トランプ政権と日本・アジア 2017

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過去のオリンピック競技費一覧 小池知事は何億円で開催したいのか? 

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東京オリンピック記念貨幣(S39年。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 小池知事は16年10月に五輪用の3施設建設の見直しを掲げ、組織委を率いる森元首相とのバトルに踏み込みました。オリンピックの開催に伴う費用と収支の帳尻が合わないという見通しがあるからです。

 都知事肝いりの調査委員会が出した「第1次調査報告書」は大会開催費は3兆円を超えると予測し、その内訳として、施設整備費で4840億円、大会後の仮設施設撤去費用で2800億円、輸送・セキュリティ費等で1兆6000億円という試算を出しました。

 大会組織委員会が見込む収益は5000億円程度なので、この報告を受けた小池百合子都知事は、7つの新施設の建設を見直すべきだと考え、予算規模の大きい3施設(ボート・カヌー、水泳、バレーボール会場)に焦点を当てます。

 しかし、森善朗氏(大会組織委員会会長)は「本当に都が見直しをするなら大変なことになる」と懸念。両者のバトルが続きましたが、折衝後、前掲の種目は、予算をある程度削った上で予定通りの会場で行うことになりました。

  •  ボート・カヌー会場:「海の森水上競技場」(東京臨海部)
  •  水泳会場:「五輪水泳センター」(江東区)
  •  バレーボール会場は当初の有明アリーナ(江東区)

 結局、「時間」というコストを費やして元さやに戻っただけですが、予算が幾分か圧縮されたことは、小池知事の「もったいない」精神の「成果」だと言えるのかもしれません。

 過去の五輪の事例では、実際にやってみたら予算超過になった事例はたくさんあるので、今後、予算がどの程度の規模になるのかを、しっかりと注視していかなければいけないでしょう。

東京五輪の総費用をリオ、ソチ、ロンドン、北京の五輪と比較

 2016年秋の段階では東京五輪とパラリンピックの総費用は3兆円を超える可能性があると指摘されましたが、3兆円だとリオ五輪の2倍以上の金額になります。

 過去の五輪の総費用は以下の通りです(ドル円換算はニュースメディアの試算)。

  3兆円だと、他国と比べてもかなり高コストになります。

 ネットだと過去の開催費用のデータが意外と分かりにくいので、今回は、五輪開催の経費についてのデータを集めてみます。

東京五輪VSリオ五輪 費用内訳

 16年10月頃の新聞報道等では、東京五輪の費用3兆円の中で、ハードにあたる競技施設に関する費用が7600億円、ソフトにあたる運営費、セキュリティー費、選手輸送費などで1兆6000億円がかかるという憶測が流れていました。

 しかし、その後、小池都知事と大会組織委が議論し、16年12月頃には1.6~1.8兆円という数字が出されています。過去の五輪と比べると、「そんなに安く済むのだろうか」という疑問が湧いてきますが、一応、その数字をもとに、リオ五輪とロンドン五輪のケースとで比較してみたいと思います。

東京五輪の費用内訳

 東京五輪の費用に関しては「組織委の試算では、経費の内訳は運営費8200億円、施設整備費6800億円、資材や人件費の高騰などに備えた予備費が1100億~3400億円。恒久施設の整備を含めると、組織委以外の負担は1兆1100億~1兆3400億円となる」と報じられています(東京五輪:経費1.6兆~1.8兆円提示 組織委 - 毎日新聞 12/20)

 つまり、ソフト費用が8200億円。ハード費用が6800億円。予備費が1100~3400億円です。 

リオ五輪の費用内訳

 直近のリオ五輪の費用を前掲のAFP記事「リオ五輪開催費用の内訳」で見ると、総額が約120億ドル(約1兆3000億円)で、その内訳は、競技費が41億ドル(約4300億円:インフラ整備は2100億円ほど)、運輸部門のプロジェクトで75億ドル(約7900億円)です。

 リオではコストカットが計られましたが、研究者からは、実際は5割ほど予算超過したとも指摘されているので、東京五輪の費用が3兆円と見こまれても、実際にやった時に、追加費用等が発生するのかもしれません。

歴代オリンピック比較:スポーツ行事関連費

 意外と五輪+パラリンピックの総費用が一覧できる研究者のレポートなどは見つけにくいのですが、イギリスのオックスフォード大で三人の研究者が出した”The Oxford Olympics Study 2016: Cost and Cost Overrun at the Games"という論文(2016年7月発表)では、過去のオリンピックの試合にかかった費用(※施設設備費等は入らず)が掲載されていました(8枚目のPDFデータに書かれた図を見ると、ここ20数年の夏季・冬季五輪でかかったスポーツ行事関連の費用を一覧可能)。

 この論文では金額がドルですが、それだけだと分かりにくいので、下記の一覧では92年から16年までの間の為替の数字を入れて円換算に挑戦してみました。

 総額ではありませんが、このデータで見ると、リオ五輪の場合は総額120億ドルの38%ほどがスポーツ行事関連の費用(45.57億ドル)に当たることが分かります。

 ソチ五輪(500億ドル=5兆2300億円)の場合は43.8%(218.9億ドル)がスポーツ行事関連の費用で使われているので、総額の四割程度がスポーツ行事の運営のために用いられるケースが多いのかもしれません。

 前掲論文の数値を基に、以下、過去のオリンピックでのスポーツ行事にかかった費用を一覧化してみましょう。 

【夏季オリンピック平均:52.13億ドル】

 為替のデータは日本銀行の「時系列統計データ検索サイト」で「為替」を選択し「暦年」と「平均」を入力して出した各年のドル円の平均値を用いています(※なぜかこのページはURLリンクが貼れない)。

