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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

自動運転車 17年に実用化? トヨタ、日産、グーグル、アウディの思惑    

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(BMWの高級車:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 2017年を迎え、本年の日本や世界の経済予測が各誌をにぎわせていますが、「自動運転車」はその中でも気になる話題の一つになっています。

(※本記事は2016年10月14日に公開後、随時、加筆修正しています)

 例えば『週刊東洋経済12/31-1/7(P104-107)』でも解説記事が組まれ、冒頭に「2035年には新車販売台数のうち自動運転車の割合は25%、同年時点の市場規模は770億ドルに達する」という予測(ボストンコンサルティンググループ)が紹介されています。

 同誌は自動運転の狙いとして、事故削減、渋滞緩和、環境負荷の低減の三種を挙げていますが、今回は「経済をゼロから理解する」という原点に戻り、いまさら聞けない自動運転の要点を整理してみたいと思います。

 『四季報業界地図』(2017年版)を見ると、自動運転は「注目業界ランキング」でも第8位に入っています。

 17年の経済を考える上で、トヨタや日産、ホンダ、GMやフォード、アウディ、BMW、テスラ等のメーカーだけでなく、グーグルやマイクロソフト、インテル等のIT系大手が自動運転車の実用化に関してどんなプランを持っているのかは、非常に気になるところです。 

※追記:2016年の自動車グループ世界販売台数の一位と二位が逆転(トヨタは11年~15年まで首位)

  1.  独フォルクスワーゲン(VW):1031.2万台(前年比3.8%増)初世界首位
  2.  トヨタ自動車(ダイハツ工業、日野自動車含む):1017.5万台(前年比0.2%増)
  3.  GM:1000万台
  4.  ルノー・日産連合:996万台

2017年、アウディ社が運転者の監視不要の「自動運転車」を販売?

 10月14日付の日経ビジネスの記事(ネット版)では「アウディ、世界初の『自動運転車』を2017年投入」と題して、独自動車大手の来年の計画を紹介しています。

 この記事では、運転手の操縦なしで安全に走行する「自動運転車」を17年に市場で販売するアウディ社の計画について、運転士システムの開発責任者であるトーマス・ミュラー氏にインタビューしています。

「えっ。じゃあ、今まで『自動運転車』といわれていた車は何だったの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、自動運転技術にもいくつかのレベルがあり、16年の現時点で「自動運転車」と呼ばれている車は、みな、ドライバーの監視が要るシステムで動いています。これは状況に応じて手動に戻ったり自動になったりする仕組みなので、本当の意味での自動運転技術が完成していたわけではありません。

 前掲記事では、米自動車技術協会の定義では、レベル2の「運転支援システム」であり、アウディ社が目指すのは、原則として運転車の監視が要らないレベル3の「自動運転」の実現なのだと記事の中でミュラー氏は力説しています。

 何だかRPGみたいですが、豊富な情報で経験値を蓄えた自動運転車は、レベル3になると危険な時に勝手に止まってくれたり、進路を変えたりしてくれるわけです(これは素早さが上がって敵の攻撃をかわしてくれるようなものか??)。

 ややこしいのですが、ざっくり言えば、レベル3は「運転手の監視が要らない」レベルで、「レベル4」は「運転手が要らない」ぐらいの技術水準だといえます。

『週刊ダイヤモンド』(「勝者のIT戦略」2016.8.27)の解説記事(P32)では以下の分類になっていました。

  •  レベル1:加速、ブレーキ、ハンドルなどの操作の中の一つを自動化する
  •  レベル2:複数の操作をシステムで行う(運転手の関与が必要)
  •  レベル3:全自動運転。運転手の関与は緊急時などの条件付きで必要
  •  レベル4:運転手は全く関与しなくてよいレベル。

 16年5月に起きたテスラカーの事故では、レベル2(運転支援システム)の技術なので、自動運転と称していても、事故が起きたらドライバーには責任が問われてしまうわけです。

アウディ社が完全な自動運転車を実用化するまでの道筋とは?

