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ゼロからやりなおす「政治と経済」

政治と経済について、いまさら聞けない知識を整理しつつ、ニュースがよりよくわかるデータを紹介していきます。

よくわかる予算の話 ~特別会計と一般会計、合わせた歳入・歳出は何兆円?~ 

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 2017年度予算案が、2016年12月22日に閣議決定されました。

 一般会計の総額は97兆4547億円(16年度比で0.8%増)。

 歳入の内訳は、税収が57.7兆円。新規国債発行(国の借金)が34.3兆円。その他収入が5.3兆円(端数略)。

 歳出の内訳は、社会保障費が37.4兆円。地方交付税交付金が32.4兆円。公共事業が5.9兆円。文教・科学が5.3兆円。防衛費が5.1兆円。国債の返済費が23.5兆円(端数略)。

 予算に関する報道や、予算ができるまでの過程がわかりにくいので、今回は、特別会計も含めた国の予算に関する解説記事の作成に挑戦してみます。

平成29年度の一般会計予算はどうなっている?

 まずは、16年12月に閣議決定され、1月以降、国会で審議される予算案の情報を整理しておきます。まずは一般会計の歳入の内訳から見ていきます。

歳入の内訳

  • 所得税:17兆9480億円(18.4%)
  • 法人税:12兆3910億円(12.7%)
  • 消費税:17兆1380億円(17.6%)
  • その他税収:10兆2350億円(10.5%)
  • 特例公債:28兆2728億円(29%)
  • 建設公債:6兆970億円(6.3%)
  • 租税及び印紙収入合計:57兆7120億円(59.2%)
  • 公債金合計:34兆3698億円(35.3%)
  • その他収入:5兆3729億円(5.5%)
  • 歳入総額:97兆4547億円(100%)

 そして、28年度予算の歳出に比べて、29年度予算の歳出は以下のように金額が増減しました(以下「28年度予算 (当初)⇒ 29年度予算」という形で数字を明記します)

歳出の内訳

  • 国債費:23兆6121億円⇒23兆5285億円(-0.4%)
  • 一般歳出:57兆8286億円⇒58兆3591億円(+0.9%)
  • 社会保障関係費:31兆9738億円⇒32兆4735億円(+1.6%)
  • 文教及び科学振興費:5兆3580億円⇒5兆3567億円(-0.25%)
  • 恩給関係費:3421億円⇒2947億円(-13.9%)
  • 防衛関係費:5兆541億円⇒5兆1251億円(+1.4%)
  • 公共事業関係費:5兆9737億円⇒5兆9763億円
  • 経済協力費:5161億円⇒5110億円(-1%)※ODA等に使われる
  • 中小企業対策費:1825億円⇒1810億円(-0.8%)
  • エネルギー対策費:9308億円⇒9635億円(+3.5%)
  • 食料安定供給関係費:1兆282億円⇒1兆174億円(-1%)
  • その他の事項経費:6兆1193億円⇒6兆1098億円(-0.2%)
  • 予備費:3500億円⇒3500億円
  • 地方交付税交付金等:15兆2811億円⇒15兆5671億円(+1.9%)
  • 歳出総額:96兆7218億円⇒97兆4547億円(+0.8%

 この数字の出典は財務省HP「平成29年度予算のポイント」です。

 筆者としては、一生懸命抑えても社会保障関係費が増えていくのが気になります。今のままでは40兆円の大台に突撃する勢いだからです。

 産経記事(2016/12/23:1面)では、平成「37年度には団塊の世代が75歳以上になり、年金・医療・介護などの社会保障給付費は24年度の約1.4倍の150兆円に増加すると試算される」と警鐘を鳴らしていました。

 安倍政権は医療と介護で高齢者の自己負担を増やし、社会保障費の伸びを5000億円程度に抑えています。

 「高齢化に伴う自然増を概算要求から約1400億円圧縮した」(前掲記事)はずなのですが、少子高齢化社会が進み続けているので、下手をすると社会保障費が1年につき1兆円規模で増えるような恐ろしい未来図になりかねません。

予算案の編成過程

 財務省でつくられた予算案は、内閣から提出され、国会で審議されます。

 これが予算編成の過程で、編成されている間に前年度の予算が執行され、前々年度に執行された予算が決算されています。予算にまつわる三つの過程はどれも一年かかるので、一会計年度の中で、同時に処理されているのです。

 今回は、分かりにくい「予算編成」の課程を追ってみます。ざっと言えば、以下の三つが大事です。

  • 予算全体の規模を決め、税収を見積もり、公債発行の額などを決める
  • 各省庁からの概算要求を査定
  • 査定後の修正を踏まえ、財務省主計局が予算原案を策定

