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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

【トランプVSヒラリー】 勝率と株価、為替の予測はどんなもん? 大統領選もいよいよ決着 

国際 米大統領選 米国株 全記事一覧

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(NY証券取引所。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  9日(米国では8日)でやっとアメリカ大統領選が終わります。

 勝利するのは、トランプ氏か、ヒラリー氏か。誕生するのは、暴言大統領か、初の女性大統領か。どちらが当選するかが、いよいよ決まるのです。

 そこで、まず、一応、FBI再調査開始以降のダウ平均株価(MSNマネー参照)、支持率平均値(リアルクリアポリティクス参照)、ドル円の為替(ブルームバーグ参照)を並べてみます。

  • 10/29:市場休日(C:47.1%/T:42.5%)
  • 10/30:市場休日(C:48%/T:44.9%)※支持率変動開始
  • 10/31:18142.12ドル(C:48%/T:44.9%)※1ドル=104.82円
  • 11/1:18037.10ドル(C:47.5%/T:45.3%)※1ドル=104.15円
  • 11/2:17959.64ドル(C:47%/T:45.3%)※1ドル=103.3円
  • 11/3:17930.67ドル(C:47%/T:45.3%)※1ドル=102.98円
  • 11/4:17888.28ドル(C:46.4%/T:44.8%)※1ドル=103.12円
  • 11/5:市場休日(C:46.6%/T:44.9%)
  • 11/6:市場休日(C:46.6%/T:44.8%)※ヒラリー再訴追なしを決定
  • 11/7:18259.60ドル(C:47.2%/T:44.2%)※1ドル=104.46
  • 11/8:18332.74ドル(C:46.8%/T:43.6%)※1ドル=105.13円
  • 11/9:18589.69ドル ※1ドル=105.67円
  • 11/10:18807.88ドル ※1ドル=106.83円
  • 11/11:18847.66ドル ※1ドル=106.65円
  • 11/12~13:市場休日

「開けてびっくり玉手箱」というサプライズの可能性は低いと言われながらも、本年はEU離脱騒動で痛い目を見た人も多いので、テレビや新聞等で出てくるヒラリー有利という予測を信じ切れない気分もネット上に漂っているように思えてなりません。

 今日は、ある程度、主要な所に絞って、トランプ氏とヒラリー氏に関する、勝率、株価、為替に関する予測をざっとまとめてみたいと思います。

クリントン氏の勝率は90%? 74%?  それとも・・・

 ロイター/イプソスが7日に出した世論調査に基づく予測では、クリントン氏の勝率は90%だと各紙で報道されています(ニューズウィーク日本語版「米大統領選、両候補が最後の訴え、クリントン氏の勝率は約90%」11/8)

7日公表されたロイター/イプソスの週間世論調査によると、クリントン氏が勝利する確率は約90%で、選挙人獲得予想ではクリントン氏が303人とトランプ氏の235人を大きく引き離している。当選には270人の選挙人を獲得する必要がある。

 また、ブルームバーグの記事(「米大統領選、決戦当日の手引き-市場はクリントン氏勝利に急速に自信」2016年11月8日)はクリントン氏の勝率を71%としています。

 ジャナス・キャピタル・グループの電子メールによれば、投票日翌日の米S&P500種株価指数がどうなるかについて、オプション市場の動きを踏まえると、クリントン氏の当選確率は71%と先週の63%から上昇した。

 だいたい、似たような路線の見方が多いのですが、日経電子版「米大統領選先物、クリントン氏勝率予想が上昇」(2016/11/8)では、アイオワ大が6日に出した、勝率74%という数字を紹介していました。

米連邦捜査局(FBI)が同氏の私用メール疑惑を払拭した6日時点で、勝率予想は74%と、メール疑惑が再発した10月28日以前の水準に戻した。逆に共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏の勝率予想は28%に下げ、メール疑惑で得た勢いを消した。ただ今回は「史上最も読みにくい選挙」といわれ、予想は当たらないとの指摘もある。

 この記事では、過去のクリントン氏の勝率予測は60%~80%で推移していると述べ、大統領選先物市場に基づいた勝者予測を取りあげていました。そこでは、二つの見方が分かれているようなのです。

