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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

よくわかる豊洲市場「盛り土」問題 今週の週刊誌一押し記事は何?

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(ゆりかもめ豊洲駅近辺の風景:出所はWIKIパブリックドメイン画像)

 小池百合子・東京都知事は9月23日に記者会見し、築地市場(中央区)の移転先である豊洲市場(江東区)の施設の地下に盛り土がされていなかった問題(盛り土問題)について、今後、不透明部分の解明を進めると述べました。意思決定の過程などに見えない部分が残っているからです。

 豊洲市場の「盛り土」問題は、不透明なだけでなく、環境基準などが分かりにくいのですが、今週の『週刊新潮(2016.9.29』の特集記事を見たら、不勉強な筆者にも分かるレベルの解説がなされていました。分かりやすい記事だったので、これを題材にして、この豊洲問題の理解を深めてみたいと思います。

『週刊新潮』の特集記事(P26~35)の読みどころはどこ?

 新潮の特集記事『意味不明が多すぎる「豊洲のパンドラ」20の疑問』のうち、筆者が注目したのは以下の三点です。

A:「盛り土」VS「地下ピット形式」(豊洲は後者)

藤井聡氏(京大大学院工学研究科教授)は「後者の方が衛生的かつ安全」と指摘。その根拠は、「建物の一階部分の直下に盛り土があると、『地下水は市場施設の床に直接届き、建物内に侵入するリスクが生じ』」るから。

⇒盛り土があったら、土を通じて水が近づいてしまいます。当たり前ですが、空洞があるのはそういう理由だったんですね。素人は、当たり前の理屈でも言われないと気が付かないもんです・・・。

B:「盛り土は地震に弱い」(三浦尚氏・東北大名誉教授)

「新しく土を盛ったところにある建物は、いざ地震が発生するとグラグラと揺さぶられて甚大な被害が発生してしまう」「盛り土をせずに地下空間を設けたことで・・・本来の地盤に近い部分まで構造物が作られたことになる」

⇒軟弱な地盤は地震の時に土が移動してしまうので、グラグラ揺れる。地下にまでコンクリートの空間をつくることが対策になっているわけです。地下階のない家よりも地下階のある家のほうが揺れに強いのと同じ理屈。

C:地下水は安全上、特に問題なしのレベル(強アルカリ、ベンゼン、ヒ素について)

米田稔氏(京都大大学院教授)によれば、水が強アルカリなのはコンクリートに接していたため。基準値の四割のヒ素の量は普通の海水と同程度。環境基準程度のベンゼンを吸っても発ガン確率は0.001%しか増えない。

⇒コンクリートに接してアルカリ性になった地下水なんて、いくらでもありそう。残りの二点も要するに、普通の海水と空気と同レベルなので、これはもはやから騒ぎでは。

安全対策は必要だが、豊洲「盛り土」問題の劇場化には要注意

 この記事は重要なデータを解説してくれているので、科学的なデータなしに不安を煽る記事やニュースを10回見聞きするよりも、これを一つ読んだほうがよほど豊洲問題がよく分かると思います。

 豊洲市場の場所はもともと東京ガスの工場だったため、汚染物質が環境基準を超えており、土壌汚染対策で858億円もかかりました。確かに、場所が場所なので、一定の汚染はあるわけですが、盛り土がないことや地下水がたまっていること自体が問題だというわけではなさそうです。

 東日本大震災後によく出てきた放射能のシーベルト数の報道などもけっこう恐怖心を煽っていましたが、豊洲報道でも似たような傾向が出ているように思えます。汚染物質が環境基準を超えていることへの適切な対策がなされているかどうか、という問題自体はもっと広いテーマなので、他の論点はないかどうかをマスコミには調べてほしいものです。

 東京都HP「知事の部屋」に公開された、9月23日の記者会見の発言を見る限り、小池知事は盛り土がないことが問題とも、地下水が危険だとも述べていないので、このあたりはご存じなのかもしれません。むしろ、取り上げたのは意思決定の過程等でした。

  • 「いつ、誰が盛土をしないことを決定したのか」
  • 「ホームページ、それから議会答弁が事実と違っていたではないか」
  • 「建物の下に盛土をしていなかったことを知っていた職員が、なぜ専門家会議の方にその意見を求めなかったのか」

 この三点は意思決定の過程や都の説明責任の問題です。小池知事は前任者の問題や都政の進め方など、都の政治過程のほうに焦点をあてようとしているように見えます。

 小泉型の劇場政治の手法を熟知する小池氏は、記者会見等でマスコミが食いついてくることを狙った情報発信を行っているのではないでしょうか。