  • リオ(16年)45.57億ドル4951億円 (1ドル=108.65円計算)
  • ロンドン(12年)149.57億ドル1兆1934億円 (1ドル=79.79円計算)
  • 北京(08年)68.1億ドル ⇒  7037億円 (1ドル=103.33円計算)
  • アテネ(04年)2942億ドル ⇒ 3182億円 (1ドル=108.16円計算)
  • シドニー(00年)50.26億ドル5415億円 (1ドル=107.74円計算)
  • アトランタ(96年)41.43億ドル4506億円 (1ドル=108.77円計算)
  • バルセロナ(92年)96.87億ドル4兆2270億円 (1ドル=126.67円計算)

【冬季オリンピック平均:31.12億ドル】

  • ソチ(14年)218.9億ドル2兆3167億円 (1ドル=105.86円計算)
  • バンクーバー(10年)25.4億ドル2229億円 (1ドル=87.77円計算)
  • トリノ(06年)43.66億ドル5077億円 (1ドル=116.28円計算)
  • ソルトレイクシティ(02年)25.2億ドル1兆3157億円 (1ドル=108.65円計算)
  • 長野(98年)22.27億ドル2915億円 (1ドル=130.88円計算)
  • リレハンメル(94年)22.28億ドル2278億円 (1ドル=102.22円計算)
  • アルベールビル(92年)19.97億ドル2530億円 (1ドル=126.67円計算)

2020年の東京オリンピック費用が1.6~1.8兆円で確定(追記1)

 これはあくまでもスポーツ行事だけにかかった費用なので、施設整備費など、他の費用がもっとかかります。

 総額の分かりやすい一覧が無いのが残念ですが、それでも今までのオリンピックの予算額の傾向は分かります。

 2016年のリオ五輪でも、リオ市だけでは賄い切れず、国の支援をもらわざるをえなかったので、東京都としてもコストカットが必要になることは避けられないでしょう。

 あれこれとすったもんだした東京五輪も、12月17日に、ようやく経費の規模が固まりました。大会組織委員会が1.6兆~1.8兆円程度で開催する試算をまとめたことが各紙で報道されています。

 産経1面(12/18)ではそこに至るまでの経緯が出ています(以下、文言が長いので筆者が適宜要約しています)。

  • 13年1月:東京招致委員会がIOCに立候補ファイルを提出時の試算は7300億円
  • 13年9月:IOC総会で東京開催が決定
  • 14年12月:IOCが「五輪アジェンダ2020」で開催都市の負担軽減策を盛り込む
  • 15年7月:大会組織委の森喜朗会長が予算2兆円超の可能性を示唆
  • 15年10月:舛添都知事が3兆円は必要と発言
  • 16年9月:小池都知事のチームが費用3兆円超の可能性を指摘
  • 16年11月:組織委が2兆円を切るとの見通しを表明。IOCから削減要求
  • 16年12月:組織委が1.6~1.8兆円の試算をまとめる

2017年前半の五輪費用の議論について(追記2)

 なぜ、7300億円が3兆円にまで増えるのか。

 3兆円要ると言っていたものがどうして1.6~1.8兆円で開催できるのか。

 日本国民(あるいは東京都民)には不可解な話ばかりです。

 1月7日には安倍首相が五輪組織委の森会長と会談し、組織委と都、政府の三者協議の開始を歓迎しつつ、「開催都市の東京都がまず姿勢を示すことが大事だ」と述べたことが報じられています(ロイター「首相、五輪費用で森氏と会談」1/7)。

 そして、1月10日には安倍首相と小池知事の会談が開催され、その後、小池知事は記者団に述べました。

「安倍総理大臣とは実務的な話はしていないが、3者協議やその前のワーキングチームなどでいろいろ協議している最中なので、基本的な考え方としてオールジャパンで対応していくということを確認した。安倍総理大臣からは『国としても連携したい』といういい返事をもらった」

(NHKニュースWEB「東京五輪・パラ開催費用 安倍首相と小池知事が会談」2017/1/10)

 さらに、13日に開かれた会議では、東京都と組織委員会、国の三者だけでなく、開催自治体の担当者が集まり、五輪競技施設の整備内容や経費等に関して、各自治体ごとに作業チームをつくり、具体的な検討を行うことが決まっています。

 1月19日には、千葉県が東京五輪開催までの経費(2014年度~2020年度)を昨年どおりの最大180億円とし、仮設施設整備などに関して、県は追加の予算計上はしない方針を明らかにしました。

 都と各県との間で仮設整備費の負担を巡る争いが続きましたが、結局、5月11日に小池都知事と安倍首相が官邸で会談し、都が都外の仮設整備費を全額負担することが決まりました。

 組織委の試算によれば、その累計は約438億円に及び、都議会からは「なぜ全額負担なんだ」という疑問や不満が出てきています。

 5月31日には、五輪経費を巡って東京都、国、大会組織委員会、開催自治体のトップが都内で会合を開き、予備費1000億~3000億円を除いた1兆3850億円の予算分担について大枠で合意しました。

 東京都が6000億円。組織委が6000億円。国が警備費等で1500億円を負担します。

 都外自治体の負担額は判明せず、350億円ほどが継続協議となりました。

 

 ややこしい費用負担の調整をめぐる問題と政治的バトルが一体化してきていますが、国民の利益や東京五輪に対する世界の人びとの期待を忘れないでほしいものです。