  • 「取引はお金を出す意見で中身が伴うため、世論調査よりも予想精度は高い」(アイオワ大:ジョイス・バーグ教授)
  • 「先物価格はトランプ支持者の意見を反映していない」(バージニア大学:デイビッド・レブラング教授)

 先物市場はクリントン氏勝利を予測させるが、レブランク教授は、そこにはトランプ支持層の20~40代ブルーカラーは参加していないではないか、と言うわけです(※レブラング教授のトランプ勝利という予測は見事、的中。11/14追記)

 結局、大多数は通説的にクリントン氏勝利を既定路線と見ているのですが「そもそも、ゲームのルールが変わったのではないか?」と見る人は逆張りをしてトランプ当選を予測しています。

 確かに、ゲームのルールはトランプ出現以前と以後で変わっているのですが、問題は「変わった割合がどの程度か?」という見積もりにあるのかもしれません。トランプ氏のような人が候補者になった時点で、すでに大統領選そのものが変質していますが、それが米国民の一部に及んだのか、それとも、米国民全般にまで及んだのか、という見方の違いで、予測の仕方は大きく変わるはずです。

大統領選と株価の動きの予測例

 前掲のブルームバーグの記事(「米大統領選、決戦当日の手引き-市場はクリントン氏勝利に急速に自信」2016年11月8日)ではクリントン氏が勝った場合、トランプ氏が勝った場合の株価の動きについても論じています。

クリントン氏勝利の場合

「市場は既にクリントン氏勝利を織り込んでいるので、実際に勝っても上値は限定される」と語るのは、CMCマーケッツのアナリスト、マーガレット・ヤン氏だ。バークレイズはリポートで、S&P500指数は最高3%上昇すると予想している。ソシエテ・ジェネラルは、クリントン氏が当選すれば、その直後に同指数は7日終値比3.2%高の2200を付け、2017年半ばまでに2350に上昇すると見込む。

 そして、業界別には、以下の見方が出ています。

  • 規制強化や税制変更がゴールドマン・サックス・グループやJPモルガンの株価に悪影響を与える恐れがある
  • 医薬品やバイオテクノロジー関連株には医薬品の価格上昇を抑える圧力が高まる可能性がある。
  • 病院運営やメディケイド(低所得者向け医療保険制度)を手掛けるHCAホールディングスやユニバーサル・ヘルス・サービシズのような銘柄は医療保険制度改革の下での補助金から恩恵を受ける
  • 教育関連銘柄の上昇を予想する。
  • 代替エネルギー産業が有望(サンランやネクステラ・エナジー、ファースト・ソーラーゼネラル・エレクトリック(GE)、テスラモーターズ、ソーラーシティー、エクセロンを有望視)

 これはクリントン氏のほうが望ましいが、恩恵が出るか出ないかは業界別で差があるという予測です。「銘柄選択は慎重に」ということなのでしょう。

トランプ氏勝利の場合

 基本的には株価急落との見方が並んでいます。

★CMCのヤン氏の予想

「米国株のバリュエーションはかなり高いので、トランプ氏が勝てば大きく売られる」と。トランプ氏勝利は典型的な「ブラック・スワン的イベント」とみる向きが多いため、相場に与える影響は英国民投票でEU離脱が選択されS&P500種株価指数が2日で5.3%下げた時よりも「ずっと深刻」という。

★バークレイズ

トランプ氏当選の場合、S&P500種が最大13%急落すると見込む。

★シティの株式ストラテジスト、トビアス・レブコビッチ氏

5%程度の下げで済む

★ソシエテ・ジェネラル

7日終値比8.5%安の1950に落ち込む事態を想定する。

(※11/14追記:選挙後、これらの予測は見事に外れました)

 こちらの業界への影響は以下のように見積もられています。

  • 医薬品や保険、銀行株はトランプ氏勝利の方が良い。
  • キャタピラーやインガーソル・ランドなど公共インフラの工事や維持に関連する銘柄も、トランプ氏の下のほうがよい。軍事産業もそう(計画がクリントン氏より野心的だから)。
  • 石炭火力発電を手掛けるNRGエナジーが恩恵を受ける
  • 移民規制強化で労働力の供給や消費需要が損なわれ、消費関連銘柄が下がる
  • 日本株は円高で最大10%下がるかもしれない。

