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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

過去のオリンピック競技費一覧 小池知事は何億円で開催したいのか? 

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東京オリンピック記念貨幣(S39年。出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 小池知事は五輪用の3施設建設の見直し、組織委を率いる森元首相とのバトルに踏み込みました。現状ではオリンピックの開催に伴う費用と収支の帳尻が合わないという見通しがあるからです。

 都知事肝いりの調査委員会が出した「第1次調査報告書」は大会開催費は3兆円を超えると予測し、その内訳として、施設整備費で4840億円、大会後の仮設施設撤去費用で2800億円、輸送・セキュリティ費等で1兆6000億円もの金額がかかるとしました。

 大会組織委員会が見込む収益は5000億円程度なので、この報告を受けた小池百合子都知事は、7つの新施設の建設に関して見直しの余地があると考え、予算規模の大きい3施設(ボート・カヌー、水泳、バレーボール会場)に焦点を当てたのですが、森善朗氏(大会組織委員会会長)は「本当に都が見直しをするなら大変なことになる」と懸念。

 しばしバトルが続きましたが、両者の折衝の後、前掲の種目は、予算をある程度削った上で予定通りの会場で行うことが決まりました。

  •  ボート・カヌー会場:「海の森水上競技場」(東京臨海部)
  •  水泳会場:「五輪水泳センター」(江東区)
  •  バレーボール会場は当初の有明アリーナ(江東区)

 小池知事は持論の「もったいない」精神で経費圧縮を目指していますが、過去の五輪の事例では、実際にやってみたら予算超過になった事例はたくさんあるようです。今後、予算がどの程度の規模になるのか、しっかりと注視していかなければなりません。

東京五輪の総費用をリオ五輪、ソチ五輪、北京五輪と比べたら・・・

 現在、東京五輪とパラリンピックの総費用は3兆円を超える可能性があると指摘されていますが、この数字はリオ五輪の2倍以上にのぼります。

 過去の五輪の総費用を見ると、AFP通信の記事(2016.7.20)ではリオ五輪の費用は総額約120億ドル(約1兆3000億円)。CNNの記事(2014.1.23)では、14年のソチ五輪にかかった費用は500億ドル(約5兆2300億円)、08年の北京五輪が400億ドル(約4兆1800億円)、12年のロンドン五輪はソチの三分の一以下と書かれていました。今のままで行くと、他国と比べてもかなり高コストですが、ネットだと過去の開催費用のデータが意外と分かりにくいので、今回は、この数字の見える化に挑戦してみます。

東京五輪VSリオ五輪 費用対決の結果は?

 新聞報道等では、東京五輪の費用3兆円の中で、ハードにあたる競技施設に関する費用が7600億円、ソフトにあたる運営費、セキュリティー費、選手輸送費などで1兆6000億円がかかると言われています。

 直近のリオ五輪の費用を前掲のAFP記事で見ると、総額約120億ドル(約1兆3000億円)は、競技費が41億ドル(約4300億円:インフラ整備は2100億円ほど)、運輸部門のプロジェクトで75億ドル(約7900億円)がかかったと言われています(AFP記事「リオ五輪開催費用の内訳」)。

 リオではコストカットが計られましたが、研究者からは、実際は5割ほど予算超過したとも指摘されているので、東京五輪の費用が3兆円と見こまれても、実際にやった時に、追加費用等が発生するのかもしれません。

スポーツ行事関連の費用を過去のオリンピックごとに比べてみる

 意外と五輪+パラリンピックの総費用が一覧できる研究者のレポートなどは見つけにくいのですが、イギリスのオックスフォード大で三人の研究者が出した”The Oxford Olympics Study 2016: Cost and Cost Overrun at the Games"という論文(2016年7月発表)では、過去のオリンピックの試合にかかった費用(※施設設備費等は入らず)が掲載されていました(8枚目のPDFデータに書かれた図を見ると、ここ20数年の夏季・冬季五輪でかかったスポーツ行事関連の費用を一覧可能)。

