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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

カザフスタンからナザルバエフ大統領が来日 ところで、その人誰? 狙いは何?【首脳会談等を追記11/7】

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(カザフスタン国旗。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

  ロシアの南にあるカザフスタン共和国からナザルバエフ大統領が来日します。11月6日~9日という日程の中で安倍首相との会談や天皇陛下との会見が予定されています。

 ナザルバエフ大統領は1994年、1999年、2008年に訪日しているので、今回は四度目の訪日なのですが、大部分の日本人にとって中央アジア圏にはあまりなじみがないので、「カザフスタン?何それ」と思われた方もいるかもしれません。

 そこで、今日は来日するナザルバエフ大統領とカザフスタンについて、情報を整理してみます。

※外務省HPによれば、ナザルバエフ大統領は安倍首相とは五回ほど首脳会談を行っており、日本とは結構、なじみが深い

カザフスタンってどんな国?⇒中央アジアの有力な資源国

 中央アジアにあるカザフスタンは、昔はソ連邦の一州でしたが、91年に独立し、カザフスタン共産党で1989年から第一書記を務めていたナザルバエフ氏がそのまま大統領となりました。2007年に憲法が改正され、初代大統領に限り三選禁止の適用除外が決められたので、ナザルバエフ氏が27年ほど最高指導者を務めています。

 ナザルバエフ氏は独裁者と批判されていますが、その反面、政情は安定し、エネルギー資源の輸出国家として世界に認知されています。今のままで行けば、ナザルバエフ氏は30年ほど大統領となる可能性が高いのですが、有力な後継者がいないので、同氏が死んだ後には政治的な混乱が生じるかもしれません。

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(カザフスタン地図。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 外交面ではロシアとの良好な関係を維持し、ロシアを中心とするユーラシア経済同盟、集団安全保障条約機構などに参加し、中国とロシアが仕切る上海協力機構(SCO)にも加盟しています。

 とはいえ、地理的な場所柄から言ってアメリカやEU、日本と争う理由はなく、資源輸出などを通して、旧敵国に相当する自由主義諸国とも良好な関係を保っています。

 主要産業は鉱業、農業、冶金・金属加工などで、GDPは2015年時点で1732億ドルなので、17.5兆円ぐらいでしょうか。15年のデータでは実質GDPの成長率は1.6%、失業率は5%なので、数字的にはそんなに悪いわけでもなさそうです。

 2014年の輸出額は8兆円程度、輸入が4.4兆円程度で、資源や金属、化学製品や食料品を輸出しています。資源として有望なのは、石油、石炭、ウラン、亜鉛、クロム、銅、ボーキサイト、マンガンなどです。

 そのため、資源がない日本としては、カザフスタンと関係を深めるメリットは大きいと言えます。

ナザルバエフ氏の経歴を追ってみる 独裁者なのだろうか?

 ナザルバエフ大統領(76歳)の本名は「ヌルスルタン・アビシェヴィチ・ナザルバエフ」です。長い名前ですね・・・。

 1940年7月6日にカザフスタン南東部にあるアルマティ州にて生まれます(アルマティ州は中国やキルギスに近い地域。カスケレン地方チェモルガン村で生まれたそうですが、いったい、どこの村なんだろう)。

 20歳のころにカラガンダ冶金コンビナートに就職し、29歳まで勤務(1960~69年)。27歳の時に冶金コンビナート付属工業大学を卒業しているので、仕事をしながら大学に行っていたのでしょうか。

(※カラガンダ州というのはカザフスタンの真ん中にある州です)

 そして、29歳から33歳(1969~73年)まではカザフ共産党テミルタウ市委員会部長、コムソモール・テミルタウ市委員会第一書記、テミルタウ市党委員会第二書記を務めています。

「テミルタウ市ってどこ?」と思って調べてみると、この市はカラガンダ炭田やカラガンダ冶金コンビナートでがある工業都市のようです。つまり、冶金コンビナートで仕事をして頭角を現し、その後、共産党エリートになったわけです。

 33歳~37歳(1973~77年)までカラガンダ冶金コンビナート党委員会書記となり、36歳の頃にソ連共産党中央委員会付属高等党学校を経済学専攻で卒業しました。

 こうして見ると、結構、苦労人的に一段一段、ステップアップしているようですね。

 37歳~39歳(1977~79年)にはカラガンダ州党委員会書記,第二書記を務め、39歳~44歳で(1979~84年)ソ連邦カザフ共産党中央委員会付書記になります。このあたりでソ連邦の中央政界に入り込んだのでしょう。