 筆者の文系頭脳によってミュラー氏の高度な解説がレベルダウンしそうなのですが、そのポイントを紹介しますと、特に大事なのは以下の四点です。

    1. アウディの試作車「ジャック」は高速道路でMAX時速130kmでシステムが運転でき、ドライバーに監視義務がなくなるレベルを目指している。17年販売の新型「A8」では、まだ時速60km以下ぐらいの技術と見られている。
    2. システム運転なので市販には「99.9999%以上」の安全が求められる。想定環境のうち20%ほど解決困難なケースが残っている。
    3. 欧州法や米国法等の壁はあるが、欧米政府はレベル3の自動運転車の実用化を進める方針。
    4. PCのように自動運転車も基本ソフト(OS)が標準化される可能性があるが、自動運転でOSが止まると人が死ぬので技術の要求水準はPCよりも厳しい。

 来年に販売されるアウディの「A8」はレベル3の初期段階なので、今後はこれを高度化し、高速で自動運転できるようにするはずです。

 このうち、3に関しては、お堅い日本がどれぐらい関連する法律を改正し、技術革新に対応できるのかが見所ですし(現状では国家戦略特区の一部で実験している程度)、4に関しては、どこが自動運転のOSを制覇するのかが見所になるでしょう。マイクロソフトのようにOSを制する企業が出たら、PCとは比較にならない利益が出るので、その会社の株価上昇はうなぎのぼりになるのではないでしょうか。

自動運転を巡るメーカーとIT大手の合従連衡

 アウディ社はドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループ内の企業ですが、本年6月25日発売の『週刊東洋経済』の図表(P95「特集/自動車風雲急」)では「トヨタ+マイクロソフト」、「フォード+アマゾン」、「フィアットクライスラーオートモービルズ+グーグル」、「GMによるクルーズ(IT系企業)買収」という具合に自動車とIT大手の連携ぶりを紹介しています。

 この「独自路線で行くか、IT系と組むか」という問題には、前節であげた「自動運転のOS市場をどこが制覇するか」という企業戦略が関わっているので、各社の未来を考える上では、非常に大事なところだと思います。

 自動車メーカーとIT企業は「ライドシェア」(車の相乗りサービス)を巡っても連携しています(ライドシェアは、オンラインで企業に登録したドライバーが自家用車で乗客をタクシーのように運ぶサービス)。

 前掲記事によれば、これで大儲けしたウーバー社はトヨタやフィアットクライスラーオートモービルズ、アマゾン等と手を組み、ゼネラルモーターズはライドシェア系のサイドカー社を買収。リフト社と提携しました。フォルクスワーゲンはイスラエルのゲット社(ライドシェア企業)と手を組むようです。

 こうして見ると、そもそもライドシェア系の企業が育っていない日本は、この分野ではアメリカよりも何段か遅れてしまったのかもしれません。

 政府も日本の立ち遅れを気にしたのか、17年2月に入り、規制改革会議がライドシェア解禁の検討を始めたことが報じられています。

 ウーバー社のような形態は禁止されている「白タク」に該当するので、日本でライドシェアを解禁するためには道路運送法を改正や規制緩和等の措置が必要になってきます。そして、事故時の責任の取り方やドライバーに求められる要件などのルール決めが課題になるでしょう。16年時点では国家戦略特区において、交通手段の少ない過疎地限定で解禁されているので、現時点では「タクシーやバス等の主要市場を荒らさない範囲でやってくれ」という扱いに止まっています。

 しかし、ライドシェアは欧米や中国で広範に普及してきました。

「米KPCBによればライドシェアの利用回数は16年1~3月で63億回に上り、そのうち中国が3分の2を占め」「最大手の滴滴出行が16年8月に米国最大手のウーバー・テクノロジーズの中国事業を買収した」ことが注目されているのです(『週刊東洋経済12/31-1/7』P105)。

 ただ、ウーバー社は2016年12月14日にサンフランシスコで半自動運転車の配車を始めたものの、カリフォルニア州当局から「許可を出していない」という差し止めを食らう等の抵抗に直面しました。運転手の雇用の喪失、自動運転車へのサイバー攻撃等の懸念事項も懸念されています(産経8面:2016/12/23)。

 「雇用」にこだわるトランプ政権がこの問題にどう反応するのかも気になるところです。

BMW、ダイムラー、トヨタ、日産、ホンダ、グーグル等の取組とは?