 全体の株価下落が見込まれますが、業界別にはプラスになる産業もあるのではないか、という見方です。果たして、全体が下がっている時に、上記産業の公共インフラや軍事だけが伸びるのでしょうか。一度、全部下がった後に、トランプ政権に恩恵を受ける株が上がり始めるような気がしなくもありませんが。

大統領選に伴う為替予測の例

 前掲記事では、「クリントン氏勝利の場合、為替トレーダーの関心は12月の米利上げの可能性に集中するため、民主党政権の成立に向けて、ドルは他の主要国通貨に対し上昇するだろう」という英調査会社キャピタル・エコノミクスの分析を紹介しています。

 以下は別の組織の分析例ですが、トランプ氏勝利の場合、「ドルはほぼ全ての主要通貨に対して下げ、メキシコ・ペソも下落」する。トランプの反メキシコ政策のため、トランプ氏が勝てばペソ下落、クリントン氏が勝てばペソ上昇。また、トランプ氏の中国為替操作指定のために、トランプ氏が勝てば元下落の可能性もあるという見方も紹介しています。

勝者が「トランプで円高株安 ヒラリーで円安株高」という通説への異論

 よくトランプ勝利で円高株安、ヒラリーで円安株高だという通説が出てきますが、産経のニューヨーク駐在編集委員・松浦肇氏は異論を述べています(「米大統領選で株価どう動く? 市場の「俗説」は信憑性低い」2016.10.30)

俗説(1)「共和党なら株高、民主党なら株安」

⇒「20世紀以降に選挙を経て就任した大統領は延べ数で29人。共和党15人の平均株価上昇率が25%なのに対して、民主党14人は39%と上回る」

俗説(2)「同じ政党の政権が続いた方が、株高になる」

⇒「共和党政権が続いた1920年代。ハーディング、クーリッジ両政権を引き継いだフーバー政権下で大恐慌が起き、任期中に株価は72%下げた・・・20世紀以降、政権政党が交代した場合の平均株価上昇率は46%と継続した場合の23%を上回る。同じ政党出身者が続くと景気のアクセルを吹かせすぎるきらいがある」

俗説(3)「長期政権の方が株価は上りやすい」

⇒「20世紀以降、8人の大統領が続投を果たしたが、2期目以降の平均株価上昇率は16%に過ぎず、これは29ある全任期平均の32%を下回る」

  というわけで、必ずしも、巷の通説は当たらないのではないか?と異論を投げかけています。筆者はトランプ候補が勝った後の株価は短期で下落、長期で未知数というのが現状かと思うのですが、同氏は「(1)民主党政権(2)政権党が交代(3)短期政権(または政権1年目)だと株価は上げる傾向にある」-が正しい。この点、クリントン候補が当選すれば新説の3条件のうち2つを、トランプ候補も同じく2つを満たす」と結んでいます。

 結論としては、どちらとも取れる落ちで逃げているように見えなくもありません。「じゃあ、トランプ氏でも長い目で見たら株高になりうるんですか?」と聞きたいところですが、サブプライムショック後に、アンチウォール街を唱道したオバマ氏が当選しても株高になったので、それは政策次第なのだと思います。

 オバマ政権時代には金融緩和路線が続いたので、不況時の政策としては合っていたのですが、トランプ氏の場合、FRBの金融政策に介入したがるはずなので、そのあたりが危険なところです。

(※11/14追記:筆者も短期ではトランプ氏当選の場合、株安になると思ったのですが、実際は「超短期」の株安でしかなく、すぐに株価は急上昇しました。長い目で見た株価は今後の政策次第かもしれませんが)

クリントン勝利後のサプライズ:投票再集計要求 

 あまり見たくない光景ではありますが、トランプ氏が負けた場合、多数の支持者とともに、投票再集計を要求するという事態が生じるとも言われています。

 クリントン氏が僅差で負けたりした場合でも、これは起こり得ますが、この投票最集計要求が本格化した場合、株価上昇と思いきや、とんだ反転劇になりそうです。

(※クリントン氏が選挙結果を受入れたので、これは起きることはなさそうです。11/14追記)