 その後、44歳~49歳(1984~89年)にはソ連邦カザフ共和国首相、49歳~51歳(1989~91年)にソ連邦カザフ共産党中央委員会第一書記となりました。ソ連邦の役職では書記長がトップなので、後者の中央委員会第一書記のほうが格上になります。

 さらには、50歳(1990年)にソ連邦カザフ共和国最高会議議長、ソ連邦カザフ共和国大統領となりました。その後、ソ連が崩壊し、91年12月にカザフスタン共和国大統領となり、99年、05年、11年、15年に再選されています(任期は5年)。

 80年代後半からカザフスタンの政治のトップになり、国を仕切っているので、次の人気までで数えると30年ほどナザルバエフ氏が大統領を務めることになります。筆者が大学生の頃、2000年頃にロシア経済の本を読んでいたら、ナザルバエフ氏の名前が出ていたことを思い出しますが、中央アジアでは、こうした超長期政権が多いのです。

 過去記事で見ると産経ニュースで「カザフ大統領選で現職が圧勝「30年の独裁」 有力候補者不在、不安視も」(2015.4.27)、以下の事例が紹介されています。

  •  ウズベキスタン:在職25年のカリモフ大統領(77)が4選。
  •  タジキスタン:ラフモン大統領(62)は在職20年
  •  ベラルーシのルカシェンコ大統領(60)も在職20年

 民主主義の考えから言えば、こういう独裁政権が望ましいわけはないのですが、中央アジアにはこの種の国が多いので、それを厳格に言いすぎると、このあたりの国と親交を結ぶことは難しくなります。資源の多角化が必要な日本としては、そのあたりはやや目をつぶらざるをえないのかもしれません。

ナザルバエフ大統領訪日の狙いは何?

 このたびの訪日に関して、北海道新聞では以下のように報じています(「カザフ大統領が国会演説へ 旧ソ連圏元首は25年ぶり」10/15)。

政府、与党が、核軍縮に積極的に取り組むカザフスタンのナザルバエフ大統領による国会演説を調整していることが14日、関係者の話で分かった。安倍晋三首相と会談し、唯一の戦争被爆国である日本と「核なき世界」を目指す考えも共有する見通しだ。外国首脳の国会演説はその国との関係を重視している政権の姿勢を表すもので、旧ソ連圏の元首による演説は1991年当時のゴルバチョフ大統領以来25年ぶり。

 北海道新聞は核軍縮を訴えに来たんだ、と書いていますが、本当の狙いがそこなのかどうかには疑問が残ります。

 やはり、昨今のフィリピンのドゥテルテ大統領訪日や、ミャンマーのスーチー国家顧問兼外相の訪日を見ても、力点があったのは経済援助の話です。

 ナザルバエフ大統領訪日の狙いは経済援助にあり、日本の狙いは資源入手先であるカザフスタンとの関係強化にあると見た方が妥当でしょう。

追記:首脳会談と天皇陛下会見について

 11月7日に日本とカザフスタンの首脳会談が行われ、以下の合意がなされました(外務省HP「日・カザフスタン首脳会談」平成28年11月7日)。

  • 安倍首相は両国間の貿易投資関係の発展にはカザフスタンの投資環境の更なる改善が必要であると述べ,双方はそのための現地ベースの協議枠組みの設置に合意
  • 安倍首相はカザフスタンが中央アジア初で国連安保理理事国に当選したことに祝意を述べ,双方がアジアの理事国として連携、核兵器のない世界に向け協力することで一致。
  • 北朝鮮の拉致,核ミサイル開発等の問題に対して日本とカザフスタンが引き続き協力していくことで一致。

 協力分野はやはり資源関係です。日本からカザフスタンに原発建設等が支援されます。投資のための環境整備というのは、税制改正や労働許可証の発給基準の緩和などを指しているようです。

【天皇陛下会見】

 産経ニュース(「天皇陛下、カザフ大統領とご会見」2016/11/7)によれば、天皇陛下とカザフスタン大統領との会見では、大統領より戦後のシベリア抑留に関して「カザフスタンにも約5万人の抑留者がいました。その中にはカザフスタンにとどまった人もいます」という話があり、天皇陛下は「日本の人たちを温かく受け入れてくれたことに感謝します」と応じられたことが報じられています。カザフスタンには旧ソ連の核実験場があったので、日本と被爆の経験を共有していることや、大統領からの三笠宮さま薨去へのお悔やみ等が話題に上りました。