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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

慰安婦誤報後の朝日新聞 30年ぶりに売上高3000億円割れ  

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(昔の輪転機:出所はWIKIパブリックドメイン)

  どうやら、朝日新聞の売上と部数がピンチのようです。慰安婦誤報や福島原発の「吉田調書」誤報の結果、部数が減ったのは周知の話ですが、部数減自体は、もっと前から始まっていたようなのです。

 週刊ポスト誌(ネット記事)の「朝日新聞『社外秘』資料入手 『3年で500億円減収』の衝撃」(2016.10.15)を題材に、最近の新聞事情について考えてみます。

週刊ポスト誌が入手した「朝日新聞『社外秘』資料」とは?

 筆者は時事ネタのブログを書いているので、いつも新聞や週刊誌(ネット版含む)を何気なく見ているのですが、やはり、キャッチコピー力では週刊誌のほうが新聞よりも何段も上のように思えてなりません。

 パッと見て目につく印象的なセリフが出てくるのは、たいてい、週刊誌のほうです。たとえば「豊洲のパンドラ」(週刊新潮)とか、「朝日新聞『社外秘』資料」とか、筆者のように間抜けな魚が食べたがるエサを巧みに投げてくるので、一定の割合の読者に読ませることに成功しています。

 筆者は「全国の専売所の販売網の上に乗っかって、クオリティとPRの両面を改善しないから、朝日は部数が減っているのだ」と考えていますが、ポスト誌記事は、その業績悪化の現状を数字で紹介してくれています。

  • 売上高は3135億円(2013年度)⇒2748億円(2015年度)に減少
  • 売上高の落込み幅が拡大し「13年度→16年度では、▼500億円超のおそれ」あり
  • 朝日朝刊発行部数は762万部(2012年度)⇒670万部(2015年度)へ
  • 14、15年度は経費の大幅削減で黒字確保。今後は人件費カットは不可避

 まだまだ巨大な規模ですが、売上高と部数減のため、内部では戦々恐々としているようなのです。

 もともとネット社会の進展により、「紙で読まなくてもネットで十分だ」と思う人が増えていたのですが、そこに「誤報」という決定打が加わり、このたびの朝日離れが現実化してしまったわけです。

もともと新聞は、要らない記事が多すぎるので嫌われて当然

 筆者は奇特な人種なので、普段は新聞は見出しとリードと気になる記事ぐらいしか見ないのですが、しっかり読んで何かを書く時は、2~3週間分ぐらいをまとめ読みします。紙の束をドカッと床に置いて、自分が使う「政治面」「経済面」「国際面」だけをハサミで切り、わりと長いスパンで記事を見ていくのです。

 あとの部分は全部ゴミ箱行なので、正直に言って月3000円払うのがアホらしくなります。産経新聞を毎月取っていますが、実際に見るのは26ページのうち10ページしかないので、正直に言えば、全く見ない広告と他ページ分のお金は払いたくありません。

 新聞には、1)一覧性に優れている事、2)編集デスクによる質の担保、3)取材力、4)一日単位で重要なニュースをフォローできる(ヤフーニュースだと大事なニュースがすぐにTOP画面から消滅してしまう)等の利点はあるのですが、「見たくないページの料金まで払わされる」という抱き合わせ販売的性格も根強いのが問題です。

 そういう新聞社がネットニュースのHPをつくった結果、「もう、紙は要らないよ」と言う消費者が増えてしまったので、各社のビジネスモデルには、もともとヒビが入っています。そこに「強烈な誤報」という落石がドカンと落ち、朝日新聞のビジネスモデル全体が崩壊しかねないレベルに近づいてきたというのが、現在の状況なのです。

新聞記事の質も、目が肥えた「ネット民」に疑われている

 そして、肝心な記事の質に関しても、ネット出現以前ほど、新聞には権威がありません。これは朝日新聞以外でも言える話です。

 例えば、日本経済新聞も、白川前総裁の頃、「不景気時にお金を刷らないデフレ政策を正当化する御用記事を量産してきたのではないか?」という批判があります。

 評論家の上念司氏はこのあたりを盛んに批判してきた人ですが、その著書を見ると、結構、ショッキングな話が紹介されています。

「元財務官僚で現在は嘉悦大学で教鞭を執る高橋洋一氏は、二〇年以上前のことではありますが、驚くべき光景を目にしています。『日銀クラブ』で、取材対象たる日本銀行総裁の定例会見に際し、新聞記者たちが号令をかけ、『起立!礼!』とやっていたのです。これでは権力の監視機関というより『広報部門』に成り下がっているようなもの・・・」(上念司『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』P5)

 今の日本では、経済における権力監視の姿勢が弱いので、消費税増税に真っ向から反対する新聞記事はなかなか出にくいご時世になっています。

 結局、消費税を8%に上げた後、景気悪化が本格化したので、10%増税はストップせざるをえないのですが、増税前の13年夏~秋の判断の時、主要紙はみな増税に賛成していました。どの新聞社も増税賛成に関しての自己検証をしていないので、読者の中に「経済記事や社説なんて当てにならん」と思う人が出てきます。

 そして、そういう人の中から、金太郎あめのように増税賛成の新聞社に嫌気がさし、週刊誌の増税反対記事を読む人が出てきたりします。

 筆者もそのクチの一人ですが、新聞の社説などが「増税しても損害は軽微。大事なのは社会保障だ」などと偉そうな説教をたれた後に景気鈍化が続くのを見ると、「もはや経済記事の質を信じられない」という思いを抑えることができなくなります。

20世紀のビジネスモデルにしがみつく新聞社に未来はあるのか?

 新聞社が専売所を中心に多数の読者をつかみ、20世紀の間は我が世の春を謳歌していましたが、21世紀にネット社会が進展し、読者がじりじりと削り取られる恐怖の中で新聞社も競争しなければいけなくなりました。

 前掲の週刊ポスト記事によれば、朝日新聞の売上高が「3000億円を割り込むのは1985年度以来30年ぶり」なのだそうです。

 ずっと高止まりしてきた売上高がついに凋落し、朝日新聞はあたふたしているわけですが、問題は、その収益基盤が20世紀のビジネスモデルの上に築かれているところにあります。

 高齢化する読者層が次々と死んでいった後に、「紙の新聞を読まない」人口が増えていくことへの対策ができていないのです。最近の大学では、タッチパネルしか知らず、PCのブラインドタッチができない新入生も増えているそうですが、「そうした世代が成人した時、果たして、新聞をまともに読んでくれるのだろうか」ということを真面目に考えなければいけなくなったのです。

 押し売り体質や、新聞の紙面構成の中にある「抱き合わせ販売」的な性格、御用新聞化等の問題点を指摘しましたが、古いビジネスモデルにしがみつくことしかできなければ、朝日新聞も氷河期に対応できない恐竜のようになりかねません。

 新聞にもネット情報にもそれぞれのよさはありますが、新聞社は、21世紀に未だ対応仕切れていないようです。筆者としては、どの新聞社も情報を総合的に何もかも詰め込みすぎているので、本当は、部門別に記事を絞って、あるジャンルを好む読者に集中的に売るなどの工夫が必要なのではないかと考えています。