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ユネスコ無形文化遺産に登録された 「山・鉾・屋台行事」って何? 祇園、ダンジリのこと?

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(唐津市のお祭り写真。出所はWIKIパブリックドメイン画像。筆者トリミング)

  国連教育科学文化機関(ユネスコ)の補助機関が「京都祇園祭の山鉾行事」「唐津くんちの曳山行事」(佐賀県)等を含めた18府県33件の祭りで構成する「山・鉾・屋台行事」を無形文化遺産に登録するように勧告したことが、10月31日の各紙号外で報道されています。

 「唐津くんちの曳山行事」? それはいったい、誰の家の行事なんだ?

 唐突に謎の名称が出てくるので、そんな疑問が頭によぎりますが、これは佐賀県唐津市の伝統的なお祭りです。

 この33件のお祭りに関するユネスコ無形文化遺産登録は11月28日以降の政府間委員会で審査されます。勧告はたいてい尊重されるので、登録はほぼ確実。つまり、日本の33件の伝統文化の行事がユネスコ無形文化遺産入りするわけです。

 筆者もこの案件について、ニュースで初めて知ったのですが、そもそも、この文化遺産の中身は何なのでしょう。

そもそもユネスコ無形文化遺産って何?

 ユネスコが保護すべき「遺産」として登録したものには幾つかの区分けがあります。

 まず「世界遺産」がありますが、これは「世界遺産条約」に則って普遍的な価値ありと認定された各地の建造物や遺跡などです。ギリシャのアクロポリスや日本の法隆寺のような建物は「文化遺産」であり、ナイアガラの滝のような天然自然は「自然遺産」と認定されます。そして、建造物と自然地域の両方が含まれると「複合遺産」という扱いになるのです。

 これに対して、物としての「形」を取らない芸能(民族音楽・舞踊・劇等)や伝承、社会的慣習、儀礼、伝統工芸、文化等のうち、普遍的価値が認められる遺産が「無形文化遺産」という扱いになります。例えば、イランのペルシャ絨毯をつくる伝統技術(ファールス地方等)やインドのヴェーダ詠唱(ヒンズー教の聖典朗読のこと)等は典型的な無形文化遺産です。これは、技術や伝承などの「ソフト」を対象とした遺産認定だと言えます。

 まぎらわしいのですが「記憶遺産」というものもあります。こちらは歴史的に貴重な文書や書物、絵画や楽譜、映画などが含まれます。知的生産物ですが、記憶遺産の場合は「フランス人権宣言」やベートーベン「第九交響曲」自筆譜等のように、明確な「書き物」になっています。無形遺産とは違い、こちらには本や書類、絵画等の「形」があるのです。

「山・鉾・屋台行事」? それはいったい、何のこと?

 筆者もチンプンカンプンでしたが、これは山や鉾などの山車(だし)を担ぎながら歩く神社の祭礼のことです。この山車=ダシは祭神が宿る依代(よりしろ)になるのですが、現在では飾られた屋台を指すことが多いようです。

 この不思議な名称は、18府県の日本の伝統行事33件を一括して呼ぶためのものですが、そのうち、「京都祇園祭」と「日立風流物」(茨城)はもともと無形文化遺産に登録されていました。

 このたび、文化庁は日本各地で似たような行事を一つのグループと見なし、「無形文化遺産」に登録申請し直すために「山・鉾・屋台行事」という括りをもうけたのです。

 実に分かりにくいのですが、文化庁の「『山・鉾・屋台行事』の提案について」という資料では、その内容が「地域社会の安泰や災厄防除を願い,地域の人々が一体となり執り行う『山・鉾・屋台』の巡行を中心とした祭礼行事」と説明されていました。

 要するに屋台をかついで練り歩く各地の行事のことのようです(「山・鉾・屋台行事」の起源は、悪霊を鎮めるために平安時代に始まった京都の祇園祭にあるともいわれています)。

 では、その中には、各地の祭礼として、どんな行事がカウントされているのでしょうか。

33件の祭礼行事は、どこの都道府県の行事なのか

 前掲資料で並んでいる行事の名前をリストアップしてみます。これらの行事は当然、日本国からも「国指定重要無形文化財」とされています(以下、名称、地域、例年の開催時期/文化財指定年の順に表記)。