 この過程は漢字だらけの専門用語が並ぶので、新聞で見ていると頭がこんがらがってきます。情報を整理するための用語解説を並べながら、その過程を追ってみましょう。 

5月ごろ

 財務省のシーリング(基本的な方針)を踏まえ、各省庁が概算要求を作成開始。

6月ごろ

 経済財政諮問会議から出された「骨太の方針」(経済財政運営等に関する基本方針)に基づいて、「予算編成の基本方針」の原案ができる

※経済財政諮問会議というのは、経済や財政などに関する重要な問題を審議する機関(内閣府に設置)。

8月末

それぞれの省庁が概算要求を財務省あてに提出。

9月~

財務省主計局による概算要求の査定が行われる。

 12月

 上旬に、予算編成の基本方針を閣議決定。中旬に、財務省原案の閣議報告。その後、各省庁が財務省に減額された予算要求やゼロ査定(予算拒絶)をめぐって交渉再開。もう一度要求を出すバトルが始まります。この復活折衝が、事務方同士、大臣同士で行われ、火花を散らすわけです。この修正を経て、予算が閣議決定されれば、めでたく政府予算案ができます。 

1月以降

 政府予算案が衆議院から順に国会で審議されます。財務大臣の財政演説があって、各党が代表質問し、予算委員会での審議が行われ、本会議で議決、というのが両議院の審議サイクルです。

概算要求と財務省の査定とのバトル

 流れを追うと、大きなポイントは、各省庁の概算要求と、それを査定する財務省とのバトルです。

 元海自幹部の方に聞いた話ですが、防衛省の側では出来る限り多くのミサイル等を確保したいのに、財務省の側は撃ったミサイルが「すべて当たる」と想定して数を決めてくるので、話がなかなかかみ合わないのだそうです。

「もっと多くの弾丸や砲弾、ミサイルがないといざという時に戦えないんだ」と言っても予算を切りつめたい財務省の方は「全部当たるか、ほとんど当たる」ということにして、数を減らしたいわけです。「これを説得できないと、自衛隊の装備を有効に動かせず、張子の虎になってしまうのだ」と言われていました。

 筆者は「本末転倒ではないか」「まじか」と思ったのですが、財務省はこの種の「現場」無視の数字合わせをやることがあるらしいのです。

 この逸話は極端な例ですが、予算折衝の大変さを教えてくれます。

名目GDPの中の民間部門と政府部門、輸出入の比率

 では、政府でつくられる予算の数字を日本経済全体のGDPの中で見ていったら、どうなるのでしょうか。名目GDPに関して、その内訳は2015年度の「国民経済計算」に出ています。

  • 1:民間最終消費支出(民間消費の合計) 299兆8621億円
  • 2:政府最終消費支出(政府消費の合計) 106兆  263億円
  • 3:総資本形成(政府と民間の投資合計) 123兆8614億円
  • 4:在庫変動               2兆4277億円
  • 4:財貨・サービスの純輸出                 139億円

    (1)財貨・サービスの輸出  91兆6587億円
    (2)財貨・サービスの輸入  91兆6448億円

  • 5.国内総生産(支出側)(1+2+3+4+5) 532兆1914億円

  2015年度の数字で見ると、534兆1914億円のGDPのうち、民間最終消費支出が299兆8621億円を占めており、これは、全体の56.2%に相当します。だいたい、民間の消費が6割を占めているわけです。 

一般会計(平成28年度の歳入・歳出)

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(出典:財務省HP http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/002.htm

 予算(一般会計)を見ると、平成28年度の歳入では、所得税と法人税、消費税の額が大きく、これだけで全体の半分ぐらいです。

  • 所得税 17兆9750億円(18.6%) →18兆円で19%(四捨五入)
  • 法人税 12兆2330億円(12.6%) →12兆円で13%(四捨五入)
  • 消費税 17兆1850億円(17.8%) →17兆円で18%(四捨五入)

 これに残りの税金などを足した、「租税及び印紙収入」で歳入の約6割(57.6兆円)がまかなわれています。これに公債(34.4兆円)とその他収入(4.7兆円)を足した金額(96.7兆円)が本年度の一般会計の歳入です。 

一般会計の歳出関連の数字

 歳出のほうでは、社会保障費、地方交付税交付金等、国債費が7割。

  • 社会保障費      31兆9738億円(33.1%) →32兆円で33%
  • 地方交付税交付金等  15兆2811億円(15.8%) →15兆円で16%
  • 国債費         23兆6121億円(24.4%)  →24兆円で24%