 2016年9月5日発売の『日経ビジネス』(「ここまで来た自動運転」)では、BMW社が「PT1」というレベル3の自動運転車の実用化を目指していることが紹介されています。同誌記者は、試乗した結果、PT1もアウディのA8も高速道路を20kmほどきちんと走れたと書いているので、完全な自動走行の車が販売される日も近づいているのかもしれません。

ダイムラー、BMW、アウディ

 この記事では、ドイツのダイムラー、BMW、アウディの三社がカーナビ地図最大手のヒア社(ドイツ)を買収し、自動運転のOS開発で、アマゾンやグーグル等と一線を画したことを紹介しています。

 要するに、パソコンのOSではマイクロソフトの標準化戦略にいっぱい食わされたので、ドイツ系企業は、自動運転のOSで世界標準をつくることで逆襲しようとしているわけです。

トヨタ(+マイクロソフト)

 では、日本企業はどのような対策を講じているのでしょうか。

 トヨタ自動車は2016年1月に人工知能の研究開発のため、シリコンバレーに「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE,INC.」(TRI)を設立し、5年で10億ドルの投資を行うことを表明しました。その後、トヨタは同年4月に車から集めるビッグデータ分析のための会社をマイクロソフトとともに設立しています。

日産(+マイクロソフト/DeNA)

 日産は「セレナ」にレベル2の技術を搭載して大衆への認知度を高め、完全自動運転車を商業ベースで実用化するためにDeNA社と組んで実証実験に着手する方針です(2017年1月5日発表)。DeNAがITシステム構築を行い、2020年までに首都圏で走行試験を行うことを計画しています。

 日産は自動運転が進化しても人間のサポートが不可欠と見ており、人間のオペレータが人工知能の運転を遠隔サポートするシステム構築を進めています(「Seamless Autonomous Mobility(SAM)」という仕組みで自動運転車が判断に迷った時に人間が助ける)。同社がつくるインターネット接続のコネクテッドカーには、車載端末にマイクロソフト社が開発した音声通話システム「Cortana」(声でカーナビの行先等を変えられる)が採用されます。

グーグル(ウェイモ)、ホンダ、FCA

 グーグルは前掲企業の中では特異な位置を占め、レベル4の技術開発に特化し、公道での自動運転の実証実験などを行っています。高速で安全な完全な自動操縦の実現を目指し、特許を増やしているわけですが、このあたりには、研究開発において、カネに糸目をかけないグーグルの性格がよく出ています。

 グーグル社は2009年から自動運転車の開発を進めてきました。グーグルの親会社であるアルファベット社は自動運転開発のためにウェイモ社を設立。

 これに対して、従来、自動車大手は警戒をしてきました。

「自動運転のシステムは、『走る、曲がる、止まる』といった走行制御など、車の中核技術と密接に結びついている。中核技術をグーグルに握られれば、自動車メーカーは車体の製造だけを担う『下請け』になってしまうのではないか」と懸念していたからです(朝日朝刊4面:2016/5/5)。

 しかし、最近はグーグル社との協力事例も増えてきました。

 ウェイモ1社はホンダの研究開発子会社(「株式会社本田技術研究所」)と共同研究を行い、公道での走行実験等を行います。

 ASIMOロボットの技術力を誇るホンダも研究重視の社風なので、この二社はウマが合うのかもしれません。

 ウェイモ社は2015年10月にテキサス州オースティンの公道で完全自動運転の試験走行を実現しており、近年はホンダやフィアットクライスラーモービルズ(FCA)等、連携先を広げてきています(FCAとはミニバン型自動運転車等の開発を進めており、世界最大の見本市CES2017にて、コンセプトカーを展示しました)。

フォード、アマゾン

 そのほか、フォードとアマゾンの連携が2016年のCES(ラスベガスで開催される世界最大の見本市)で発表されています。

 フォードは2月10日にグーグルとウーバーの技術者2名が設立した米自動運転ベンチャーの「アルゴAI」に5年間で10億ドル(約1130億円)の投資を行うことも発表しています。

自動運転は怖い? しかし、時代の流れは実用化に向かう

 こうして見ると、少なからぬ一般ユーザーが感じている「自動運転ってやっぱ、やばいんじゃね?」という不安とは別に技術は実用化に向けて進んでいます。

「そんなの事故ったら誰が責任を取るんだよ」という声もありますが、そのうち、人工知能のほうが人間に勝る運転能力を獲得する可能性もあるのです。

 実際、米軍の実験でも、F15戦闘機を使ってベテランパイロットが人工知能に模擬戦で敗れるというショッキングな出来事がありました。近未来に車の操縦でも同じようなことが起きる可能性は高いのです。

 そして、自動運転の事故率が人間の事故率を大幅に下回った場合には、社会の中で下手なドライバーを見る眼が厳しくなっていきます。「人工知能には事故の責任が取れない」と言っていたら、いつのまにか「あんたの運転は人工知能以下や。あんたが運転するくらいなら、自動運転のほうがましだわ」と言われかねないわけです。