  • 八戸三社大祭の山車行事(青森県八戸市、8月上旬/2004)
  • 角館祭りのやま行事(秋田県仙北市、9月上旬/1991)
  • 土崎神明社祭の曳山行事(秋田県秋田市、7月中下旬/1997)
  • 花輪祭の屋台行事(秋田県鹿角市、8月中旬/2014)
  • 新庄まつりの山車行事(山形県新庄市、8月下旬/2009)
  • 日立風流物(茨城県日立市、4月中下旬/1977)
  • 烏山の山あげ行事(栃木県那須烏山市、7月下旬/1979)
  • 鹿沼今宮神社祭の屋台行事(栃木県鹿沼市、10月中下旬/2003)
  • 秩父祭の屋台行事と神楽(埼玉県秩父市、12月上旬/1979)
  • 川越氷川祭の山車行事(埼玉県川越市、10月中下旬/2005)
  • 佐原の山車行事(千葉県香取市、7月と10月/2004)
  • 高岡御車山祭の御車山行事(富山県高岡市、5月上旬/1979)
  • 魚津のタテモン行事(富山県魚津市、8月上旬/1997)
  • 城端神明宮祭の曳山行事(富山県南砺市、5月上旬/2002)
  • 青柏祭の曳山行事(石川県七尾市、5月上旬/1983)
  • 高山祭の屋台行事(岐阜県高山市、4月と10月/1979)
  • 古川祭の起し太鼓・屋台行事(岐阜県飛騨市、4月上旬/1980)
  • 大垣祭のやま行事(岐阜県大垣市、5月上中旬/2015)
  • 尾張津島天王祭の車楽舟行事(愛知県津島市、愛西市、7月下旬/1980)
  • 知立の山車文楽とからくり(愛知県知立市、5月上旬/1990)
  • 犬山祭の車山行事(愛知県犬山市、4月上旬/2006)
  • 亀崎潮干祭の山車行事(愛知県半田市、5月上旬/2006)
  • 須成祭の単楽船行事と神葭(みよし)流し(愛知県蟹江町、8月上旬/2012)
  • 鳥出神社の鯨船行事(三重県四日市市、8月中旬/1997)
  • 上野天神祭のダンジリ行事(三重県伊賀市、10月下旬/2002)
  • 桑名石取祭の祭車行事(三重県桑名市、8月上旬/2007)
  • 長浜曳山祭の曳山行事(滋賀県長浜市、4月中旬/1979)
  • 京都祇園祭の山鉾行事(京都府京都市、7月中下旬/1979)
  • 博多祇園山笠行事(福岡県福岡市、7月上中旬/1979)
  • 戸畑祇園大山笠行事(福岡県北九州市、7月下旬/1980)
  • 唐津くんちの曳山行事(佐賀県唐津市、11月上旬/1980)
  • 八代妙見祭の神幸行事(熊本県八代市、11月下旬/2011)
  • 日田祇園の曳山行事(大分県日田市、7月下旬/1996)

 筆者の住む東京都の行事はありませんでした・・・。そりゃそうか。

 自分の出身地の祭りがあれば、ちょっとしたお国自慢ができそうですね。

「俺の田舎の祭りは世界無形文化遺産に登録されているんだぜ!」とか言うと、何かすごそうに聞こえますので。

 名前を見ると「唐津くんちの曳山行事」なるお茶目なお祭りの名前が目につきます。誰かの家みたいな名前ですね。

 「魚津のタテモン行事」(富山県魚津市)というのも謎の名称です。「クマモンみたいなものか?」「それともポケモンか?」等と臆測しながらWIKIで調べてみると、以下のような記述がありました(「たてもん祭り」)。

たてもんの名称は、「神前に贄(にえ)〔神への捧げ物〕を供え捧げたてまつる物」という意味で、たてもんの山車は、獲れた魚(贄)を載せ、神様に捧げる帆掛け舟(漁船)を模ったものである。

 なんだ、ポケモンではなかったのか。漁船の形をした山車にお供え物をたくさん載せて運ぶわけですね(当然、クマモンとも関係ありません)。

 一個一個、奥深い経緯がいろいろあるようなので、無形文化遺産の御墨つきをもらうと、33のお祭りの参加者が増えたりするではないでしょうか。

追記:16年12月以降の各紙報道の紹介

 12月の報道を見ると、各紙で無形文化遺産登録にまつわるお祝い行事が紹介されていました。

 テレ朝日NEWS(12/4)は「埼玉県秩父市で、ユネスコの無形文化遺産に登録された「秩父祭」がクライマックスを迎え、6基の山車(だし)が熱気に包まれた夜の街を彩りました」と報じています。

 毎日新聞電子版(12/24)では「鹿沼今宮神社祭の屋台行事が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことを祝う式典が23日、鹿沼市内で行われた」と報じられています。

 そして、2017年初の毎日新聞地方版の特集「あいち・山車文化を支える 祝!無形遺産/1」(1/1)では、民俗芸能研究家の鬼頭秀明氏に「城下町の職人が結集して『おらが町』の山車を作り上げた」経緯を聞き、「建築、美術、技術の伝承や、祭りを通じた地域のつながりの大切さなどが、無形文化遺産登録によって、多くの人に再認識されるのでは、と期待しています」という同氏の声を紹介していました。この記事の「2~4」(1/4、1/5、1/6)では愛知県の各地の取組みが紹介されています。郷土愛をもってボランティアで活動している方々が祭りを支えています。

  • 半田市の亀崎潮干祭⇒1966年発足の亀崎潮干祭保存会が遺産の保存と伝承の担い手だが、次世代へ祭りの意義を伝え、警鐘することには難航している。
  • 犬山市の犬山祭⇒犬山祭保存会は17年に法人化をめざし、寄付を受入れやすくしようとしている。この15人の委員は全員ボランティア。
  • 蟹江町の須成祭⇒文化財保護委員会を中心に、長さ15m、幅5.5mのまきわら船とだんじり船が蟹江川を静かに上る際の美しさと素朴さを守ろうとしている

 この遺産登録を経て各地で伝統文化の再評価が進み、17年以降に遺産保持のための取組みが具体化していくともいわれています。 

 現代文明で忘れがちにな古式ゆかしい日本精神が残り、この遺産登録が地域発展や町おこしの力となることを祈念したいものです。