 公共投資(約6兆円)文教及び科学振興、防衛(ともに約5兆円)を足しても、全体の約6分の1にしかならないので、規模としては比較になりません。

 歳入と歳出の総額は、96兆7218億円です。

 金額は毎年変わりますが、国の税収を支えているのは所得税、法人税、消費税で、歳出の大半が、社会保障費、地方交付税交付金等、国債費に費やされています。

  少子高齢化が続いているので、今のままで行くと、社会保障費の割合はどんどん大きくなるでしょうし、地方が疲弊していけば、地方交付税交付金等がもっと必要だ、と言う話になります。 

一般会計の指標:プライマリーバランス(基礎的財政収支)

 そして、一般会計を評価する際には、プライマリーバランスという指標が重視されています。基礎的財政収支とも言いますが、これは、公共投資や国防、教育と科学振興、社会保障など、政府の仕事にかかる費用を、借金をしないで、どれぐらい回していけるのかを計る指標です。その指標を見る手順は、以下の三つです。

  • 歳入から国債収入を引きます。
  • 歳出から過去の国債の元利払いを引きます。
  • 2を1でどれだけ賄えるかを計ります。

 こうして、今の世代の支出を借金しないでどれだけ賄えているかを見るわけです。この数字がプラスマイナスゼロになり、国の成長率と国債の利子率が同じになると借金の伸びが止まります。そのため、この指標が財政健全化を見る上で役に立つわけです。 

特別会計って何?

 でも、これだけでは、本当は、政府予算の中身は分かりません。政府の予算には、一般会計のほかにも特別会計があるからです。これは、国の行う事業や資金の運用、一般会計とは別の経理などを含んだ会計です。

 「何それ」と思われた方もいるかもしれませんが、政府に入るお金には、税収のほかに年金保険料や医療保険料などがあることを思い出してください。給料から引かれる所得税は一般会計の歳入に入りますが、公的な保険料のほうは、特別会計に入っているからです。そして、高齢者がもらう年金には、一般会計で集めた税金も含まれているので、二つの会計は複雑にリンクしています。

特別会計+一般会計で、約240兆円ほどの歳入・歳出になる

 特別会計では恐ろしく大きなお金が動きます。財務省の特別会計ハンドブック(平成27年度版)によると、2016年度の特別会計の、実質ベースで見た歳出は、201.5兆円。

 一般会計の2倍!!

 初めてこの数字を見た時、私は目がテンになりましたが、国の予算は特別会計まで見ないと本当の動きが分からないようになっています(以下、本記事の特別会計の数字と下記図表は財務省HP上にある『特別会計ハンドブック 平成28年度版「国の財政規模の見方について」』が出典)。

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 2016年度で特別会計の歳出をぜんぶ足すと403.9兆円になりますが、ここには一般会計とダブルカウントになる数字が入っています。会計間の重複計上などを抜くと、201.5兆円です。これに一般会計から重複分を引いた純計分の43.1兆円を足したものが、本当の政府の歳出(244.6兆円)になります。 

 歳入のほうを見ると、額面上は407.3兆円。こちらも重複分を抜いて二つの会計を足すと、本当の歳入額(246.4兆円)が出ます。

歳入のポイント「税金+社会保険料」と「公債金+借入金」の規模は近い

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(出所:『特別会計ハンドブック 平成28年度版「国の財政規模の見方について」』)

 歳入の内訳を見ると、以下の三項目が目を引きます。

  • 租税及び印紙収入    61.3兆円(24.8%)
  • 保険料及び再保険料収入 42.0兆円(17.0%)
  • 公債金及び借入金    97.6兆円(39.6%)

  税金と保険料を足した金額と、政府が借りたお金がだいたい、同じぐらいなのです。この三つで歳入の8割ぐらいです。歳出のほうはどうなっているのでしょうか。

  • 国債費       92.0兆円(37.6%)
  • 社会保障関係費   86.4兆円(35.3%)
  • 地方交付税交付金等 18.3兆円(7.5%)
  • 財政投融資     17.1兆円(7.0%)

  国債費と社会保障費だけで歳出の7割が費やされています。これに地方への交付金を足すと、だいたい8割ぐらいです。こうして見ると、政府予算の大部分は使い道が決まっており、なかなか、新しい政策的経費にお金を回せなくなってきていることが分かります。

 なお、前掲の86.4兆円の社会保障関係費は社会保障に回されるお金の総額ではなく、これに地方政府負担分等を足して、社会保障給付費(※こちらが総額)が計算されます。2014年度の社会保障給付費は112兆1020億円となり、過去最大規模となっています。少子高齢化の中で社会保障給付費は例年、増加しているため、その抑制は今後も大きな政治課題であり続けるはずです。