が公開され、そこでは、7000~21000件の記事と746000件の画像で著作権等の侵害が行われたというショッキングな調査結果が明らかになりました(以下、筆者関連記事8/5「DeNA社が「MERY」を再開 まとめサイト復活か?」)。

 

 DeNA社の経営陣にどれだけの真摯さがあるのか。また、今後、何を求めていくのかが注目されています。

(※追記:2月3日、米グーグル社はまとめサイト対策で、日本語版検索アルゴリズムを変更したことを発表。ウェブマスター向け公式ブログは、低品質サイト対策のために評価方法を改善したことを明らかにした。3月には、全世界的な規模で検索のシステム変更が行われました)。

追記:DeNA社がMERYを再開

 8月3日にDeNA社は小学館と共同で「MERY」と称したサイトを年内に再開させることを決めました。

 小学館が記事をつくり、DeNAがシステムを運用する方式で「MERY」の名を冠したサイトを公開。小学館が三分の二、DeNAが三分の一を出資し、新会社「MERY」を設立します。

 新「MERY」はクラウドソーシングを用いて不特定多数の書き手に記事執筆を依頼したり、一般利用者からの投稿記事を掲載せず、独自コンテンツを作成する方針だとされています。

 各紙で「まとめサイト」と報じられていますが、実質的には過去の名を用いて独自コンテンツで勝負するのかもしれません。