 この論文では金額がドルですが、それだけだと分かりにくいので、下記の一覧では92年から16年までの間の為替の数字を入れて円換算に挑戦してみました。

 総額ではありませんが、このデータで見ると、リオ五輪の場合は総額120億ドルの38%ほどがスポーツ行事関連の費用(45.57億ドル)に当たることが分かります。

 ソチ五輪(500億ドル=5兆2300億円)の場合は43.8%(218.9億ドル)がスポーツ行事関連の費用で使われているので、総額の四割程度がスポーツ行事の運営のために用いられるケースが多いのかもしれません。

 前掲論文の数値を基に、以下、過去のオリンピックでのスポーツ行事にかかった費用を一覧化してみましょう。 

【夏季オリンピック平均:52.13億ドル】

 為替のデータは日本銀行の「時系列統計データ検索サイト」で「為替」を選択し「暦年」と「平均」を入力して出した各年のドル円の平均値を用いています(※なぜかこのページはURLリンクが貼れない)。

  • リオ(16年)45.57億ドル4951億円 (1ドル=108.65円計算)
  • ロンドン(12年)149.57億ドル1兆1934億円 (1ドル=79.79円計算)
  • 北京(08年)68.1億ドル ⇒  7037億円 (1ドル=103.33円計算)
  • アテネ(04年)2942億ドル ⇒ 3182億円 (1ドル=108.16円計算)
  • シドニー(00年)50.26億ドル5415億円 (1ドル=107.74円計算)
  • アトランタ(96年)41.43億ドル4506億円 (1ドル=108.77円計算)
  • バルセロナ(92年)96.87億ドル 1兆2270億円 (1ドル=126.67円計算)

【冬季オリンピック平均:31.12億ドル】

  • ソチ(14年)218.9億ドル  2兆3167億円 (1ドル=105.86円計算)
  • バンクーバー(10年)25.4億ドル  2229億円 (1ドル=87.77円計算)
  • トリノ(06年)43.66億ドル  5077億円 (1ドル=116.28円計算)
  • ソルトレイクシティ(02年)25.2億ドル  1兆3157億円 (1ドル=108.65円計算)
  • 長野(98年)22.27億ドル  2915億円 (1ドル=130.88円計算)
  • リレハンメル(94年)22.28億ドル  2278億円 (1ドル=102.22円計算)
  • アルベールビル(92年)19.97億ドル  2530億円 (1ドル=126.67円計算)

2020年の東京オリンピックの予算額が1.6~1.8兆円で確定

 これはあくまでもスポーツ行事だけにかかった費用なので、施設整備費など、他の費用がもっとかかります。

 総額の分かりやすい一覧が無いのが残念ですが、それでも今までのオリンピックの予算額の傾向は分かります。

 本年のリオ五輪でも、リオ市だけでは賄い切れず、国の支援をもらわざるをえなかったので、東京都としてもコストカットが必要になることは避けられないでしょう。

 あれこれとすったもんだした東京五輪も、12月17日に、ようやく経費の規模が固まりました。大会組織委員会が1.6兆~1.8兆円程度で開催する試算をまとめたことが各紙で報道されています。

 産経1面(12/18)ではそこに至るまでの経緯が出ています(以下、文言が長いので筆者が適宜要約しています)。

  • 13年1月:東京招致委員会がIOCに立候補ファイルを提出時の試算は7300億円
  • 13年9月:IOC総会で東京開催が決定
  • 14年12月:IOCが「五輪アジェンダ2020」で開催都市の負担軽減策を盛り込む
  • 15年7月:大会組織委の森喜朗会長が予算2兆円超の可能性を示唆
  • 15年10月:舛添都知事が3兆円は必要と発言
  • 16年9月:小池都知事のチームが費用3兆円超の可能性を指摘
  • 16年11月:組織委が2兆円を切るとの見通しを表明。IOCから削減要求
  • 16年12月:組織委が1.6~1.8兆円の試算をまとめる

 何で7300億円が3兆円にまで増えるのか。3兆円要ると言っていたものがどうして1.6~1.8兆円で開催できるのか。日本国民(あるいは東京都民)には理解しがたい話ではあります。これからも費用の試算はいろいろと出されると思いますが、このややこしい案件を決着できるかどうか、小池百合子氏の手腕をよく見ていきたいものです。