 筆者も車が大好きな知人に聞いてみたのですが、その方は「日本でも地域によって運転水準はまちまちなので、人工知能の自動運転が普及したら事故率が下がる地域もあるのではないか」という意見でした。

「成熟した車社会の愛知ではドライバーのレベルが高く、千葉県だと乱暴な運転をする人が多くて困る」と自分の出身地を持ち上げながらも、その方は「自動運転では誰が責任を取るのか等と批判する前に、自動運転に負けない運転技術を持てるよう努力すべきだ」と述べていたのです。

 人工知能はドッグイヤーで進化していきますから、自動運転がメジャーになると「下手なドライバー」が車道から退場勧告をくらう可能性が出てくるわけです。

(日本の自動運転開発の大きな眼目は事故死者の減少。15年は4117人だったが、日本政府は2020年までに2500人以下にすることを目指している)

2020年には「自動ブレーキ」がほぼ全車種に普及?

 高齢化に伴い、身体機能の衰えたドライバーが増えるので、これは決して他人事ではありません。高齢者の事故対策の一環として、国土交通省は自動ブレーキ普及のための取組みを進めています。

 読売朝刊(2017/3/14:11面)では「2020年には国内で生産されるほぼ全ての乗用車に自動ブレーキ機能が搭載される見通しだ」とも報じていました(例:マツダは17年度中に国内で売られるほぼ全車種に自動ブレーキを標準装備する)。自動ブレーキの普及率は1%未満(2010年)⇒約4割(15年)⇒ほぼ100%(20年)に上昇すると見られているのです。

 自動ブレーキは前方の車や障害物などを探知するだけでなく、近年は歩行者も認識できるようになってきています。同紙によれば、トヨタは、この種の自動ブレーキを高級車種だけでなく、小型スポーツ用多目的車「C-HR」にも装備させる方針のようです。

 これは高機能化を意味しますが、その分、自動車の値段は上がるので、消費者は慎重に財布の中身と相談しながら買い物をしなければいけなくなります。

 現在、自動ブレーキの搭載は各社の任意なので、統一された安全基準はありません。

「同じ条件で歩行者に対する停止実験をした場合、人形の前で止まる車と、止まれずに人形をはねてしまうものがある」など、各社の技術にはばらつきがあるといわれています。しかし、75歳以上の交通死亡事故の原因として、自動車の「操作の誤り」が29%(2015年)を占めているため、高齢運転に伴う事故対策の一環として、国交省は自動ブレーキを新車販売の条件とし、全社への搭載を義務づけるべく法改正をしようと考えています(朝日夕刊1面:2017/2/3)。

21世紀の社会を揺るがす「自動運転」技術に要注目

 いろいろと調べてみて、筆者は、自動運転車の普及というのは、多くの人の生活に大きな影響を与える問題だと感じました。これは21世紀の社会を覆す大問題だと考えるべきなのでしょう。

 そのほか、自動運転に関わる新しい動きとして、2017年7月から、ドバイ(アラブ首長国連邦国)でドローン(無人機)を用いた自動運転タクシーのサービスが始まることがBBCで報じられました(「ドローンの自動運転タクシー、ドバイで7月から」17/2/20)。重さ百キロまでなので1名を無人機で運べます。

 日本ではまだまだ規制の壁が厚いのですが、世界の各地で、次のトランスポーテーション革命の胎動が始まっているようなのです。

追記:自動運転実用化を進める世界連合が発足

 日経記事(2016/12/19:朝刊1面)は、世界経済フォーラム(WEF)が自動運転の世界連合を発足させ、自動車やIT大手、保険等の分野の大手企業が参加することになったと報じています。

 27社が実証実験に参加し、安全規格や運転ルールづくりを話し合うのですが、参加する企業を分野別でみると、自動車関連はトヨタ、日産、GM、フォルクスワーゲン、BMW、ボルボなど。保険ではSOMPOホールディングス、米リバティ・ミューチュアル・グループなど。ITではエリクソン、クアルコム。配車サービスのウーバーテクノロジー、物流の米UPS等も参加。

 なお、自動運転のルールづくりは4段階のレベルに合わせて進められており、レベル2に関しては日欧が自動ハンドルの基準を策定し、レベル3以降の安全化のために日米欧がサイバー対策(乗っ取りを防ぐ)の指針づくりを進めています(日経朝刊1面:2016/11/5)。

 筆者はルール作りに関わった企業を見て、「あれっ。グーグルの名前がない・・・」と思ったのですが、同社は独自路線で我が道を行っているのでしょうか・・・。